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第72話 星ノ両断

 

 手に握る星からの贈り物。


 ある日、うちよりいでた宝剣を引き絞り、狙いをつける。


 当てればいい。


 ただ、それだけで先の砦は崩壊した。


 私に斬れないものはない。

 もっとも私は突きのほうが好きなのだから、今回も両断と言っておきながら、放つとは刺突なわけだ。


 あぁ、これでは先祖に怒られてしまうか。


 せっかく星を斬った逸話とともに継承された技なのに、私の代では1度もまともに斬るところを皆に見せてあげれてないのだから。


「どうしたルーツ? はやくやらないか」


 近くで髭もじゃのおじさんが声をかけてきた。


 言われなくてもわかってるさ。


 やればいいんだろ、やればさ……。


 スッとを目を細め、3000と650……いや、653メートルの距離にそびえる魔力の壁を見据える。


 戦争に出れてはじめは興奮していた。


 トールメイズ砦の無敵の魔法結界を打ち破ったときの爽快感は、きっとこの先も忘れられないだろう。


 16歳のころ父親た殴られながらも、彼からだんだんと私にうつっていったこの英雄様の力とやらは、私に戦うすべを教えてくれた。


 試しに振ってみれば、屋敷が吹き飛んだ。


 星からの贈り物ーー星剣(せいけん)ルーツは私の意思でいつだって、どこだって手のなかに現れる。


 だけど、そのつるぎを振ることは許されない。


 思えばおかしな話だよね。


 私はこの戦争がはじまるまで、力が宿りはじめたあの日から1度もまともに剣を振ることはできなかったんだ。


 剣の振り方をだれよりも知っているのに。

 誰よりもすっごい斬撃を放てるのに。

 どんな剣士よりも剣をふった試しがない。


 この力は私のものであって、私のものじゃない。


 強大すぎる力は常になにかに縛られる。

 だからこそいつか訪れる解放の時をうかがう。


 あぁ、なんたる孤独。


 ほかにも勇者がいるらしいが、彼らもこんな気持ちを抱いているのだろうか。


 此度の戦争に私が参加しているのは、だいぶんまずいらしいが、彼らなら私の気持ちを理解してくれるだろうか。


 運が良ければきっと人間国とも戦争になる。


 そうなればまた力をふるう機会を得られるだろうか。


 それとも、ここで終わりなのだろうか。


 この戦争が最後のチャンスなのだろうか。


「まぁ、いいか……どちらにせよ、そこに私の意思はない」


 遠くに見据えた青い壁。


 私はそこへ向かって引き絞った無双の一撃を撃ち放つ。


 全身の剣気圧により、星剣に内包された爆発的な魔力を操作、そして斬撃の誘導にしたがって破壊は形をなす。


 すべてを分かつ、いや、全てを貫く一撃だ。


 近くで急かしてきていた髭もじゃ親父は、大槍を地面に突き刺して衝撃に耐え、ふきんの屈強な騎士たちは騎乗する馬ごと飛んでいく。


 私の体内魔力量がガクッと減った感覚とともに、はるか遠くの青い壁が大爆発をおこす。


 波打つように広がる衝撃にきしみ、たわみ、地平線をなぞるように振動の波が左右へと広がっていく。


「……おや、一撃耐えきったか。はは、いいね、頑張るじゃない、クルクマ砦」


 私は笑みをこぼしていた。


 もう一度、撃たせてくれる。


 そのことが嬉しい気持ちはある。


「……はぁ」


 だけど、自分のことをただの高威力の魔法攻撃砲としか見てない帝国と、横で顔をしかめる大将軍のことを思い出すたびに気持ちは盛りさがる。


 私だって女なんだ。

 誰かこの気持ちを受け止めて優しく包んでくれるものはいないだろうか。


「あぁ……ゴルゴンドーラ、どうして戦場に出てきてくれないんだ…………ん? 魔法結界が……崩れていく……」


 亡命の想い人を脳裏に、くだらぬ思考にふけっていると遂には最悪なことが起きはじめた。


 青い壁が天辺からどんどんと消えていっているのだ。


「ふむ、やはり一撃で終わったか。はは、急ごしらえの要塞ごときに、勇者殿の一撃は止められなかったと見える」


  得意げに笑う髭もじゃ。


 お前の力じゃないのに、なんでそんな得げなのだろうか。


「む、待て、なんだ……あれは?」

「ん、ぁ……」


 快活に笑う髭もじゃの視線にさせわれ、正面へ視線を移してみると、なにやら光が砦の向こう側から漏れだしている。


「……!」


 光がおさまったと思った直後、帝国の先遣隊全体に驚愕に息を呑む声が波及した。


 砦のむこうから現れた巨大な影。


 いや、影なんてあやふやな者じゃない。


 あれは、あれは……巨人だ。



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