表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(高校生編❶)
37/151

036. 配信者の大会(2)

 

 芽依と一緒に教室まで戻り、音楽祭の曲選定のための用紙を実行委員に渡す。


 用紙を受け取った実行委員は「二人ともこの曲にしたんだね!」と爽やかな笑みを浮かべながらそう言った。


 芽依は「うん」と小さく頷きながら何かを隠すように笑みを浮かべた。実行委員は気づいていないようだが……、俺は芽依の表情の「本当の意味」をなんとなく察していた。


(こういうところは本当に変わってないから安心するな……)


 教室を出ると安心したように芽依は胸をなでおろすように息を吐いた。あの表情は返事に困ってる時の表情だったのだろう。どうやら、俺の予想は間違っていなかった。


「危なかった……、何も考えずに守月君と一緒にしたから困っちゃった」

「……だと思ったよ」

「えぇ、そう思ったんならなんか言ってくれれば良かったのに」

「悪い、俺も適当に選んだからさ……」

「なら、似た者同士ってことだね」


 芽依はそう言いながら「菜希ちゃんが待ってるから早く行こう!」とコンピューター室の方角を指さす。掃除が終わってからかなり待たせてしまっているので、怒ってる可能性がある……。


(芽依の前ではあからさまに態度に出すことはなさそうだが……)


 溜め込んだ怒りのしわ寄せはこちらに回ってきそうなのが少し怖い。


 廊下を歩きながら、俺と芽依はコンピューター室を目指す。


 もうすぐ、衣替えの期間になる。移行期間を経て、見慣れたクラスメイトの制服姿は夏仕様のものに段々と変わっていくだろう。季節の変わり目を感じる。


 四季の変わり目というのは、人間に時の流れを実感させてくれる。高校生活という限られた時間は今もなお刻一刻と流れている。やらずに後悔することはしたくない……。


 当面の目標は公式の大会で実績を残すこと、高校生ゲームスポーツの祭典「STAGE:0」の申し込み期限は5月19日が締め日になっている。標準はそこに合わせたい。


 大会のエントリーについては、この前のコンピューター室での話し合いの中で「挑戦してみたい!」ということで皆の合意を取った。


 全員が大会に対しての意欲があるのだから……、練習カスタムが一度も出来ずに本番を迎えてしまうような事態には絶対にしたくないなと俺は思っている。


「何か悩み事?」

「うーん、練習試合を組めそうなチームがなかなか見つからなくてな……」


 柳町俊吾が持っていた人脈ネットワークは流石に使えない。それに俺が元々仲良くしていた人たちはほとんど一線から退いてしまっている。


 守月裕樹には、その人脈は当然ながらあるわけがない。


「バトロワって数十人をいっぺんに集めなきゃいけないしね……」


 競技的な動きができる相手を数十人集めるのは至難の業だ。それこそ、本当にネームバリューがあり、世間から注目を集めているインフルエンサーでもない限りは……。


「とりあえず、片っ端から大会を募集しているチームに声をかけてみるか……」

「私も大会募集しているとこ探してみるよ」


 本番まであまり時間は残されていない。残された時間から逆算して行動するしかない。


 コンピューター室の扉を開けると、不機嫌そうにスマホを見つめる菜希の姿が見えたが、芽依が一緒に入ってくるところを見るといつもの笑顔に戻った。


 役者並の表情切替に度肝を抜かれたが、彼女にとってはいつものことなのだろう。


「ごめん、音楽祭の課題曲選定の用紙提出してたら遅れちゃった!」

「大丈夫、大丈夫。ていうか、まだ出してなかったんだね」


 菜希がそう言いながらこっちをチラッと見る。彼女の怒りを孕んだ瞳からは「ちょっと、遅いんだけど!」という……、いつもの怒鳴り声が頭の中で再生される。


 そんな視線を華麗に無視して、俺はいつものようにプロジェクターを起動する。そして、パソコンを立ち上げて今日のタスクをメモ帳に書いて表示する。


「いつものランクだけじゃあまり練習にならないと思うんだがどう思う?」

「私も同じことを思ってた……」


 芽依がそう賛同すると、無言で菜希も頷いた。ということで、今日の議題は「練習試合の相手を選定しよう」というものになった。


 残念なことに……、俺たちにはプロチームのような人脈はない。協力してくれる大人もいない。練習する相手を見つけるのにも一苦労である。


「わたし、参加してみたい大会があるんだけど……」


 そう提案してきたのは、意外なことに菜希だった。彼女は俺たちを待っている間、片っ端から掲示板やSNSで参加を募集している大会を調べ上げていたそうだ。


「参加したい大会はこれなんだけど……」


 そう言いながら見せてきたスマホの画面を俺と芽依は覗き込む。そこにはかなり目立つフォントで「スタバト非公式大会を開催します!」と書かれていた。


 募集しているのは大手の企業に属する配信者で俺も名前を聞いたことがあった。


「これって有名配信者が集まってやる大会じゃないのか?」

「一般参加枠があるのらしいの!」


 有名人だけではなく一般の参加者の何名かが大会に参加できるそんなシステムになっているらしい。参加者は抽選で選ばれるらしく激戦だろうなとは思った……。


 だが、大手の配信者で、参加する相手も実力は申し分ない。


(賞金があるのは良いな……。これなら結構シビアな戦いになる)


 上位チームに賞金が出るということは相手チーム全体が全力で勝ちを狙いに来る。ランクマッチのように何ポイント溜まったからいいやという妥協がない。


 大会特有の流れというか……、競技という環境に慣れさせる目的ではこの大会に参加できればかなりの経験値を獲得できるのではないかと思った。


「オッケー、応募はしてみよう。俺が応募しておくよ」

「いいの?」


 菜希は案外簡単に決まってしまったことにちょっと戸惑っている様子だったが……、


「あぁ、応募するのはタダだからな。でも、抽選が外れる可能性もあるから他の大会についても調べて片っ端から応募しよう。あっ、日程はちゃんと相談しよう!」


 俺はすぐに持っていたスマホで参加のエントリーを行う。記入項目はシンプルで連絡先と補足の欄に何かネットでの活動をしていれば記載くださいと書かれていた。


 なんとなく、自分の動画投稿サイトのURLを記載しておいた。おそらく、選考に直結するものではないと思うが……、少しでも相手の興味を引ければいいなと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ