“夢”に関する短編連作
こんな夢を見た。
目覚めると、そこは板の間に直接ひかれた布団の中だ。湯治場の廊下、そんな場所。
大勢の人の気配を感じる。ガラスが入った格子戸がガタガタと軋み(確かに軋んで開いたの音は聞こえない)、次から次へと人が出てくる。
老人、老婆……。中年の男、あるいは女。同年代の男、女もいるが、若者はいない。
彼等は何か親しげに喋り、笑っているが声が聞こえない。笑い声が聞こえない。全く無音の世界だ。何一つ、聞こえない。人の声も、窓の外の烏の鳴き声、雀のさえずり、川が流れる音一切しない。車のエンジン音など、勿論しない。
色もない。白と黒の世界……。
人々は自分の側らを通り過ぎ壁に突き当たり、左に折れ、二・三段の階段を降りるろ廊下の奥に消えていく。次々と消えていく。
風呂場か食堂があるのだろうと思う。
やがて、不思議なことに気づく。
格子戸からは人が出てきて、左に折れ、廊下の奥に消えていくだけ。
一人も戻ってこない……。廊下の奥から、誰一人戻ってこない。
自分は納得する。こいつ等、死人なのだ。そして、こいつ等、自分のことに全く気づいていない。
気づかれたら、こいつ等の仲間に引き入れられてしまう。自分も死んでしまう。
女が近づいてくる。体が動かない。自分に出来るのは、しっかり目を閉じ、眠っている振りをするだけ……。
背中に汗をかく。
自分の顔の数センチまで、女の顔が近寄る気配を感じる。でも、女は息をしていない。女の息を感じない。
やはり、女は死人なのだ。
女がふっと笑うのを感じる。
女が遠ざかっていくのを感じた。
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