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第40話 徴兵と魔術師

 

 レトレシア魔術大学のなかでも、ゲオニエス帝国の宣戦布告はおおきな話題となっていた。


 騒がしい食堂で首をふれば、あちらこちらからゲオニエス帝国の話をしている声が聴こえてくる。


 ちらほら耳にする話によれば、帝国側は「魔導書を取りかえすための正当な行為である」と、周辺国にアピールして他国の介入を牽制しているらしい。


 これまで穏便にやってきたのに、すべてをぶち壊すような事を言うのだから、本当に困ってしまう。


「サラモンド師匠はどうするのですか?」


 遠くを視線をなげて、へいげいしていると、すぐとなりのゲニウス青年が口をひらいた。


「どうするって何がだ?」


 要領を得ない質問に首をかしげる。


「戦争ですよ、戦争。サラモンド先生は帝国がもうすぐ攻めてくる北の国境線へ、おもむれるのかという話です」


「えぇ!? サリィ、戦争にいっちゃうのー!? サリィがいくならレティスも行くー!」


 ああ、やっぱその話題か。


 ()()()()()といったら嘘になる。


 いいや、こんな考え方はおかしい……おかしいんだ。

 

「戦争なんて、わざわざ首を突っ込みたくはないな。それにレティスお嬢様がこんな事を言ってしまってる。レティスお嬢様を危険にさらすことなど、

 出来るわけない……だから、俺が戦場にいくことはないさ」


「そうですか……サラモンド師匠ほどの方がいかれれば、魔法王国も安泰だと思ったのですが……」


「レティスはサリィは行くべきだと思うわ、だってだって、サリィすっごい強いもん」


「レティスお嬢様、そういう簡単な問題じゃないんです」


 レティスの皿にチーズトマトパンを移し替え、目を輝かせてほぼ張るすがたを横目に、俺はゲニウスへと向きなおる。


「つい先日、徴兵(ちょうへい)が始まったんです。来年春には僕は大学を卒業します。たぶん、冬の間にゲオニエスは攻めて来ませんから、戦いがはじまるのはきっと来年の春ごろからでしょう」


「だろうな。帝国の侵略戦争は春から始まるものだ。む、というか、戦争にいくのか、ゲニウスは」


「……はい、そう考えてます。大学を出たらこのまま『レト・ウィザーズ』として本格的に冒険者稼業に専念しようと思ってたんですけど、

 最近、心のどこかで自分の果たすべき義務みたいなものを、考えるようになったんです。

 ローレシアはいま、来年の春にそなえて沢山の魔術師に戦場におもむくように要請しています。

 祖国を守るために学んだ知識を使うことは、僕はひとつの義務だと思っているんですよ」


 なんてしっかりした16歳なんだ。


 俺がゲニウスくらいの歳のころは、小さい女の子をさらって、美味しいものをたらふく食べさせて、幸せにしてあげる幼女遊びを働いていたと言うのに。


 なんだか、自分が情けなく思えてきた。


「ねぇ、サリィ、レティスも戦争行ったほうがいいのかなー?」


「魔術大学の生徒は徴兵免除されてます。それに、レティスお嬢様は貴族なのでいく必要はないですよ」


 レティスに戦争へ行く義務はない。


 そうだ、だからこそ王都にいるかぎりはレティスもパールトン家の皆も心配するようなことにはならないだろう。


 それにしても、俺には本当にいく義務はないのだろうか。


 魔導書奪ってきて、帝国に侵攻の口実を与えてしまった俺には……義務、あるような気がしてならないんだよなぁ……。


 思い悩み、俺はいったん思考を棚上げしておくことにした。



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