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第70話 光と影


 縄を引きながら魔法王国軍の本部へやってきた。


 ここはトールメイズからトライマスト、そしてクルクマまで撤退してきた俺たちの軍の指揮系統が集中している場所だ。


 今はかつてのクルクマ冒険者ギルド支部を借りて、そこを拠点としている。


 冒険者ギルドは、人間どうしの戦いには一切の関与をしないと昔から公言しているのだが、それでも臨時の際にはその建物くらいはかしてくれるのだ。


 もちろん戦力や、物資の融通などは絶対にしてくれないが。


「なるほど、騎士団長は亡くならなられたか……そうか、そうか」


 俺の報告を聞いて、作戦本部を預かっていた大貴族パリストン家の長男、グリム・パリストンは残念そうに報告を受けとった。


 魔術師育成をしている間に、何度か顔合わせをした若く才能にあふれる貴族の青年だ。


 26歳という若さで、今回の戦争の第三将軍に選出されているのだから、その器の大きさがうかがえる。


 もっとも、本人のことを知っていればパリストン家が自身の家に箔をつけるために、

 武勇に優れた長男を無理やりねじ込んだという事実に同情するだけなのだが。


 こいつはいい男だし、よい戦略家かもしれないが、いかんせん弟の出来が良すぎるらしく、家からはやっかいもの扱いされているらしい。


「よく知らせてくれた。それに、よくぞ戦場へやって来てくれた、ゴルゴンドーラ、ありがとう」


 俺は目をふせて、差し出される手を握った。


「いいえ、俺は俺の仕事をやりに来ただけですけから」


 そう言って、俺は縄をひいてバルマスト帝を作戦本部の会議室へ招きいれた。


 はじめ、作戦本部の戦争に出張ってきた貴族たちは、皆が不思議そうな顔をしていたが、

 俺が彼のことを帝国の皇帝だと何の誇張なく紹介すると、彼らは目を見張り驚きはじめた。


 彼を俺が帝国の城から誘拐してきたことを話すと、すくなからず俺がそれを可能にする魔術師だと聞いていたのか、

 貴族たちは「よくやった! これで帝国に勝てる!」ともろてをあげて喜びはじめた。


 将軍の死で、繰りあげ将軍となってしまったグリム・パールトンも、暗かった顔にひかりを宿した。


「まさかこんな切り札がローレシアに残っていたとわ! ゴルゴンドーラ、でかしたぞ! 

 それではゲオニエス皇帝、バルマスト・ブラッグストンを使った交渉に乗り出そうではないか。

 早馬をだせ、交渉の旨を記した連絡を持たせてトライマストへ走らせるのだ」


 グリムは実に軽快な指示を各所の兵士へと出していく。


 さて、それでは交渉などの難しいお仕事はグリムたち貴族将軍と、貴族参謀に任せようじゃないか。


 俺は念のための迎撃システムでも構築しておこう。


 ーードタドタ、ドタドタっ


 俺がバルマスト帝をあずけて、軍本部を出ようとした時、外から血相変えたひとりの兵士が走りこんできた。


 顔を見れば、ついさっき早馬を出すために出て行った兵士だと気づく。


「いったいどうしたのだ?」


 ご機嫌のグリムは兵士へたずねた。


「パリストン様! 大変です、北方にて魔法障壁が消失を目視で確認! ゲオニエス帝国の軍がすぐそこまで来ています!」


 焦りすぎて裏返った声の報告は、グリムの顔にふたたび陰りを作るのだった。


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