040. 配信者の大会(6)
大会は三試合での決着となる。マップは固定、キル数と順位数で総合的な順位が決まる。一試合目での暫定の一位は分かっていたが「龍馬ゲーミング」だった。
キル数と順位数も相まってこのままなら上位入賞は確実だろうと牧野は考えていた。
「これ、一試合での個人キル数更新しましたね。裏方に確認を取ったところ歴代で一番キルを取ったような形になります。これは脅威になりますよ」
結城ミクの配信のコメント欄はかなり盛り上がっていた。スタバトをやっている人間なら分かるはずだこの異様なフィジカルの強さは「本物」だと……。
「さて、二試合目が始まりますが……、ここまでどうですか?」
「凄いね、凄すぎて私も参加してこようかな!」
「駄目ですよ。今日は解説役でここにいるんですから……」
本当にスタバトを起動しようとしていた彼女を止めながら、牧野も二試合目の戦況を見守っていた。二試合目も「龍馬ゲーミング」はキルを取りに行く姿勢を崩さない。
守りに入るわけでなく、変わらずに攻めを選ぶか……。
牧野の目には「龍馬ゲーミング」の彼の動きが異様に映っていた。エイムのタイミング、敵との距離感。そして、何より彼の反射神経と判断力がずば抜けていると感じた。
指示は他に任せてやりたいことだけやる。
戦闘はエイムでゴリ押して前線をひたすら維持。前線をあれだけ維持できる奴がいれば、残りの味方が敵の位置を把握しやすいし、戦闘しやすいだろうな……。
「あー、これはちょっと敵が多すぎましたか……」
「物資が足らなかったのも大きかったですね」
安全地帯が思ったよりも近場に発生したことにより、多くの部隊がそこに集結してしまった。こういう場合は安全地帯のダメージを食らってもよいので迂回すべきだが……。
ここは大会慣れをしていないと出てこない発想だろう。
「あー、『今日のご飯は?』チームが攻め込んでいきます」
「この試合は確実に取りそうですね。ミハエル君が落ち着いて対処できてます」
二試合目の勝者は「今日のご飯は?」チーム。これで、総合順位が「龍馬ゲーミング」よりも上回り、現時点での一位は「今日のご飯は?」となった。
「さぁ、最終戦はどんな戦いが待っているんでしょう」
「上位争いができるチームは限られてますし、最終戦は荒れる傾向にありますね」
現時点で最下位に近いチームは一発逆転の上位入賞を狙って、かなり無理やりなキルムーブをすることがある。それで、上位入賞してしまったチームもあったしな……。
「最終戦はゆっくりとしたスタートになりました」
「ゆっくりしてないチームがチラホラといますね。速攻で漁って徘徊し始めました」
「バチバチですね、私こういうの好きです!」
「ミクさんはもう少し考えてプレイした方がいいと思います……」
「えっ、酷いよ……。私、視聴者から頭脳派って言われてるんだよ?」
コメント欄をチラッと見ると「嘘つけ!」というコメントが多数寄せられていた。結城ミクは一時の感情で行動するタイプなので頭脳派なわけがない……。
ただ、こういうタイプは一緒にパーティーを組むと評判が良い。
良い成績を残せなくても、和気藹々とした雰囲気でプレイできる環境作りの上手さは、彼女が多くの人間から慕われる理由でもある。
「一気にごっそりと部隊が減っていきましたね」
あれだけ派手に交戦したらそうなるだろう。下位チームは銃声に群がり、戦闘が連鎖のように起こる。これも最終戦ならではの光景だ。
順位によってチームの戦術が変わるのも大会の面白さだろう。
「一騎打ちになりそうですね。これ勝った方が優勝でしょう」
最終の安全地帯には「龍馬ゲーミング」と「今日のご飯は?」がいる。場所的にはどちらもパーティーを潰していかないと未来はない位置取りだ。
どちらが先に攻める……、これは司令塔の腕の見せ所だ。
「どっちが勝つと思います?」
「先に動いた方が勝ちますね。勇気のある決断ができるかどうかです」
先に動いたのは「今日のご飯は?」だった。一戦目の指示を引きずってしまったのか、ちょっと曖昧な指示になってしまった「龍馬ゲーミング」は不利な状況になる。
「ヤバい、これは決まってしまうか?」
戦況を優位に進められるポジションを先に奪われてしまった「龍馬ゲーミング」は、挟み込まれる形で部隊が分断されてしまって万事休すだ。
だが、分断されてからも彼は驚異の粘りを見せてキルを捥ぎ取っていた。
「さぁ、決まりましたぁ。勝ったのは『今日のご飯は?』です!!」
一位で勝ったチームの動きよりも、牧野の脳裏には彼の姿が焼き付いていた。彼は……、何か根本的にここに参加しているメンバーとは違う。
久しぶりに高まる胸の鼓動と込み上げてくる何かが収まらない。
彼らの行く末を、未来を見てみたい……、そう思った。
配信が終了すると、すぐに牧野はゲスト席から飛び出した。驚いたように、結城ミクが声を掛けてくるが「すいません、後で戻ります!」と告げて急いで外に出た。




