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第3話 天国はまだ遠いい

 

 街を歩きながら、前をいく黒服の男へ話しかける。


「あの、いろいろ説明が欲しいのですが」

「当然、そうでしょう。ご安心ください、サラモンド殿、このエゴスが順を追って説明いたしましょう」


 綺麗な白髪をたずさえたレティスちゃんの執事ーーエゴスは、片目にかけたモノクルを、指でなおしニコリと渋い笑みをうかべる。


 俺の大事なレティスちゃんを連れて消えてしまったプラクティカのことも気になるが、

 魔法界のトップに「うちの執事について行ってちょうだいな!」、なんて言われたらそうするしかない。


 俺たちはやがて、こじんまりしたカフェへと入った。


 店内は閑散としていたが、まだ朝なので、まぁ妥当なにぎわいと言える。


「お茶でもする気ですか?」

「いえ、ここが試験会場というだけですよ、サラモンド殿」


 エゴスはそういってふたたび、モノクルの位置を指でなおした。


「マスター、プレンティー、砂糖はひとつまみ、ミルクはラビッテの涙ほど」


 わけのわからないコールをするエゴス。


 カウンターのなかでカップを磨いていたマスターは、そんな意味のわからい言葉に、ひとつうなずくとカウンター横の扉を開けてくれた。


 エゴスに先導されて中にはいっていく。


 暗い廊下がつづいており、その先に明かりの灯火もれだす、茶色い木の扉を見つけた。


「このなかです、サラモンド殿」

「……いや、あの、だから説明ーー」

「このなかッ! ですッ!」


 エゴスは白髪を撫でつけ、モノクルをぷるぷる震える指でなおしながら、強引になかに入るように指示してくる。


 仕方なく、扉を開けて、なかに入る。


 ーーガチッ


 背後で聞こえる、扉の鍵が締まる音。


 まったく訳がわからないが、とりあえず後でエゴスにはワンパンをいれたほうが良さそうだ。


「むむ、ずいぶんと若いのが来たな」

「これは、おの、そろそろ説明してくれるんだろな。名門魔術大学の校長プラクティカさんにスカウトしてもらったんだ。はやくレティスちゃんの家庭教師という、素晴らしき仕事につきたいのだけれど」


 部屋の中にいた、ハゲ男へそう告げる。


 男はニヤリと笑い、羊皮紙になにかを書き込むと、俺が入って来たのとは違う扉を、親指で指ししめした。


「この中に入りな。パールトン家の家庭教師という、そこらの宮廷魔術師レベルに大事なポジションをかけた、試験会場がこの先にある」

「ほう、つまり。レティスちゃんをくんかくんか……じゃなくて、その名誉ある職につける者は限られているわけか」

「そのとおり」


 いいだろう、面白い。


 このサラモンド・ゴルゴンドーラが、あの美幼女の透きとおる、柔らかそうなきめ細かい髪の毛を、好きなだけ嗅ぐ権利……勝ち取ってやろうじゃないか。



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