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第39話 宣戦布告

 

 まさかゲオニエスがあの程度の魔導書がなくなったくらいで、正式に声明文をだすとは思わなかった。


 休日、ざわつく王都をあるけば、街中が超大国との緊張ムードにピリついているのが、これでもかとわかった。


「ゲオニエス帝国のやつらめ、またローレシアから搾取する気なのか」


「難癖つけおるからに。どうせ魔法王国に攻め込んでくるための、口実でしかありはしないのじゃろう」


「帝国が重い腰をあげたら、それこそ一巻の終わりなんじゃないか? 今のうちにアーケストレスに避難しておいたほうが、いいかもしれぬの」


「彼らを怒らせることがないよう、ローレシア王には賢明なる判断をしてもらいたいものじゃ」


 ティーショップで昼食をとりながら、隣の席の老人たちの会話に耳を傾ければ、彼らが帝国の動向に過敏になっているのがわかった。


「ご老人方、そんなに恐がらなくても大丈夫だと思いますよ」


 ティーのおかわりをウェイトレスに注文し、隣の席の老人たちへ言葉をかける。


「ローレシア国内の魔法騎士団の練度は、超大国にも引けをとりません。むしろ質では大きくまさっているくらいだ」


 隣国の魔法魔術同盟国からの、魔術協会のおおきな支部も設置されているし、

 魔法教育機関、保有する魔術師戦力など、魔法関連の面では帝国より魔法王国に軍配があがる。


「若いのや、おぬしは帝国の恐ろしさをわかってはおらぬ。おぬしは知らないかもしれぬが、ローレシアは100年まえにも、帝国から侵攻を受けておるのじゃ。

 当時でも魔法の先端をいっていたローレシアじゃったが、それでも帝国騎士団の『戦慄(せんりつ)十師団(じゅっしだん)』をとめることは叶わず、多くの人間が殺されたのじゃよ」


 やはり、かつてより続く帝国の急成長におびえているのか。


 現在は戦慄の十師団も、10個じゃなくて12個に軍備拡張されて、帝国騎士団の兵力は20万人をくだらなくなってるしな。

 

 恐れるのも無理はないか。


 はてさて、帝国は本当にやる気なのだろうか。



 ⌛︎⌛︎⌛︎



 ーー1ヵ月後


「ゲオニエス帝国が宣戦布告したぞォオー!」


 嘘のようなほんとうのニュース。

 王都ローレシアをふくめ、魔法王国中の都市に激震がはしった。

 

「サリィ! 凄いことになったわー! ローレシアとゲオニエスが戦うのよ!」

「えぇ……これは驚きましたね……」


 まさかこれほどまでに、あの帝国が馬鹿野郎だったとは。

 

「サラモンド殿、大丈夫ですか。ゲオニエス帝国はサラモンド殿の祖国でありましょう」

「いや、もはや愛国心など枯れてしまったので、その点に関しては問題ないのですが……」


 罪悪感がすごい。

 まさかこれほどまでに大事になるとは。

 魔導書がなくなっただけで、大袈裟すぎるだろう、ゲオニエス。

 まるで本当に侵攻する口実を探していたかのようじゃないか。



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