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第93話 ガーディアン……

 

 暗くて湿り気のある空間。

 灯りを消して、足音を潜め、呼吸すら細くして進む。


 湿気は本の大敵。

 禁書たちの保存状態が非常に危ぶまれるなか、俺たちは、慎重に地下階段をおりていた。


 壁に貼りつく苔に眉をしかめながら、水に研磨され光沢おびる階段に足元をすくわれないよう、しっかりと踏みしめる。


「ダビデ」


 振りかえる彼へ、指をたてて静かにするようジェスチャーをおくる。


 足元、したたる粘性の白い液が理由だ。


 ダビデは粘性の液体の存在をチラ見して認めると、ゆっくりとかがんで杖先を床にちかづけた。


 途端に、粘性の液体が青白い炎をあげる。


 見たことのない魔法だ。


 だいたい「現象」をみれば、何の魔法かわかるのだが……。


「見つけた……いや、向こうもこちらを見つけているらしい」


「索敵系の魔法か。便利だな」


 俺の称賛に眉ひとつ動かさず、ダビデはゆっくり立ちあがると指先を暗闇へ向けた。


「この奥、階段を降り切ったさきに気配を探知した。向こうはとっくに俺たちに気づいてたらしいが、どういうわけか、階段を登ってまでおそってはこない」


「ガーディアン……か」


 ダビデは安心した様子でふたたび杖先に灯りをともして、ツカツカと足音をたてて歩きだした。


「階段の残留物は、このさきの気配のものだ。つまり、気配の主は平気で階段を登ってこれるはず」


 忍ぶことを忘れたように、だいたんに降りていくと、やがてオレンジ色の光が階段のおわりを照らした。


「ガルぅぅぅぅう……」


「いたぞ」

「いたな」


 堂々と灯りで照らしながら、俺たちは禁書庫にたどり着く。


 だが、そこは俺たちが予想していた風体とはおおきく事なる状況をまとっていた。


 はば数メートル、奥行き5メートル弱。


 決して広くはない空間の中央に古びた机と椅子があり、左右の本棚には本が気持ちばかり、ごく少ない量安置されている。


 ほとんどの本はまるで盗人に荒らされたように、床に散乱し、棚の一部は倒れている。


 肝心の気配の主人と思われたガーディアンーー白い粘性の体液を垂れながす犬は、奥の壁に貼り付けにされたようになっている。


 体をおさえる、真っ黒な巨杭にガーディアンは抵抗すらしめさず、ただ低く唸るだけだ。


「ゴルゴンドーラ」


 本をまたいで避けるダビデは、ガーディアンのとなりの、崩壊した壁を指差す。


 真っ黒なその穴の向こうをのぞいて見るが、どこまで続いているのか、いまいちわからない。


 耳を傾けてみると、川の流れる音がした。


「ふむ、禁書庫には先客がいたらしいな」


 ダビデは近くにあった適当な本を手にとり、ペラペラとめくっていく。


「まだ読める。本が腐ってない」


「つまり最近か。もしかしたら、入り口の狼像の封印解錠できなかったのは、すでに封印魔法が突破されていたからかもしれないな」


「封印を突破し、ガーディアンを射止め、なにかを探して、この穴から出ていった……やれやれ、目的のブツが無くなっていなければいいが」


 ダビデはそう言うと、杖をヒョイっと振り、床に落ちている本たちを浮かせて棚に戻しはじめた。


 俺はやや億劫な気分になりながら、杖を振り、本棚を元の位置に戻すのだった。



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