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第49話 開戦と予想外

 

 新暦2851、3月21日。


「アヤノ、サリィ! 見てみてー、こんな大きな炎を出せるようになったわー!」


「流石です、レティスお嬢様」

「お見事です、お嬢様」


 庭で大火球を打ちあげて遊ぶレティスを見守る。


「はぁ……」

「またため息ですか、サラモンド先生」

「ああ、いえ、すみません。無意識に出ちゃって」

「わかります。戦争のことですよね、もう暖かくなって来ましたし、いつ始まってもおかしくありませんから」


 アヤノには全部お見通しか。


 遠く、北の空を見る。


「……これでよかったのか」


 王都に残ったことをわずかな後悔とともにつぶやく。


 最近、ずっと同じことばかり考える。


 かつていた帝国の戦力と、迎え撃つ魔法王国の戦力、地形、思惑、最終的な落としどころなどなど。


 俺はどこかの国に帰属するという感情を、もはや持ち合わせてはいない。


 正直言って、レティスとエゴス、アヤノたち住まうパールトン邸のある王都だけあれば、多少ローレシアがゲオニエスに侵略されてもいいと思う。


 その逆もしかり。


 帝国騎士団の1割、2万人くらいの盛況な騎士たちが魔法王国の砦のまえに死に絶えようと、なんら感じるものはないと思う。


 帝国に裏切られたあの日から、もはや俺のチームはないのだ。


 たまたま魔法王国に住んでるからチーム・ローレシアなだけだ。


「サラモンド殿、どうやら戦争がはじまったらしいですぞ」

「っ」


 すこしずつ色づきはじめた芝を眺めていた俺の耳へ、渋みのある耳触りの良い声がはいってきた。


「そうですか、エゴスさん。どうですか、トールメイズ砦の防衛力は?」


「どうやら、帝国軍が投石機でちょっかいかけて来ているだけで、まだ本格的に国境を越えての侵攻はしていないようですな」


「ふむ、そうですか」


「えー、戦争はじまったのー? レティスも助けに行ったほうがいいかなー?」

「レティスお嬢様は、絶対に王都を出ないでください」

「お嬢様は冗談でも、そのようなことは言わないようにお願いします」

「お嬢様、エゴスはいつも目を光らせておりますぞ」


 心配性なうちの使用人たちの注意が、レティスのうかつな発言を音速でうちおとす。


 レティスが「うぅ、冗談なのに……」としょぼくれた顔して、俺のローブのなかに入り込んでくる。


「ねぇ、サリィ。どうして世界一強いのに、サリィは戦争にいかないのー? きっと戦争にいったらすっごい英雄になれるのにー」


「はっは、英雄ははじめから戦場には立たないんですよ。その時が来たら、俺だっていきますよ」


「ほんとうー!? サリィのすっごい魔法見てみたいなー!」


 レティスに無邪気に笑い、俺のローブにくるまりだした。



 ⌛︎⌛︎⌛︎



 ーー4日後


 トールメイズ砦が陥落したとの報告が、王都民たちの平穏と静かな朝を絶望におとしいれた。



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