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第99話 酔いどれ執事


 エゴスとふたりきりの晩餐会。


 日頃は話せないパールトン邸での人間関係、メイド長とエゴスの若い頃のロマンス、いっこうに家に戻ってくる気配のないプラクティカへの不満など。


 信じられないくらい饒舌(じょうぜつ)に語るエゴスの話に耳を傾け、相槌を打ちながら、俺は酒をちびちびと飲んでいた。


「知っていますか、サラモンド殿、アヤノはこーんなちっちゃい頃からパールトン邸のメイドをしていたのですよ」


 頬を高揚させ、気分の良さそうなエゴスは親指と人差し指でわずかな隙間を作りながら言った。


 流石にそのサイズだとまだこの世に誕生してないでしょう、とか言うのは野暮だ。

 ここは年長者に気分良く話させてあげるために、「へぇ〜そうだったんですか」と言うのが正解だ。


 俺の歳上適応スキルは魔法省で嫌と言うほど鍛えられてるので、酔い気味の紳士ひとりなど造作もないのだ。


「ずっと昔からお嬢様とアヤノは仲が良くてですね……あぁ、まったく腹ただしい! どうしてアヤノばかりあんな優遇されてるんでしゅかー!」


 まずいな、喋りが怪しくなってきた。


 そろそろ眠らせておかないと、パールトン家の執事だとバレたときに面倒なことになりかねない。


「お嬢様は……お嬢様は、もうずっとあのままだなんて、そんなの残酷しゅぎますよ、奥様ぁ、ぁ……う、ぐぅう、この、エゴス、力及ばなく、申し訳、ぁりまぜぬぅ、ぅ……ッ!」


 あぉ、なんどか、訳の分からないことを言い出した。

 

 そろそろ潮時だろう。


「うぅ、お嬢様、でも、大丈夫でしゅぞぉ……必ずや、シャラモンドどょのにゃら、彼にゃらば……奥しゃま、安心して、くだしゃい……必ずや……かな、らじゅや……」


「エゴスさん、失礼します」


 手で刀を形作り、机につっぷすエゴスの首元を優しく叩く。


 するもエゴスは脈絡とろれつという概念なき言葉の連続をやめて、ピタッと静かになった。


 そうして、俺は人が少なくなってきた酒場を、エゴスを抱えて退散することななった。



 ⌛︎⌛︎⌛︎



「ぅぅ、頭が痛いですな……ん、ここは?」

「ん、もう起きましたか、エゴスさん」

「エゴス、エゴスっ、大変だわー!」


 元気な声にジンジンと痛む頭を抑え、ゆっくりと上体を起こす。


 お嬢様の声がする。

 む、それよりも異様に肌寒い。


 自分が上着を着ておらず、シャツ一枚で夜中の外気に晒されていたことに気がつく。


 なるほど。

 わたしとした事が少々ハメを外してしまったようですな。


「迷惑をおかけしました、ゴルゴンドーラ殿。それにしても、どうしてお嬢様がここに? 恥ずかしいところを見られてしまいましたな」


「いえいえ、良いんですよ。……それより、大変なんです。エゴスさん、その、この子のことです」


「この子?」


 不思議な問いかけと、お嬢様の固定された視線をおってみると、自身の眠っていたベンチの脇に、ひとりの少女が腰掛けていることに気がつく。


 黒髪黒瞳、愛らしい顔立ちの少女。


 脳の奥に保管されてきた記憶が、熱をもって蘇る。


 その顔に見覚えがあったからだ。


「エゴス様……申し訳ございません、しくじってしまいました……」


「……アヤノ?」


 困惑しながら問いかけると、お嬢様とならぶ背丈の少女はこくりとうなづいた。


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