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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第四幕

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485話 川の流れに身を任せ

「それじゃあ、流すか」

「う、うむ! 準備は万端だ!」


 パキスが物々しい分厚さの手紙を載せた船を手に、ごくりと喉を鳴らす。

 沈没しそうだな、その手紙。二つの意味で重そうだし。


「ベッコ、描けたか?」

「然り!」


 オシャレ服のままだが、メガネをかけているベッコ

 遠くで、ルシアのとこの給仕たちが苦々しい顔をしている。

 こいつに美的なものを求めるなって、無駄なんだから。


 で、ベッコに描いてもらったのが、手紙が濡れないように船に載せるフタ。

 魔獣の革にラブリ~なイラストを添えて、『大切なあなたへ』と一言書いておいてもらった。


 エステラとルシアが盛り上がってたから、狙い通りといったところだろう。


「じゃ、流してみろ」

「う、うむ」


 重い手紙を載せた船をそっと川面に置くパキス…………いや、さっさと置けよ!?


「い、いや、実際、こう、直面すると、緊張してしまってだね、なかなか思い切りが付かないというか――」

「え、突き落としてほしい?」

「言ってないが!?」

「さっさとやるのだ、パキス。そして、新たな観光地を盛り上げるための踏み台になれ」

「もう少し言い方はないのか、ルシア!? ……え、まさかヤキモチ?」

「沈めるぞ?」


 流すんだよ。

 沈めてどうする。


「ごらんよ、パキス」


 と、エステラが向こうの船着き場を指さす。


「ロリーネがハラハラした表情で待っているよ。彼女の不安を払ってあげられるのは、君しかいないんじゃないのかい?」

「う、うむ。そうだな。……うん、そうだ」


 自分に言い聞かせるように頷いて、パキスは向こうの船着き場へ向かって大声で言う。


「ロリーネ様! ワタシの思い、受け取ってください!」

「は、はい! お待ちしておりますわっ!」


 向こうからも、やや上ずった声が返ってくる。

 おーおー、恋する乙女全開だなぁ。

 初々しいったらないな。


「チッ、楽しそうで何よりだ」

「ヤシロ。初っ端に本心からの舌打ちが漏れてたよ。羨ましいなら、君も恋文でも流せばいいんじゃないのかい?」

「お前が向こう岸で待っててくれるなら検討してやるよ」

「君からの恋文なんて、緊張し過ぎてうっかり取り逃がしちゃうかもね」

「そしたら、川下で洗濯してる婆さんに拾われるだろうが」

「あははっ、桃太郎だね。いや、文太郎ふみたろうかな? 文学で鬼を改心させる平和な紙芝居になりそうだね」


 なにその物語。

 つまんなそう。


「驚くであろう、ギルベルタ? あやつらは、あれでイチャついていないつもりなのだぞ?」

「似たようなもの、ルシア様も」

「そんなことはないであろう、ギルベルタ!?」

「混ざりたいのでしたら、私が頼んできてあげましょうか?」

「余計なことはせずともよいぞ、ナーたん!」

「いいか、エステラ。あれがヤブヘビってヤツだ」

「うん、覚えとく」

「そなたらも、自覚をせよと言っておるのだ! 周りにどのように見られるかを!」

「なぁ、ルシアよ。決心が鈍りそうなんだが、そろそろ流してもいいだろうか?」

「まだ流しておらぬかったのか、パキス! さっさとやれ!」

「注目されたいもん!」

「『もん』とか言うな、アラサー!」


 ルシアとパキスも、傍から見たら仲良さそうに見えるけどな。

 まぁ、言うとめっちゃキレるから言わないけど。

 真顔になるんだもん、ルシア。怖ぇ怖ぇ。

 あ、俺はイケメンな十代だから『もん』を使っても、「かわいい~」で済まされるんだぜ☆


「では!」


 岸にしゃがみ、パキスが船底を川につける。


「いざ!」


 そして、呼吸を整え、前を見据え、ロリーネを指さしてウィンクを飛ばす。


「うぉんちゅ!」

「さっさとやれや」


 思わず尻を蹴ってしまった。

 ころんと転がりかけて、なんとか踏ん張ったパキス。


「あ、危ないではないか!? 落ちるところだったぞ、カタクチイワシ様!?」

「落ちればよかったのに」

「ダメだよ~、川を汚しちゃ☆」


 マーシャがさらりと酷いことを。

 というか、ずっと川に入って、船の流れる方向を調整してくれている。


 ここ、人魚を雇って船の安全を見守ってもらったりした方がいいかもな。


「そしたら、船は人魚に守られてるって肌で感じられるかもしれん」

「ふむ、それはいいな。よし、海漁ギルドと交渉してみよう」

「あ、だったらルシアさん、劇場の方でも宣伝をするとラブダイブや新しい聖女王の演目との関連が――」

「見てて!? 今から流すから! お客さん第一号! 今後のこのデートスポットの象徴となるべき記念すべき恋文第一号だから! みんなで注目してて!?」


 パキスが駄々をこねている。

 さっさと流せばいいものを。


「ヤシロ様。そろそろメンドイので、その辺で」


 お前は自分に正直だな、ナタリア。


「んじゃ、流せ」

「でも、まだ心の準備が」

「引き摺りこんじゃうぞ★」

「怖いぞ、人魚さん!?」


 パキスが泣きそうだ。

 まぁ、人魚を怒らせると怖いからな。

 さっさとやれ。


「では――。届け、ワタシの想い。遥か彼方、愛おしきあの人まで」


 そんな言葉と共に、手紙を載せた船が川へと流される。

 ゆっくりと流れていく船を見つめ、俺は思った。


「今のサブいセリフは、絶対流行らせない」

「うむ、絶対に取り入れぬ」

「採用してほしい感が出過ぎちゃってたね」

「ヒドイじゃないか、みんなして!?」


 パキスが泣いた。

 やっぱり、「わぁ、それ素敵。よし、ここで船を流す時の決めゼリフにしよう」って流れを期待してたか。

 採用しねぇよ。


 絶っ対っ採用しないっ!


 そんなことをしている間にも、二つの意味で重い手紙を載せた船はゆっくりと川を流れ、川下の船着き場を目指す。

 それにしても――


「何をあんなに書くことがあったんだよ」


 ちょいちょい会ってるって聞いてるぞ。

 それこそ、お前らは本当に文通してんだろ?

 陽だまり亭の超短距離文通とは違って、いろいろ書いてるんだろ、毎回。

 よく書くことが尽きないよな。

 俺はもう、しばらく文字書かなくてもいいかなってくらい書いた気分だぞ、ここ数日で。


「特別なことは何も書いていない。ただ、ワタシの素直な気持ちと、今日のドレスの美しさを書いたらあれだけの分量になったのだ」


 病気だな。


「そして、気持ちの赴くままに、昂る思いを筆に載せ文字にしたためた」


 なんか文字すら重そうだな、こいつの手紙。


「その結果、最後にプロポーズをしてしまった」

「ふぁっ!?」


 こいつ、今、なんて言った?


「いや、ここの第一号として、幸せになる義務が我々にはある。そう伝える文章が、気が付いたら、貴女を幸せにしたい、貴女と共にいたい、結婚してほしい――と、自然にそのような内容に」


 いやいやいやいや!


「そういうのは、直接口で言えよ!」

「無論口でも言う! ただ、この熱い思いを反映するような完璧に美しい花束が、今ここにはない……しかたない、後日にするか」

「ミリィー! ちょっと来てー! 大至急ぅー!」


 手紙でぽろっとプロポーズしといて、口で言うのはまた後日って、そんな消化不良なプロポーズ、さすがにロリーネが気の毒過ぎるだろうが!

 何日間もやもやさせる気だ!?


「私がピュッと行って、バシャーって連れてきてあげよっか?」

「ごめん、ミリィが再起動不可能になるような運び方はやめてくれ」


 マーシャ、絶対高速で泳ぐ気じゃん。

 光速だったら、目も当てられん。


「はむまろ?」

「呼んでないから、お前は待機!」


 ハム摩呂超特急も、ミリィ泣いちゃうから!


「ルシア、すまんが――」

「うむ。我が区の生花ギルドは皆、ミリィたんには好意的だ。私から口添えするから、好きなように花束を作ってやってくれ」

「こっからだと、花園が一番近いか」

「むぅ……致し方ない。この恋人たちの聖地で、一組目のカップルの結果が、バカ男の暴走で目も当てられぬがっかりな結末になることは許されぬ。パキスよ、走り出したのであれば、最後まで走り切るのだ」

「ルシア……協力してくれるのか? 君に愛を与えることが出来なかったこのワタシを!?」

「貴様の愛などいらぬ! いいから貴様は馬鹿みたいに幸せになればよいのだ!」

「過去の淡い思い出を、祝福に変えてくれるとは……なんていい女なのだ、ルシアは!?」

「貴様との間に淡い思い出など一つもあるか! ただただ面倒だっただけだわ!」

「その強がりを受け止めてやれるのも、今日限り!」

「沈めるぞ!?」


 応援してたはずが、いつの間にか殺害予告に……

 素でウザいんだよなぁ、パキスのポジティブ……いや、ナルシズムか?


「はぁ……もういいから、ロリーネ嬢に、最高の思い出をプレゼントしてやれ」

「あぁ。見ていてくれ、ルシア!」

「断る」


 断ると、また失恋を我慢してるとか脳内変換されるぞ。

 真顔で見守っててやれよ。

 今後の三十五区の観光名所のために。


「わぁ~!」っと、向こう岸から華やいだ声が聞こえてきた。

 もう手紙を読んだのかと思ったら、船が着いただけだった。


 まぁ、パキスからの手紙をロリーネが受け取れば、周りは応援しようって雰囲気になるか。


「てんとうむしさ~ん!」


 そして、ぱたぱたとミリィが駆けてくる。

 悪いなぁ。

 ミリィも向こうできゃーきゃー言ってたかったかもしれないのに。


「みりぃに、なにか、ご用?」

「すまん、緊急事態なんだ」


 俺は手短に事の成り行きを説明する。

「ぇえ!?」っとミリィが驚愕の声を上げ「こいつ、ないわぁ……」みたいな視線をパキスに向け、「そんな目、してないょ?」と俺にやんわり否定してきて、とにかく花束を見繕ってくれることになった。

 すまんが急いでくれ。


 あの手紙を読み終えて、ロリーネがこちらに来た時、すぐにプロポーズ出来るように。


 あの重たい手紙が、アホみたいに長いのがせめてもの救いか。


 給仕長二人を供につけ、ミリィには三十五区を走り回ってもらうことになった。

 ごめんな、ミリィ。

 アホのパキスのせいで。




「……まにあって、ょかったぁ……」


 ミリィが全力で駆けずり回ってくれたおかげで、ロリーネがこちらへ来るまでに、なんとか花束が完成した。

 ルシアの給仕が生花ギルドへ走り、各種花を持ってきてくれたことが功を奏した。

 花園の花をメインに様々な色の花を、ミリィが正解を知っているかのような的確さで花束に仕上げていく様は、見ていて感心するばかりだった。


「これはね、ぱきすさんが、ろりーねさんを包み込んでいる優しい空間をね、イメージしたんだょ」


 と、嬉しそうに説明してくれた花束は、見た目に鮮やかで、それでいてどこかほっとするような温もりを感じさせるものだった。

 パキスが文句の一つでも言ったら川に沈めてやろうと思ったのだが、パキスはミリィの前に片膝をついて、最大限の敬意を持ってその花束を受け取った。

 本気で気に入ったらしい。


「こんなに美しい花束は初めて見た。君は幼いのに素晴らしい才能を持っているようだな」

「おさなくないです!?」


 とかなんとか、いつものミリィギャグが入りつつ――


「ギャグじゃないもん!」


 わはぁ~、「もん」の正しい使い方だぁ。


「もぅ! 聞いて! てんとうむしさん!」


 とかなんとかやっているうちに、手紙を読み終えたロリーネが泣き崩れて、周りの連中に声をかけられ、元気づけられ、勇気づけられ、橋を渡ってこちらへ向かってくるころには、こちらの準備が完璧に整っていたってわけだ。


 ……よかったよ、あの手紙が長くて。


 そして、花束を持ったパキスがロリーネの前に片膝を……いや、両膝をついた。

 両方つくのかよ。


「我が愛しの女神よ――」


 そっからべらべらと長ったらしい口説き文句が途切れることなくパキスの口から吐き出され、あまりに長いんで後ろから殴ってやろうかと思ったところをジネットにそっと止められ――なんでジネットかって? エステラがちょっと「いいなぁ~」みたいな顔でぽ~っとしてやがったからだな。そういうこと言われたいらしいな、エステラも。相手がパキスでもいいのか? あ、ダメなの。いや、なにもそんな真顔にならなくても。……ごめんって、悪かったから、ほら、パキスのプロポーズまだ続いてるから聞いてて、もうこっち見なくていいから。つか真顔怖いから! え、なに、お前表情筋死んだの!? 笑って、微笑みの領主様!? ――みたいなことがありつつ、ようやくパキスの演説も佳境に入る。

 ……演説だよ、こんなもんは。


「我が麗しの女神よ、どうか、ワタシにあなたの隣にいる権利をいただきたい。代わりにワタシは、ワタシのすべてをもってあなたを幸せにすると誓おう!」

「パキス様……、アタクシ、嬉しいですわ」

「ロリーネ嬢、ワタシと婚約してほしい」

「はい、よろこんで!」


 ロリーネがパキスからの花束を受け取った瞬間、その場にいた者たちから歓声と祝福の声が挙がった。

 あ、ロリーネが移動してきた時に、全員こっちについて来てたんだよ。

 なので、こっち側に全員集合だ。


「おめでとうのわ、ロリーネ様! よかったのわ!」

「ありがとうございますわ、アルシノエ様! こんなに嬉しいこと、生まれて初めてですわ!」


 ロリーネがアルシノエに抱きつく。

 親友だもんな、いまや。

 避け続けていたのが嘘みたいだ。


「これで、アルシノエ様は、アタクシの妹になりますのね」

「綺麗なお姉様で、嬉しいのわ」

「あなたの方が、とっても可愛いわ」

「お姉様の方が、綺麗のわ」

「「のわ~!」」


 どういう感情の発露だ、それは?

 あと、ロリーネ。伝染うつってるから、語尾。

 いやもう、語尾ですらないけども。なんなんだ、あの「のわ」は?


「とっても綺麗な花束ですわ」

「ホントのわ。お兄様には絶対出せないセンスのわ」


 さらっと毒。

 まぁ、そうなんだろうけど。


「ょかった、喜んでもらえて」

「俺は確信があったから、ミリィに頼んだんだけどな」

「ぇ……っ? ……なら、うれしい、な」


 ミリィならなんとかしてくれる。

 いや、ミリィでなきゃどうしようもなかっただろう。


「ずっと真面目に花々と向き合ってきた証拠だな。ミリィが植物を愛するのと同じくらいに、ミリィは植物からも愛されてんだよ、きっと」

「そぅ……かな? なら、うれしいな」


 言って、ミリィがにこ~っと笑う。


「てんとうむしさんに、そう言ってもらえて、みりぃとっても嬉しい。ありがとうね」


 褒めるだけでこの笑顔を向けてくれるなら、毎日でも褒め称えるぞ、俺は。


「この川のほとりに、花屋を設ける必要がありそうだな」

「そうですね。ここに来て思いが昂って、踏み出せなかった一歩を踏み出す人が増えるかもしれませんし」

「その結果、無残に散った花弁が川下に溜まっていくのか。網でも張っとけよ。回収できるように」

「縁起でもないことを言うな、フトドキイワシ」

「ヤシロは、相変わらずだね」


 あははと、エステラが笑う。


「こっちにも感謝の花を広めとけよ。そしたら、一輪だけ買って手紙と一緒に送るヤツが出てくる」

「そうだな。うむ、ではその案は使わせてもらおう。ギルベルタ」

「了解した、私は。言ってくる、永遠の『かわヨ』クイーンミリィの作った花束の話題で持ちきりの生花ギルドの者たちへ」

「ぇ、なんでみりぃの話で?」

「あれだけ見事な花束を作ったんだから、当然だろ?」

「ゃ、でも、みりぃなんて、まだまだで……」

「どんなイメージで花束を作ったのかとか、教えてやると喜ぶんじゃないか?」

「そ、ぅ? みりぃなんかが、えらそうじゃ、ない?」

「ミリィは偉そうなんかじゃない。――偉いんだぞ☆」

「そういうことじゃないのっ!」


 ぽかぽか俺を叩いてくるミリィに、その場の空気が和む。


「……亜種が、貴族様のプロポーズの花束を……」


 賑わう声の中に、紛れるように小さな声が消えていく。

 俺の耳に届いたその言葉は、賞賛でも侮蔑でもなく、ただ純粋な驚きを滲ませていた。


 声の主は、クロウサギ人族のユナ。


「ほら、ミリィ、ちょっと話を聞かせてやってこい」

「ぅん! ぁりがとうね、てんとうむしさん」


 嬉しそうに言って、ミリィが駆けていく。

 ミリィの耳には届いていなかったようだ。


「ユナ」


 人混みに紛れるように小さくなっていたユナを手招きする。

 肩を震わせ、おっかなびっくりと近付いてくるユナ。

 あ、ジネットもそばにいてくれ。

 俺一人だと、きっと怖がらせるから。


「あの……なんで、しょうか?」


 そんな、断頭台へ赴く死刑囚みたいな顔せんでも……


「頼みがあってな」

「私に、ですか?」


 目を丸くした後、卒倒する寸前みたいな表情を見せる。


「う、歌は、無理ですよ!? こんな大勢の前でなんて……!」


 一個前のお願いが『歌ってくれ』だったから警戒されたようだ。

 でも違う。


「お前は、言われる方だったんだろうが、四十二区や三十五区では、もう亜人や亜種、亜系統って呼び方はしないんだ」


 俺が言うと説教臭くなるから、ここはジネットに丸投げする。

 視線を向けると、にっこりと笑ってくれた。


「わたしたちは、みんな同じ人間です。みなさん個性的で、そこが素敵な、一人として同じ人がいない、大切な人たちです」


 まぁ、ハムっ子は「ほとんど同じじゃん!?」ってのがいっぱいいるけどな。

 そこは触れずにおこう。


「ですので、今度からは獣人族や虫人族と呼んであげてくださいね。それは、その方の個性を尊重した素敵な呼び方なんです」

「獣人族……私も、ですか?」

「はい。ユナさんはお耳がとっても可愛い、獣人族さんですよ」


 ジネットに言われ、自身の耳を触ってぺきょっと押し倒すユナ。

 じわ~っと頬が薄く色づいていく。


「……素敵な、考え方ですね。……すごく、嬉しいです」

「ヤシロさんが広めた呼び方なんですよ」


 そんなことまで言わんでいい。 

 そもそも、俺は適当にそう呼んでただけだ。


「……ヤシロさん」


 だから、そんなきらきらした目で俺を見るな、ユナ。


「そういうわけで、あそこでぴょこぴょこ跳ねてるミリィは、俺たちの大切な仲間のミリィだ。亜種なんて呼ばないでやってくれ」

「は、はい! すみませんでした!」

「分かってくれりゃそれでいいよ」


 頭を下げるユナの後頭部に、そっと手をのせ、ぽんぽんと二度、軽く叩く。

 その瞬間、「んばっ!」っと、ユナが頭を上げる。

 あ、触られるの嫌だったか?

 モリーとかと同じくらいの年齢だったから、つい。


「あ、悪い。急に触って驚かせたな」と謝ろうとしたのだが、それより前にトラブルが起こってしまった。


 慌てて半歩後ろへ身を引いたユナの体が、もらった花束が嬉し過ぎてくるくる回っていたロリーネの背中にぶつかった。

 頭上高く掲げられていた花束は、ロリーネがふらついた時にばたつかせた腕に翻弄され、川の方へと投げ飛ばされてしまった。


 まぁ、少し濡れるが、真水だし、マーシャに拾ってもらえば問題ない、はずだった。


 だが、ユナはその花束を落とすまいと、バランスの崩れた体勢から驚異的な身体能力で地面を蹴り、川の上へと投げ出された花束をキャッチした。

 キャッチしたまではいいが、その軌道は川の方へ向かい、このまま行けば確実に川に落ちてしまう。

 河原ではなく、人工的に作られた水路だから、岸ギリギリでも水深が2メートル近くある。

 人魚が大群で泳ぐことを想定した水路だけに、そこそこ深いんだよ。


 とか考えたせいなんだろうな。


 俺の体は、思考をすっ飛ばして動き出していた。

 ユナの行動を一部始終見ていた俺が一番に反応できたのは当然っちゃ当然で、不幸っちゃ不幸だった。

 冷静に考えれば、任せときゃいいんだよ。

 ここには、デリアもナタリアもマグダもメドラもいるんだから。


 メドラなんか、片手で捕まえてひょいっと引き戻しちまえただろうに。


 動いちまったもんはしょうがない。

 というか、後悔したのは全部が手遅れになったあとだった。


「マグダ、頼む!」


 空中へ飛び出したユナの腕を掴み、反動を使って岸へと引き戻した。

 乱暴なやり方だが、マグダならきっと安全に受け止めてくれる。


 ただし、ユナを引き戻した反動で、俺の体は川の中腹のその上空へ。



 新川や 俺が飛び込む 水の音

 オオバヤシロ



 ……はは。なにやってんだかな、俺。




 小気味よい水音を上げて川へ落ちた俺。

 うっわ、この服、泳ぎにくっ。

 余計なぴらぴらが多過ぎるんだよ。


『ヤシロさんっ!』


 水の中で、ジネットの必死な声が聞こえた。

 あ、さっさと安心させてやらなきゃ。


 水をかいて、顔を水面に出す。


「ぶぁっ! 大丈夫だ~! 心配すんな~!」


 めっちゃ冷たいけどな。

 まぁ、それよりも。


「ユナを頼む!」


 ジネットには、ジネットにしか出来ない仕事をしてもらおう。

 ここまでの間で、ユナが一番心を許していそうなのはジネットだ。


 ジネットには、ユナのそばにいて「大丈夫だ」って説得してもらわないと。

 あのネガティブ少女が、どんな暴走をするか分かったもんじゃない。

 まぁ、土下座くらいはされるかもなぁ……せんでもいいのに。


 川の流れは割と速く、この泳ぎにくい無駄に重い服のせいもあり、流れに逆らって泳ぐよりも、このまま対岸の船着き場まで行った方が楽だと判断した。

 まぁ、整備された水路だし、流れるプールだと思えば気楽なもんだ。


「ヤシロく~ん、大丈夫~?」


 マーシャがすい~っと俺の隣まで泳いでくる。


「全然平気だ。ちょっと冷たいけど」

「そっかぁ~、よかったぁ☆」


 ほっとした表情を見せるマーシャ。

 心配してくれたらしい。


「折角だから、向こうの船着き場までデートしようか、二人きりで」

「わぁ~! 憧れの街ぶらデートだぁ☆」

「街ぷかデートだけどな」


 ぶらぶらじゃなくぷかぷかしてるし。


「手、つなご☆」

「水難救助にしか見えないだろうな」

「デートだよ☆」


 背泳ぎの格好のまま、マーシャと手をつなぐ。

 ん?

 なんで恋人つなぎ?

 流される人の手を離さないように?

 水難救助じゃん。


「おぉ……、水かき、ぷにぷにしてて気持ちいいな」

「ぅゅっ……もぅ、そういうこと言わないの」


 ぷいっとそっぽを向くマーシャ。

 あ、これも獣特徴みたいな扱いなのか?

 デリケートゾーン……いや、散々見せつけてきてたじゃん、これまで。なんなら、初対面で。

 最近じゃ、ここで寿司とか握ってるし。


「ちなみに、この水かきにマーシャカッターの秘密が隠されてるんだよ☆」

「え、俺の手、ズタズタにならない?」

「私を怒らせなきゃね~☆」


 こっわ。

 エロい妄想は封印しておこう。


「よいしょっと」

「なんでスピード落としてんの?」

「だって、もう着いちゃいそうだから」

「寒いんだけど?」

「ヤシロ君。子供は風の子だよ☆」

「水の子ではないんだけど?」


 そして俺は子供ではない。

 子供だというのなら、この後女湯で体を温めてくれ。


「街ぷかデート、人魚の間で流行るかも」

「食べ歩きしたら、川が汚れるけどな」

「ボートを使ったらどうかな?」

「じゃあ、川の中ほどに浮島の屋台でも置くか?」

「わぁ、それってすっごく面白そう☆」

「景観は悪くなるけどな」

「ならないデザインをすればいいんだよ☆」

「がんばれー、ウーマロ~」

「イメルダのお尻叩いとくね☆」

「是非協力しよう!」

「え、沈みたいって?」

「言ってなごぼごぼごぼ……」


 くそぅ。

 デート中に他の女子の話題はタブーだったか。

 俺としたことが。


 水から出たらちゃんとフォローしよう


 ――ざばぁ。


「ぷぁっ」

「何か言いたいことは?」

「マーシャのお尻も撫でたくなるくらいにチャーミングだぜ☆」


 ――ざぶーん、ごぼごぼごぼ……


 これじゃなかったらしい。

 難しいな、女心。


「まったくもぅ、ヤシロ君は。そんなに濡れると風邪引いちゃうぞ」


 水面からマーシャの声が聞こえる。

 沈めたの、お前じゃん。

 まぁもう、ここまで濡れたら一緒だけどな。


 よぅし……


 片手で俺を沈めるマーシャ。

 その手を取って、水中に引きずり込む。


「わっ!?」


 ざぶんと水に入ってきたマーシャ。

 目を丸くして俺を見て「私は平気だよ☆」とか言っている。

 が、そうじゃない。


 折角だから、水の中でしか出来ない戯れを、な。


 マーシャの腕を取って、ぐるりと回る。

 水の中なら前後左右だけじゃなく、上にも下にも行ける。


 俺が回るとマーシャも回り、俺の意図に気付いたマーシャが嬉しそうに笑って回転を速める。


 マーシャと見つめ合いながら水中でくるくる回る世界を眺める。

 それは、なんとも贅沢な時間だった。


 縦回転も横回転も、マーシャにかかれば自由自在だ。

 三半規管が悲鳴を上げそうなほど世界が回り、呼吸が限界に来た。


 マーシャ、ゴメン、限界!


「ぶぁっ! ……けほっ、けほっ」

「大丈夫?」


 一緒に出て来て、背中をさすってくれるマーシャ。


「ちょっと、……けほっ、欲張った」

「ね~、楽しかったねぇ☆」


 マーシャ的にも、さっきのは楽しかったようで、頬が少し桃色に染まっていた。


「あんなの、したことないや。初めて見る景色だったなぁ~☆」

「水の中も、まだまだ新しい発見はありそうだな」

「そうだね☆ ヤシロ君がいればね☆」


 まぁ、そのうち酸素ボンベでも作って、スキューバダイビングでも出来るようになれば、世界は一気に開けるだろう。

 人魚が一緒にいれば、最悪の事故も防げそうだし、一つの事業として成立するかもな。


「は~い、残念ながら到着~☆」


 本当に残念そうに言うマーシャ。

 こっちはそろそろ、マジで寒いんだけどな。


「猛暑期、いっぱい泳ごうね☆」

「あぁ、また川遊びしに来るだろ?」

「もち☆」

「んじゃ、その時に――まぁ、その前に何回か水路に落ちるかもしれないけどな」

「お待ちしてま~す☆」


 待つんじゃねぇよ、俺の水難事故を。


「ヤシロ、こっち」


 見れば、船着き場にエステラたちが集結していた。


「心配して来てやったというのに、随分と楽しそうであったな」


 と、棒で俺を突っついてくるルシア。

 てめっ、やめろ、地味に体力消耗するから、それ!


「そんなゆっくりしてたか、俺?」

「マーシャが楽しんでるのが、丸分かりだったよ」

「えへへ~☆ 独占しちゃった☆」


 どうやら、俺はマーシャとかなりゆっくり流されていたらしい。

 もうちょっと早く水から上がりたかったな。

 まぁ、水中で遊んだのは、俺が誘ったからだけど。


「あのくるくる回るの、楽しそうだったね。今度ボクにもやってよ、マーシャ」

「エステラ、その前に俺を引き上げてくれ」


 結構な距離を流されて、地味に体力消耗してんだ。

 這い上がるのしんどい。


「ほら、手を貸して」

「お前じゃ、逆に引っ張り込みそうで怖ぇよ。デリア、頼めるか?」

「おう、任せとけ」


 デリアが前に来て、俺の腕を掴む。

 折角綺麗なドレスを着てるんだから、なるべく濡らさないようにそっと上がろう――と思っていた俺を、デリアがグイッと引っ張り上げる。

 あっという間に引き上げられ、宙を舞うマイボディ。


 カツオの一本釣りか!?


「わっ、体冷たいなぁ、ヤシロ。大丈夫か?」


 と、釣り上げられた俺をお姫様抱っこするデリア。


「いや、ドレス、めっちゃ濡れてんじゃん!?」

「いいよ。あたい、濡れるの慣れてるし」


 いや、それはそうなのかもしれないけど……


「ウクリネス。悪いけど、なんか着替えを――」

「はい。ちゃんと用意してありますから、まずはお風呂ですね」

「シャワー行こう、ヤシロ! あたいもシャワーやってみたい!」

「じゃあ一緒に――」

「させるわけないだろう」


 デリアの腕に抱えられてる俺の鼻を摘まんでくるエステラ。

 陸上で溺れるわ。

 息させろぃ。


 ちなみに、デリアのお姫様抱っこは、前回に引き続き、ヴィジュアル系バンドのギタリストみたいな低い位置だった。

 もうちょっと上で、胸の前でしっかり支えてほしいの……


「早よ体あっためな、風邪引くで」


 と、レジーナがタオルを持ってきてくれる。


「経験者は語る、か?」

「アホいいな。一般論や」


 この前はレジーナが川に落ちて風邪引いたんだっけな。


「それで風邪引いたら、問答無用で看病するさかいな」

「仕返しかよ」

「恩返しや」


 けらけら笑いながら俺の頭を拭くレジーナ。

 その間に、俺は地べたに降ろされる。


 レジーナの薬がありゃ、風邪引いても安心だけどな。


「伝える、少し熱めにしてくれるように、シャワーの温度を、管理者に」

「そうだな。少し長く浴びて温まるといい。ではいくぞ」


 ギルベルタの言葉を受け、ルシアが移動を促す。

 ドニスも落ちてたし、一緒に温まって帰るかねぇ~っと。


 とか思ってると、そのドニスが嬉しそうな顔でやって来た。


「冷たかろう?」


 仲間が出来かたからって、嬉しそうに。


「よぉ、水も滴るいい男」

「お互いにな」


 はっはっはっ、とドニスは上機嫌に笑う。

 めっちゃ頑丈そうなカバン抱えてるけど、その中にマーゥルからの手紙とメンコが入ってんのか?

 盗難にでもあったら、『BU』が荒れそうだな、おい。


 じゃあ行くかって立ち上がったところへ、予想通り――ユナが駆け寄ってきた。

 スライディング土下座でもしそうな勢いで。

 土下座は、エステラが止めたけど。

 ナイス、エステラ。


「あ、あのっ、私……っ!」


 今にも死にそうな真っ青な顔で、がくがく体を震わせて……めっちゃ寒がってる俺より震えてんじゃねぇか。

 まったく。


「悪かったな」

「……え?」

「急に頭触られて驚いちまったよな。すまん、つい身内にするような気分で」

「そうだよ、ヤシロ。女性に無断で触れるなんて、失礼だからね」


 と、エステラがフォローをしてくれる。

 俺を叱れば、悪いのはユナじゃないって分かるだろう。

 少なくとも、そういう空気になる。


「ロリーネも悪かったな。俺のせいで。花束、無事だったか?」

「何も問題ありませんわ。ヤシロ様は大丈夫ですの?」

「見たろ、俺の泳ぎ? 何の問題もねぇよ」


 ……まぁ、寒いけど。


「ユナ」

「は、はいっ!」


 まぁ、そう気に病むな。


「腕、乱暴に掴んで悪かったな。痛くないか?」

「そんなっ、全然! それより、私のせいで、高そうな服が……っ」

「服なんか、干しときゃ乾く。汚れりゃ洗えばいい。頼むぞ~、ランドリーハイツ一同」

「「「はい! お任せください!」」」


 高級な服の取り扱いを覚えれば、ルシアの服も洗えるようになるかもしれない。

 領主御用達の洗濯屋になれば、この先食いっぱぐれることはないだろう。

 せいぜい頑張れよ。


「っちゅーわけで、こっちは問題ないから、そんな顔すんな」

「……でも、あの」

「ユナさん」


 俯くユナの肩に、ジネットがそっと手をのせる。

 背後から、包み込むように。

 静かに顔を近付け、にっこりと微笑み、心を解くような優しい声で言う。


「言ったとおりだったでしょう? ヤシロさんは、こんなことで怒るような方じゃないんです。むしろ、ユナさんの元気がなくなることを心配されるような、優しい方なんですよ」


 その認識は、ちょっとどうかと思うけどな。


「ですから、無事だったことを喜んであげる方が、きっとヤシロさんは嬉しいと思いますよ」

「…………あの……、はい」


 泣きそうな声で言って、泣きそうな目でこちらを見る。


「……ご無事で、よかったです」

「おう、ありがとな」


 まぁ、少々強引で、このやり方だとユナの心にもやもやが残っちまうだろうが、これで少なくとも「死んでお詫びしなきゃ!」みたいな極端な発想は取り除けただろう。

 ホント、そこまで極端なネガティブ抱えてそうだったからなぁ、こいつは。


 じゃあ、帰る前にもう少しだけ、解しておいてやるか。


「ジネット。俺、ちょっと長風呂しそうだから、ユナと一緒にシャワー使ってみろよ。マグダたちも一緒にさ」

「えっ!? い、いえ、私なんて!」

「それはいいですね。ユナさん、そうしましょう」

「で、でも、あんな、すごいところ、私なんかが――」

「『私なんか』は、禁止ですよ」


 にっこりと、厳しいことを言うジネット。

 ジネットなりの、精一杯の厳しさだな。アレでも、一応。


「んじゃ、行くか。さすがに寒ぃ~や」


 おどけて言ってさっさと歩き出す。

 ユナのことは、ジネットに丸投げしていいだろう。


 なので俺は――


「ウーマロ~!」

「ぎゃぁあああ! 濡れた服で抱きついてこないでッスー!」

「ベッコ~!」

「こちらも然りでござるー!」

「ウッセ……は、いいや」

「なんでだよ!? 抱きついてこいよ、ほら!」


 両腕を広げて「こいよ!」じゃねぇーんだよ。

 周り見てみろ、全員ドン引きしてんじゃねぇか。


 ウッセ、怖ぁ~。



 とかやりつつ、マジで寒いのでシャワーへ急いだ。

 気持ち小走りで。


 マジで風邪引きそうだ。




 あ゛ぁ゛~、ぎも゛ぢい゛ぃ゛~!


 シャワーから降ってくる熱い湯の粒を全身で受け止める。

 こりゃあいいや。

 シャワー、久しぶりだなぁ。

 水圧はちょっと弱いけど、まぁ、上出来だろう。


 湯船に浸かれないのがちょっと不満かもなって思ったけど、なかなかどうして、これは気持ちがいい。


「ごっふぉ~りべいべ~♪」


 思わず鼻歌も出ちまうくらいに。


「ヤシロ氏は、その歌が本当にお好きなのでござるな」

「なに当たり前みたいに覗いてんの、お前?」


 見た目が変質者なんだから、せめて行動くらいは気を付けろよ。


 シャワーは、一応仕切り版で個室になっている。

 と言っても、胴体部分くらいしか隠れない小さいしきりだけどな。

 完全に個室にすると、掃除が面倒だろ? だから、すっげぇ簡易的な構造になっている。


「オイラもその歌、覚えちゃったッスよ」


 と、ベッコとは反対隣から平然と覗いてくるウーマロ。

 ここ、覗き魔多いわぁ。


「合法ロリ、赤ちゃ~ん♪」

「それで覚えんじゃねぇよ」


 何回か「Go for it」の意味を教えてやったのに、一向に『強制翻訳魔法』が改善されないらしい。

 欠陥魔法なんじゃねぇの、これ?

 意味を把握したら、そのように聞こえんじゃねぇのかよ。


 あの時の検証結果、一回見直さなきゃいけないかもしれねぇなぁ。

 でもまぁ、今だと――



 検証結果:面白い方に傾く。精霊神って、バカだから!



 ――って結論に至りそうだけどな。


「しかし、これは気持ちがいいな、ヤシぴっぴ」


 遠くのブースから、ドニスの声が聞こえる。

 あ、俺たちは濡れたので、先に入らせてもらってるんだ。


「濡れたのでって、ヤシロさんが抱きついてきたんッスよ!?」

「さも、不幸な事故があったかのように言ったでござるな、諸悪の根源が」


 こいつら、最近遠慮なくなってきたよなぁ。

 ヤな感じぃ~。


「デミリー、どうだ~?」

「気持ちいいよ~。これは是非四十区にも欲しいなぁ。ウーマロ君、大衆浴場とセットでよろしくね」

「工期が延びるッスよ……」

「構わないよ。いいものはどんどん取り入れていかないとね。おかげさまで、最近は懐も温かいし」


 儲かってやがるのか。

 なんだ?

 ラーメン横丁か?


「木こりギルドだよ。あっちこっちで大改修が行われて、木こりギルドからの税収がすごいことになっていてね。いや~、持つべきものは親友だよねぇ」


 木こりギルドを抱え込めたことが、デミリーにとっては最大の幸運だったかもな。

 まぁ、逆も然りだろうけど。

 いいコンビだよ、この二人は。


「じゃあ、エステラも儲けてるのか?」

「どうかなぁ。本来なら、街門の通行税だけでも相当な税収になっているはずだけど、エステラだからねぇ」


 あははと、若干の呆れを滲ませて、デミリーが笑う。

 儲けてなさそうだなぁ、ウチの領主様は。

 ホント、取れるところからしか取らねぇからなぁ、あいつは。


「しかしオオバ、貴様も無茶をするよな」


 と、偉くもないのに最初のチームに割り込んできたリカルドが言う。


「領主だよ! 偉いんだ、俺は!」

「イベールを押しのけて入ってきたくせに」

「あれは……、譲ってもらったんだ。ゲラーシーから目を離さないようにって」


 いや、ドニスと一緒に入るのを避けたんだろうな。

 まだビクついてるのか、マーゥルの前でした不用意な発言。

 まぁ、服を着てないと不安になるし、この状況でなんか言われたらヤだな~って気持ちは分からんではないけども。


 ……何も言わないってば~、くすくす。


「獣人族を助けて川へ落ちるなんて、貴様らしくもない」

「分かってないね、リカルドは」


 と、デミリー。


「人を助けるのに、理由なんてないんだよ。特にオオバ君はね、損得じゃなく心が先に動いているんだ。少なくとも、私が見てきた限り、彼が目の前で困っている人を見捨てたことはないよ」

「ごめんな、デミリー。俺に育毛はムリなんだ」

「褒めたんだけどなぁ、今!? で、それは別に見捨てられたとかそーゆーのとは違うカテゴリー! でも、それでもまだちょっと期待はしてるから、何かいいこと思いついたらよろしくね!」


 思いつかねぇってのに。

 それが出来てたら、日本で億万長者になってたっつーの。


「ヤシロ氏は、正面から褒められると噛みついてくるでござるからな、注意が必要でござるよ」

「え、なに、じゃあお前は背後で陰口叩こうっての? 潰すぞ? 物理的に」

「そんなことは言ってござらぬよ!?」


 ベッコが泣いて、シャワールームに笑いが起こる。

 そういうことを、訳知り顔で口走ってドヤ顔するから痛い目に遭うんだっつーの。

 いい加減学習しろ、テメェら全員。


「ヤシぴっぴは子供には優しいからな」

「あと美少女にもね」


 と、オッサン領主二人が勝手なことを抜かす。

 俺が親切にするのは、おっぱいが大きい美女だけだっつーの。

 谷間ががっつり開いていればいるほど親切度が増す仕組みになっているぞ☆

 試してみてね☆


「それだけじゃないッスよ」


 あ、ウーマロが余計なことを言いそうな予感。


「マグダ禁止」

「まだ何も言ってないッスよ!?」

「なんか余計なこと言いそうだったもので、つい」

「『つい』でマグダたん禁止は酷いッス! オイラ死んじゃうッス!」

「お前なぁ、そういう大袈裟な発言は『精霊の審判』に……引っ掛からなそうだな、お前の場合」

「ッス!」


 なんだ、その「のわ!」みたいな返事。

 いまさらキャラ強化とかしなくていいから、お前は。

 十分濃いから。


「ヤシロさんは、年齢や性別関係なく優しいッスよ。あのグーズーヤに、初対面で本気で怒ってくれるような人だったんッスから」

「あぁ、確かに、最近マジでぶっ殺してやろうかって思ってるもんなぁ」

「殺意が湧くほどの怒りの話はしてないッスよ、オイラ!? 割といい話なんッスけどねぇ!?」


 聞きたかねぇんだよ、そんな話。

 いいから、体洗ったらさっさと出て行け。


「んじゃま、あの場面なら、こいつが川に飛び込むのも納得ってことか?」

「ッスね。オイラは『あぁ、らしいッスねぇ~』って思ったッス」

「然り。むしろいつも通りで安心するほどでござるよ」

「でも、ちょっと心配しちゃったけどね」

「あれしきのこと、ヤシぴっぴなら問題ない。ワシでも大丈夫だったからな」

「DDのは、愛の暴走でしょうに」

「なんだと、デミリー? 貴様も、あのメンコを見たらそのような軽口は叩けなくなるぞ」

「どんなメンコなんです? あとで見せてくださいよ」

「断る! あぁ、今夜は夜更かしをしてしまいそうだ」

「まったく、DDは……お若いというか、少年の初恋を見ているようですよ」


 ほとんど違わねぇよ、その見解で。

 ただ、本人たちが無駄に年食ってるだけでな。


「ホント、君はどういう人物なんだろうね」


 と、一人で静かにシャワーを浴びていたヴァルターがイケボで話しかけてくる。

 ……タオルを胸にまで巻いてんじゃねぇよ。

 女子か。


「いや、肌を他人に見せるのに慣れてないだけだよ」

「大衆浴場はいいよ、ミスター・クラウゼ。四十二区へ行くことがあるなら、是非入ってみるべきだと進言しておくよ」

「デミリーさんに言われると、入りたくなっちゃうな」


 人好きしそうな笑顔で言って、ヴァルターがこちらを向く。


「君とも、またゆっくりと話がしたいし。どうかな、四十二区に招待してくれないかい?」

「エステラに言え」

「未婚の令嬢にそんなことさせたら、世間がうるさいじゃないか。ここはひとつ、男同士ってことで、ね?」

「んじゃ、お土産よろしくな」

「あはは。君が興味を引かれそうなものを見繕っておくよ」


 いい感じに向こうから食いついてきてくれたな。

 これなら、ガラスの安定供給も出来そうだ。


 もし、必要な鉱石が手に入れば、蓄電池とか、蒸気機関でのちょっとした発電とかも出来るかもしれない。

 いきなり動かすつもりはないが、下調べくらいはしておいてもいいだろう。


 あとは、まぁ、酒か。


「ヴァルターのところにはどんな酒があるんだ?」

「お? 興味あるかい? なら、あとでリゼに一覧を書かせるよ」

「後日でいいから、採れる鉱石の一覧も欲しいな」

「いいよ。まぁ、言えないものは省かせてもらうけどね」

「なんだよ、オリハルコンとかミスリルでも採掘してんのか?」

「え、なんだいそれは?」

「俺の故郷に伝わる、神様の国の鉱物みたいなもんだ。伝説というか、ファンタジーの代物だよ」

「そっか、その話も、ゆっくり聞きたいな」


 あるかと思ったが、こりゃなさそうだな。

 まぁ、ミスリルがあったとて、俺には扱えないけども。


 それからもうしばらくだけ、俺は湯に当たって体を温めてから出た。

 うん、この感じなら風邪は引かないだろう。


 でも、念のため、帰ったら湯船に浸かろうかな。

 やっぱ、湯船は必要だよなぁ。日本人だもの。







あとがき




うんしょ、うんしょ

(*´▽`*)っ【リンク】https://youtu.be/lkNpOuKVTU4


(≧▽≦)ごっふぉ~りべいべ~♪



さり気なく『GO FOR IT BABY!』のリンクを貼った、宮地です☆


すっごい初期に作った動画なので、何の面白味もない仕上がりでして……

(^^;

もうちょっとなんとかなったはず!

まぁ、今後精進します



さて、マーシャとの街ぶらデートを楽しんだヤシロ

まぁ、ぶらぶらというよりぷかぷかでしたけども


ブラではなくプカプカ浮いている……無理して大きいカップ数のブラを買っちゃって余ってかぱかぱしてるような感じになってしまいましたが


え、ちょっと待ってください……

街ブラデートって、上着を脱ぎ捨てて……?

ちょっと本編書き直してきま……あ~っと、それだと規約に反しますかぁ、そうですかぁ

残念です!


あぁ、そもそもマーシャさん上着着てませんでした


いや、今回は

ウクリネス作の水着素材ドレスを着てるんでしたっけ?

まぁ知らないうちにしれっと脱いでそうですけどね

きっと泳ぎにくいでしょうし



街ぶらデート、いいですよねぇ

街ブラデートには及びませんけれども

ブラ街デートはもっと上位ですけども


全員が上半身ブラジャーで過ごす街を歩く、ブラ街デート

素晴らしいじゃないですか!



町長「どうも、町長の梅田健三(56)です」

宮地「ブラを着けるな、オッサン!」(# ゜Д゜)



いや、確かに

「全員が」って言いましたけども!

Σ(゜Д゜;)


そんな内容のお話でした☆


 (;゜Д゜)いや、違ったはずだ!



さて、街ぶらといえば秋田犬ですが、

……いや、ほら、お散歩とかしますし?


いいんです、今回秋田犬のお話したいので!


これ、私はいまだに「あきたけん」と呼んじゃうんですよね

そして「いぬ、だよ?」みたいに、ちょっと上から訂正されるという……



宮地「まつざかぎゅー!」

知人「うし、だよ?」

宮地「どっちでもいいだろう!?」

知人「『あきた(訓読み)』+『いぬ(訓読み)』なんだよ」

宮地「デューク更家は?」

知人「それはどうでもいい」



なんでも、土佐犬は『とさ(音読み)』+『けん(音読み)』らしいですよ

外国由来の犬は『けん』になるんだとかなんだとか



宮地「だからアフロ犬も『けん』なのか!?」

知人「懐かし!?」

宮地「アフロが音読みだから!」

知人「音読みではないかな、アフロ!?」



みたいなことを

この前別のことを考えていた時にふと思いつきまして

とりあえずご報告をと、


その時考えてたことですか?


秋田犬を主人公にした映画『秋田犬』が大好評で続編作られて

『秋田犬2』とか公開されたら、絶対『あきた けんじ』って読むよなぁ~


っということを、割と真剣に考えておりまして

まず、『秋田犬』を作ってヒットさせないといけないので、なかなか実現は難しいんですけどねぇ


あ、あと、

「県TD」と「県CZ」では

どっちがより県知事に近いかなぁ~とか


そんなことを考えながら日々過ごしております

(*´ω`*)平和だな~



どうしましょう

アフロ犬の話、もう少し盛り上がるかと思ってたんですが

いまいちノリ切れませんでした……


もう一回、リンク貼っておきましょうか?

(*´▽`*)っ【リンク】https://youtube.com/shorts/5Uv11rvdkOE


あ、いりませんでした?

でももう貼っちゃったので☆


ちなみに、上のがフルバージョンで

今回のはショートバージョンです♪


皆様も、お風呂に入りながら歌ってくださいね☆



あぁ、そういえば、

なんか、自作の曲を全国のカラオケに配信できるサービスがあるとか

詳しくは調べてないんですが、いくつか手続きすれば全国どこでも歌ってもらえるようにあるとか……


パイオッツァーが、全国に……

( ・_・)ふむ


ちょっと魅力ですよね

まぁ、カラオケ行かないんですけども

(^^;


学生時代はよく行ってたんですけどねぇ

私、兄がいたので、上の世代と歌の趣味が合うんですよね


まぁ、同年代とは合わないとも言いますが……


「え、お前、それ知ってんの?」

みたいな感じで、年上の方にちょっと気に入られたりして


あと、割と嫌がられるんですけど

最初何の曲か分からなくて、サビになると「あっ、知ってる!」ってなるの

好きなんですよね~(*´▽`*)

CMの曲とかで

サビだけ知ってるって曲


全員がきょと~んとしている中

一人で熱唱

そしてサビで「知ってる!」ってちょっと盛り上がるの


( ̄▽ ̄)してやったり


ですよね(笑)

まぁ、最初から分かる曲を歌えってことなんですけども


パイオッツァー盛り上がりませんかね……



宮地「サビ聞いたら知ってるから!」

知人「そうなの?」

宮地「鷲掴め、パイオッツァー♪」

知人「いや、知らんけども!?」



みたいに♪

そこそこの額を払えば登録できるらしく……悩みますね


あっ、

そういえば一緒に行ってくれる友人に心当たりがありませんでした


ヒトカラでパイオッツァー……出禁になりませんか?

(・_・;



カラオケ店長「店長の梅田健三(56)です。すみませんが、お客様のご利用は……」

宮地「町長!? あの、街ブラの町長がなぜカラオケ店の店長に!?」



やっぱり、服装に問題があったんでしょうか……

人生、いろいろありますね☆


ではまた次回!


 Σ(゜Д゜;)どんな締め方!?



次回もよろしくお願いいたします!

宮地拓海

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