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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第四幕

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432話 司祭と陽だまり亭

 エステラとデリアへのお礼を渡して、領主たちに会いに行くと店を出て行くエステラとナタリアを送り出し、じゃあ俺たちもウクリネスの店へ出かけようか~となった時、ベルティーナが陽だまり亭へやって来た。


「まだ何も作ってないが?」

「ご飯の時にばかり来るわけではありませんよ」


 いや、ご飯の時にばっかり来るじゃん。

 というか、ご飯の時は必ず来るじゃん。


「実は、光の祭りについて詳しく知りたいという教会の関係者をお連れしたのです」


 そう言って、店先に停まっている簡素ながらも作りのしっかりとした馬車を振り返る。

 地味だが、丁寧に作られている。

 これ、そんじょそこらの貴族の馬車よりグレード高いぞ。

 見た目の派手さこそないが、いい出来だ。


「すごい馬車だな」

「ふふ。さすがですねヤシロさん」


 ベルティーナによれば、これは王族関連の仕事も手掛けるような一流の大工の手によるものだそうだ。


 そりゃさぞかしお高い買い物だったのだろう……と思ったら、寄付だってさ。

 すげぇな、教会。


 で、こんな豪勢な馬車に誰が乗っているのかと思えば――


「お久しぶりですね、オオバさん、ティナール」


 馬車から出てきたのは、三十五区教会の婆さん司祭だった。


「司祭様、またお会いできて光栄です」

「変わりがないようで安心しました」


 歩み寄ったジネットの髪を撫で、婆さん司祭はにこりとシワを深くする。


「あなたもね、オオバさん」

「なんで俺だけさん付けなんだよ」


 教会の偉いさんに敬われる覚えはねぇぞ。


「出来ることなら、私も『ヤシロさん』とお呼びしたいくらいだわ」

「好きに呼べばいいけども」


 その代わり、俺は口調を改めないぞ。


「ジネット。司祭様は長旅でお疲れなのです。もし可能であれば、陽だまり亭で少しお休みいただきたいのですが」

「はい。もちろんです。どうぞ、店内へ」

「ありがとうございます、ジネット。どこかへ出かけるところだったのでありませんか?」

「いえ。急ぎませんので」


 ベルティーナがわざわざ伺いを立てている。

 ってことは、陽だまり亭に来たのは休憩が目的ではないってこと、だな。


「実はウチには手羽先って名前のニワトリがいてな。司祭様にお目通り願えれば、明日以降も美味い卵をたくさん産んでくれるようになるかもしれないなぁ~とか思っているわけなんだが、顔を見てってやってくれないか?」

「うふふ。本当に聡い子ね、あなたは」


 中庭に寄ってけよと誘えば、婆さん司祭は相好を崩して鷹揚に頷いた。


「では、そのニワトリさんにご挨拶をさせていただきましょう。美味しい卵は、生活を豊かにしてくれますからね」

「ついでにケーキでも食っていくか?」

「それは素敵な提案ね。では、お言葉に甘えるとしましょう。ベルティーナも、ご一緒いたしましょう」

「はい。司祭様」


 教会の奢りか?

 やったなベルティーナ。好きなだけ食っていいぞ。


 婆さん司祭が店内へ入ると、御者は静かに馬車を発進させ、教会の方へと行ってしまった。

 婆さん司祭を教会まで歩かせる気か?

 それとも、あとでまた迎えに来るのか?


 ……まさか、陽だまり亭で一泊預からせる気じゃないだろうな?

 働かせるぞ、そんなことを言い出したら。


 なんとも言えず、とりあえず俺も店内へ入る。

 あの婆さんの目的は、手押しポンプの視察だろうからな。


「まぁ……綺麗になったのね」


 かつて、四十二区教会で暮らしていた時期もあったという婆さん司祭。

 かつての陽だまり亭に来たこともあるようで、リフォームされた店内を興味深げに見回している。


「でも、面影はしっかりと残っているのね。今にもティナールがあそこから出てきそうだわ」


 と、カウンターの向こう、厨房の方へと視線を向ける婆さん司祭。

 このティナールってのは、ジネットの祖父さんのことだな。


「出てくるかもしれませんよ。この街では、不思議なことがよく起こりますから」


 そんなことを、にこやかな顔で言うジネット。

 それは決して嘘ではなく、冗談でもなくて、ジネットがここで体験した不思議な思い出の話だ。


「そうね。こんなにも大切にされているのですもの。そういうことが起こっても、不思議ではないわね」


 八百万の神を信じているわけでもないだろうに、婆さん司祭はフロアのテーブルを撫でてそんな言葉を漏らす。


「どうぞお座りください。今、お茶をお持ちしますね」


 ベルティーナやジネットの接し方から、婆さん司祭の立場が分かったのか、マグダやロレッタは大人しくしている。

 デリアですら、声をかけてこようとはしていない。


 婆さん司祭に失礼を働くと、ベルティーナに怒られるって、肌で感じてるんだろうな。


「休憩の前に用事を済ませてしまいましょう。中庭に案内していただけるかしら?」

「はい。カウンターには段差がありますので、足元にご注意くださいね」

「そうなんだよ。ジネットがよく躓く段差がな」

「うきゅっ!? そ、……そんなには躓いていませんもん」


 ここの持ち主なのに、他の誰よりも躓いてるだろうが、お前。


「うふふ」と婆さん司祭に笑われ、ジネットが可愛らしく俺を睨む。

 そういう顔をするからイジメたくなっちまうってのに。


「フロアを頼むな」

「……任せて」


 みんなに声をかければ、マグダが代表して返事をくれる。

 あんまり騒がしくしないようにしてんのかね。


 なんか変なオーラとか出してんのか、この婆さん?

 俺には、ちょっと上品な小さい婆さんにしか見えないけどな。


「こちらです」


 ジネットが婆さんを先導し、中庭へと出る。

 さっきまでとは異なり、すっきりとした広い空間が確保されている。

 さっきまでは前のめりな連中がみっちり詰めかけていたからな。


「まぁ、これが……?」

「はい。手押しポンプです」

「思っていたより小さいのねぇ」


 井戸の水を汲み上げる装置だという情報から、もっと巨大なモノを想像していたようだ。

 水道と蛇口に慣れている日本人にとってはデカい手押しポンプも、こっちの人間にはすっきりシンプルなデザインに見えるようだ。


 まぁ、水道を作ろうとしたら川の上に巨大な浄水タンクが必要になるような街だからな。

 このサイズで水汲みの労力から解放されるとなれば、驚きなのだろう。


「では、使ってお見せしますね」


 婆さんにやらせることなく、ジネットが手押しポンプを作動させる。

 数度レバーを動かしただけで、勢いよく水が流れてくる。


「まぁ。本当に便利ね」

「これは、すごいですね、ジネット」

「はい。重さもさほど感じず、本当に簡単に使えるんですよ」


 そう言って、ベルティーナに場所を譲る。

 婆さんの前にベルティーナが確認するのね。

 ホント、大切にされてるんだな、司祭って。


「まぁ。これはすごいですね。……少し、楽しいです」

「うふふ」


 ちょっとはしゃぐベルティーナを見て、ジネットがにこりと微笑む。

 ここは、いつも見ている母娘の風景だな。


「司祭様。お試しになりますか?」


 清流のように清らかな表情で、ベルティーナが婆さん司祭に問いかける。

 いつも見せる暖かい微笑みとは、ほんの少しだけ種類の違う笑みに思えた。


「そうね。体験させていただきましょう」


 言って、婆さん司祭がレバーに手を添える。

 ちょっと危なっかしく見えたので、思わず手を添えてしまった。


「ふふ。あなたは、心配性なのね」

「あ……いや」


 なんだろう。

 そんなつもりはなかったのだが、つい手が出てしまった。


「年寄り扱いが気に障ったなら、すまん」

「ヤシロさんっ」

「うふふ。いいのよ、ベルティーナ。悪意は感じられないもの。きっと、彼なりの照れ隠しなのね」


 そういうことは、思っても口にしないのが大人のマナーだろうが。


「一人でやらせてね」

「へいへい」


 少し距離を取り、婆さん司祭がレバーを動かす様を見守る。


 年は取っていてもどこかを悪くしているようなことはないらしく、危なげもなく手押しポンプを使いこなしていた。

 まぁ、馬車で四十二区まで来れるくらいには元気なんだもんな。当然か。


「想像以上に軽いわね。これなら、子供でも安全に使用できそうね」

「ヤシロさんが生み出すものは、みんな子供たちにとって安全なものばかりなんですよ」

「いろいろ間違ってんぞ、ジネット」


 俺が生み出したもんじゃないし、ガキには触れさせないものもいろいろ作ってるっつーの。


「今日は、多くの領主様がお見えだったようだけれど、これを広めることで合意したのかしら?」

「あぁ。詳しくは、エステラに聞いてもらいたいところだが、外周区と『BU』の合同開発ということで王族へ献上することになると思う」

「そう……」


 短く言って、婆さん司祭はまぶたを閉じる。

 たっぷりと思考して、再びまぶたを開けて俺を見る。


「あなたの生き様が、それだけ多くの者を動かしたのでしょうね」


 王族への献上は、有象無象の貴族から身を守る盾を得る手段だ。

 それを成し遂げるためには多くの協力者が必要になり、俺はその協力を取り付けることに成功している。


 それは、俺のこれまでの行動が実を結んだ結果か……いや。


「単に、儲け話の匂いに敏感な連中が多いだけだろう」


 四十二区と友好を結ぶことは、他区にとっても利益になる。

 そういう側面も、きっとある。


「ふふ……そうね。そうであるのかも、しれないわね」


 婆さん司祭は、ゆっくりと頷き、「よく分かりました」と呟く。

 何が分かったんだかな。


「この新たな道具の普及は教会の監視下において迅速に進めることといたしましょう。柔らかいパンの時と同様、発案者は秘匿とし、それを探ることを禁止いたします」


 教会が監視することとなれば、木っ端の貴族は下手に動き回れなくなるだろう。


「そうね。発案者が秘匿となる以上、外周区及び『BU』の技術者や職人を強引に引き抜く行為は当面禁止となるでしょうね。万が一、強引に引き抜いた技術者が手押しポンプの発案者だったならば、今後この街の発展に大きな影を落とすことになりかねませんものね」


 という建前で、貴族からの横槍を教会が抑え込んでくれるということらしい。


「本人が望んで行くのでない限り、技術者の流出はこれを厳しく戒めるものとします」


 本人が望んでいるなら好きにしろってことらしい。 

 そりゃそうだ。

 中央区への進出を虎視眈々と狙っている野心家はたくさんいるだろうからな。


「今後も、人類に光をもたらしてくださった精霊神様のように、人々に幸福をもたらす新しいアイデアの誕生を望みます」


 協力してやるから、今後も何かあれば技術を寄付しろって?

 かぁ~、したたかだねぇ、教会ってやつは。


「あなたは、精霊神様の化身のような方ですね」


 何を思ってそんなことを言ったのかは分からんが、こちらを見てにこにこしている婆さんの顔にはっきりと言っておく。


「そんな悪口を言われたのは初めてだよ」


 耄碌するには、まだちょっと早いんじゃねぇのか、婆さんよぉ。




「まぁ……、美味しい」


 中庭で、俺が精霊神の化身みたいだなどという超弩級の暴言を吐きやがったクソババアに「耄碌してんのか?」という趣旨のことを問いかけてみたところ、ベルティーナが物凄くにこやかに怖い顔をしていたので、大至急賄賂を贈ることにした。


 ここ四十二区にある、陽だまり亭でしか味わえない新しいデザート、アイスクリームでございます。


 ……だって、罪を祓う聖法衣とか持ち出しそうな雰囲気だったんだもんよ。

 司祭には悪口も言っちゃいかんのか。

 これだから権力者は!


「これもあなたがお考えになったの?」

「俺の故郷にあった食いもんを紹介しただけだ」

「そう。……ふふ、そうだったわね」


 何が「そうだったわね」だよ。

 お前に「そうだったわね」なんて言われるような共通の思い出なんぞ数えるほどもねぇぞ。


 ってことは、ベルティーナあたりが与えた情報と照らし合わせて自己完結しているのだろう。

 盛大に曇った、世界がキラキラして見える分厚いフィルターのかかった目で見た情報とな。


「牛のミルクに、このような食べ方があるだなんて」

「すべてを知ろうとするのは人間のエゴで、すべてを知った気になるのはただの無知だ」


 知らないことなど、世界中にいくらでもある。

 俺でさえ、すべてを知り尽くしているジャンルなど存在しないというのに。


 この俺ですら知らないおっぱいの真実がきっとある!

 秘密のベールに包まれたおっぱいが、必ず!


 調べねば!

 探求せねば!

 ベールを剥ぎ取りじっくり見ねば!

 よく見て、よく突っついて、よく弾ませねば!


「おっ………………っと、てやんでぃ」

「今、何か違うことを言いかけていませんでしたか?」


 ベルティーナがにこりと笑みを深める。


 おっぱいって言いかけたところ、ジネットとベルティーナと婆さん司祭が全員こっちを見ていたので急いで口を閉じたぜ。

 セーフ。


 今日の懺悔は長くなりそうだからな。

 なんだこの懺悔オールスターズ。

 見つめられると素直におしゃべりできなくなっちゃうぞ、っと。


 しょうがない、真面目な話でもしておくか。


「新しいものを求める気持ちも分かるが、従来のものを見直す目も持ってほしい」

「従来のものを見直す目、ですか?」


 ベルティーナは、教会の規律を乱すようなことはしない。

 おかしいと感じつつも、教会が決めたことだからと恭順することが稀にある。


 何より、不和を生みそうなことは避ける傾向がある。


 なので、一つ飛び越えて婆さん司祭の耳に入れておこうと思う。

 今すぐ改革しろとは言わない。

 だが、そのおかしさを意識のどこかにしっかりと刻み込んでおいてもらうために。


「グラタンって料理があるんだけどな」

「とても美味しい料理なのですよ、司祭様」

「作るのか、ヤシロ!? あたい、カボチャのがいい!」


 関係ない食いしん坊が二人も食いついてきた!?


「今日は祭りの準備があるんだから、時間のかかる料理はまた今度だ」

「えぇ~、さっき作ってくれるって言ったのにさぁ~」


 それ、今日とは言ってないよな!?

 え、今日のつもりだった!?


「では、急いで作ってきましょうか?」

「やったぁ!」

「いや、ジネット……」

「急ぎますので。……ね?」


 いや、「ね?」って……はぁ。ったく。


「じゃあ、ちょうどいいから、厨房まで見に来てくれるか? 必要なら、椅子を用意するから」

「お気遣いありがとうございます。でも、平気ですよ」

「完成まで結構時間がかかるぞ」

「あら、そうなのですか? ……では、念のため、用意しておいていただきましょうか」

「ロレッタ、厨房に椅子を運んでやってくれ」


 厨房にも椅子はあるのだが、簡素な木造の丸椅子なので、決してくつろげるようなものではない。

 年寄りには、背もたれと肘掛け付きの方がいいだろう。


「ジネット、マカロニグラタンを作るぞ」

「マカロニですか。分かりました」

「ベシャメルソースでな」

「それは、随分と久しぶりですね」


 ジネットが嬉しそうに声を弾ませる。


 教会のルールのせいで滅多に作れない料理、マカロニグラタン。

 その理由は……


「小麦粉を使用し、石窯で焼いたものは教会の定めるところのパンに該当する。……だったよな?」


 つまり、マカロニグラタンは、この街では『パン』になってしまうのだ。


 いや、おかしいだろ!?

 というか、ドリアなどに使用するベシャメルソースも、小麦粉を使用しているのでパンに該当する。

 ベシャメルソースを使った場合、使用した小麦粉の量を計って、きっちりと税を収めているんだぞ。

 税を収める時、俺は般若のような顔をしているらしいので立ち会うことはなくなったのだが……無自覚でそんな怖い顔をしていたとは……ジネットが気を遣ってくれてるんだよなぁ。


「パンの定義がガバガバ過ぎる。そのせいで制限されているものもたくさんある。そのクセ、抜け道がいくらでもあるからその気になれば教会のパンを追い落とす脅威にだって平気でなり得る」


 俺は、あんドーナツやフライパンで焼けるパンについて説明し、石窯ではなく鉄のオーブンを使用すれば教会のルールを破ることなくパンが作れてしまう可能性を指摘した。


 ラーメン講習会の時に、クッキーやフィナンシェ、ラングドシャのレシピは教会へと寄付されている。

 それらの焼き菓子がパンとは競合しないことは、教会ももう理解しているはずだ。


 競合しないクッキーがパンに分類され、パンの地位を脅かしかねない類似品のフライパンで焼くパンはパンの定義から外れる。

 パンのルールを明確にするだけで、その辺の歪さは解消されるだろう。


 もしかしたら、そうすることでクッキーなどの焼き菓子がパンではなくなり、もっと安価に、教会以外の店に並ぶようになるかもしれない。


 誰でも気軽に購入できる甘いおかしが増えることは、教会が目指す幸福な生き方に沿っているのではないか?

 お前らの大好きなガキどもが大喜びするぞ。

 ついでに、飲食店も利益が上がって大喜びすることになる。


「教会がパンの製造に規制をかけるのは、主食が権力者に独占され食うに困る者が出ないように。また、不作や飢饉が起こった際も、教会が主食を管理して国民に分け与えられるように、だろ?」


 本当は、主食の権利を握って利益を独占したいからかもしれんけどな。

 ベルティーナと近しい考え方の司祭なら、俺の言ったような理由を支持するだろう。


「なら、その理念が曲がらない範囲でルールを見直す必要があるんじゃないだろうか? 新しいものを求める時には、古いものをもう一度見直すことも必要だ。故きを温ねて新しきを知るという言葉もある。変えられないことは多々あるかもしれんが、変えようとする心までもをなくさないでほしい」


 今すぐ変革が起こるとは思っていない。

 だが、何もしなければ何も始まらないのだ。

 湖に投げた小さな小石がやがて大きな波紋を生むように、意味のないことに見えても働きかけることが必要な時もある。


「そうですね。今ここで返事をすることは難しいですが、私の心にはとどめておきましょう」


 こうして、誰か一人の心を動かしておけば、その小さな変化が大きな変革を生むこともある。

 いつか大きく様変わりする可能性が、今生まれたわけだ。


 つーか、新しいパンで儲けが出てるんだから、あからさまにパンでもないような料理からもちまちま税金取ってんじゃねぇーよ!

 なんでグラタンやドリアでパンの税金払わなきゃいかんのだ!

 ふざけんなっつーの!


「あとは焼き上がるのを待つだけなのですが、司祭様、お時間に余裕はありますか?」

「えぇ。今夜はベルティーナのところに泊めていただくことになっていますので、もう少しでしたら構いませんよ」

「では、せっかくですので、先ほどお話にあがったクッキーとフィナンシェも召し上がってください」

「あらあら、楽しみだこと。私、実はまだいただいたことがないのですよ」


 孫のお手伝いを眺める祖母のような柔和な笑みを浮かべて婆さん司祭が笑い、俺の方へと視線を向ける。


「では、せっかくですので、あんドーナツというものと、フライパンで作れるパンというものも見せていただけるかしら?」


 おぉう……なんかロックオンされてる。


「……叱らない?」

「お約束します。違えた時は、『精霊の審判』をかけてくださっても構いませんよ」

「司祭様!?」


 ベルティーナが焦って駆け寄るが、婆さん司祭はくすくすと肩を揺らすだけだった。

 ……趣味の悪い冗談なんだろうな、きっと。

 教会の司祭をカエルになんぞしたら、誰に何を言われるか。


 じゃあ、叱られないってことで、作ってやるかね、グレーゾーンのパンたちを。




「ロレッタ、悪いんだがウクリネスに伝言を頼めるか?」

「はいです。乙女さんたちの浴衣をお願いしてくるですね」


 予定が変わり、ウクリネスの店に行くのが遅れそうなので事前に用件を伝えておく。

 ウクリネスなら、過不足なく準備をしておいてくれるだろう。


「ウクリネスは、ノーマとルアンナの浴衣を知ってるから、そんな感じで見繕っておいてくれって言っといてくれ」

「分かったです! 乙女さんたちが可愛くなる浴衣をお願いしてくるです!」

「金は、領主たちの寄付から出させるので、エステラに請求してもらってくれ」

「分かったです!」


 返事をすると同時に厨房を飛び出していくロレッタ。

 あいつなら、ウクリネスに何を質問されてもちゃんと返答できるだろう。

 他のハムっ子だと、それが出来ないから不安なんだが、そこはさすが長女といったところか。


「んじゃ、生地を作るか」

「お手伝いしましょうか?」

「ジネットは焼き菓子の方を頼む。こっちは基本待ち時間が長いだけだから」


 パンの生地を作るのはそこまで難しくはない。

 ただ、発酵させ、寝かせるベンチタイムが長いだけで。


「ちなみに、パンの類似品の検査って特例を認めてくれるなら、ピザなんかも焼いちゃうんだけどなぁ~」

「是非食べた……いえ、でも特例を乱用するわけには……」

「いいじゃありませんか」

「司祭様!?」

「非常に重要なことのように思います。私の名において、今ここでの特例を認めましょう」

「よろしいのですか?」

「彼が、今このタイミングで口にしたということは、教会にとって有益な情報であり、私が知っておいた方がいいということでしょうし、それに……」


 ベルティーナを見て、からかうような笑みを浮かべる婆さん司祭。


「あなたの喜ぶ顔も見てみたいですからね」

「そんな理由で…………もう」


 教会関係者が教会のルールを軽んじるような発言をするのは結構危ない行為なのだろう。

 ベルティーナがハラハラしている。

 なんか新鮮だな。


「奔放な婆さんだこと」

「ヤシロさん」

「おっと、声に出てたか?」

「……もぅ」


 ベルティーナに叱られる。

 でも、婆さんは婆さんだろうが。


「けど、司祭様も気を付けてくださいね。お叱りを受けるだけでは済まないことだってあるのですから」

「そうね。気を付けましょう」


 司祭なんて立場にいると、相応の権力と共に、同程度の義務を負うことになる。

 付け入ろうなんて敵も増えるだろうし、弱みを見せるわけにはいかない窮屈な生活を強いられるものなのだろう。


「でもね、あなたのそばにいると、年若かったころを思い出して、ついつい無茶をしてしまいたくなるのよ」

「もぅ……、そういうところはまったく変わらないのですから、あなたは」


 お茶目に笑う婆さん司祭を、ベルティーナが「あなた」と呼んだ。

 ベルティーナにとって、婆さん司祭は上司であり、共に過ごした思い出を持つ娘でもあるのだろう。


「いいんじゃないのか、そこまで気を張ってなくても」


 ベルティーナが随分と気負っているように見えて、そんなことを言いたくなった。


「それなりの年齢になったあとも、甘えられる存在がいてくれるってのはありがたいものだぞ」

「そう思っていただけるのは嬉しいのですけど……」


 それでも、司祭という役職の人間が奔放に振る舞うのはハラハラしてしまうらしい。


「じゃあ、四十二区にいる間だけは、ベルティーナの娘に戻ってもいいってルールにしとけばいい。人生にはメリハリが大切だからな」

「四十二区の中でも、きちっとしていただかなければいけない時はありますよ」

「ではこうしましょう。あなたと、あなたの家族しかいない空間では、私もあなたの家族に戻ります」

「司祭様…………もぅ。ヤシロさんは、いろんな人に影響を与え過ぎです」


 人を諸悪の感染源みたいに。

 人は誰もが狡賢いものなのだ。

 そうする方が楽だな、楽しそうだな、いいものが出来るなと思えば、全力でそっちに乗っかるさ。


「ベルティーナだって、母と娘を使い分けて盛大に甘やかされてるじゃねぇか」

「そ、それは……司祭様には内緒のことですよ」

「あらあら。あなたにもそんな一面があるのですね。新しい発見だわ」


 手を合わせて嬉しそうに微笑む婆さん司祭。

 ベルティーナが甘えると知って喜んでいるっぽい。


「シスターが甘えるようになったのは、ヤシロさんに出会ってからですからね」

「そんなことありませんもん」

「ジネットが成長して餌付けをするようになってからだろ」

「餌付けだなんて、……もぅ、酷いですよ、ヤシロさん」

「うふふ。本当に、すっかりと甘えん坊ね、ベルティーナ」

「司祭様まで……。からかわないでくださいっ」


 その場にいる者たちにからかわれて、ベルティーナがほっぺたを膨らませる。

 全員と面識のある者は、こうやってイジられる運命にあるんだよ。こういう場合はな。


「よし、あとは寝かせるだけだが……ジネット、どれくらいで行けると思う?」

「そうですね、今日は暖かいですから二十分くらいで大丈夫だと思いますよ」


 あんドーナツとピザ用の生地はそれぞれ一次発酵だけして、フライパンで焼くパンは二次発酵もさせる。

 二十分あれば、石窯の中のグラタンも焼き上がるだろう。


「なぁ、ヤシロ。この間カボチャのドリアをいっぱい食べたけどさ、あれもパンになるのか?」


 デリアが大量に米を炊いて失敗した飯を、ドリアやチャーハンにして消費した。

 あの時作ったカボチャのドリアにも税金がかかっていたのではないかと、デリアが不安げな表情を見せる。

 遠慮なくいっぱい食ったからなぁ、デリアは。

 でも大丈夫だ。


「あの時のドリアには小麦粉を使ってないから、税金は発生してねぇよ」


 カボチャやサツマイモという穀物を使用する時は、ベシャメルソースを使用しなくても甘くてとろっとしたドリアを作ることが出来る。

 大量に焼くことが目に見えていたので、税金対策に小麦粉不使用のドリアをチョイスしたのだ。


 もちろん、ロレッタいじりのために作ったチーズココットも小麦粉は不使用だ。

 抜かりはない。


 それからしばらく、マグダとデリアにフロアを任せ、カンパニュラとテレサにはこっちを手伝ってもらったりしつつ、とりとめのない会話をしていると、ジネットの作ったマカロニグラタンが焼き上がった。

 ジネットのお手製マカロニはぷるぷるで歯ごたえが最高なのだ。


「こちらが、マカロニグラタンです」

「まぁ、美味しそうな香りですね」

「一口召し上がってみてください。熱いので気を付けてくださいね」

「それでは……」


 厨房で申し訳ないが、この後もいくつか試食をしてもらうのでわざわざフロアへは戻らない。

 というか、教会の司祭がここで試食してるとか、バレるとたぶんいろいろ面倒なことになる。


「優しい美味しさですね」


 マカロニグラタンを食べて、ほっこりと頬を緩める婆さん司祭。

 完成品を見て、香りを嗅いで、味を知って、婆さん司祭は苦笑を漏らす。


「これは、パンとはまるで別の食べ物ですね」


 そりゃそうだ。

 作り方がまったく異なるんだからな。


「かつては、パイやスコーンといったものをパンの代わりにしようとした者たちがいたようで、それで教会はパンの定義を今のようなものに定めたのだと聞いています。ですが……」


 小麦を使って石窯で焼いたものはパン――だなんて、もう言えないよな。


「これは、話してみる価値のあることですね。今日という日に、この料理に出会えたことを精霊神様に感謝いたします」


 精霊神なんかどうでもいいから、俺に感謝しといてくれよ。

 教会のがばがばルールを指摘してやったこの俺にな。


「で、こっちが教会のパンには該当しない料理だ」


 言って、フライパンで作ったパンを差し出す。

 皿に載った姿はまさにパン。

 一口分にちぎって口へ運ぶと、婆さん司祭は思わずといった風に笑い出してしまった。


「これは大変ですね。これがパンじゃないと言われてしまっては、司教様がお困りになってしまわれます」


 どっからどう見てもパン。

 味わってみてもパン。

 なんなら芳醇な小麦の香りまでパンそのものだ。


 マカロニグラタンとフライパンで焼いたパンのどっちがパンか――なんて、問いかけるだけ無駄というものだ。


「そうですね。新しいものが生まれてくる今だからこそ、もう一度古いしきたりを見直してみるいい機会なのかもしれませんね」


 厨房に並ぶ料理を見て、婆さん司祭はゆっくりと頷く。


「ありがとうございます、オオバさん。よく気付かせてくださいました」

「そこら辺が是正されると、ウチの利益が上がるんでな」

「うふふ。それは重要なことですね」


 肩を小さく揺らして笑う婆さん司祭。

 三十五区で会った時よりも、なんだか活き活きして見える。っていうか、若々しく見える。


「この案件は、持ち帰り、検討したしましょう。もしかしたら、またこれらのお料理を作っていただくことになるかもしれませんが、その際は、よろしくお願いいたしますね」

「はい。いつでもお声掛けください」

「出来たらご褒美もください」

「ヤシロさん。……もぅ」


 俺のお茶目にベルティーナが怒り、婆さん司祭が笑う。


 これで、少しは税金が安くなればいいんだけどなぁ。




 で、特例が許可されたのでピザを焼いてみた。

 久しぶりの、全力のピザ。

 完全無欠のピザだ。


「美味しいです!」

「美味しいッス!」


 どこで匂いを嗅ぎつけてきたのか、ウーマロがちゃっかりと混ざっている。


「いかがですか、司祭様」


 ジネットが、婆さん司祭に茶を出しつつ尋ねる。

 前回、俺が一人でじゃんじゃん作ってしまったせいか、今回はジネットが随分と張り切っていた。

 実は作ってみたかったらしいな、ピザ。


「これは確かにパンですね。ですが……特例がなければ食べられないのはもったいない美味しさです」


 婆さんにはちょっと重たいかとも思ったのだが、司祭は一切れをぺろりと平らげ、二切れ目に視線を向けている。


「これが、ピザトーストの原型なのですね」

「あぁ。こいつを焼けないから、代替品としてパンがあれば作れるピザトーストが誕生したんだ」


 まぁ、俺が持ち込んだだけだけど。


「これは、先ほどのグラタンとはまた話が変わってきますね」


 グラタンは、「明らかにパンじゃないんだから飲食店で気軽に作れるようにしてほしい」って話だったが、ピザはどう転んでも飲食店では作れない。


 これがパンかと言われれば、日本人としては小首を傾げたくなるが、この世界の人間にとってはパンに間違いないと見做されるようだ。

 惣菜パンみたいな位置づけになるのかな。


「パンの独占をやめてくれりゃ、こういう新しいパンが街中に溢れてもっと面白いことになるんだろうが……この街にはこの街の伝統や、それがそうなった経緯もあるんだろう」


 いきなり、教会にパンの独占をやめろなんて要求を突きつけるのは、事がデカくなり過ぎる。

 なのでそこは、今はまだいい。

 追々でいい。

 いつかそのうち……今に見てろよ、利権にしがみつく権力者ども……くっくっくっ。――って感じでいい。


「新しい料理として、ピザとグラタンのレシピを渡す」

「よろしいのかしら?」


 こんなすごい料理のレシピを無償提供して――ってことか。

 何を今さら。

 今巷で大流行中の柔らかいパンのレシピを強要した教会様が。


「あんたなら、伝統の大切さと、新しいものの有用性、そのどちらも正確に理解している……いや、出来ると思っている」

「うふふ。買い被りでないといいのですけれど」


 ピザのレシピは、教会への切り札として残しておいたものだ。

 こいつの破壊力は凄まじい。

 一口食べた者を例外なく虜にしてしまうキラーコンテンツ。

 こいつの価値はかなりデカい。


 その切り札を、今、切る。


「時として、新しい波は粗暴で荒々しく、下品に見えるかもしれない」


 伝統を重んじる者にとって、若い世代が生み出した新しい文化というのは受け入れがたく、眉をひそめてしまいたくなるものであることが多い。


「だが、一時の騒乱と切り捨てず、その真意をじっくりと見極める姿勢をなくさないでほしい」


「ルールだから全部ダメだ」と切り捨てるのでなく。

「伝統こそが至高だ」と新しいものを拒絶するのでなく。


「新しく生まれるものにもいいものはある。仮にそれが伝統を飲み込まん勢いで急成長したとしても、それは決して伝統を破壊するために起こったブームじゃない」


 伝統ってのは、一過性のブームに押されて廃れてしまうような安っぽいものではない。

 それを知っていてもなお、一時的に怯んでしまうほど、新しい流行というものは勢いが強いことがある。


「お前たちが信じ、守り、培ってきた伝統を信じ、大きな器で若い世代の盛り上がりを、勢いを、新たなチャレンジを見守っていてやってほしい」


 グラタンが美味いからといって、パンが駆逐されるわけじゃない。

 むしろ逆に、そうなった時こそ伝統から新たなものを生み出すチャンスだと思ってほしい。

 そうすりゃ、俺が持ち込まなくてもピザみたいなすごいもんが生み出されるようになるかもしれない。


「教会が特定の区を贔屓できない立場なのは分かっている。だが、それでもあえて頼みたい」


 外周区と『BU』は今、凄まじい速度で発展し始めている。

 それを面白くないと思う貴族が『内側』にいるかもしれない。

 もしかしたら、外周区の領主に干渉してその利益を奪い取ろうと画策する者が出てくるかもしれない。


 同じ五等級貴族のウィシャートですら、跳ね除けるのに途方もない時間と労力を持っていかれた。

 それ以上の、格上の貴族が束になってかかってきたら……四十二区どころか、外周区と『BU』がまとめて全部食い荒らされるかもしれない。


『王族直轄区』なんて、新たな区分を設けられ、そこへ強制的に組み込まれてしまうことだって、ないとは言い切れない。


「発展の足枷になるような横槍への牽制をしてほしい」


 教会は、王族とも異なる権力を有している。

 王族以上とは言えないが、王族ですら気軽に扱えない存在であることは間違いない。


 何より、この国を生み出し、今なお守り続けている精霊神を頂点にいただく組織なのだから。


「美しい花を咲かせる木の枝を折って持ち帰れば、その後実を結ぶはずだった美味い果実を食べ損ねるぞと、偉い人たちに教えといてくれると助かる」


 教会は一枚岩ではないという。

 だが、明確な旨味を提示してやれば、みだりに引っ掻き回すような横暴を抑止するくらいのことはしてくれるだろう。


 エチニナトキシンという、バオクリエアから持ち込まれた非道な薬物の禁止を全区に触れ回ったように。

 教会は、ある一定以上の発言権を持っている。


 貴族に「利益を求めるな」とは言えない。

 だから、今後も個別に、ちっちゃいちょっかいはかけられるだろう。


 だが、大手を振って、権力を振りかざして、徒党を組んで外周区を食い荒らすような真似は出来なくなるはずだ。


「きっとそれが、誰にとっても良い結果になるだろうからな」


 もし、王族や等級の高い貴族がこれらの新しい技術に気付き、それを発信している四十二区の領主や、噴水や劇場を新設した三十五区の領主に目を付けて、「嫁にもらってやろう、光栄に思え」なんて権力でゴリ押しして侵食してきやがったら――




 王族どもを根こそぎ排除しなきゃいけなくなっちまうからな。




「そうね。あなたのおっしゃるとおりだと思います」


 婆さん司祭は小さく頷き、まっすぐに俺を見つめる。


「少しの欲に目がくらんで、得られるはずだった幸福を手放し、受けるはずのなかった災厄を受け入れるような愚かな者はいないと、私は信じたいです」


 教会からそんなことを言われたら、欲の皮を突っ張らせるヤツも減るだろう。

 減るだけで、いなくなるとは思えないけれど。


「均等に配られたピザを独占しようとして、自分のピザを取り上げられるのはつらいですものね」

「はい。分かります!」


 こんな時ばっかり全力で参加してこないで、ベルティーナ。


「ただ見守ることに専念しておけば、また新たな美味しいものを紹介してくれるかもしれないもの。あなたのお話はとても分かりやすいわ」


 婆さんに無茶をさせることになるかもしれんが、そのためにとびっきりの餌を渡してやったんだ。

 精々、説得してみてくれ。


「ちなみに、シーフードピザっていう、ピザ界に革命を起こした逸品があってな」

「「それはどのようなものなんですか!?」」


 婆さん司祭に向かって言ったのに、似た者母娘が似たような顔で割り込んできた。

 HEY、それは失敬に当たらないのかい、アルヴィスタン母娘?


「ピザ生地にトマトソースを塗り、その上からホワイトソースをたっぷりと塗って、そこへ一口サイズに切ったイカ、むきエビ、アサリ、場合によってはムール貝なんかを載せて焼くんだ」


 まぁ、ソースは好みによるけどな。

 俺のシーフードソースは、美味いぞぉ~。


「それは、絶対に美味しいです! 私には分かります!」


 力説するベルティーナを見て、婆さん司祭が肩を揺らす。


「では、他の司祭様方を説得するために、そちらもいただいておきましょうか」


 婆さん司祭が言って、特例が延長された。


 ロレッタがウクリネスのところから戻っていないのでカンパニュラとテレサに港までお使いを頼み、マーシャに海産物をもらってきてもらった。

 まぁ、予想通りマーシャもついてきて、シーフードピザの試食会は、ほんのちょっとだけ賑やかに行われた。







あとがき




「え、なに探してんの? それより俺と踊らね?」(要約)


的な歌が頭の中で流れつつ、絶対になくなるはずがないサイズの物を探し回った、宮地です。


ありませんか?

置き場所決めてて、絶対そこにしか置かないのにそこにない、っていう状況


それで、結婚式の出欠確認のハガキとかなら

薄いですし、どっかに紛れ込んだかな〜とか

「リア充がっ! 自慢か!?」って破り捨てちゃったかなぁ〜、記憶にないけど、とか

いろいろ考える余地があるんですが、


そこそこゴツいモノがなくなった時って

「ほゎい?」って頭がフリーズしますよね。


今朝探していたのは

iPod(生産停止)(壊れないように丁寧に使用中)と、ワイヤレスイヤホン


セットでですよ!?


本棚の隙間に落ちるようなサイズでもなく

見落とすようなサイズでもないんです


また、何かの拍子に外で落としたのだとすれば、

iPodとワイヤレスイヤホンセットで落とすのって不自然ですよね?

輪ゴムでまとめてるわけでもないのに



お祖母ちゃん「こうしといたら、なくさへんやろ?」

宮地「お祖母ちゃん、ワイヤレス全否定やん」



どっかにうっかり置き忘れたってことは……

ワイヤレスイヤホンのケースごと?

ワイヤレスイヤホンって、外で使う時は、

ケースからイヤホンを出して、ケースはカバンの中にしまうんですよね


使い終わったら、ケースをカバンから出して、イヤホンをケースに収納して、そのままカバンに入れる。


ケースをカバンから出す時は充電する時くらいなので、基本家でしかカバンから出さないんです。



なのに、ない。


部屋中探し回って、なくて、

脳内で井上さんが歌いながら踊りのお誘いをしてきて


井上さん「♪夢の中へ行っちゃおうよ☆」(要約)


それでもなくて


なんかもう疲れちゃって

スマホで「大きいもの なくなる 見つからない」とかって検索したら

「それは神隠しです」とか言われて

「そっかぁ、神隠しかぁ」って現実逃避して

「物がなくなるのは生活環境が変化するサイン」とかスピリチュアルな方向に進み

「きっと、あのiPodは私の人生のターニングポイントを教えてくれたんだ」と納得しかけて


( ■−■)「んなわきゃない」


と無為な時間を過ごしてしまいました。



一瞬、「会社か?」とか思ったんですけど、

会社で音楽聞くことないので、職場に持ち込んだことないんですよねぇ


ロッカーに落としたかぁ……



と、出社してみると、

デスクの棚に私のiPodが「ちょこーん」っと、鎮座しておりまして、iPodの上にワイヤレスイヤホンのケースが「ぱぱーん!」と乗っかっておりまして


(;゜Д゜)「こんなとこにおったんか、ワレ!?」


って、朝から仰天しました。



で、よくよく考えて

昨日の出来事を思い返していたんですが

やっぱり、iPodを職場に持ち込んだ記憶がないんですよ。


それで記憶を辿っていくと、

昨日、帰宅してから、カバンに除菌用ウェットティッシュが入っておりまして、

「なんでこんなもんがカバンに?」と不思議に思いながらカバンから出して自宅の机の上に置いたんですね。


このウェットティッシュ……あ、そうそう。

会社でデスクが汚れた時にさっと拭きたいな〜と思ってドラッグストアで購入して、

「明日会社に持っていこっと☆」ってカバンに入れて、で、会社の自分のデスクの棚の上に置いた…………はずの物がなぜ家に!?

Σ(゜Д゜;)



そこで、すべての謎が解けました!



私、昨日の朝

会社に着いて、ウェットティッシュを取り出そうとして、iPodとワイヤレスイヤホンをセットで取り出し、ウェットティッシュを置くために作った棚の上のスペースに「ぽぽーん」っとiPodを置いて、ウェットティッシュ持って帰ってました!?



Σ(゜Д゜;)ウェットティッシュとiPodを間違えた、だと!?




神隠し?

スピリチュアル?

人生のターニングポイント?



(;゜Д゜)思い込みによる勘違いだよ!?



ただただ、自分が何しているのか見失っていた結果でした。


何してたんでしょう、私?(^^;



これが、老い……?(〃ω〃)てれっ



 (;゜Д゜)いや、そんな「これが、恋……?」みたいに言うな!



ちょっとびっくりし過ぎて思わずあとがきに書いちゃいました。


昨日の「なんだ、このウェットティッシュ?」って思ったところで気付けないのが、もう老いだなと

「はっ!? 間違えた!?」とすら思いませんでしたからね


仕方ないので、

会社のデスクが汚れた時は、イヤホンで音楽を聞きたいと思います。

デスクの汚れ、一切取れませんけれども



井上さん「うふふ〜♪」(要約)



というわけで、

今回は婆さん司祭のご接待のお話でした。

本編もあとがきも、年寄りの話ばっかりですね!?

Σ(゜Д゜;)フレッシュ感、ゼロ!?



ヤシロはお祖母ちゃんがいないんでしょうね、

話に出てきませんし、

いたらきっと伯父より祖父母に引き取られてたと思いますし

結構早くに鬼籍に入られたのでしょう


……しらんけど( ̄▽ ̄)



そのうち、ここで言ったことをひっくり返すような設定が誕生するかもしれませんが、

あとがきに書いてることは真に受けないように、ひとつ、お願い申し上げます!


思いつきで書いてますからね!?


そうそう

アメリカンクラッカーって知ってます?

硬い球が棒やヒモの先についてて、二つの球をカチカチぶつけて音を鳴らすおもちゃなんですけど、


大きなおっぱいだったら、似たようなことが出来るんじゃないかなぁ〜って、ずっと思っているんですが、いかがでしょう?


「あたし、おっぱい大きいけど、それやったことあるよ」っていう方〜?

いらっしゃいましたら、是非ご一報ください。




――って、これくらい思いつきで書いてますからね!?

あとがきは、流し読みでお願いします☆


まぁ、ヤシロの祖父母が異世界に登場することはないでしょう


……しらんけど( ̄▽ ̄)



というわけで、本日はスピリチュアルな神隠しについてお話させていただきました


言い換えると、老いによる勘違いでしたけども


皆様も、物がなくなった時には、そこが人生のターニングポイントかもしれませんので、自分を見つめ直して大きく一歩踏み出してみてくださいね☆


踏み出した直後に探し物が見つかって「ターニングポイントじゃなかったんかい!?」って盛大にツッコミ入れてください☆



次回もよろしくお願いいたします。

宮地拓海

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― 新着の感想 ―
司祭様。ヤシロさんのことを正しく認識していますでしょうか?正しく認識してあの発言をできるのは年の功か、腹が据わっていらっしゃるのか。42区に住む優しい魔王様。オオバヤシロ。陽だまり亭在住。店員さん。笑…
少しずつ、でも着実に、オールブルームも変わりつつありますねぇ…… たまに、たまぁーに、少しどころか山二つぶんくらい飛び越えて変化することもありますケドネ ベルティーナの家族(意味深)になるんだよヤシ…
宮地先生 あなた憑かれてるのよww またやらかしそうなんで ipodにGPS追跡出来るスマートタグ付けておきましょうよww
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