第75話 古典魔術≪魔導傀儡≫
ゲイシャポックーーゲイシャ宗教における伝承の戦い、魔人と神にも近しい者ども戦いで使用された対神用擬似神魔造兵器。
その詳細のほとんどはとうの昔に失われたが、俺の師匠は遺跡めぐりの趣味を開花させていたころに、
偶然にも魔人たちが、ゲイシャポックの製造を行ったと思われる古代遺跡を発見することができたという。
召喚魔術の権威と付き合いのあった師匠は、なんとか古の魔造兵器を呼び出せないか頭を悩ませたが、
ついには無理だと飽きてしまい、彼は途中まで作成した召喚魔法陣を棚の奥にしまいこんだ。
俺が使用したのは、師匠がかつて語った武勇伝から推測し、開発途中で放置されていた魔法陣を最後に俺が完成させた物……つまり、俺と師匠の合作魔法陣だ。
非常識すぎるサイズと、ありえない召喚時間。さらにまったくの別世界から呼び出す超高級魔術ゆえに、
召喚は困難を極め、必要とされる魔力は通常なら用意することなど到底できなかった。
「だが、いまならばそれが可能! さぁ、やれ ゲイシャポック! 伝説にうたわれる『終焉の火』を見せろ!」
クルクマ砦から形成途中の醜い顔をもたげ、砦を握りつぶし、破壊しながらながら四つん這いで帝国軍のほうへむかう巨大軍神ゲイシャポック。
あまりにも内包する魔力のおおきすぎる存在に、魔感覚を強烈に酔わせながらも、俺はゲイシャポックの口がゆっくりと開くのを興奮、その内側にひかる力の波動はなかで煮えたぎるような温度をつくりだす。
空気がギキィーン、と悲鳴をあげて軍神の魔力の圧縮していく。
高まる緊張。
数秒の後、ついにはその高音と高温におかされていた緊張が解放される時がきた。
その時だ、軍神の力の解放よりもはやく、北方の地平線から魔感覚をなでる暴風が発生したのは。
「……ッ! まずいッ! グリムッ!」
せまってくる極大の星分かつ猛威に、グリムの体を素早く引き寄せる。
「ーーーー」
1秒とたたずして、その波動はクルクマ砦上部ーー特に顔をのぞかせていた巨大軍神の顔面を撃ち抜いていた。
大爆発を起こし、驚異的な速さで膨らむ衝撃に個人の魔法結界を張って持ちこたえる。
全身の筋力を魔力を動員して凌ぎきった後には、空を舞ってはるか遠くへと飛ばされた兵士たちと、
魔法結界無しでかの攻撃を受けてしまい、鋭利な切断面をもって溶かし斬られたクルクマ砦の姿があった。
抱きかかえたグリムの無事を確認。
ばっと顔をあげ、倒れいく軍神の姿を見つける。
まずい、最大まで短縮したとはいえ召喚時間10分は長すぎたか。軍神ゲイシャポックが完成するまえに簡単に勇者の反撃を許してしまった。
だが、ここで彼に倒れてもらっては困る。
俺は師匠の使っていた大杖を掲げ、古典魔術≪魔導傀儡≫を発動。
意志のなく、魔力抵抗をしてこないゲイシャポックの操作権を奪いとる。
空から伸びて、ピンと張り詰めた魔力の糸たちは、この古代の魔法がたしかに発動した証だ。
「重い……が、やれる……ッ!」
魔力量をメリメリと減らしながら、俺は半分だけしか残っていないゲイシャポックの顔を北方の地平へむけさせる。
そして、さきほど数秒の充足時間を経て溜まりきった破壊衝動を空と地上の境界線へむけてうち放った。




