第3話「非合法秘密組織〜その3〜」
月と人工的な明かりが照らす空の下、彼らは手錠付きうつ伏せ虎男の周りで話していた。
「それで君はなんで改造人間なんかに追っかけられてたわけ?スーツに拳銃…もしかしてヤクザとか?」
とはシャフトが青年にした質問である。
「そう言えばまだオレ名乗って無かったっすね。すいません。警視庁特殊事件操作課の浅川哲也です!テツヤって呼んでくれ!さっきは助けてくれて本当にありがとう。」
テツヤはそう自己紹介をしてパワフルな深いお辞儀をした。
「警察のなんだかよくわからんとこが捜査してたらヘマして追っかけられてたってとこかしらね。」
「はい、まあそんな感じです…」
ラソルの質問にテツヤはうなずいた。
「その虎の男は以前からマークしてたんすけど、今日はやつらが本部との連絡を取る日だという情報を掴んだんでその内容を知るためにいつもよりも近距離での観察をしようとしたところ気づかれてあのザマです…」
「無理も無い。奴らの中には聴覚や視覚、触覚が敏感なやつだっている。普通の隠密行動が通用しないようなやつだっただけさ。」
少し落ち込むテツヤをロクロは慰めながらタバコを吸う・・・ような仕草で棒状の焼き菓子をくわえた。何かを吸っているわけでも無いのに度々「フゥ~」と息を吐いている。もちろん煙も出ていない。
「ありがとうございますって、え、ちょ、え?それ、お菓子ですよね?」
大柄で声も見た目も渋く貫禄も溢れ出るロクロの突然の小学校低学年にテツヤは驚いた。
「なんだ兄ちゃん。お前も食うか?」
「あ、いえその〜大丈夫です。」
マント男フリフリ女ときて最後、まとも枠だと思っていたもう一人はまさかまさかのまさかだった。自分を助けた集団のその変わり者っぷりにただただ驚いていたが逆に親近感のようなものも感じたため、良い人たちだと彼は直感的に感じていた。
「あ、そう言えばさっきは専用っぽい武器で戦ってましたけどやっぱり国家的な秘密組織だったりするんですかね〜。」
「いや非合法だってさっき言ったじゃない。この銃だって無許可よ。」
テツヤの笑顔の質問はラソルに1秒で叩き割られた。
「あ、えっと、その〜。僕も一応は、その〜、警察官というか〜。」
申しわけ無さそうにテツヤが言うと
「さて。もうそろそろ深夜のニュースの時間だよ。録画し忘れたから帰ろう。」
「そーね。私も深夜のニュース見たーい。」
「俺もヒゲが剃りたくなってきたなあ」
と三人の謎の演技が始まり三人は背を向けて走り出した。
「一応秘密組織だから、余裕があったら上司に報告とかはやめておいてくれると助かる〜。」
と振り向いてシャフトが言ったのをテツヤはただポカンとしながら受け止めた。彼らを追いかけはしなかった。
「今日の活動は成功だね。」
「あの警察官とこに改造人間置いてきちゃったけど良いの?」
「まあまあまあ。警察だしなんとかしてくれるでしょ。」
走りながらシャフトとラソルが話していた。
「にしても今までの改造人間であそこまで流暢に喋るやつなんていたか?それに自分の意志で襲う対象を決めて考えて戦ってたような…」
「まあ科学技術は日進月歩って言うしね。」
「・・・まあいいかそれで。」
彼らは今までにも何度か改造人間とは戦っているがその大半は近くにいる人間の指示に「了解」「はい」などの簡単な日本語で返す程度だった。近くに支持者のいない個体もいたが、プログラミングされた機械のような動きで、今回のように自分の意志で戦うといったものは今までに居なかったのである。
走り去って行く非合法秘密組織UMBRELLAを見送りながらテツヤは未来への不安を募らせていた
「任務は失敗するし、助けてもらったのは銃刀法違反の非合法集団だし、ナイショにしてほしいって言う割には丸焦げになった今回のターゲットが残されてるし。ああああああああああああ一難去ってまた一難とかいうことわざとは無縁で居たかったんだけどなああああああああああ。どう報告すりゃいいんだよこれ…。」
そうテツヤは嘆いた。
さらなる一難は訪れたもののとりあえず命を狙ってきた一難は去った。彼らとの出会いはテツヤの人生を終わりから眺めた時、非常に大きな分岐点となっているわけだがそんなことを知らない彼は上司への報告で頭が埋め尽くされていた。
第一節「非合法秘密組織」完。
1つの話を書くのに3話も使ってしまった…




