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いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(高校生編❶)
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026. eスポーツ同好会(4)


 本人に探りを入れるという行為は考えているよりも難題だった。なぜなら、彼女が「一人になる」というのが、学校生活において皆無だからだ。

 

 忌々しいほどに青春を謳歌している彼女の裏を昨日偶然にも目撃してしまった俺は、この目に映っている輝かしい青春の光景は、何か彼女の根本的な部分を犠牲に成り立ってるのではないか、と心の中で考えるようになっていた。


 彼女の笑顔には間違いなく裏がある。


(そこまでして、そんな輝かしい青春が欲しいものかね……)


 当初の目的は彼女のことを知るということなのだから、別に彼女自身にコンタクトを取る必要性はない。周りからちょっとずつ情報を集めればいい。


 プロチーム運営の会社を作り、企業の経験もあり、様々な大人を見てきた俺は、適当に会話を合わせて、相手の情報を引き出すくらいの会話能力はある。


「えっ、篠宮さんのことが知りたいの?」

「そうそう、本人とは話す機会がなくてさ……」

「もしかして、篠宮さんのことが気になってたりするのか?」

「いや、別にそういうのじゃないんだが……」

「なんだよ、照れるなって。そうだよな、彼女可愛いしな」


 会話能力はあっても、俺にはその場で適した人選をする能力はなかったようだ。すぐそういう風に変換してしまうのは、若気の至りだろうか……、この年代特有の文化なんだろうか……。


(本当に他人の色恋沙汰が好きだよな高校生って……)


 彼の名前は小林一樹(こばやしいつき)という、クラスの中では結構目立っていて、爽やかな好青年といった感じである。


 鍛えられた肉体は彼が運動部だというのを如実に表している。どうやらサッカーをやっているそうだ。この鍛えられた肉体よりもムキムキだった牧野は改めて化物だなと思った。


 何も情報は掴めなさそうだが会話を切り上げることもできず、


「そうだな、やっぱり成績優秀だし、運動神経もいいし、容姿端麗だしね。これこそ、非の打ち所がないって感じかな。学年で一番可愛い女子だし、狙っている男子も多いと思うよ」


 彼は「まぁ、頑張れ!」と謎の励ましと共に肩をポンポンと叩かれる。できる限り不快感を顔に出さないように笑いながら、俺は必死に話題を打ち切る。


「収穫はゼロか……」


 分かったことは……、趣味はカラオケとスイーツとカフェ巡り、中学時代はテニス部だったけど、今は特に部活動には入らずに帰宅部ということ。


 多くの部活からマネージャーとして入って欲しいと勧誘を受けているが全て拒否。


 放課後の行動パターンは、高知市街のショッピングモールで遊んだり、友人と一緒にカラオケか、カフェでお茶という一般的な女子高校生みたいな生活を送っている。


 そこにゲームの「ゲ」の字もない。


「分からん、何にも分からない。擬態があまりにも上手すぎて情報が得られない……」


 あまりにも情報がなく、あの彼女の裏面は幻想かと思い始めてきたが、彼女がスマホを取り出すたびに揺れるストラップを見て、あれは幻覚ではないという意識を保っている。


 なんとも、歯がゆい気分だ。


「ねぇねぇ、守月君は新しいメンバーは篠宮さんにするつもりなの?」

「あぁ、なかなか勧誘の糸口が掴めなくてな……」

「でも、意外だよね。篠宮さんってゲームとか無縁に見えるけど人は見かけによらないよね」


 傍から見たら、芽依だってゲームやりそうな見た目してないけどな。クラス内でも全然ビジュアル面で篠宮菜希に引けを取らないし……。

 

 ちょっと違うのは、昔からきっかけがないと他人と話さないところだな。クラスで交友的な篠宮菜希とは違って、社交的ではない。


 人に慣れるまで時間がかかる性格なんだよね、と美和先生が昔言ってたっけ……。


「芽依は篠宮と話したことないのか?」

「うーん……、ないかな。私って結構人見知りだからさ……、話しかけにくいよ」

「じゃあ、俺の時も同じだったのか?」

「あー、なんか守月君にはそんな感じしなかったかも……、なんでだろうね」


 首を傾げながら「不思議だね」と言う芽依。外見からの判断ではなく、その人の持つオーラ的な何か見えない雰囲気が芽依に話しかけようという意思をもたらしたのかもしれない。


 芽依とバスで一緒に高知駅まで帰り、高知駅で別れて、家に帰宅すると俺は早速スタバトにログインする。いつものように訓練場でエイム合わせをする。


 敵に標準を合わせながらマウスを動かす感覚を確かめる。


「今日はなんか調子が悪いな……。少しずれている気がする」


 ここまで露骨に調子が悪いのは久しぶりだ。ちょっとサボり過ぎたか……。


 ゲームのエイムというのは結構シビアで繊細だ、マウスを変えるだけでも感覚がすぐに変わる。だから、できる限り同じようなデバイスを使い続けるようにしている。


 デバイスの感覚だけじゃない、実戦での経験も遠ざかれば失われていく。大会でしか味わえない特有の()()()から離れ、毎日のように他のプロチームとスクリムでしのぎを削っていたあの頃と比べ、だいぶ鈍っているのではないかという不安が頭の中を過った。


「諦めたようで、心のどこかでは失うことを恐れてる自分がいるんだよな」


 俺は一人で苦笑すると、ヘッドホンを装着し、射撃の調整をもう一度念入りに行う。熱中してから数分経ったところで、通話アプリの着信音が鳴り響いた。


「あっ、もしかして……、なんかやってる最中だったりする?」


 着信は芽依からだった。用件は分かってる。


「いや、ちょうどスタバトやってたところ」

「良かった。私も今からやろうと思ってたから一緒にやらない?」

「あぁ、もちろん!」


 俺は承諾すると、芽依がすぐにロビーに入ってくる。こうやって、前世の時のように、芽依と二人でダラダラとゲームをして、残りの人生を費やしてもそれはそれで罰は当たらない気がするが……。


 ゲームを一緒にやる芽依がNRT時代の夢を叶えたいというのであれば、俺がそんな怠惰なことをしている場合ではない。それに、世界を目指したアイツらにも申し訳ない。


 途絶えさせてしまった夢を芽依と一緒に叶えてみせる。


 技量は後からどうにかするとして……、まずはメンバーだ。この感じ……、昔のメンバー集めの時も経験した気がするな。最後の一人が見つからず、悪戦苦闘してたっけ。


 最終的に見つかったのが――、牧野隆史という()()で本当に良かったと思う。


 そんなに理想通り上手くいくとは思えないが……。ここぞの場面での人を見る目は間違いないという自負はある。だからこそ、篠宮菜希の素性を明かしてチームに入れたい。

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