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プロローグ



 


『生まれてくる時代を間違えた』


 俺、櫻井(さくらい) 晴人(はると)は何度そう後悔し、何度そう絶望したことだろうか。

 覚えてる限り、俺が最初にそう思ったのは小学六年生の授業参観で『将来の夢』を家族やクラスメイトに発表する時だった。

 皆が「将来は警察官になって~……」やら「将来はデザイナーになること~……」なんて、模範解答らしい将来の夢を語る中、俺は誰よりも自信満々に将来の夢を言った。


「僕の将来の夢は、自分の知恵で敵を倒し、時には敵の城を攻め落としたり、ありとあらゆる作戦で味方を勝利に導く、大軍師になることです!!」


 思い出す度に鳥肌が立つ。


 俺の発したセリフでクラスは爆笑に包まれ、先生は呆れて苦笑い、母親が俯いて赤面していたあの光景。

 俺はその夢をクラスの皆に公表した事、この夢を抱いても大丈夫な時代に生まれなかった事をその時初めて後悔した。


 俺がなんで軍師を志したのか、そのきっかけは残念ながら覚えていない。

 ハッキリしているのは、小学生だった俺は本気で、


「軍師になりたい!」


 と思ってたし、


「いつか軍師に絶対なれる!!」


 って信じて疑っていなかったことだけだ。


 そんな『馬鹿げた夢』を抱きながらも俺は成長していき、中学生になると毎月のお小遣いを貯めて買った『孫子(そんし)の兵法』やら『日本の合戦事典』等を表紙がボロボロになるくらい毎日読み耽り、書かれている内容を全て暗記して諳じられるようなっていた。

 流石に、中学を卒業する頃には俺の抱いている馬鹿げた夢は叶うはずの無い代物だと自覚出来る。


 だがしかし、高校生になった現在に至ってもなお、その夢を諦めてはいなかった。

 

 俺は毎月のバイト代を市販の兵法書や軍事学本、兵器、武器の専門書に費やし、店にあるその類いの本は片っ端から買い漁っては一晩で読み尽くす生活を送り、休日には各地の図書館にわざわざ足を運んで朝から晩まで蔵書されている過去の文献や合戦の資料を読みまくっていた。


 そんなんだから親に、

 

「戦争の本ばっかり読んでるけど、将来は防衛大学に入学して自衛隊にでも入るの?」


 って聞かれるのは当然だろう。


 だが、めんどくさいことに俺は現代の銃や大砲、戦車や装甲車、戦闘機や戦艦、戦略や戦闘にまったくといって良いほど興味がなかった。

 俺が好きなのは古代や中世に出てくる槍や弓、騎馬や鉄砲を使った戦術や兵法であり、機械じみた重火器や装備、計算された砲撃や爆撃を駆使して戦う近代戦にはこれっぽっちの関心を持てなかったのだ。


 だから俺は、


「自衛隊には入らない」


 そう親に真顔で言い放った。


「なら、その知識を活かす場所はどこにあるの?」


 と、親に問い返されれば俺は何も答えられない。この知識は俺が生きている現代社会で役立つ事がほとんど無いと、この歳になれば流石に分かっているからだ。

 役に立つとすれば、大学などに入って戦術や兵法のより深い専門的な研究をして論文を出すぐらいだし、そんな研究をしたところで実際に兵士を操って敵軍を倒す、なんて実践がある訳が無い。


 俺の夢である「軍師として兵士を指揮して敵を倒し、軍を勝利に導く」ことは、現代社会に産まれた時点で到底無理な話だった。


 産まれてくる時代が戦乱で、中世戦国時代辺りであれば、この知識を遺憾無く発揮できただろうにと、何度も後悔し、そして繰り返し思う。


 生まれてくる時代を間違えた、と。


 そんな俺が、ある時その夢を叶えることとなった、いや「なってしまった」話をする。

 あまりにも摩訶不思議な出来事だが、俺の夢を叶える物語が唐突に始まっていくのだ。



────────────────────────



「なんだ……これ」


 気が付くと、俺は暗い森の中で大の字になって倒れていた。


 ついさっきまで自宅のベットの上で本を読み寝転び、ほんの数秒、目を閉じただけの筈だった。

 しかし、再び目を開いてみれば部屋の天井は消え失せ、代わりに何万もの宝石を散りばめたような星空と、青白い満月が(まぶた)に飛び込んできた。


「夢……だよな?」


 目を逸らしたく無いと無意識に想う程に、眼に写るそれは現実からかけ離れた幻想的な景色に思える。だが、夢にしては意識がありすぎる。試しに頬をつねってみたが、やはり普通に痛い。


「どうなってんだ、ここは、何処だ?」


 辺りを見渡してみる。

 生い茂った樹木の香り、様々な虫の音、梟の鳴き声、誰がどう見ても深夜の森の中だ。


「ふぅ、落ち着け、落ち着け。軍師ならば突然の変化も冷静に対応するものだ、うん」


 寝たままの状態で、混乱した脳内を必死で落ち着かせようとしていると、草木を踏む何かの足音が聴こえ咄嗟に顔を上げた。


「「「ガルルルルル……!!!」」」


 上げた先には気の荒そうな狼が数匹「今夜はご馳走だ!」と言わんばかりにヨダレを垂らして俺を見つめていた。


「ははは~、何かと思えば狼じゃないか、へぇ~、野生の狼なんて初めて見たなぁ~」


 乾いた笑いが出るってこういうことなんだろう。

 俺はゆっくりと立ち上がり、そして、


「俺を食べても美味しくないぞおぉおおおお!!!!」


 全力で、狼の逆方向に逃げた。

 無論、狼も獲物を逃がすまいと追い掛けてくる。


「な、なんで日本に狼が!? 絶滅してるはずだろっ!!」


 冷静に考えてる余裕はない、木々を掻き分け転がるように斜面を下る。

 けれど、相手は常日頃から狩りをして生活している野生の動物で、俺は素足だから思うように走れない。斜面のお陰で何とか逃げれていられるが、だんだん狼との距離が詰まってきてるのが分かる。

 このままでは数分後に全身を食い破られ、敢えなく絶命する未来が容易(ようい)に想像出来た。


「くそっ! どうすれば……っ!」


 斜面を駆け降りながら、状況を打破する術を必死で考える。

武器も無く、自分に援軍の見込みは無い、さらに相手は数でも勝り、山の中という地の利、夜目が利く天の利まである。

 この場合、ありとあらゆる兵法書を読破した俺が導き出す最善の策は。


「て、もう逃げきるしか無いよね!」


 さっきからやっている行動が、その最上の策であった。


「畜生ぉぉおお! 俺はこんな所で死ぬのかぁあ!?」


 どう考えても絶望的、今にも狼は飛びかかって来そうだ。

生まれて初めて死を覚悟した刹那、何者かが俺の横を通りすぎるのを眼の端で捉え、次の瞬間、背後で「キャンッ」という狼の断末魔が聞こえた。


(な、なんだ?)


 背後で起きた出来事を確認しようと体を後ろに捻る、が、根っ子に足を取られてそのまま木に衝突した。


「ぐへんっ!」


 頭を強く打ち、情けない声を上げてヘタリと倒れ込んだ。ぼんやりとした視界には既に狼の姿はなく、二人組の女の子が佇んでいた。


「…………ねえ、大丈夫??」


 朦朧とした意識の中、俺の状態を確かめるように二人組の片割れが話しかけてきた。


 霞んだ視界でも分かる。


 月明かりで照らされ黄金色に輝く長い髪。

 キリリと鋭い目元に紅い瞳。

 雪の如く白い透き通った肌。

 太陽と百合の花が彫刻された白銀の胸当てを身に着けた、育ちの良さそうな美少女だ。


「な、なんでこんな所に……?」

「叫び声が聞こえたから助けに来たのよ。見たことの無い服を着てるけど、あなた、どこの国の人?」

「ど、どこって、日本に決まってる、だ……ろ……」


 衝突時の当たり所が悪かったようだ、頭が冷たく重くなり、少女の姿が徐々にフェードアウトしていく。


「あれ、もしもーし?」


 少女は俺の頬をペチペチ叩きながら呼び掛けている、だが、俺の意識はそこでブツっと途切れた。



お久しぶりです! 

この小説を再び載せたということはつまりそういうことです(笑)

賞に応募したところまで掲載予定、そこで完結するか、更に続けるかは未定になりますのであしからず。



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