第4話「ねんねんころりや」
その後テツヤは通報し、数台のパトカーと救急車がやってきた。現場処理の横でテツヤは今回の事件に関する報告を自分の上司、横川忠隆にしていた。
「それでこうなったというわけです。」
「改造人間から逃げて来たのは分かったがあれはなんで丸焦げなんだ?」
「あーいやーあれはっすねー。そのー。実は謎の三人組に助けて貰ったんです。」
「謎の?」
「いや本当に謎だらけで、どこから来たのかも分からない。目的も分からない。虎の男を倒すだけ倒して帰ってっちゃったんですよ。そもそもなんで虎男がここに来ると知っていたのかすら謎ですし。」
「顔は見たのか?」
その横川の質問にテツヤは自分の命の恩人の「秘密で」という言葉を意識しいつもより固くなってしまった顔で
「暗かったので見えませんでした。」
と言った。月と街の明かりが照らすこの夜は暗くは無かったので横川には、テツヤが何かを隠そうとしていることがハッキリとその表情から読み取れた。
「…そうか。」
三人組に何かを言われ、自分に話しづらくなっているのだろうと察した横川はそれ以上の追求を止めた。まだまだ若い自分の部下が恩人と仕事で恩人を優先することを横川は悪いことだとは思わないのである。
「まあ追いかけっこも疲れたろう。今日は帰ってゆっくり休め。」
「はい…。失礼します。」
そうして彼らは別れた。
特殊事件捜査課に配属されてまだ日の浅いテツヤにとって本物の改造人間とここまで近くで関わるのは初めてだった。情報収集や遠くからの観察などが彼の仕事だったためだ。しかしここ数年調査している横川にとっては謎の第三勢力さえも初耳ではない。横川は特殊事件によく関わってくる謎の三人組が何か手掛かりになるかもしれないと、彼らの捜査も進めているのだ。
場面は変わってキャンピングカー。運転席には三人を迎えに来た白衣を纏ったメガネの女、「No.39」が座っていた。ちなみに仲間たちからはサンキューと呼ばれている。秘密組織UMBRELLAのサポート担当だ。任務の終わった三人のお迎えに来たのだ。待ちあわせていた三人組が後ろに乗ってきた。
「おかえりみんな〜。今回も無事で良かったわ。」
「まあでもついに銃刀法違反を警察に見られちゃったけどね。」
No.39にラソルが返した。
「うーん。目をつけられてないと良いけど…。」
こっそり株式会社レイニーシャインと戦いながら警察からも逃げなければいけない大変な未来を思い浮かべNo.39は小さなため息を漏らした。
「まあまあなんとかなるわよ。そんな暗い顔してないで、今日の成功のお祝いでもしましょう。私、喉乾いたし〜。」
そう言ってラソルは冷蔵庫からパックに入ったいちごミルクを取り出した。
「まあそうだな。未来のことは未来の俺らに任せるとしよう。」
「そうだね。」
とロクロとシャフトが言い、彼らも缶ビールを取り出した。
「かんぱ〜〜い。」
とラソル。車の後ろで楽しそうにする三人に小さな幸せを感じながらNo.39はUMBRELLAの基地へと走り出した。空は相変わらず綺麗な月が綺麗に光り、夜の道を照らしている。
基地に着いた。No.39はロクロとシャフトの装備を預かるとラソルと一緒にラボと呼ばれる場所に装備のメンテナンスに向かった。ロクロとシャフトはそれぞれ自室に戻るとすぐに寝てしまった。すでに夜の2時を過ぎていた。
No.39はラボの真ん中で仰向けになってもらっているラソルの、外出用の義手と義足を外し、室内用の物に取り替える作業をしている。外出時には目立ってしまわないようにと人の体に寄せた見た目の物をつけているのだが重く、動きの精度もそこまで良くないため見た目はあまり良くないが、軽くて動きやすい物に変えるのだ。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…。」
No.39は涙を流しながら義手義足の交換を行っていた。
「あなたのせいじゃないわ。」
交換の終わったラソルはその両腕で彼女を優しく包み、落ち着かせようと背中を撫でた。半分は固く冷たい金属の腕なのだが、No.39には温かく柔らかなものに感じた。
明日はどうか平和であるように、とラソルは自室の布団の中で祈った。
明日は謎の三人組との接触を試みてみよう、と横川は家のソファに寝転がりながら決意した。
明日は鮫男に頼んで○市から4人ほど誘拐してきてもらおう、と株式会社レイニーシャインの研究員No.4は減ってきた倉庫を見ながら呟いた。
深夜テンションで書いた物を、後から見直すと、こう、恥ずかしいですね。




