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光あれ

作者: まきや



 メキメキと、自分の何かが引きちぎられる音がする。


 痛い! 体が痛い!


 僕は必死にあらがったが、どうしようもない。


 すごい力で揺すられて、体がひっくり返りそうになる。


 「あっ……」


 気づいた時にはもう遅かった。


 たったいま、僕からそれ(・・)が奪われようとしている。


 ああ、頼むから僕の光を奪わないでくれ!




 両親も分からない僕。


 この家に引き取られて、まだ二年しか経っていない。


 覚えているよ。


 たくさんの子供の中から、里親たちが僕を見つけてくれた時のこと。


 施設の人から里親へと、身柄が引き渡された時のこと。


 さらにその後に起こった現実についても、しっかりと見てしまった。


 里親の手から職員の手へ、僕の代金(・・)が渡されていたことを。


 現実は厳しい。でもそれで良いと思った。


 さらに言えば、僕は生まれた時から十年しか生きられないと宣言されていた。


 落ち込んでいる余裕はなかった。気にしていても仕方ない。そう、自分に言い聞かせた。


 僕には生まれた時から持っている才能がある。それはこの身に光を宿しているという事実。


 皆を明るくするための天性の光さ。だからそれを誇りに生きようと誓った。


 おかげで僕はこれまで、輝きを失わずに人生をやってこれた。



 なのに……なのに……。


 里親たちは僕の唯一の希望すら、奪おうというのか!


 バキッ……。


 酷い音と共に、あたりが真っ暗になった。


 失われた。ぼくのひとつしかない誇りが。


 僕は消えゆく意識の中で、悟った。


 もう、終わりなんだね。


 目を閉じて、ささやいた。


 その時だった。


 闇の中で何かが(またた)いた。


 ほんのわずかなオレンジ色の灯火。


 その小さな明かりを遮るように、大きな二つ影が近づいてくる。


 それは少しずつ大きくなって、大きくなって、やがて僕の体を優しくつかんだ。


 温かい……その感触に僕の心が震えた。


 誰かの声が聞こえる。


 優しい声。僕に何かを伝えようとしているみたいだ。


 そうか。


 光を失った僕は、神のもとへ召されたのかもしれない。


 だからこんなにも温かいんだ。


 僕はその二本の腕に抱かれながら、ゆっくりと目を閉じた。


 神は言った。


 「光あれ」


 僕の体に、再び光が宿る――。









「タケシ! 蛍光灯の交換、終わったのかい!」


「やってるって、言ってるだろ? う~るせいなぁ!」





(光あれ    終わり)



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