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いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(高校生編❶)
43/151

042. コーチ活動の交渉(1)

挿絵(By みてみん)

 

 高知龍馬空港の到着口はまるで観光客を出迎えるように大きく拓けていた。牧野はサングラス越しにその光景を眺めながらスマホをポケットの中に入れる。


(勢いで、チケットを買ってしまったが……。まあ、見切り発車なのはいつものことか)


 牧野はそんな楽観的な思考に浸りながら到着ロビーの方に向かって歩く。


 自らを理論的で冷静だと思っていたが……、自分にもまだこんな感情が残っていたんだなと思った。到着口の方から、ゲートを通っていく人は意外にも多い。


 高知は意外にも観光客が多いんだなと牧野は思った。


 そして、目的の彼はすぐに見つかった。黒いパーカーを着た少年が、こちらを見据えて立っている。牧野の視界に映る少年は、どこか気品とオーラを纏っているように見えた。


(あれが、守月裕樹君か……)


 彼の纏うオーラのようなものは、生きていた頃に柳町が漂わせていた雰囲気によく似ている。一見人畜無害そうな面をしているが、ゲームになると一気に表現する。


 いや、あまりにも柳町に重ね過ぎか……。


 自分にそう言い聞かせると、彼に向かって手を振る。すると、彼もそれに気づいたようでこちらに向かって歩いてきた。空港の待合スペースに移動すると、お互いに向かい合って座った。


「本当に来てくださるとは思いませんでした。牧野……、さん」


 彼は苦笑しながらそう言った。それもそうか、電話での口約束などいくらでも反故にできる。それでも、ここまでして足を運んだという事実が彼を驚かせたのだろう。


「こういうのは対面で話した方が良いと思ってね。人となりを理解するのは大事だし、君たちがどんなチームを作ろうとしているのかにも興味があったんだ」


 牧野はそう言うと、「それに……」と続けて言う。


「昨日の大会で魅せた……、君のプレイが脳裏に張り付いて離れていかない。君なら……、きっと世界に通用するプレイヤーになるんじゃないかと思ってね」


 彼はそれを聞いて照れることもなく、ただ真剣に牧野を見ていた。年齢とは不釣り合いな落ち着きように、まるで心まで見透かされているような感覚に陥る。


 なるほどな……、彼は強いな。


「とりあえず、レンタカー借りてるんだ。残りの話は車の中でしよう」


 牧野はそう言いながら受付の人に予約の番号を言うと、空港の裏口からバスに乗って駐車場の方に送り出された。彼は特に何も喋ることはなかった。


 受付の人に予約番号と免許証を提示すると、すぐに車が置いてある場所に案内された。案内された車の運転席に腰掛け、彼は助手席に乗ってもらった。


(とりあえず、まず第一にチームメンバーとの顔合わせだろうか……)


 牧野がそんなことを考えていると「あの……」と彼が声をかけてきた。


「牧野さんに指導して欲しい子がいるんです……」

「昨日の大会で作戦と指示を出していたメンバーかな?」

「え、えぇ、なんで分かったんですか?」

「なんとなく、動きを見れば分かるよ……。君は指示してないなって」


 あれだけ前衛を張りながら、全体の戦術を把握するのは無理難題だ。常に死と隣り合わせの状況下でさらに戦術を考える余裕はあるわけがない。


 このチームが昨日の試合で勝ちきれなかったのは、戦術面に不安を抱えているからだと思った。不安というほどのものではないが、迷いのようなものを少なくとも感じた。


 前衛であれだけのフィジカルを持つ彼をどう動かすのが理想か――、


「そこまで理解してもらってるな安心しました」

「君も同じ風に感じていたってことかな?」

「まあ、そうですね。自分では教えきれない分野なので……」


 なるほど、彼もこのチームの課題をそこだと捉えていたわけだ。


 やっぱり似ているな、プレイスタイルも考え方もアイツに……。


「そういえば、指導して欲しい子がいるっていま言ったけど。もしかして、俺の昔の経歴を知ってるってことなのかな?」


 窓の外を眺める彼の表情が少しだけ、寂しそうに笑ったのが見えた。なんとも形容しがたいその表情にはどんな意味があるのか分からない。


 牧野は静まり返る車内で彼の返事を待った。


「そりゃあ、知ってますよ。NRT時代のことについても……。もし、コーチをしてくれるなら牧野さんがいいと思ってるくらいには信頼してますよ」


 彼はそう言いながら言葉を続ける。


「実は集めたチームメンバーは、全員がNRTのことを知ってるんです。だから、牧野さんがコーチに就くと分かったら驚くし、歓迎すると思いますよ」


 その言葉を聞いて、牧野はかなり驚いた。牧野が競技者として戦っていたのは……、もう数年前のことだ。過去のことだ。そして、彼らはまだ小学生くらいだったはず……。


「それは、随分と()()()()出会いだね」


 遠い時代の、遠い記憶の中で、NRTというチームはもうない。そして、牧野隆史という人物が元プロゲーマーだったというのはもう過去の話である。


 そんな過去を知るものが集ってチームを作っている。


 きっと、柳町が知ったら喜ぶんじゃないかと心の中で思いながら、牧野は交差点の信号が変わるのと同時にちょっとだけアクセルを強く踏んだ。

【コラム】

高知龍馬空港の挿絵を挿入しました。意外と観光客多かったです。高知といえば龍馬というくらいには高知県は龍馬に頼ってますね。そこら中に龍馬がいます。

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