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第28話 いやな子

 

 気持ちのいい秋の空。

 カラッと晴れて、防寒具がちらほら使われはじめる今日この日。

 舗装された道にならぶ街路樹は、最後の枯れ葉を風におとして、道いくさきをいろどってくれる。


「ぱりぱり言って楽しいね、サリィ〜」

「そうですね〜レティスお嬢様」


 落ちてくる枯れ葉をふんで、楽しそうにスキップするレティスの3歩後ろを歩いていく。


 この街に来てもうそれなりに時間がたった。

 あの角の先に大陸でも有数の魔法学校のひとつ、レトレシア魔術大学があるのも知っているんだ。


「ねぇーねぇ! この角の先になにがあるか知ってるー?」

「うーん、わからないです。なにがあるんですか?」

「ふっふっふ〜! それは見てのお楽しみだわー」


 ポニーテールを揺らし元気よく角の先に消えていくレティス。


 さてさて、驚く準備しておかないとな。


「きゃっ!」

「っ、レティスお嬢様!」


 突然の悲鳴に俺は走りだす。


「あら、これはこれはパールトンさんじゃないの。しばらく顔が見えないと思いましたけど……あなた、まだ学校にいましたの?」

「あわわ……い、いやな子だ……」

「レティスお嬢様! ご無事ですか!」


 角の先で尻餅ついていたレティスにかけより、彼女の視線の先にたたず人物をみあげる。


 艶やかな黄金の長髪、流れる髪に美しくマッチした透きとおる碧眼の瞳。


 レティスと同い年くらいの少女は、不遜な態度で腕を組み、背後に執事をしたがえ、

 おびえるレティスをツンと澄ました顔で、ふたりの間に踊りでた俺を見下ろしてきている。


「おや、これは見ない顔ですわね。なかなかに素敵な殿方(とのがた)ですが、どちら様ですの?」

「……レティスお嬢様、こちらの方は?」


 金髪碧眼少女の言葉には答えず、俺はレティスをゆっくり立たせながら尋ねた。

 

「……ペルシャちゃん……大貴族バリストン家の、いやな女の子なの……」


 そうか、この少女がエゴスの注意するように言っていた子か。

 レティスは魔法王国の有力や貴族とうまくいってなく、その家はパールトンより格式が高いんだと。


「あなた、わたくしの問いかけを無下にするなんて、ずいぶんとふざけた事をしてくれるじゃない」


 少女ーーペルシャの不愉快を隠さない声。


 背筋に嫌な予感が走る。


 レティスを覆い隠し、腰から短杖(たんじょう)をすばやく抜き放つ。


「っ」


 杖を向けるさきは金髪の少女……ではなく、その背後、茶色い執事服を見に纏った若い青年だ。


「速いな」

「次、ふざけたマネをして見ろ。必ず後悔させる」


 品定めする金色の瞳をまっすぐに睨みつける。


 茶服の青年と視線をかわすこと数秒。


 茶色い執事服の青年は、()()から飛びだした杖をゆっくりともちあげた。

 そして、ストンっ、と袖のなかへ落とし込むように杖をしまうと、顎をクイっと動かし俺にも杖をおさめるように言ってきた。


「タビデくんをおさえるなんて、ずいぶんと腕のたつ執事を雇ったのね、パールトンさん」


「ぅぅ、ふ、ふん、当たり前、だもん……サリィは、サリィは、この世で一番強いんだから……ッ」


「あらあら……知恵遅れの七光りにはすぎた人材だこと。まぁいいわ。

 レトレシアに戻ってくるだけの理由をたずさえて帰ってきてくれて、わたくしだって本当は嬉しいのよ」


 涙を目端にためながら、気丈に前を向くレティスへ、ペルシャは澄ました顔で手をふる。

 

「また仲良くやりましょうね、パールトンさん。それではご機嫌よう、また学校で会いましょう」


 遠ざかる背中。

 追従していく茶服の執事ーーダビデ。


「レティスお嬢様、安心してください。俺がついています」


 キュッと口をむすび、目に火を宿す青髪少女の手を握る。


 レティスはいつまでも以前のレティスではない。

 彼女は日々努力して、大きく変わった。


「もう平気。サリィ、いこっか!」

「はい、レティスお嬢様!」


 赤身がかった頬に、ニコリ無邪気な笑み。


 日に照らされただした魔術大学へ、俺たちはそろって歩きだした。



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