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第76話 終焉の火


 もたげた軍神の首が反動におおきく後退する。


 頬を焼く一瞬の厚さと、昼過ぎの空と大地を陰と光だけにかえてしまう膨大な光量。


 ゲイシャポックの半壊して、縦に裂けてしまった口部から発せられたのは真白い一筋の線だ。


 それらは帝国軍のかまえるずっと先の大地を、羊皮紙に筆を走らせるようになぞっていった。


 そのまま、軍神は自身の反動で空をあおぎ、日のかたむきだした空すらもなぞり始めた。


 砦につかまり状況を見守っていると、瞳を開いているのがつらいほどの突き刺すような光が遠くに見えた。


 太陽を直視することができないように、その巨大な火の玉ーー否、ちいさな太陽は目を細めて眺めなければこちらが焼かれてしまうと思わせる力がある。


「おぉ……、なんということだ……」


 地上に連続して作り出された無数の火球に、グリムは目を見張り、息を呑み、感嘆の声を、あるいは畏怖畏敬の念を漏らす。


 その姿はさながら神の力を目撃した者だ。


「ゴルゴンドーラ! どうなった!?」


 目をこするグリム。


「……やりました、あれを見てください」


 俺はそう言って北を指差した。


 そこにあるのは真っ赤に焼けた大地と、いくじゅうにも重なるクレーター。


 春の草原に展開して陣を敷いていた帝国軍のいた場所は、消えぬ大地の傷とともに、軍神の熱線によって蹂躙されつつくしていた。


 遠目ゆえに断定できないが……が、そこに動くかげはまったく確認できない。


 そんな簡単に人が死ぬのかと、そんな簡単に存亡の危機はさったのかと、グリムは自分に問うているようだった。


 だが、すぐに彼はこの事実を受け入れると、膝をはらいながら立ちあがった。


 役目を終えた軍神から、天より伸びる魔力の傀儡糸を切り離す。


 巨大な体は前のめりに倒れていき、最後には地響きをたてて完全ち動かなくなった。


 空にはすこしずつ夕日が差し込みはじめる。

 真っ二つに分けられた雲の割れ目は、そのあとしばらく大陸各地で確認されたという。



 ⌛︎⌛︎⌛︎



 クルクマでの防衛戦から10日が経過した。


 当分の目標として、トライマスト、そしてトールメイズ砦のふたつを奪還しなければならない。


 そのための準備が完了したのだ。


「ゴルゴンドーラ、国を裏切り、祖国の人間を躊躇なく殺戮した悪魔よ」


「その祖国の英雄に、敵もろとも殺されそうになってたのはどこの皇帝だ」


「結果的に死んではいないではないか」


「そりゃそうでしょう。あんたは俺たちが死なせなかったんだ。だから、今も生きてる」


 俺はバルマスト帝から視線をはずし、馬車に揺らされるそとの景色へと視線をむけた。


 そこでは馬に乗る騎士と、魔術師たちによる護衛部隊が馬車を囲んでいるのが見えた。


さらに御者台へ通ずる小窓を開けてみれば、馬車を操る騎士から目的地への接近の朗報を聞くことができた。


「んっん……喜んでください、バルマスト帝。あたまの軍が支配するトライマストに到着しましたよ」


 俺は内心でルンルン跳ねながらそう告げた。


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