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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第四幕

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800/809

483話 しゃわしゃわ~

「せーの!」

「「「「ザマァ!」」」」


 がっくりと肩を落とし、すごすごと逃げ帰ったオットマンたちの背中が見えなくなった直後、群衆が声を揃えて勝鬨を挙げた。

 たぶん、まだそこら辺にいるオットマンたちにも聞こえたことだろう。


「ルシア様カッコよかったです! 『用が済んだのなら帰れ。そなたらには、もう一刻の猶予もないはずだが、こんなところで油を売っていてよいのか?』って!」

「い、今のは私の真似か? いつ私がそんな気取った声を出したというのだ……」


 領民の、分厚いフィルターを通したモノマネに頬を引きつらせるルシア。

 結構いい線いってたじゃないか?

 お前、たまにあぁいうカッコつけた声出す時あるぞ。……ぷぷぷっ。


「カタクチイワシ様の『……ふっ、選ばせてやるゼ……ふっ』もカッコよかった~!」

「おい待てそこの村娘B! 俺がいつ鼻で笑ったよ!?」

「貴様はたまにそういうことをしておるではないか……ぷぷぷっ」


 こんにゃろう、ルシアめ。


「見事な手腕ね、ヤシぴっぴ」


 と、満足そうな顔でマーゥルが俺に一枚の紙を渡してくる。

 さっと中を見たら、さっきここにいたオットマンと仲良し貴族の名前と、その関係者と、近しい思想のご友人一覧だった。

 わぉ。友達の友達はみな友達理論で、全員根こそぎ排除するつもり満々だ☆


 ……怖ぁ、マーゥル。怖ぁ。


「概ね、筋書き通りに進んだわね」

「皆々様のご協力のおかげでな」


 マーゥルの後ろに並ぶ領主たちにも、一応礼を言っておく。

 こいつらには、各区で噂を流してもらった。


「なんか、三十五区にガタイのいい連中が集まって何かしてるみたいだぞ」

「三十五区と言えば、水路を作って人魚を街の中まで自由に出入りできるように街を改造するらしい」

「ここにきて、随分と大きな動きを見せるようになったなぁ」

「それだけ人魚との関係が友好的ということか」

「そういえば、三十五区の劇場で上演されている芝居も、人魚との友好を描いたものだそうで」


 ――ってな。


 全部事実。

 そして、善意も悪意もないフラットな意見。

 それをどう組み合わせて、どう解釈するかは受け取る者次第。


 貶めようと粗探しをしていた連中の耳に入れば、それは格好の攻撃材料となり得る。


「三十五区は人魚を優遇、優先している」

「ガタイのいい人間があり得ないくらい集まってきている」

「何か企んでるのか?」

「ちょっと見てきたら、なんか砦みたいなの出来てたけど!?」

「もしかして、謀反!? ねぇ、これって謀反の証拠!?」

「ヤッバ! 三十五区ヤッバ!」

「これ、劇場潰すだけじゃなくて、領主引き摺り下ろせんじゃね!?」

「うっはぁ! 謀反を未然に止めたとか勲章もんじゃん! もしかして、空いた領主の席、もらえちゃうかも!?」

「そうじゃなくても大出世間違いなしじゃーん! ひゃっほ~い!」


 と、きっとそんくらい盛り上がっちゃったのだろう。

 で、砦の中に踏み込めば動かぬ証拠が掴めると。


「噂ってのは、複数箇所から入ってくると信憑性を増すからな。自分に都合のいい情報ならなおのこと、耳によく入るようになってんだ」


 人は、自分に都合のいい情報ほど耳に入るように出来ている。

 フラットな情報でも、自分の都合のいいように解釈してしまう生き物だからな。


 消しゴムを拾ってくれただけで、クラスメイトの女子を好きになっちゃうのも、ただの行動に都合のいい『意味』を勝手に盛り込んじまうせいだ。


「ガタイのいい、顔の怖い、若干汗臭いオッサンどもが集まっているのは本当だしな」

「やかましいわ。ちゃんと風呂に入ってるよ」


 と、ウッセ。

 風呂くらいでお前の汗臭さが取れるわけないだろうが。

 年季が違うんだよ、お前の汗臭さは!


「筋肉が集まってるのも本当、人魚との仲が良好なのも本当、芝居の内容が人魚との友好関係を強調しているのも本当、砂浜に要塞丸出しの砦が建設されたのも本当とくりゃ――」

「彼らが、自分たちの持論が正しいと確信してしまうのも、無理はないってことだね」


 肩を竦めて、エステラが息を吐く。

「愚かだなぁ」とお前は言うがな、自分が信じているものを疑うってのは、普通出来るもんじゃないんだぞ。

 だって、次々と持論を肯定する情報が入ってくるんだから。

 舞い上がっちまうんだ、人は。


「お前だって、効果のない豊胸体操をいまだに続けているじゃないか」

「効果がないとはまだ言い切れない! 結果が出た時に、すべて分かるはずだよ」


 だから、その結果がいつまでも出ないんだっつーのに。


「しかし、ヤツらが王の名を持ち出すと、よく分かったな」


 ルシアが感心したように……というか、種を明かせと言わんばかりの目で俺を見ている。

 俺はルシアに、「連中が王の名を持ち出すまでは絶対にシャワールームへの入場を許可するな」と言っておいた。

「持ち出さなかったらどうする」とか言ってたけど、持ち出すに決まってる。


「外周区と『BU』の全領主が揃ってるんだぞ? 出さざるを得ねぇよ、連中は」


 統括裁判所といえど、地位的には領主より下だ。

 王の名の下、公平に裁く権利を持っているだけで、そこの裁判官が領主より偉いわけじゃない。


 立場で言えば自分が格下。

 そして向こうは大人数。


 となれば、オットマンには振りかざせる武器がそれしかない。

 統括裁判所だけでは心許ない状況だ、『王の名の下に』ってフレーズが、ヤツが行使できる最も強い武器であり、唯一ルシアを無条件で屈服させることが出来るものだった。


 まぁ、なかなかきっぱり言ってくれなかったせいで、ちょっとこっちで誘導したけどな。

 ルシアはうまいことやってくれたよ。


「ルシアが一切引かない姿勢を見せれば、切り札を切る以外、あいつに手はなかったんだよ」


 王の名が出ればあとは簡単。

 乙女のひしめくシャワールームへご招待。

 それで「乙女の風呂を覗いた」と言ってやればゲームオーバー。


 俺たちにとっては『乙女=金物ギルド』だが、三十五区の人間にとっては『乙女=か弱き女性』というイメージなわけで、「乙女の風呂を覗いた」と聞けば「え、女湯を覗いたの!?」という勘違いが生まれ、それが『会話記録カンバセーション・レコード』に記録されれば、裁判で有力な証言となる。


会話記録カンバセーション・レコード』に映像は残らない。

 乙女と言われれば普通はか弱い乙女を想像する。


「オットマンはおのれのスケベ心を満たすために王の名を悪用した」という事実だけが、『会話記録カンバセーション・レコード』に記録されるわけだ。


 ちなみに、仮に『精霊の審判』を使われていても、俺たちはカエルにはならなかっただろう。

 だって、もう完全に乙女で通ってるからな、四十二区では。

 全員に浸透している呼び名を「嘘だ」と言われてもなぁ?

「だって、そう呼んでるし」ってなもんだ。


「噂なんてもんは実に無責任でな、切り取り方一つで白くも黒くもなる」


 三十五区が人魚との友好を強調すれば、人間の王に不満があるのか――と真意を捻じ曲げられる可能性も出てくる。


 そういう噂を、あえて真実を隠して流布してくるヤツは非常に面倒で厄介だ。


 だが、そんな無責任な噂を全部無効にする手段がある。



「もっと強烈な噂で過去の噂をすべて肯定し、その上で、その強烈な噂がとんでもないデマだったと知らしめる」



 今回で言えば、ルシアが兵を集めて要塞を建造し、王国に謀反を起こそうとしているというとんでもない噂だ。

 それらは、三十五区が人間の王よりも人魚側に傾倒しているという噂を肯定し、補強する内容で、かなりセンセーショナルだ。

 しかも、現場に行けば要塞みたいな砦は建っているし、ムキムキ筋肉が多数出入りしているしで、そのとんでもない噂の信憑性を高める証拠がゴロゴロ出てくる。


 それに乗っかって、完膚なきまでに叩き潰してやろうと乗り出してきたところで、「あ、それ全然違うよ」と真実を大々的に拡散する。



 すると、その大誤報に関連づいていたこれまでの噂までもが嘘くさくなり、「三十五区を貶めようとしていたヤツが広めたデマ、陰謀論だったんだな」と一瞬で沈静化する。

 いや、沈静化というより相手へ跳ね返っていくのだ。



 まぁこれは、悪事が露呈して炎上した悪党が火消しに失敗した際、苦し紛れに利用するよくあるメディア戦略なんだけどな。

 自分でデッカいデマを流して、炎上した後にそれが嘘だと証拠付きで広報し、デマに踊らされたヤツらをあげつらって「こんなデマを信じてるとか、お前ら陰謀論者なんじゃねぇーのー?」って相手側を悪者に仕立て上げることで、自分が被害者にすり替われるという寸法だ。


 割かし効いちまうから始末に負えないんだよなぁ、この手法は。

 多用しないことを勧めておく。

 度が過ぎると、武力行使されかねないからな。とにかくムカつくんだ、この手法。

 嘘吐きが被害者ぶるから。



 まぁ、今回は悪党を返り討ちにするためだったわけだし、大目に見てもらおうか。


「貴様が、貴族でないのが不思議なくらいだ」


 そんな悪口を寄越してくるルシア。


「噂を流す順番やタイミングまで細かく指示してきおって」


 当然だろ?

 同じ噂があっちこっちから一斉に持ち上がってきたら、そんなもん罠だって言ってるようなもんじゃねぇか。

 噂の伝達には時差があるんだよ。

 その時差と、勝手について回る尾ひれを演出することで、噂は一層信憑性を増すんだ。


「貴様のやり口は、貴族というより、悪魔に近いな」


 とんでもない悪口だな、おい。

 で、引きつった笑い浮かべてんじゃねぇよ、領主ども。

 不名誉な噂流してやろうか? お前ら一人一人にクリティカルヒットするようなヤツを。


「なんにせよ、これであの連中は終わったな」


 やや憐れむようにルシアが言う。

 まぁ、自業自得だ。




 オットマンたちもいなくなり、とりあえず事態は収拾した。


「お前たち、悪かったな」


 シャワー中にオッサン貴族に踏み込まれて飛び出してきた乙女たちが、バスタオル姿で群衆の前にいる。

 これは、ちゃんと謝っとかないとな。


「こんなおぞましいもんを見せちまって」


 群衆に向かって、ぺこり。


「んん~ん、もう! 向きが逆よ~ぅ、ヤシロちゃんっ!」

「謝るのは、こっち、こっち☆」


 あっはっはっ。

 手のひらを上に向けて、小指から順番に流れるように人差し指までを曲げるタイプの「かもぉ~ん☆」ってさ、指の骨バキバキ『鳴らさずに』やるんだぜ?

 お前らの指、えっぐい音してっけどさ。色気霧散どころか、おっそろしいからな、それ。


「連中が女湯に踏み込んだと『会話記録カンバセーション・レコード』に記録するため、乙女の犠牲は不可欠だったんだ。協力感謝する」

「んもぅ、水臭いZO☆」

「そうよ。ちょっぴり恥ずかしかったけど、これでみんながハッピーになれるなら、アタシたち――」

「「「「全部脱ぐ!」」」」

「一肌だけにしてくれ、頼むから! 切実に!」


 そしてたぶんそのネタ、レジーナ発信だろ?

 前に聞いたことあるぞ、俺は。


「でもまぁ、見てくれはともかく、乙女に肌を晒させたわけだからな、十分な補償はする。な、リカルド?」

「……今、こっちに振るな。観衆が動いたせいで、オッサンどもの纏う湯の匂いがこっちに流れてきた…………吐きそうだ」


 リカルドが、具合悪そうな真っ青な顔で口を押さえる。


「え、『ときめいた』?」

「言ってねぇわ!」

「「「やだっ、領主様ってば!」」」

「その気になるな、オッサンども!」


「吐きそうだ」と「ときめいた」って語感、似てるよね☆

 似てなくても気にしない☆

 乙女どもをリカルドに押し付けられるのならば!


「リカルドが今回の件を受けて、素敵やんアベニューの年間フリーパスを提供してくれた」

「「「きゃー! 領主様素敵! 太っ腹!」」」

「いや、まぁ、あれはその……」


 と、ちょっと照れた顔で俺を見る。


「男を、見せられたから、な」


 またそうやって兄貴ぶる……

 そんなヤツには――


「男を……見せられた?」


 と、言いながら乙女の方をちらっと見て――


「――嬉しかったってことか?」

「違うわ!」

「「「やだっ、領主様のケダモノ!」」」

「バケモノが何を言ってやがる!?」

「おい、お前ら。領主様が、一年間磨き上げて、もっと綺麗になれってよ」

「「「や~だぁ~、素敵な気遣い~、もしかして、遠回しなプロポーズ!?」」」

「どんな曲解だ、オッサンども!?」

「え、なに? 四十一区にある施設だったら、その年間フリーパスで入れるようにしておいたから、俺の館にも遊びに来ていいぞって?」

「言ってねぇわ!」

「「「行きます! 日参します!」」」

「来んな! 素敵やんアベニューだけでしか使えねぇフリーパスだからな!?」

「え? なんて? こいつらが街中を徘徊してもいいって?」

「違う、よく聞け! お前らは、素敵やん――もがっ!?」

「「「やだっ、素敵って言われちゃった!」」」


 こういう聞き方をすれば「お前らは素敵やんアベニューから出てくるな」って言うと思ったので、途中で口を塞いでやった。

 狙い通り。


「悪魔か、テメェは!?」

「お前は、素直で可愛いなぁ」

「やかましいわ!」


 顔が真っ赤なリカルド。

 照れるな、照れるな。


「怒ってんだよ!」


 とか言いながら、ゲラーシーの方へと歩いていくリカルド。

 あいつ、愚痴を言える友達も少ないからなぁ。

 あそこ、完全にペアになったな。


「すべてが君の手のひらの上のようだね」


 リカルドの狼狽ぶりが面白くて仕方なかったようで、上機嫌なエステラが笑っている。


「思い通りにいかないことの方が多いけどな」

「そうなのかい? たとえば?」

「さっさと服を着てくればいいと思ってる乙女が、いまだにバスタオル姿を見せつけようとしてくる」

「そこは、うん、ボクも早く服を着てくればいいのにとは思っているけれど」


 全っ然、中入らねぇの。乙女ども。

 ちょっと見せつけてんじゃねぇよ。


 あ、ベッコがさっさとモノクル返しに行ってる。

 見えない方がいいって? 素直だな、お前は。


「いや……ははっ、もう、なんというか……大した男だね、君は」


 モノクルを受け取り、イケボでヴァルターが苦笑を漏らす。


「どこからどこまでが、君の計画だったんだい?」

「全部だ。なぁ、ヤシぴっぴよ」


 俺が答える前に、ドニスが話に入ってくる。


「今回は、計画の初期段階から参加していたが……呆れるくらいにヤシぴっぴの思惑通りに事が運んだ。一瞬、オットマンたちとグルなのではないかと疑いたくなるくらいに、オットマンたちが筋書き通りに動いていたぞ」

「えっと……」


 ヴァルターが頬を引きつらせて、汗を一筋垂らして、ちらりと俺を見る。


「……ヤシぴっぴ?」


 そこかよ、引っ掛かったの。


「ドニスさんがそんな風に誰かを呼ぶなんて、珍しいですね」

「人は、出会いによって変わる。それだけのことだ」

「すごいな。あのドニス・ドナーティにここまで言わせるなんて」

「ドニス、お前すげぇ偏屈な頑固ジジイだって言われてるぞ」

「いや、そんなダイレクトには言ってないけどね」


「ダイレクトには」ってことは、意味は同じなんじゃねぇか。

 あははと、いい声で笑うな。


「そなたも一度、ヤシぴっぴとじっくり話をしてみるといい」

「えぇ、是非とも。興味が湧いてきましたよ、彼に」


 言いながら、ライターを取り出す。


「これも、面白いね」


 しゅぼっと火をつけてみせる。

 観衆から「おぉー!?」っと声が上がる。

 ……お前のせいで需要が爆発したら、お前んとこで部品作らせるからな?


「お酒が飲めないのだけが、本当に残念だ」

「飲めはせんが、製造方法なら熟知しているだろう。もしかしたら、そなたの知らない酒の作り方を知っているかもしれんぞ」

「へぇ~……ますます興味深いね」


 変な持ち上げ方すんじゃねぇよ。

 こいつがどんな酒を知っているかも分からんってのに。


 どぶろくとか、口噛み酒とか、珍しさ優先のもんくらいしか思い浮かばねぇよ。


「それよりも、カタクチイワシ!」

「あぁ、それも気になってたんだよね……カタクチイワシって、なんなんですか、ドニスさん?」

「ん? あぁ、まぁ、若者の戯れであろう。あの辺の事情は……首を突っ込まず、距離を置いて見学することを勧める」


 おいこら、ドニス。

 意味ありげなこと言ってんじゃねぇよ。

 カタクチイワシ呼びは、ルシアのねじ曲がった性根のせいだって、ちゃんと伝えとけ。


「聞いておるのか、カタクチイワシ?」

「そしてお前は、衆人環視の中で男のほっぺたを気安く引っ張るんじゃねぇよ」

「ふん。そんなもの、今さら誰も驚かぬわ」


 いや~、向こうでヴァルターが「なんか、すっごく親密なんですけど、ドニスさん!?」って驚いてんじゃん。

 で、ドニス。「いつものことだ」じゃねぇーよ。

 止めてやれよ、同じ領主としてさぁ。


「事は済んだ。もう今日から使用しても構わぬな?」

「ん?」


 なんのことだ……と一瞬考えて、思い至る。

 シャワーか。


「ウーマロ。男女で分かれてるか?」

「もちろんッス! 女性用は、もう二段階、頑丈なセキュリティになってるッスよ」


 なんか仕込んだのか?

 もう一段階だと、たぶん男女の間にまた壁があるんだろうなって思えるんだが……もう二段階? 絶対、壁を超えた先にトラップあるじゃん。


「お前、覗きに行くこっちの身にもなれよ!」

「それをさせないためのセキュリティッスよ!?」


 もうばっちり完璧らしい。

 ちぃっ!


「では、早速使わせてもらうとしよう!」

「バカか」


 いそいそとシャワーへ向かいかけたルシアを止める。


「まだ全部終わってねぇのに、風呂入ってどうする!? 濡れた髪をこれだけの人間にさらしながらこの後の工程を進行するつもりか?」

「こちらは、散々焦らされたのだぞ? そこにあるのに使えぬこの気持ち、貴様に分かるか!?」

「だから、今日が終わったら好きなだけ使えばいいだろうが!」

「ちょいとヤシロ! それじゃあアタシらが使えないじゃないかさ」


 と、ノーマが食って掛かってくる。

 こいつは、自分でシャワーを作ったにもかかわらず、一切使えず、それだけならまだしも乙女たちが先に使って、「ちょ~きもちいぃ~ん☆」とか見せつけられてたっぽくて、相当限界に来ているらしい。

 じゃあもう、今日も泊まっていけばいいじゃん、三十五区に。


「じゃ~さぁ~☆ とりあえず今はその仕組みだけ見せてもらって、使いたい人は帰りに借りたらどうかなぁ~?」


 と、マーシャが提案する。

 ここでシャワーを使って、そのまま船に乗り込んで、四十二区へ超特急で帰ろうと、そういう案らしい。


 風呂上がりに漏らすヤツが出るかもしれないぞ、その案。


「ふむ、仕方ない。小癪なカタクチイワシは、ノスタルジック街道の方でも何か隠し玉があるようだからな。それも聞いておかねばならぬか……まったく、焦らしおって、小憎らしい」


 とか言いながら、俺のほっぺたをぐりぐりすんじゃねぇよ。

 観衆がざわついてるから!

 今めっちゃ人目があるから!


 え、なに?

 感覚マヒしてんの?

 オットマン撃退して、変にテンション上がってる?


 いいから一回落ち着け、お前は!


 エステラに浮かれルシアを預け、仕方がないのでシャワーの説明をするため領主一同を引き連れてシャワールームへと入る。


 一般観衆は、悪いけどまた今度ってことにしてもらった。




「おぉ~……お?」


 シャワールームに入ると、領主連中が一応声を上げるが、なんかちょっと疑問形だった。

 まぁ、何があるわけでもなく、壁からシャワーヘッドが突き出してるだけだからな。


「……で、実際に使ってみせろとか言わないよな?」


 シャワー出したら濡れるし、こんだけの人の前で裸になんぞなれんぞ。


「軽くどういったものかだけ説明すればよかろう」


 と、原理は把握しているが実際使ったことがないルシアがわくわく顔で言っている。

 早く見せろってことか。


「単純な話で、ここのコックを捻ると、上のシャワーヘッドからお湯が出てくる」


 壁際に体を寄せ、体が濡れないように注意してシャワーを出す。

 シャワーヘッドからシャワーが出ると、「おぉっ!?」と歓声が上がった。

 そんな珍しいか。


 まぁ、珍しいか。


「これが、噴水……か」


 違うぞ、ゲラーシー。

 覚えた言葉をとりあえず使ってみるのやめた方がいいぞ、頭悪く見えるから。


 お湯がもったいないのでさっさとコックを閉める。

 コックの開き加減で湯量は、多少ではあるが調整できる。

 ただし、お湯の温度は調整できない。

 そこまではまだ、技術が追い付いていない。


「原理を! 詳しく聞かせてはくれないかな!?」


 デミリーが物っ凄い食いついてきた。

 欲しいんだな、自分の区にも。

 大衆浴場、この後作るなら、ちょこっと併設させりゃいいんじゃねぇの?


「んじゃ、裏に回るか」


 ぎゅうぎゅう詰めのシャワールーム(男用)で見せられるものはもうない。

 これが女用だったら、水着を着たノーマあたりに実演してもらっていたところだが――


「やらないさよ」

「じゃあ、ネフェリー」

「やりません~っだ」

「パウラ」

「エッチ!」


 ダメかぁ。

 で、メドラ。ないから。

 こんなところで領主の大量殺人とか、俺、やるつもりないから。

 みんなそろそろ心臓が弱ってくる年齢なんだから、無茶を強いるなよ、心臓に。


 しょうがないので、ボイラー室へと回る。


 こっちの設備の方が重要だと思ったのか、かなり奥まった位置に作られている。

 これを破壊しようなんてヤツは出てこないだろうが……もしいたら、領民に袋叩きだろうからな。


「この辺、熱い管があるから気を付けるんさよ」

「なるべく壁からは離れて歩いてッス」


 この建物を作ったメイン二人からの注意が飛ぶ。

 そういうの、剥き出しにしとくなよ。


 え、仮設だから速度優先したって?

 本番ではちゃんと壁に埋め込む予定?

 いやもう、これでいいだろう、シャワールームくらい。


「うっわ、熱っ!?」


 ボイラー室を開けると、そこは熱気が立ち込めていた。

 バラバラと、高速回転する羽の音が響いている。


 おーおー、回っとるなぁ。


「これは……」


 ボイラー室の中を見たデミリーが言葉を失う。

 なかなか壮観だろ?

 何ヶ所か改良が加えられているが、概ね俺の設計通りだ。

 うっわ、ここ、チェーン使って小型化してやがる。


「ねぇヤシロ!」


 羽の音がそこそこうるさいからか、エステラが大きな声で俺を呼ぶ。


「なんなの、あれ?」

「なんちゃって蒸気機関だ」


 ボイラーで湯を沸かし、その際発生する蒸気を細い管を通して射出させる。

 その噴き出す蒸気を利用して羽根車を高速で回転させて、その動力をチェーンによってノリア――揚水機構を動かしている。


 ノリアってのは、バケツの付いた水車みたいなもので、低い位置の水をバケツで汲み取り、回転する水車の力で高い位置へ水を汲み上げる仕組みのことで、今回はそれを二基使用している。


 ボイラーで常にぐらぐらと湧いている熱湯を、シャワー室上部に設けたタンクへ汲み上げるノリアと、その熱湯を適温に冷ますための、真水をタンクへと汲み上げるノリア。

 それぞれのタンクからは、流れる水量を調整する細い管が出ていて、両方の管から出てくる熱湯と真水を混ぜるための調温タンクが設けられている。


 それで、水でぬるくしたお湯がシャワーから出てくるという仕組みだ。


 汲み上げはガンガン稼働させて、水流調整パイプで温度の調節をするイメージだな。

 ここの責任者は、責任重大だぞ。

 なにせ、シャワーを使う全員がその温度のシャワーを使うんだからな。


 めちゃくちゃデカいタンクを用意して、二十人が一斉にシャワーを使ってもなくならないくらいのお湯を溜めておけるようにした。

 とはいえ、無駄遣いすりゃお湯はなくなるけどな。


 なので、ルールはきちんと守って使用しろ。

 一人最大五分まで。


 それが、今の限界だろう。


「砂浜でついた砂粒や、海水に浸かってベタ付いた髪を、ここで綺麗にしてから自分の家に帰るなり、どこか宿へ泊まるなりすれば、かなり快適に過ごせるだろ?」


 そう教えてやると、デミリーがきらきらした目で賛同するように大きく頷く。


「それはいいね。潮風は気持ちいいけれど、長く浴びているとベタ付くからね」

「特に髪がな」

「うん、それは、ちょっとよく分からないけどね」


 と、にっこりと青筋を立ててデミリーが言う。

 あ、共感求める人間違えちった☆


「あと、ヤシロさんの設計図にはなかったんッスけど、手押しポンプで水を吸い上げて、個別にちょっとぬるく出来るようにしてあるんッスよ」

「アタシのアイデアでね!」


 と、キツネ二人が胸を張る。


 ホントだ。

 設計図見たら、調温タンクの下に、各シャワー個別のタンクが増えてて、そこに手押しポンプで水を汲み上げられるパイプが繋がってる。


 もう手押しポンプの改良版とか使ってんのか。


「技術、大放出し過ぎだろう」

「いやいやいや!? こんなとんでもない設計図仕上げてきたヤシロさんが言うセリフじゃないッスよ!?」

「しかもこれ、夜中にささ~っと描いてたんさよ。ホント、ヤシロの頭の中がどうなってんのか、一度見せてもらいたいもんさね」


 そうだった。

 ノーマが鍛冶場出禁になって陽だまり亭に泊まってた時に作ったんだっけな、この設計図。

 本来は、楽しく覗ける開放的な半露天風呂の設計図だったんだが、シャワーのところだけを採用されてしまった。


「デザインが、俺の考えたのとまるで違う……」

「あんたのデザインは、未来永劫採用されないさよ」


 そんな決めつけはよくない!

 いつか、「開放的な方がむしろエロくない!」っていう風潮が世間を席捲するかもしれないじゃないか!


「せぇへんで」


 やかましい!

 お前もこっち側の人間のくせに!


「真水は、川から水路を引いてここまで持ってきてるんッスよ」


 その水を使って湯を沸かし、熱湯を冷ます冷水プールに水を送っている。

 一応、水路に流れる水も、噴水と同様に水質チェックと修理のしやすい工夫はされている。


「なんというか、これまで培ってきた技術の集大成みたいな建造物だね」


 エステラが、やや圧倒されたように言う。

 まぁ、これまでの積み重ねがあったから、これがこの短期間で出来たってのはそうなんだろう。


 にしても、短期間で出来過ぎだけどな。


「この、蒸気の力を動力に変換するという発想が素晴らしいな」


 と、ドニスが激しく回る羽根車を見上げて言う。


「それを、あのチェーンという物と歯車で複数の機構を同時に動かすよう力を操っている……これは、いくらでも応用が出来そうですな」


 イベールもその構造に興味を示している。


「あのチェーンで羽根車の回転を向こうの大きな歯車に伝えて、パワーを上げてんさよ」


 高速回転する羽根車と大きな歯車をチェーンで繋ぐことで、回転速度を落とす代わりにトルク――パワーを上げることが出来る。

 変速ギアの自転車と同じ仕組みだな。


 これで、大量の水を屋根まで苦労なく汲み上げることが出来る。


「すごい発明なんじゃないのかい、これ……」


 エステラが、ちょっとビビッて尋ねてくる。

 あぁ、すごいぞ、これは。

 世界がガラッと変わる大発明だ。


「……手押しポンプの衝撃が、かすみそうな衝撃なんだけど?」


 なんでそんな恨みがましそうな目で見るんだよ。

 便利になっていいじゃねぇか。


「手押しポンプの情報解禁にも神経すり減らしてたんだけど?」


 じゃあ、もっとすり減らせ。

 手押しポンプの比じゃないから。


「しかも『なんちゃって』ってなに!? 君が思い描く『蒸気機関』っていうのは、これよりももっととんでもないものなのかい?」


 まぁ、蒸気機関って言えばピストンだからな。

 今回は回転運動。

 ピストンに求められる『速さ』よりも『パワー』を優先させた機構なんで、やっぱちょっと蒸気機関とは違うんだよ。

 なので「なんちゃって蒸気機関」だ。


 これが実用化されたら、地下鉄はまだ無理でも、鉄道は作れちまうからな。

 物流と交通が劇的に変化するぞ。


 まさに世界がひっくり返るくらいにな。

 うん、まだ黙っとこう。


「あぁー! また、なんかもっとすごいこと知ってるけど黙っとこうって顔してる!」

「聞きたいか?」

「まだやめとく……これ以上聞いたら、心臓が破裂しちゃいそうだよ」


「シャワーくらいがちょうどいいよ」と、遠い目をするエステラ。

 まぁ、今回はここにいる全領主が共犯だから、そこまで背負い込むなよ。


「な?」

「「「「今、こっちを見ないでもらいたい!」」」」


 肝っ玉の小さい領主どもが何人か一斉に背を向けやがった。

 感じ悪ぅ~い。


「まったく……とんでもない人だね、君は」


 ヴァルターが、呆れ切ったような顔で言う。

 なかなか肝が据わってるようだな、こいつは。

 少なくとも、平静を装おうとはしている。


 これで蒸気機関が誕生したら、石炭が大量に消費されるようになり、ヴァルターのいる鉱山の街三十三区は、劇的に生まれ変わることになるだろうな。

 中央より力持っちゃったりして。


「なんか今、寒気したんだけど……怖い笑顔でこっち見ないでくれるかい?」


 そして、勘も鋭いようだ、ヴァルターは。

 ふふふ、仲良くしような~、今後も、末永く☆


 というわけで、シャワーはあとで体験することにして、俺たちはシャワールームという名の要塞を後にした。


 やっぱ、ゴテゴテし過ぎるよなぁ、この外観は。




 シャワー室を出ると、ティムがいた。


「おぉ、来てたのか?」

「あぁ。目の調子がもっとよくなったからその報告にと思ってな」

「よぅなっとるんやったら、そらよかったわ」

「おぉー! レジーナさん! 今日はベティちゃんモードかぁ。やっぱ眩しいなぁ、あたすの光の女神!」


 全力だな、おい。

 めっちゃテンション高いじゃん。


「あぁ、そうか。久しぶりに女湯を覗けたから」

「ちげぇーってば!?」

「昔取った杵柄、いや、モッコシしとった洗い場やねぇ」

「言い直した方が間違ってんべって、だから! そんな綺麗な顔でドギツイ下ネタ言うなって、お嬢さんがさぁ!」


 こいつ、なんか美少女に幻想抱いてる系なんじゃねぇか?


「こいつ、薬の調合前に鼠径部触って手ぇ洗わなかった女だぞ」

「患者が不安になるようなこと言うなって、マジでぇ!」

「調合は、しとらへんかったで」

「あ、そうだっけ? わりぃわりぃ」

「そっか、調合さえしてなきゃ大丈夫だね、じゃねぇって!? 洗って、手! こまめに!」


 今日もティムが元気だ。


「ほな、ちょっと診てみよか?」

「え、いぃんかい?」

「まだ鼠径部触る前やけど、それでもかまへんのやったら」

「むしろそっち推奨だかんね、悪ぃけど!」


 そうなのか。

 なんとか真人間のカテゴリーにしがみ付こうと必死だな、お前。


「あれ? 予想よりもネバついとるな……点眼薬、効き目弱かったやろか?」


 ティムの目を覗き込んでそんなことを言うレジーナ。

 そして、あからさまに「ぎくっ」と肩を揺らすティム。


 ……ははぁ~ん。


「テメェ、目薬さぼってやがるな?」

「あ、そうだ。あたす、微笑みの領主様にご挨拶しに行かねぇと」

「ハムっ子! そのオッサンを取り押さえろ!」

「「「「あいあい、あーい!」」」」

「わぁぁあ!? なんか、めっちゃ同じ顔のお子様たちが!?」

「地面に押さえつけて、顔が動かないように固定して、まぶたを指で開けとけ」

「「「「ほほーい!」」」」

「いや、怖い怖い怖い! なんでみんなでまぶた開けようとしてんの!? 一人でよくない!? 一人でいいって! いや、マジで!」

「レジーナ、GO」

「ほな、ポタッとな」

「きたぁぁああー!」


 やかましいわ!

 その爽快感が好きなら、四の五の言わず毎日決められた時間に目薬さしとけ。


「ヴァルター、こいつを監視しといてくれ」

「いや、それは僕の権限を越えてるよ。……っていうか、ウチのブラザーと仲良過ぎじゃない? 一泊二日で、こんな風になる?」


 それは、お前んとこのブラザーがそーゆー人間だったからだよ。

 こいつ、その一泊二日で何回も懺悔させられてたんだぜ?


「お前ぇさんのせいだよ、大半が! 乗せられたの、あたすは!」

「乗せられてオイタをする子は、ダメですよ」

「おぉ、店長さん! 今日はまた特別に別嬪さんだなぁ。地べたに寝転がったままで悪ぃけんども」

「ハムっ子さんたち、そろそろ解放してあげてください」

「「「は~い!」」」


 ジネットが言うと、ハムっ子が一斉にティムの上から退く。

 すげぇなジネット。

 ハムっ子遣いみたいだ。


「ヤシロさんには敵いませんよ」

「いやいや、ご謙遜を」

「おにーちゃん! もう終わった? 遊ぶ?」

「わーい、あそぼー!」

「でぇーい! 飛びついてくるな! 重いんだよ!」


 次々に飛び掛かってくるハムっ子を千切っては投げ千切っては投げ……えぇいキリがない!


「ロレッタ!」

「はいです! あたしも混ざればいいんですね!?」

「違うわ! 止めろ!」


 なんで混ざりたがってんだよ!?

 あぁ、そうか!

 遠出してテンション上がって、アホの子になってんのか。

 残念長女め!


「あの、お姉さん」

「はい。あ、ユナさん。舞台の片付けは済みましたか?」

「はい。それで、あの……お兄さんは、どういう人、なんですか?」

「お兄さん……、あ、ヤシロさんですか?」

「はい。えっと……領主様、じゃないんですよね?」

「ヤシロさんは、ウチのお店で一緒に働いてくださっている従業員さんですよ」

「えっ……じゃあ、お姉さんの部下、なんですか?」

「ウチのお店に上司や部下という関係はありません。みんな一緒に働く仲間です」

「そう、なんですか……」


 俺がハムっ子にまとわりつかれている間に、ユナがジネットを見つけて寄ってきたらしい。

 すっかり懐いている様子だ。


 つか、多いんだよ、ハムっ子!

 ルシアが手あたり次第招待なんかするから!

 年長だけでよかったんだよ、呼ぶの!


「なんだか、みんながお兄さんの言うことを聞いて、一つになっているって……そんな感じでした」

「ヤシロさんは、人気者ですから」

「……怖い方、なんでしょうか?」

「とても優しい方ですよ。今も、ティムさんの目の病気を心配して……あ、そうです!」


 とことこと、ジネットがこちらに歩いてくる。

 途中で、妹の群れに次々くっつかれているが、イヤな顔一つせず、全員の頭を撫でてやっている。


 菩薩がいる。


「ヤシロさん。ユナさんなんですが」

「あぁ、そうだな」


 まとわりついてくるハムっ子をロレッタに押し付ける。


「ティム、ちょっといいか?」

「なんだべや?」


 目がすっきりして気持ちがいいのか、ちょっと上機嫌な様子だ。

 なら、毎日ちゃんと使えっての。


「精霊教会に預けられた者は、元の家族とは会えないんだっけ?」

「まぁ、滅多に会うことはねぇけんども、会っちゃいけないわけじゃないから、精霊神様がお許しになるなら、また会うこともあんじゃねぇかねぇ~。まぁ、あたすはもう会うことはないだろうけんども」


 ってことは、これは精霊神が許したってことなのか?

 やっぱ、何か意味があるんだろうか……

 ったく、精霊神のくせに思わせぶりな。


 隣にいたレジーナと視線をかわす。

 レジーナもこちらを見ていて、俺の言いたいことが分かったようで、一つ頷きをくれる。

 それじゃ、いくぞ。


 せーの――


「「ところがモッコシ」」

「なんのアイコンタクトだったん、今の!? 必要だったかなぁ、今の!? で、『ところがどっこい』だかんね、言うなら!」


 いや、言うチャンスがあったもので。

 とりあえず、レジーナとはハイタッチをかわしておく。


「お前、ニーヴって名前、知ってるか」

「なっ!? ……っくりしたなぁ、もう。なんでお前さんがあたすのファミリーネーム知ってんべや?」

「あそこにいるのは、ユナ。話から推察するに、お前の従姉妹に当たる少女だ」

「あたすの!?」


 ティムが驚き、ユナの顔を見る。


「あぁ……ホントだ。どことなく、ナウロ叔父さんに似てる、かもしんない」

「父をご存じなんですか!?」

「あぁ。叔父さんには世話になったかんねぇ。あたす、兄弟の小っちゃい方だったから、足手まといでさぁ。叔父さんによく面倒見てもらってたんだ。ほら、叔父さんはお世辞にも炭鉱向きの体じゃなかったっしょ? でも、優しい人だったよなぁ」

「そう言っていただけると……父も喜んでいると思います」

「叔父さんは?」

「亡くなりました、もう、何年も前に」

「そっか……んじゃ、お前さんは一人で頑張ってたんだな」


 言って、ティムがユナの頭に手をのせる。


「よく耐えて、今まで生きてきた。お前さんはえらい。叔父さん譲りの強さを持ってんだな。あたすは、お前さんを誇りに思うよ」

「ぁ…………」


 言われたユナの目から、大粒の涙が音もなく零れ落ちた。


 そりゃそうだ。

 こんな小さい少女が一人で生きてきて、つらくなかったわけないんだ。

 ちゃんと認めてもらえて、嬉しいよな、そりゃ。


「やるな、ティム伯父さん」

「いや、伯父じゃないかんね!? 従兄弟、従姉妹!」


 いや、見た感じもう伯父さんじゃねぇかよ。

 ムリすんなよ、オッサン。


「ティム爺」

「やめてくんない!? まだまだ若いからね、悪ぃけんど!」


 お前が若さを求めて、何する気だよ?

 もういいだろう、ジジイのカテゴリーで。


「まぁ、あれだ。頼りないかもしんないけど、こうして会えたのもきっと精霊神様のお導きだ。何かあったら、三十三区教会を訪ねておいで。あんま頼りにはなんないかもしんないけど、あたすは、いつだってあんたの味方だから」

「……っ、はい……ぁりがと……ぅ、ござぃ……」

「あはは、泣くことないって。あたすも、こんな可愛い従姉妹に会えて嬉しいし。あ、それより、もしどうしようもないくらい困ったことがあったらこっちの兄さんを頼んな。あたすの知る限り、一番頼りになって、一番のお人好しだから、この兄さんが」

「おいジネット。教会のブラザーが大嘘吐いてるけど、カエルにしていいか?」

「ふふ。たぶんですけど、ならないと思いますよ?」


 いやいや。

 いくら教会のブラザーだからって『精霊の審判』一回無敵権とか持ってないだろう、さすがに。

 持ってたらズルなんてもんじゃねぇぞ、それ。

 俺も入信して一回分の無敵権欲しいわ、だったら。


「兄さんと店長さんに感謝だな。今日は来てよかった」


 そんな風に、ティムは嬉しそうに笑っていた。







あとがき




お風呂大好きマン、宮地です☆


いえ、10代のころはお風呂がめんどくさくて

もっぱらシャワーで済ませていたんですが

最近、半身浴が気持ちよくて、

ついつい長風呂を

(*´ω`*)


いつか、一番風呂大好きおじいちゃんになるんでしょうか


そういえばおじいちゃんはお風呂好きなイメージですねぇ

近付いてきてますね~(笑)



さて、

『スキルマ剣姫と歩くトラットリア』

完結いたしました!


あちらは、あんな感じで終わってみました!


……しまった!?

こっちではネタバレ出来ないから内容について何も語れない!?

Σ(゜Д゜;)


完結記念にMV作ったので

よかったら見てやってください☆


リンクはこちら☆

https://youtu.be/jfWaieIhosI

『扉のむこうで、きみと』


この動画の前に、

パイオッツァーのEDのMVを、キャラたちの日常シーンをスライドショーで作りまして

「このキャラたち、普段こんな感じなんだ~」っていうのがちょっと楽しくて


で、英語歌詞アレンジでデフォルメキャラを動かしてみたらこれまた可愛くて



じゃあ、合わせたら可愛くね?

と思って、デフォルメキャラが日常シーンを送っている感じのMVになりました

可愛いですよ☆(*´ω`*)



ともあれ、完結できてよかった。

中途半端はいけませんものね


……まだ、中途半端なものもあるんですが、それはいつか、追々



異世界詐欺師も、いつかはちゃんと完結させたいですね……

いや、異世界詐欺師はもう完結しているんですよ!


今やってるのは、盛大な後日譚なわけで

(^^;


まぁ、本当に最後の最後は『グランドフィナーレ』とか言って盛大にやりましょうかね~


いつになることやら……

コナン君とどっちが先に終わるか、勝負ですね!

コナン君より20年遅く始まってますけども!

じゃあ、コナン君終了後から20年くらいは続けても平気そうですね☆


わぁ、作者が後期高齢者☆


……いや、まだだわ!?Σ(゜Д゜;)



さて、本編ではシャワーが登場です!

ちなみに、


密閉空間でお湯を沸かして蒸気を逃がす、このヤシロのなんちゃって蒸気機関

実際ちゃんと作れば動きます、が――


危険ですので、決してマネしないでくださいね☆


密閉空間で蒸気を発生させると爆発の危険があります

今回作中に安全弁のお話を入れられなかったので、作中の描写だけで復元はなさいませんように!



蒸気機関が出来て、ミシンが出来て、鉄道とか走ったら、

産業革命起きちゃいますね☆


なんちゃって産業革命です☆



経済が回って、景気がよくなって、バブル期のように浮かれた世界になれば

ノー〇ンしゃぶしゃぶの誕生も夢ではない!

Tバック穿いたボディコンギャルがお立ち台で扇子フリフリ踊る日も遠くない!


頑張れ産業革命!

(≧▽≦)/



……ヤシロさん、ほどほどに、ね?

(・_・;



さて、

先日ですね

ベーコンとアスパラのビスマルク風ピッツァ

っていうのを見かけまして


あれ……ピッツァ?

パイッツァ?

パイオッツァーだったかも……


いや、ピッツァですね

似てましたけど、ピッツァです、たしか



で、「ビスマルク風」とは?

と、なりまして、


私にとって『ビスマルク』って、鹿島アントラーズにいたサッカー選手なもので

ゴール決めた後のお祈りはお決まりでした


ビスマルク風……お祈り?

(・_・)?


分からないのでAIに聞いてみましたところ、

半熟卵がのっているピザやパスタが『ビスマルク風』というらしいです


なんでも、ドイツのビスマルク宰相という人が、卵大好きっ子で

そこから名前を取っているらしいです

ちなみに、アントラーズのビスマルクもこのビスマルク宰相から名前をとったとかなんとか


なるほど、

なかなか美味しそうです



で、まぁ、一応?

AI相手といえども、思いついたことは言っておかないと、と思いまして

ウィットに富んだジョークをAIに投げてみたんです



宮地「そう言われてみれば、アントラーズのビスマルクの頭にも半熟卵がのってた気がする。うん、のってたのってた!」


Copilot「ビスマルク選手の頭に半熟卵はのっていません」

ChatGPT「新たに得た記憶と過去の記憶が混在している可能性があります」

Gemini「汗と照明の関係でそのように錯覚したのではないでしょうか」



 (;゜Д゜) いや、真面目か!?



あとGemini!

ねぇーよ!?


まだまだだなぁ、AIは


AI「そうそうそう、それでシュート決める時に頭の上で半熟卵が『とぅるん』ってして観客が『美味しそう~!』って――なるかっ、ばかっ!」


くらい言ってくれればいいのに!

(>へ<;)


いつか、そんなAIが誕生してくれることを祈りましょう

ビスマルクのように


あ、いや、半熟卵を頭にのっけてじゃなくて

サッカーで点を入れた時に祈りを捧げるのがお約束でね?

そっちの意味のビスマルク風で……

ビスマルク選手の頭に半熟卵はのってません!


AI「真面目か!?」



四十二区にも、いつかAIとか登場するんでしょうねぇ

ヤシロたちが関わると、高確率で「おっぱい」ってワードが出てきますけどね☆


そんな素敵なAI、誕生しませんかね~

ほら、多様性、多様性♪

そんなAIがあってもいい☆


いつか、ヤシロAIが誕生した暁には

是非皆様、使ってくださいね☆


あ、レジーナAIはやめておいた方がいいですよ。

一度くぐると戻ってこられない扉が開いてしまう危険がありますので

……お気を付けください


そして、久しぶりにレビューをいただきました!

\(≧▽≦)/



2026年03月02日 21時07分の方!


ありがとうございます!

プレゼン風にまとまったレビューで見やすく、内容も遊び心満載で面白いです!


やはり、各種そろえたことが功を奏しましたね☆

幅広い層の方からご声援をいただいております(笑)

こうして楽しんでいただけるのが一番嬉しいです


どうもありがとうございました!



というわけで、すごくいい気分で、今回は締めさせていただきます☆


次回もよろしくお願いいたします

宮地拓海

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!祝800話!おめでとう御座います!是非サザエさんより長く続けて下さい。ノーマさんとウーマロ氏の「やったったぜ!」がカワイイですね!なんちゃってとは言え蒸気機関作ってしまう御三…
どうも。800エピソード、おめでとうございます!! 記念すべき回でリカルドさんの照れ顔と兄貴面をありがとうございます! ヤシロさんとリカルドさんも仲が良さそうでなによりです☆ レジーナAI『捗るわー…
テンション上がったルシアほんと好き 投げキッス自爆めちゃくちゃ可愛かったからまたしてくれw
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