学級日誌
「大会が近いので、予習がほとんどできません。はあ、中間テスト大丈夫かな……」
『大変だけどがんばろう。予習といえば、睡眠は死の予行演習という説があるそうです』
「文化祭の出し物で揉めた。喫茶店をやる事になったが、上手くいくのだろうか」
『先生は学生時代、ずっと校庭の隅で本を読んで文化祭をやり過ごしていたので、的確なアドバイスを贈ることができません。申し訳ない』
「授業で、将来について考えろと言われましたが、自分の十年後なんて想像できません」
『いざとなったら、親の脛をかじって引き篭もる選択肢もあります。いい時代です』
「合同図形の証明とか、さっぱり分からねえ……数学って何のために勉強するの?」
『先生も数学の存在意義が分かりません。学校を出てから役に立った場面など、ただの一つも無いのですから。不要と思うなら、完全に放棄するという選択もありです』
「マラソン大会疲れた……でも五位でゴールできて、ちょっと嬉しい!」
『先生も、こっそり見守っていました。汗にまみれて走りを競い合う女子中学生のひたむきな姿は、いつ見ても胸に迫るものがありますね』
「最近、返信の内容がおかしくないですか? 福原先生ってこんなキャラでしたっけ?」
『顔を合わせないからこそ語れる本音を、誰しもが胸に仕舞いこんでいるのですよ』
「担任の福原です。数日にわたって、提出された学級日誌を私の机から持ち去り、私に成り済まして返信欄に記入していたようですね。他の教諭の方々、誰の筆跡でもないようですが……貴方は一体誰ですか?」
(返信なし)