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いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(高校生編❶)
42/151

041. 配信者の大会(7)


 久しぶりの大会は、大きな胸の高まりから始まった。


 弾けるような高揚感と共に、脳が冴えていくような感覚。視界がクリアになり、自分の心臓の鼓動が聞こえてくるのを、鮮明に覚えている。


 芽依の声が、菜希の声が、脳裏に焼き付いて離れなかった。


「ごめん、なんか途中から自分の指示に自信持てなくて……」


 大会が終わると、芽依が弱々しくそう呟いた。


「それはみんな同じだよ。わたしもなんか自分の声が聞こえなかったっていうか、全然声出てなかった気がするし……」


 菜希も、少し自信がなさそうな声で言う。


「これも経験だ。いきなり全部上手くいくわけないんだから、次に向けて頑張ろう!」


 芽依の指示は総合的に見て良かった。問題は、後半の動きに自信が持てなかったところだ。攻めを意識させ過ぎて、引き際が分からなくなってしまった。


 これはもう経験しかない。


「本番はもっと先だしね。私、上手くいくかな……って超緊張したし……」

「そうだね、わたしも最後の方はほんと緊張した」


 菜希と芽依が続けて言う。後半の戦闘は無我夢中で憶えてない。


「最後は負けちゃったけど……、何が悪かったのかちゃんと分析したい!」


 芽依は悔しそうに言う。その心意気は良い。本当は……、このまま今日のアーカイブから反省会をしたかったが、残念ながら今日はもう時間が無い。


「明日は試合の反省会、したいんだけど……。二人とも、空いてる?」

「私は空いてるよ!」

「わたしも」

「じゃあ、明日の放課後に反省会だな!」


 そう約束して、通話を終了する。各々が感じたことはきっとあるはずだ。ひとまずは、一人で考えてからみんなで考えよう。


(課題はしっかり浮き彫りになったな……、芽依にアドバイス送るの難しいな)


 ベッドに横たわり、ぼうっと天井を見つめる。


 大会が終わっても高揚感は抜けなかった。戦い抜いた心地良さと疲れは感じるが、不思議と眠気は襲ってこない。……明日の反省会、何から話そうか。


 そう考えただけで、自然と笑みが溢れる。


「なんか腕の動きも、全体的に良かったよな……」


 本気で腕を動かしたのは、この体では初めてだった。まだ、少しだけ違和感のようなものは抜けないが……、この体でも十分なパフォーマンスを出せることが分かった。


「さて……、もう寝よ……」


 そう呟いて目を閉じようとした時、スマホの着信が鳴り響いた。


「……なんだ?」


 画面を見ると、発信元はまたしても知らない番号だった。


「はい、もしもし?」


 少し警戒しながら返事をする。


「もしもし、夜分遅くにすみません。大会運営の牧野です!」

「あ、牧野さん? どうも……」


 聞き馴染みのある声がスマホのスピーカーから聞こえる。


「大会お疲れ様でした。……どうでしたか?」

「いや、まあ、その……。良い経験になりましたよ」


 少し言葉に詰まったが、本心で思ってることを牧野に伝える。


「そうですか、良かったです!」


 牧野は少し安心したような声でそう言った。


「実は、ちょっとご相談があって電話させてもらいました」


 牧野は、少し遠慮したような口調で言う。


「自分をコーチとして指導させて貰えませんか、という相談なんですが……」

「……え?」

「突然、こんな連絡をしてしまって申し訳ないんですが……。明日、会ってお話させていただけないでしょうか?」

「えっ、会うって……、高知県ですけど、本気ですか?」

「はい、本気です」

「え、でも……」


 そんなの、流石に……。いや、でも牧野ならやりかねないか?


「実はですね、もう空港のチケットも取ってしまってて……」


 どうやら本気らしい。……なんかもう、すごい展開になってしまって頭が追いついてこない。だが、必死に回答を振り絞って牧野に返事をする。


「……はい、分かりました。明日、空港に迎えに行きます!」

「着くのは夕方になるので、また連絡します」

「はい、待ってます!」


 そう返事をして通話を終えた。正直、まだ頭が混乱していた。寝ぼけていた頭が一気に覚醒して心臓の鼓動が早まっていく。


 牧野に会える。しかも、自分をコーチとして指導したいという話だ。


「マジか……」


 もう夢みたいだが……、現実らしい。正直、未だに実感は湧いていないけど……。とりあえず、明日空港で牧野に色々と聞きたいことがある。


(なんか……、疲れたな)


 寝よう。そう決めて布団に潜る。


(明日になったら全部夢でしたーとかならないよな……?)


 そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠りについていた。

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