024. eスポーツ同好会(2)
翌日、土曜日なので学校はないが、俺は芽依を自宅に招くことになった。ちなみに、両親ともに休日にもかかわらず仕事に行っているので不在である。
高校生になってから両親と顔を合わせたのはまだ数回程度しかない。
(それにしても……。まさか、芽依を家に呼ぶ日が来るなんて思わなかった)
そして、前世でも今世でも女の子を自分の部屋に招き入れる経験は初めてである。部屋に入ると芽衣はキョロキョロと辺りを見渡している。
「へぇ~、意外と片付いてるんだね……。もっと散らかってるかと思ってた」
「俺をなんだと思ってるんだよ……」
「いやぁ、ごめん、ごめん。男子の部屋って汚いっていう偏見がどうしても抜けなくて」
「まぁ、否定はできないけど……」
確かに、NRT時代に五人で一緒に活動してた時の部屋は超汚かった。床に脱ぎ捨てた服とか使わないデバイスとか捨ててあって足の踏み場もないくらいに散乱していたし……。
「一応、掃除はこまめにするように心掛けてるからな。綺麗な方が快適だし」
「それはいい心掛けだね。じゃあ、早速だけどプレイを見せてもらおうかな」
俺はパソコンを立ち上げてスタバトを起動する。そして、キャラ選択画面でいつも使っているキャラクターを選択してカジュアルマッチに潜る。
「あっ、そのキャラ使うんだ。前線キャラだよね」
「基本的には前線張るのが得意なキャラが昔から好きなんだよ」
試合が進んでいくにつれて芽依の口数が減っていく。真剣な眼差しで画面を凝視する芽依に構うことなく俺はいつものように敵を蹂躙して見せる。
「芽依?」
「えっ、あっ、ご、ごめん……、ちょっとぼーっとしちゃって……」
「大丈夫か?」
「う、うん……。私よりも断然上手いし……、私より全然強いね……」
芽依は悔しそうに下唇を噛みしめていた。芽依が負けず嫌いなのは良く知っている。
(こういうところも変わってないな……)
芽依の実力は十分にあると思っている。ただ、それは一般的な視点での話だ。俺には俺なりの強みがあり、芽依には俺にない強みがある。
競技で総合的に評価されるのは戦略面を考える選手だと俺は思う。育てるなんて大層なことは言えないが……、もし芽依が大会に出たいならそんな選手にさせたい。
「芽依にはさ、芽依にしかできない戦い方があると思うし、自信を無くす必要はないよ」
「それってどういうこと?」
「多分、芽依はゲームIQが高いと思うんだ。だからさ、戦況を見て指示を出すようなポジションが向いていると個人的には思ってる。咄嗟に先導するのはいつも芽依だろ?」
「確かに……。言われてみればそうかも……」
(残りのもう一人のメンバーは芽依の負担が増えるが俺と同じような暴れ馬がいいな)
俺は頭の中で一人の選手を思い浮かべながら次のマッチングまで待機する。これは完全な願望になってしまうが岡田のような攻撃的なプレイを好む選手がもう一人欲しい。
「とりあえずさ……、もう一回試合を見せて欲しいな」
「あぁ、わかった」
俺はもう一度カジュアルに潜りながら、芽依に動きや立ち回りを見せる。チームメンバーになるのなら動きは知っておいてもらわないと困るからな。
「うん、だいぶ分かってきた。でも、動きについていけるかな……」
「来月からランクが切り替わってリセットになるから一緒にやってみるか?」
「いいの!?」
「もちろん、俺は構わないよ。ソロでずっとやってきたしな」
俺の提案を聞いた瞬間、芽依の顔はパァッと明るくなった。よっぽど嬉しかったのか、尻尾があればブンブン振っていそうな勢いだと思った。
普段の芽依は「あー、大人になったな」と感じる場面が多かったが、時折みせる病室で見せていた子供っぽい一面を見ると懐かしさを感じる。
「できれば、ランクやる前に何回かカジュアルで腕試ししたいかも」
「あぁ、わかった。まあ、明日休みだしな……」
俺は芽依の希望通り、翌日にスタバトを一緒にプレイすることにした。俺が前世でプロだった時よりも通話アプリの進化が目覚ましい。ゲーム用の通話アプリがあるなんて知らなかった……。
「もしもし、守月君?」
「おぉ、聞こえてるよ。ちゃんと声拾えてるぞ」
「そっか、良かった」
「とりあえず、一戦潜ってみるか」
「了解!」
俺と芽依は早速、通話しながらカジュアルマッチに潜る。マッチングが完了するとすぐに試合が始まる。まずはお互いの動きや立ち回りを確認するためにいつものようなプレイスタイルで試合を始める。
「なるほど……。昨日から思ってたけどかなり攻撃寄りだね」
「あぁ、そういうスタイルが好きなんだ。人数不利だけど別に関係ないからどんどん戦闘しよう」
「うん、分かった」
スタバトにはマッチ時点で野良の人を補充しないという機能が存在している。
今回の目的は、カジュアルマッチで芽依の指示力と俺の戦闘スタイルがどこまで嚙み合うかを確かめたいだけなので、人数的には二人で十分だ。それに、人数不利でも負ける気がしない。
「芽依、次の縮小のタイミングで一緒に飛び出したいから索敵を頼む!」
「オッケー、任せて!」
芽依は的確に俺の意図を汲み取り、適切な行動を取ってくれる。ドローンで敵の動きを索敵し、どこか安全かすぐに情報を読み取り、戦術を立てる。
「ドローンで取れた情報はあの高台に一部隊、残りは集落に固まってるかな」
俺は芽依と会話をしながら試合を優位に進めていく。指示役がいると考えなくて済むから試合進行が楽だなと思った。ソロの時よりもだいぶ突っ込みやすい。
「ふぅ……、楽勝だな。今の感じでやれそうか?」
「そうだね、戦いやすかった。でも、ランクとかやるならやっぱりもう一人欲しいなとは思うけど……」
「だよな……」
スタバトは三人揃ってなんぼのゲームだ。大会に出て戦っていくには、早いうちにもう一人メンバーを勧誘する必要があるかもしれないな……。
「とりあえず、メンバーは勧誘してみるよ。芽依も気になる人がいれば言ってくれるとありがたい」
「うん、わかった。私も探してみるね!」
芽依との話し合いを終えて、俺たちは通話を切る。明日も学校ということで、あまり長くゲームをやり過ぎると明日の授業に響きそうだしな……。
「さてと、寝るか……」
頭の中で今日の光景を振り返りながら瞳を閉じるとすぐに意識が遠のいていった。




