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第46話 ノルマ達成

 

 魔術教官として俺がローレシア城の庭に通うようになって、はやくも1週間が経過した。


 中杖を片手にステッキのように軽くふりまわしながら、詠唱を続ける訓練兵たちの間をいく。


 俺のところに集められた訓練兵たちは、魔術を使った経験ありとのことなので、

 他のところより戦術的利用価値のたかい魔法を覚えさせることが目標となっている。


 具体的にいえば≪氷結界(ひょうけっかい)≫、そして≪氷操(ひょうそう)≫あたりを覚えられたら最低ノルマは達成と言っていいだろう。


「おっ、一瞬だけ気温が下がったような気がしましたね。いい感じですよ」

「ありがとうございます!」


 支給された杖を手に、気をつけの姿勢で威勢のいい声があがった。


 訓練兵たちの式は十分だ。


「大丈夫です。今日が初めてなので焦らないで! 昨日までに水属性式魔術を中心に練習してきましたが、マイナス方向への熱の操作は難しいです! できなくてもめげずに!」


 いちおう訓練兵のなかではエリートという事になるが、それでも長らく魔法をわすれていた者たち。


 やる気の低下だけは起こさないよう励ましつづけなければな。



 ⌛︎⌛︎⌛︎



 訓練開始から1ヶ月後。


 ーーパキキ、ィ、ィ


 空気の割れる音。

 急速に熱量を奪われて悲鳴を上げる大気。


「おぉ、これは想像以上におおきな氷ができましたね。これなら河の流れを十分にとめられる結界になるはずです。はやくもノルマ達成ですね」


「ありがとうございます、教官! 俺、なんだかこの戦争が恐くなくなってきました! 

 教官のような魔術師の方といっしょに戦えるのなら、帝国だって絶対に返り討ちにできますよね!」


 庭に突き立った巨大な氷柱を見あげて、数人の訓練兵が目を輝かせてみてくる。


 水属性三式魔術≪氷結界(ひょうけっかい)≫は、あたりを水分を凍らせたり、

 操ったりして広範囲をおおう巨壁を作りだす魔法、そして≪氷操(ひょうそう)≫は遠隔でも近接でも氷を操作する魔法だ。


 これらの魔法が使えれば、帝国が河を凍らせてきても、その氷を利用してコストパフォーマンスよく防衛することができる。


 トールメイズ砦にこもりながら、必要な時だけ頭をだして魔法を撃っていればそれだけで勝てる寸法だ。


 うむ、それにしてもこの一端の魔術師となった訓練兵たちは、皆が皆、俺の参戦を期待しているのか。


 今でも、あまり行きたくはないのだけど……。


「……まぁ、任せておいてください。帝国の魔術的戦略はだいたい騎士団長と、

 将軍であるローレシア王、武遊ある貴族の指揮官の方々に伝えてありますから」


「おお! 流石は元宮廷魔術師様だ! 帝国のやつら、どうしてこれほど優秀なかたを手放したのか不思議でなりませんよ!」


 本当だよ、どうして元宮廷魔術師がいる国に戦争仕掛けるかな……やっぱり魔法省の長老たちか……。


「おい、若造。なにをしている」


 愚かな祖国への悩みに頭を抱えていると、低い声が背後から聞こえてきた。


 ふりかえれば同じ魔術教官の、顔に傷のある()()()()教官様が立っていた。


「今、ノルマを達成したところですがなにか、ゾウマン教官」


 傷の男ーーゾウマンは眉間にしわを寄せて、ズイッと顔を近づけてきた。


 何か言われそうな気配がプンプンしている。


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