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第69話 ゴルゴンドーラ先生


「どこにも行くなよ、バルマスト帝」

「どこにも行けんだろう、ゴルゴンドーラ」


 半眼の少年は自身の首にくくりつけられ縄を持ちあげてため息をついた。

 手元にあるおおきな木箱。中に入ったてんこ盛りに積まれた魔力鉱石を手に、ほうり投げて遊びつつ、あたりを見渡す。


「ゴルゴンドーラ、帝国が我ひとりの人質でほんとうに引くと思うているのか? 

 帝国で吉報を待っているはずの我が、いきなり敵国に捕まって人質にされるなど奇想天外すぎて、逆に効果がないのではないか? どれ、この縄を解いてみろ。そうすれば我が帝国の将軍に話をつけてやろう」


「いえ、結構。止まらないのなら、俺が戦線を持ちあげてトールメイズ砦まで帝国を押し返すまでだからな」


「ふっ、くだらぬハッタリを。魔術師がただのひとりで何ができるというんだ」


「……そう思うなら見てればいい。準備なしだと軍なんて相手にできないかもしれないが……まぁあいにくと、ねぇ」


 俺は魔力鉱石とあたりに散らばる魔導砲のジャンク品を眺める。


 ここには戦争をするために集められた、大量の魔力触媒がある。

 やろうと思えばきっと()()を召喚することも出来るだろうーー。


 ローブの内側におさめられた、宮廷魔術師時代から愛用する革のノートをそっと撫でる。


「おい、誰かが来たぞ」


 バルマスト帝の声に顔をあげる。


「っ! ゴルゴンドーラ先生! ついに戦場にいらっしゃったのですか!」


「ぁ、あぁ! ついに先生が、先生が俺たちのために重いトラウマを乗り越えてやってきてくれたんだ!」


「幼少期に人殺しを強要され、血を見れなくなって噂だったのに、魔法王国のためにかつての祖国へ杖をむけてくださるのか!」


 物資を保管する臨時の格納庫へなだれ込んでくる、厚手の紅いローブに身を包んだ者たち。


 ローブの紅は此度(こたび)の戦場へおもむく魔術師のために支給された、ローレシア魔法王国を守るための決死の覚悟を表した色らしい。

 

 ちなみにパールトン邸にも1着送られて来てたりする……着てないが。


 期待の眼差しで見つめてくる、ちょっと前にお別れをした訓練兵たちをへいげいする。


 皆が死線をくぐり抜けた顔、とまではいかないが、肝が座ったような甘さのない顔つきになっている。


「あぁそうだぞ。たぶん、そのトラウマってやつを乗り越えてきた……さぁ、この勝ちに行くぞ、おまえら」


「「「ヴォォォオォオアァッッ!」」」


 爆発的な雄叫びが格納庫に響き渡る。


 何故か俺ですら聞いたことないおヒレの設定がついてるが……まぁ士気があがるならいいだろう。


 俺はトラウマのことを特に否定することなく、そっと傍らの小坊主へニヤついてみせた。



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