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第48話 出兵



 ゾウマンとのいざこざ以来、一気に増えた俺の担当する訓練兵たちとの時間。


 厳しい冬の間、懸命に魔術の修練に励んだ生徒たちと俺にはいっしゅうの絆ができてきていた。


 だが、それも今日まで。


 ローレシア魔法王国の非常備軍育成は、新暦2851年2月19日をもって完全に終了した。


 残すのは王都での訓練ではなく、砦の動きの確認くらい。


 魔法王国騎士団、騎士2529名、魔術師3714名。

 徴兵・志願兵による非常備軍、槍兵約2万5000人、魔術師約4万6000人、その非戦闘員が約6000人。


 想定より、ずっと人数の集まらなかった魔法王国軍は今日、戦場となるトールメイズ砦およびトールメイズ河近郊への進軍を開始する。


 春までまだいくらかの猶予はあるが、はやめに帝国が攻め込んでくるともわからない手前、

 魔法王国はかなり早い段階から防衛ポイントへ兵を動かしておく必要があるのだ。


「ゴルゴンドーラ教官、本当にお世話になりましたッ!」

「うん、頑張ってきてください。俺も……たぶん後で合流するので、待っていてくださいね」


 やわらかく微笑み、俺は手を振って敬礼する兵士たちをおくりだ。

 およそ4ヶ月、面倒みた顔ぶれとわかれるのはつらいが、国家存亡の危機なのでしかたがない。


 それに幼女じゃないぶん、全然ダメージは我慢できるものだ。


「いっちゃいましたね、ゴルゴンドーラ先生」

「そうですねぇ。パティオ先生」


 遠ざかる最後尾の背中を遠くにみて、隣のパティオへ視線をかたむける。


「パティオ先生はどうするんですか? トールメイズ砦へはいくんですか?」


「うーん、塾に生徒たちを残しているので、悩んでるんですけど……まぁ、でも、多分いくんだと思います。僕たちが訓練した彼らがいくんですしね」


 勇敢で義理堅い。

 

 どこまでもお人好しなやつだ、パティオという人間は。


「ゴルゴンドーラ先生はどうするんですか?」


「俺は……まだ迷い中です。実戦で使ったことない魔法を使ういい機会、そんな風に戦争というものを捉えてる自分がいて、まだ踏ん切りはつかないんですよ」


「ゴルゴンドーラ先生は特別ですからね。でも……僕は、あなたに参戦してほしいです。

 動機がなんであれ、それが多くの人間の命を救うことに繋がるのなら、力を持つ人間はそれを振るうべきだと思います」


 パティオの言葉が脳裏に染み込んでくる。


 かつて師匠に言われた言葉。


 ーー力を持つ者には、責任がつきまとう


 パティオが言ってることもわかるし、訓練兵たちの期待もわかる。


 魔術師団の長のノーマンじいさんの期待だってわかっているが、それでも俺は思うのだ。


 きっと俺が参戦したら魔法王国民の損害は、劇的にすくなくなるだろう……だが、帝国の被害は?


 帝国に生まれ、帝国で23年間生きてきた俺に、帝国の人間を大量虐殺しろというのか。


 もうひとつ問題がある。


 俺が自分の魔法を試したくなっていることだ。


 自身の魔法の力を解放できる場など、きっと大規模な戦場でもなければ訪れないものだった。


 だが、機会はむこうからやってきてしまった。


 腐っても祖国。

 魔術師でも人間だ。

 

「まぁ、もうすこし考えますよ」


 呆気カランとして、ひとこと絞り出す。


「……そうですか」


 パティオは俺の言葉に、残念そうにそう答えた。



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