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第25話 操り人形

 

 ーーカチッ


 時刻は17時59分。


 クルクマ冒険者ギルド支部、その酒場。


「それが本当に凄かったのです! 私がヌクオチを助けようと魔術を準備していたとき、

 目の前を疾風が駆けぬけて行って、ばこーんっ、ばきばぎばぎぃーって感じで、ポルタのお腹に大穴をあけてたおしてしまったです!」


 本当にすごい、すごい、すごい!


 酒場でたむろする冒険者たちへ、紫髪の幼女ティナは身ぶり手ぶりで森での一幕を語りきかせる。


 すぐとなりでは何のことを言ってるのかわからない、「千歳の雫」のリーダーの青年ーーアースと、同じくメンバーの特殊担当の緑髪少女ーーハゲタカが疲れきった顔で聞いている。


 ポーションによる治療はまにあったが、おそらく傷から立ち直るのに自身らの魔力を使いきってしまったんだろう。


「と、まぁ向こうの席のことは置いておいて、です」


 無邪気にかたるティナから、おトイレから帰ってきたアヤノとレティスへ視線をもどす。


 レティスは机につくなり、干し芋をおいしそうに食べはじめた。


「それで大事なはなしってなにー、サリィ」

「レティスお嬢様、今日も俺はどうでしたか?」

「すごかったー! サリィの魔法がぽーんぱーんしゅこーんって感じで、メキメキって木とか全部飛んで行っちゃうんだもんっ!」


 干し芋をほうりだし、目をキラキラさせるレティス。

 こちらもティナとあまり変わらない、身ぶり手振りをまじえた壮大なジェスチャーで、物語をかたっていく。


 よしよし、いいぞいいぞ。

 間違いなくレティスの好感度はあがっている。


「レティスお嬢様、俺は学校へいってキラキラした青春をおくったからこんな強くなれたんです」


 自分の妄想と、理想をまじえてのキャンパスライフをレティスの頭にすりこんでいく。

 学校の「が」の字も知らないし、青春の「せ」の字も知らないけど、

 それらはレティスにとってもきっと眩しくて、手が届くのならそこへ行ってみたいと思えるもののはずだ。


「どうですか、レティスお嬢様、レトレシア魔術大学へもう一度だけ行ってみませんか?」

「うーん、サリィが付いて来てくれるなら行ってもいいかな〜」


 足をぶらぶらさせながらレティスは視線をはずして言った。

 アヤノが嬉しそうな顔でこちらを見てくる。


 ふふ、幼女も所詮はこどもということ。

 どうやら事は上手くいきそうだ。


 

 ⌛︎⌛︎⌛︎



 その日の晩うちに、俺たちは転移の魔法陣がある、クルクマ近郊のもうひとつの安全な方の森、エレアラント森林へ引き返していた。


「いや、それにしてもこんなに沢山の希少功績を頂いてしまうなんて、なんだか得した気分ですね!」

「クエストで倒したわけじゃないから、その分の気持ち報酬ってことでしょうけど……たぶん、貨幣報酬以上にもらってますね、これ」


 眠りに落ちたレティスをおんぶするアヤノは、俺の手に持たれた革袋を見つめ、ニコニコ気分よさそうだ。


「ん、あそこに誰かいらっしゃいますね」

「あれ、あの後ろ姿どこかで……」


 エルダートレントが守る地下石室の近くまで引き返してくると、そのすぐ近くに人影を見つけた。


 あたりは薄暗く、視界はあまり効かないが、それでもなんとなくその背中と曲がった腰に見覚えはあった。


「あの、イチゾウさん、そんなところで何してるんですか……?」

「っ」

 

 すぐに誰か思いだし、声をかける。

 

 俺の声にピクリと肩を震わし、暗闇に浮かぶ老骨は、ゆっくりとこちらへ振りかえった。



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