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第85話 お許し


 ーー数日後


 朝、レトレシア魔術大学の掲示板にて貼り出された紙は、案の定この学校中の話題をかっさらっていた。


 力を持たない貴族たちは憧れに目を輝かせ、力をもつ貴族は素知らぬ顔でまわりに同調して驚いて見せる。ただの茶番だ。知ってる奴はもう知ってるだろうに。


 俺は掲示板をすっと指差して、となりで「うーむ……」だなんて、かわいらしく唸る主人を見た。


「レティスお嬢様はどうするのですか?」

「わたしは……行ってみたいかも」

「いいですね、行きましょう。何事にも積極的で、興味を持たれるのは、

 レティスお嬢様の優れた才能のひとつです。必ずプラクティカ様も許してくれますよ」

 

 きめ細かい青髪を邪念をもって撫でまわす。

 レティスはにへら笑いしながら、「えへへ、そうかな〜」と柔らかい毛並みをこすりつけてきた。


 あぁ〜心が浄化される……。


「……んっん! それでは、私がお嬢様の人間国研修へ行きたいという旨をエゴス様に伝えておきます。すぐに奥様からの反応がもらえるでしょう」


 アヤノはジトッとした眼差しを切り上げ、そう言ってレティスの手をひいて歩きだした。


 

 ⌛︎⌛︎⌛︎



 レティスの魔術工房。


「ねぇ、サリィ、わたしはサリィみたいな凄い魔術師になりたいわー」

「えぇなれますとも。魔感覚をもつフクロウを無傷で捕獲できる腕前と、緑ポーションの簡易錬金に成功したレティスお嬢様なら、絶対に俺を超える魔術師になれます」


 俺は部屋の奥に設置された止まり木で、毛づくろいするフクロウと、そのとなりのオシャレなフラスコに注がれた緑ポーションへ視線を動かした。


「ポーションは楽しいわ、ふーのお世話も楽しいわー、だけどもっとね、サリィが戦場でやったみたいにすっごい大精霊を呼びだして、ビィィィイー! ガガガがぁぁあー! どかーんっ! ……みたいなことがしたのよっ!」


 なるほど、ゲイシャポックのことか。

 つまり魔造兵器を召喚して2万人くらい精鋭騎士を蒸発させたいってことなのかな。


「ダメです。レティスお嬢様にはふわふわもこもこ、きゃわわで安泰な人生をおくっていただかなくては」


「えー、だってわたしもう戦えるのにー」


 レティスは杖を振りあげて軽く振ってみせた。


 するとふーの隣の人体模型が吹き飛んで、おおきな音を立てて崩れた。


 あぁ、また乱暴なことをして。

 まったく誰に似たのだか……。


「すごい物音がしましたが、大丈夫ですかな?」

「あ、エゴスさん」


 アヤノを連れて魔術工房へやってきたエゴス。

 彼が小脇におおきめの封筒を抱えているのを確認し、アヤノにレティスを叱ってもらいつつ、俺はエゴスのもとへ。


「奥様からの返答が返ってきました」

「直接渡しに来てもいいと思いますけどね」

「まぁそれはわたくしめも思いますが……なにせ奥様はお忙しい方ですので」


 やれやれ、思えばこの2年の間、数えるくらいしかパールトン邸に彼女は戻ってきていない。


 いくら忙しいとはいえ、娘をほったらかしにするなんてあの人には、親としての自覚が足らな過ぎる。


「まぁいいです。それで、プラクティカ様はなんて?」

「えぇ、もちろん、研修の席をひとつレティスお嬢様に融通してくださるとの事です。ただ条件として、サラモンド殿、わたくしめエゴスが必ず同行するようにとのことです」

「ふふ……そうですか。それはよかったです、ありがとうございました」


 条件というか対偶だな。

 ありがとうございます、プラクティカ様。


 万事順調に人間国への道は作られていた。



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