誕生2話 入り用
「ヒカリ」
「あー」
「マモル」
「たーっ」
「「祈ろう」」
「祈んな」
ちぃ!
ガキを抱いているから転ばせられない!
ズルいぞ、セロン!
「素敵な名前に決まってよかったですね」
眩しい笑顔のジネット。
その笑顔、俺のHPガスガス削り取ってるから、今、ナウ!
「不服そうだね。なんなら、前の名前に戻してもらえるように、ボクの方から頼んであげようか?」
「ヤシロンとヤンディに戻されたところで、俺の心の憂いは消えないんだよ」
ったく。
こいつは分かっていてそーゆーこと言うから性質が悪い。
「本当に、あんな思いつきで決めていいのか?」
「お二人がとても気に入っているようですし、いいんじゃないでしょうか。ほら、あんなに幸せそうですよ」
ジネットフィルターを通せば、世界のあらゆるものが幸せそうに見えるんだろうが……
「将来、『お前のせいで!』って、双子に襲撃されそうで怖いよ」
「ボクの予想では、『あなたのおかげで!』って慕われていると思うよ」
「それはそれで気が重いんだよ」
どっちに転んでも気が滅入るな。
「ねぇ、ウェンディ。ヒカリとマモルは、どっちが先に生まれたの?」
「ヒカリが先よ。だから、お姉ちゃんね」
ネフェリーとウェンディがそんな何気ない会話をしているのだが……さらっと口にされると、「あぁ、もう決まっちゃったんだなぁ」って気になるよねぇ、名前。
「しっかりもののお姉ちゃんと、甘えん坊な弟になりそうね」
なんて、未来予想を語るウェンディ。
それに乗っかるように、パウラがヒカリのほっぺたを突っつきながら言う。
「どんな大人になるんだろうねぇ」
どんな大人に、か。
「ガキの将来ってのは、無限の可能性と希望に満ち溢れているもんだ」
パウラの問いに、俺なりの持論を語れば、ジネットが「そうですね。その通りだと思います」と、賛同してくれる。
気分がいいので、この浮かれた両親に希望に満ちた話を聞かせてやろう。
「きっと、遺伝子の限界を突破して、D、いやEにだって成長できるさ!」
「なんの話をしているのさ、君は!?」
「未来の希望についてだ!」
母親であるウェンディ(Cカップ)を越え、きっとヒカリは大きく成長してくれる!
「衣食住が改善され、下着の性能、バストアップの知識、それらが大幅にアップグレードされたこの四十二区で育つ次世代の女子たちは今この時代よりも遥かに雄大な成長を遂げ、一人一人のその成長が、ゆくゆくはこの四十二区全体を大きく成長させるのだ。すなわち! 未来の四十二区は、平均バストが1~2カップほどアップすることは間違いないのだ!」
「「「「「うぉぉおおおお!」」」」」
「そんな話で盛り上がらないようにね、諸君! ヤシロに感染すると、完治は絶望的だよ!」
「一体、どれだけの人間が道を踏み外したことか……!」とか、失礼なことを宣うエステラ。
お前、自分が全力で平均値下げてるんだから、平均値を上げる協力くらいは惜しみなくしろよな。
「今度は君が、衝立の向こうへ連れて行かれるべきだよ」
と、先程、新生児の情操教育に有害であると判定され退場処分になったエステラが道連れを欲している。
バカモノ。
オーディエンスを味方につけた俺に、恐れるものなどないのだ。
「見よ、この圧倒的大多数! マジョリティが優先されるのが民主的な世界というものだ。我々の言葉こそが正義であり、我々が通った場所に道が生まれるのだ!」
「「「「そうだ!」」」」
「大きなおっぱいは正義だ!」
「「「「正義だ!」」」」
「では、賛同者のみなさんは、こちらでヤシロさんと一緒に懺悔してください」
マジョリティが一網打尽に!?
ジネットとベルティーナが淡々と有害判定を食らった男たちを衝立の外へと送り出していく。
あ、ベルティーナがキリッとした表情してる。
これ、長ぁ~いお説教になるパターンだ。
仕方ない。
「――とかいう言論に、いとも容易く誘導されるようなことがないよう、お前たちの息子にはきちんとした教育をするようにな。今のは、悪い見本だぞ☆」
「そんなことで誤魔化せるわけないだろう」
「そうだったのですね! さすが英雄様です!」
「あっさり騙されないように、セロン! ヤシロの悪足掻きだからね」
実の父がいいと言っているのだ。
俺は懺悔免除でいいだろうが。
「ヤシロさん」
わぁ、ジネットに腕を掴まれちゃった☆
……へいへい。
シスターのありがたいお言葉を拝聴してくるよ。
俺を始め、ほぼすべての男どもが衝立の向こう、フロアの半分くらいのスペースに集められ、床に正座させられる。
これだけの人数で懺悔するのって、区民運動会でベルティーナのブルマにはしゃいじゃった時ぶりだな。
「いいですか、みなさん。愛というものは――」
わぁ、長くなりそうなテーマだこと。
その後、精霊神が地上の者たちに『愛する心』を与えたとかいうありがたいお話を聞かされ、「紳士の皆様には、下心でなく、真心を持って女性に接していただきたいと願います」と諭された。
感化されやすい周りの男どもは、「俺は、今この瞬間から生まれ変わる」とか、目をキラキラさせていたが、お前らどうせ明日の昼ごろにはもうエロいこと考えてニヤニヤしてんだろうが。
「聞いていますか、ヤシロさん」
「はーい」
「よいお返事ですね」
ベルティーナがにこりと微笑みかけてくれる。
あの笑顔が出れば、お説教は終わりだ。
だから、そこ!
「いい返事だったか?」とかこそこそしゃべらない!
いいんだよ、ベルティーナが「いい」って言ってんだから。
で、俺たちがお説教されている間、衝立の向こうでは女子たちのきゃっきゃとはしゃぐ楽しそうな声がずっと聞こえていた。
赤ん坊が好きだねぇ、女子たちは。
「ベルティーナ」
「なんですか?」
「教会にいる赤ん坊も、ウェンディんとこの赤ん坊みたいに、驚異的な速度で大きくなるのか?」
「ウェンディさんたちの赤ちゃんも、別に驚異的な速度で大きくなっているわけではないと思いますが?」
いや、生まれて数時間で生後数ヶ月くらいに成長してんだろうが。
「服とか、どうしてるんだ?」
ウェンディたちの赤ん坊ほどではないにせよ、赤ん坊ってのは見る間にどんどん大きく成長していく。
そのクセすぐに汚すし破くしダメにする。
赤ん坊から年少くらいのガキまでは、いくら服があっても足りないくらいだ。
「上の子たちのお下がりがありますし、足りなければ私や寮母さんが作ることもありますね」
「新しく買うことは?」
「あまりありませんね。子どもの成長は早いので、すぐに着られなくなってしまいますから」
最近になって、ようやく金を稼ぐようになったベルティーナ。というか、四十二区教会。
寄付を私的に使うことを避けていたベルティーナは、子供服を買うことはなかったのだろう。
あの数のガキどもの服を作るとなると、かなり大変そうだ。
「どの家もそんなもんか?」
「そうだと思います。今でこそ、生活にゆとりが生まれましたが、以前は少しでも節約をというのが一般的な考え方だったように思います。ですので、両親や兄弟の古くなった服を子供服に作り直すなんてことが多々あったと思いますよ」
「そんだけ苦労しても、着られる期間は短くて、あっという間に着られなくなるんだよな」
「そうですね。大きな服を小さくするのは割と簡単ですが、小さな服を大きくするのは難しいですからね」
つまり。
「ガキがいる家に聞けば、赤ん坊の服が残ってるかもしれないわけだ」
「そうですね。知り合いの方に譲っていなければ、ですが」
服のやり取りをする関係というのは、親族やご近所の仲良しさんくらいか。
近所で仲良くなるなんてのは、そこそこ年齢の近い者になるわけで、そしたら、ガキの年齢もさほど違いはない。
つまり、ある程度着られた子供服は、最後には行き場を失いどこかに眠っているか廃棄されているというわけだ。
「アッスント~!」
「お呼びですか、ヤシロさん?」
嫁にビビって、おっぱいで盛り上がるのを我慢したヘタレのブタ顔が、衝立の向こうからやって来る。
うまく懺悔を回避しやがって。
「ビビってんじゃねぇよ」
「なんの話でしょうか?」
嫁に『会話記録』を見られるからって、はしゃげなかったヘタレが、しらばっくれんじゃねぇ!
とはいえ――
「今はおっぱいの話はどうでもいいんだ」
「いえ、私はそんな話は一切しておりませんし、しようとも思っていませんでしたが?」
呆れた顔をこちらに向けるアッスント。
そうかそうか。
お前は口にはせずに心の中で一人ほくそ笑みたい派か。
このムッツリめ。
「ムッツント」
「やめてください、変なレッテルを貼るのは」
こいつは保身ばっかりだな。
まったく。
「子供服の販売ってしてるよな?」
「えぇ。ウクリネスさんのお店でも取り扱っておりますよ」
ウクリネスの店は、何気に高級ブティック的ポジションなんだよなぁ、最近。
昔は古着を扱うような庶民的な店だったのに、近頃は全部新品なんだ。
ウクリネスが張り切って作るから、古着を扱ってる余裕がないんだろうな。
「古着って、今は売ってないのか?」
「それは、行商ギルドに委託されています。市場などで、たまにまとめて売りに出しておりますよ」
大通り広場で開催される市で売ることもあるのだとか。
「ですが、最近はみなさん懐が温かいのか、古着を購入される方は減りましたね。ウクリネスさんのお店がリーズナブルだという点も大きいでしょうが」
ウクリネスは大量生産して販売価格を抑えている。
かつて、俺が初めて買った古着よりも安い値段で新品の服が買えるのだ。
そりゃ、みんな新品を買うよな。
とはいえ、子供服まで新品でとなると、さすがにまだ厳しい面もあるだろう。
なにせ、ガキはすぐに大きくなる。
寝て起きたら一回りくらいデカくなっていても、きっと世の親たちは驚かないだろう。
なので、子供服がもっと気軽に手に入るシステムがあると助かるヤツが多…………もとい、そこに利益が生まれるだろう。
「金儲けをしようぜ」
「気のせいでしょうか、人助けを思いついたようなお顔をされていたように見えましたが」
「お前視力落ちたんじゃねぇの? 眼球にわさび塗り込んでやろうか?」
「悶絶じゃ済みませんよ、その拷問!?」
なら、余計なことは口にするな。
どうせ勘違いなのだし。
「では、その金儲けの種を、お聞かせ願えますか?」
なんかニヤニヤしているアッスント。
気に食わない。が、まぁ、いいだろう。
思いついた新しい商売を教えてやる。
「レンタル子供服とか、どうだ?」
単純な発想だ。
需要があり確実に売れる、にもかかわらず使用できる期間は短く無駄にしてしまうことも少なくない。
新調するのはもったいないが、かといって小さいものを着せ続けるわけにはいかない。
手元には、まだまだ使えるのにサイズが合わなくなってもう着ることが出来ない服が残る。
一方、それなりに着られればそれで十分なんですって需要が溢れている。
「だったら、その二つをうまくマッチングさせてやればいい」
「それが、レンタルですか?」
古着の販売でもいいんだが、そうすると「いや、いくら安いとはいえこんなに買わなくても……」って尻込みする気持ちが芽生えかねない。
「尻込みは、金のめぐりを悪くする」
むしろ、「お金払ったんだから使わなきゃ損よね!」くらいの気持ちでじゃんじゃん使ってもらった方がいい。
「月額料でも取って、使い放題にすればいい」
「そうすると、赤字になりませんか? 衣料品のメンテナンスも必要になるでしょうし、商材が戻ってくるとはいえ永久に使い続けられるわけでもないでしょう」
「借り放題と言っても、一回で二着服を着る赤ん坊はいないだろ」
「それは、確かにそうですね」
食い放題じゃないんだ。
借り放題といえど限度はある。
「それに、古着の仕入れ値は極限まで抑えられると思うぞ」
もともとがタンスの肥やしか、捨てようと思っていた服だ。
二束三文でも、金になるなら売る方も喜ぶだろう。
「それで足りない分は、寄付してもらえばいい」
この街の連中は、誰かに何かをして喜ばれることが大好きなのだ。
ノーマを見ても分かるように、自分が作ったものを誰かが嬉しそうに身に着けているのを見ると、たまらなく嬉しいのだ。
「育児を終えた母親や、手先の器用な婆さんの中で、昔は我が子のために服を作っていたけれど、最近じゃ作る機会はめっきり減ったなぁ~ってヤツは結構いるんじゃないか? 知り合いのガキも大きくなって、もう自分の作った服は着てくれない……な~んて思ってるところに、どこかのガキが楽しみに待ってますよ~とか言って煽ってやれば、また張り切って服を作り始めるだろうよ」
教会にはガキがたくさんいる。
常にいる。
だから、服はいくらあっても困らない。
「教会のガキどもに手作りの服を寄付してもらって、余剰分をレンタルに回してもらうようにすれば、役目を終えた子供服が、新たな出会いとともにまた日の目を見ることが出来る。子供服も、子供服を作るのが好きな婆さんどもも、もう一度あの頃の輝きを取り戻せるってわけだ」
俺が説明を終えると、「それは素晴らしいお考えですね」と、ベルティーナとアッスントがにこにこ顔で拍手をくれる。
そこに含まれる意味がまるで異なる笑顔だけどな。
「ムム婆さんと契約して、戻ってきた子供服は毎度キレイにクリーニングするんだ。染み抜きもお手の物だから任せておけば次に借りるヤツも気持ちよく着られるぞ」
「そうですね。ムムお婆さんならきっと……でも、ご負担にならないでしょうか?」
「ぼちぼち、婆さんも後継者を育てる時期だ。ちょうどいい機会なんじゃないか?」
実は、ムム婆さんの洗濯屋には後継者がいない。
というか、洗濯屋がムム婆さんしかいないのだ。
……放っておいたら、ムム婆さんの引退と同時に四十二区から洗濯屋が消滅してしまうことになる。
それは困る。
飲食店なんてもんは、洗い物が山のように出るのに。
ムム婆さんがいなくなると負担が増えてしまう。
だからこそ、ムム婆さんの知識と技術を引き継ぐ後継者が必要なのだ。
「ちょっと諦めてたみたいだったからな」
以前、手伝いに来てくれるヤツがいるなんて話をちらっとしていたが、そいつはあくまで手伝い。
そもそも、洗濯屋は誰かを雇えるほど儲かっていない。
『リボーン』で、シミ抜き一回無料券を出したり、運動会の時に体操服の洗濯割引キャンペーンをしたりと、いろいろ手は打ったようだが、なかなか客が定着していない様子だった。
晩婚化が進み、独身男性が増えれば、需要はもっと上がるかもしれんが、基本的にこの街は若くして結婚し、子を産み、家庭を築き上げる。
父親が外で働き、母親は家と子を守る。
そんな、昭和の日本のような家庭が多い。
当然例外はいる。
いや、例外と呼ぶには多過ぎるくらいの人数はいる。
だが、それでも、洗濯屋が潤うほどの顧客は生み出していない。
共働きだから洗濯してる暇なんかないわ~、なんて家庭はそうそうない。
ミリィだって、体調を崩して家事が出来なくなった折、溜め込んだ洗濯物をギルド長の婆さんに洗ってもらっていた。
洗濯屋に依頼するってのは、やっぱまだどこかで『贅沢』って意識があるのだろうと思う。
そんなわけで、後継者を諦めかけていたムム婆さんだが……洗濯屋がなくなるとジネットが寂しがるだろう。
何より、俺も不便になるし。
残せるものは残すべきだ。
「あの婆さんには、まだまだ老体に鞭打って頑張ってもらわないとなぁ……ふっふっふっ」
「一緒に働く仲間が出来れば、ムムお婆さん、きっと喜びますね。……しっかりしていても、実は寂しがり屋さんなんですよ」
こそっと耳打ちしてくるジネット。
婆さんが寂しがりなのは知ってるっつの。
だから毎日茶を飲みに来てんじゃねぇか。
「ムムさんのお店を守りたいというお気持ちは分かりますが、それで赤字になっては、商売として成り立ちませんよ? 月額料だって、そんなに値を上げては利用者が集まらないでしょうし……」
「関連するところを一つの事業として捉えれば、利益を上げる方法はいくらでもある」
毎回クリーニングをすることは、確かに赤字を生むかもしれない。
だが、それは顧客からの信用を得るためには必要な経費だ。
必要経費で赤字が出るなら、別の部署でそれを補填すればいい。
「裁縫教室を開こうぜ。ジネットやベルティーナほど裁縫が得意な者ばかりじゃないだろう?」
ロレッタやマグダは裁縫が苦手だし、ウェンディなんか絶対できない。出来るはずがない。
「新米ママに裁縫を教える教室を作れば、我が子に手作りを着せてあげたいってヤツが集まるんじゃないか? 今すぐには無理でも、ガキが四歳、五歳になる頃には子供服くらい作れるようになってるだろう。自分が作った服を着た我が子と一緒にお出かけとか、そういうの好きだろ?」
「そうですね。私も、自作の服を子供たちに着てもらえるのは嬉しいです」
で、講師が作った服はレンタルに回せばいい。
教室は何度も開催されるし、レベルによってクラス分けなんかをすれば教室数は増えていく。
各教室で教えるために作ったお手本の服を集めるだけでも、結構な数の子供服が集まるだろう。
「あとはそうだな。裁縫自慢に子供服を提供してもらって、コンテストでも開いてみたらどうだ? ガキにモデルをやってもらって、ステージでファッションショーをすれば、この街の連中なら盛り上がるだろうし、自分にない発想の服を見れば、また創作意欲を刺激されて『次こそは優勝を!』なんて負けず嫌いを奮起させることも出来る」
『勝利』が報酬になるのだから、きっと惜しみなく服を提供してくれるだろう。
そして、コンテストで優勝するような可愛い服を我が子に着せたいという親がこぞって月額料を払うのだ。
「なるほど……確かに、そういったものを複合的に一つの組織として捉えれば、利益は十分に生み出せそうですね」
出せそうじゃねぇよ。
出せるように取り計らうんだよ。
「とはいえ、すべてをレンタルで賄うこともない。知り合いからもらったり、自分で作ったり、そういうこともあるだろうから、月額使い放題とは別に、十枚綴りの使用券とか、一回一回金を払うようなやり方を織り交ぜて、自分に合った利用方法が選べるようにしておけばいい」
「そうですね。教室に通って、自分で作れるようになれば使い放題を卒業……などと計画的にご利用いただければ利用者は増えそうです」
「お子さんに着せるだけでなく、自分が作る際の参考にもなりますね。わたしも、ウクリネスさんの服を、よく参考にさせていただいていますから」
なるほど。
そういう見方もありか。
作り手としての観点だな。
「今始めると、確実に一人、太客がつくぞ」
「と、言いますと?」
「ウェンディは絶対裁縫なんか出来ないからな」
「ほほほっ、それは大口顧客ですね。あのお二人を見るに、最愛のお子様たちを溺愛されるのは明白ですからね」
ガキを着せ替えるのは楽しいらしいからな。
せいぜい我が子を愛でるといい。
「ウクリネスとムム婆さんの協力が不可欠になるけどな」
「もちろんご協力させていただきますよ、ヤシロちゃん」
呼ぶ前に、ウクリネスがこちらへやって来た。
……というか、気付いたら懺悔させられてた男どもがすっかりいなくなってやがった。
広くなった空間に、ウクリネスとムム婆さんが揃ってやって来る。
「それで、私は何を作ればいいのかしら?」
うっきうきのウクリネス。
だが、どっちかって言うと、ウクリネスには我慢してもらう方が大きいかもしれない。
「何かを作ってくれというより、子供服の売上が確実に落ちるから、何か落とし所を見つけたいと思ってな」
利益が下がる以上、何かしらの補填は必要だろう。
その辺のことを、アッスントを交えて話しておきたい。
「それなら大丈夫ですよ。ウチのお店、子供服はほとんど出ませんから。一応、申し訳程度に置いてはいるんですけどねぇ」
ウクリネス曰く、子供服はほとんど売れないらしい。
やはり、数ヶ月で着られなくなる服に、あまり金はかけられないらしい。
新品の服がメインになったウクリネスの店だ、子供服も当然新品で、それなりの値段がする。
「ちょっとしたアイテムは売れるんですけどね」
よだれかけやおむつ用の布なんかは売れるらしい。
まぁ、それは消耗品みたいなもんだからな。
誰かにもらって使おうってもんでもないし。
「ですので、子供服のレンタルに反対する理由はないんですよ。商機を逃す見返りがいただけるのなら、そのレンタルに一枚噛ませていただけると嬉しいですけれどね」
なら都合がいい。
ウクリネスには頼みたいことがいっぱいある。
「お前の店の見習いに子供服を作らせてくれないか? 服を作る練習とかするんだろ?」
「そうですね。お店には出せないけれど、十分着用に耐えられる物というのが多くて、処分に困っていたところなんです」
規模を拡大したことで、教育訓練にかかる費用と時間も大幅に増えたウクリネス。
一流を育てるには、繰り返し実践させるほかない。
実践すれば物が出来る。
それが売れないなら……レンタルしちゃえばいいんじゃない?
「そうですね。見習いの練習は子供服で行うようにしましょう。サイズが違えど、必要なスキルは似ていますもの」
ある程度服を作れるようになったら、次のステップへ進めばいい。
デザインとか、もっと繊細な布の取り扱いとか。
レース編みとかな。
「で、前にワッペンの話をしたろ?」
「はい。ギルドでお揃いのワッペンを付けたいと、たくさん注文をいただいたんですよ。生花ギルドさんなんて、お揃いのワッペンをエプロンに付けてくださっているんです」
ミリィが持っているカバンには、生花ギルドの刺繍が入っていた。
今度はエプロンか。
ワッペンだったら、好きなものに付けられて便利だろう。
「今度はアップリケを大量に作っておいてくれ」
「あっぷりけ?」
「ワッペンの縁の刺繍がないやつだ」
ワッペンとは、絵の描かれた布や刺繍した布の周りを刺繍糸で縁取りしたもので、アップリケとはその刺繍の縁取りがない状態のものを服やらカバンやらに縫い付けていくものだ。
細かく言うといろいろ違うが、ざっくり言うならそういうことだ。
「借り物だろうが、服に穴を開けるのがガキって生き物だろ?」
「なるほど。空いた穴をワッペン……えっと、アップリケでしたっけ? それで塞ぐんですね」
要はツギハギだ。
可愛らしいアップリケで塞いでおけば、それがワンポイントになることもあるだろう。
ガキが破くのは、大抵ヒザか尻だしな。
アップリケ付けといても違和感がない場所だ。
「そういう修繕が出来るのであれば、レンタルの服も長く使えそうですね」
「いよいよダメになったら雑巾にでもするか、布を切り分けてパッチワークにでもしちまえばいい」
「ぱっちわーく、ですか?」
興味深そうに話を聞いていたジネットが小首を傾げる。
えっ、知らないのかよ!?
「ウクリネスは知ってるよな?」
「すみません、不勉強で」
あぁ……そっかぁ。
ヒザにあて布してたガキがいたから、パッチワークくらいはあるかと思ったんだが。
「パッチワークってのは、布の切れ端をつなぎ合わせて一枚の布を作ることなんだが……じゃあ、明日にでも見本を作って持ってってやるよ」
「はい! 楽しみにしていますね」
「ヤシロさん。わたしもお手伝いします」
「手伝ってもらうほど大変な仕事じゃねぇよ」
切れっ端をつなぎ合わせるだけなんだから。
そうして、話が一段落したころ。
「ヤシロちゃん」
不意に、俺の手に温かいものが触れる。
柔らかくて、少しカサついていて、シワシワで、とても優しい手。
ムム婆さんが俺の手を両手でそっと握っていた。
「ありがとうね」
何がとは言わず、多くを語らず、ムム婆さんは俺を見上げて静かに微笑んでいる。
仕事を増やされて、そんな嬉しそうな顔すんなよ。
こっちの儲けのために酷使してやろうとしてるのにさ。
「ゼルマルが年甲斐もなく、引退を返上して職場復帰しやがったからな。きっとあいつ結婚資金貯めようとしてんだぜ、いやらしい。だから、まぁ、あれだ。ムム婆さんにはあのジジイよりもっと元気に働いてもらって、『私より収入低い人はちょっと……』って突っぱねてもらおうかと思ってな」
「うふふ……。ゼルマル、あれで、結構稼ぐのよ? 往年のファンがいるから」
くすくすと口元を隠して笑うムム婆さん。
いくら金があろうが、あいつはヘタレを直さないとプロポーズも出来ないだろうけどな。
「でもそうね。いつまでも元気でいなきゃ、青春は謳歌できないものね」
まだ青春を謳歌する気なのか。
随分くすんじゃってんじゃねぇの、その青色。
「何かちょっかいかけられたらすぐに言えよ? ジネットと二人で『ウチの婆さんは貴様にはやらん!』って追い返してやるから」
「ふふふ、もう、ヤシロさん。可哀想ですよ」
笑いながら俺の腕を叩くジネット。
とか言って、笑ってんじゃん。
「ジネットも言ってやれよ、『貴様に孫と呼ばれる筋合いはない』って」
「ふふふ。目上の方にそんなこと言っていいんでしょうか?」
大丈夫大丈夫。
あのジジイが俺たちより上なのって年齢だけだから。
それ以外は大したことないし。
ジネットと笑っていると、キュッと俺の手を握るムム婆さんの指先に力がこもった。
「……そう」
俯いて、鼻を鳴らして。
「私のこと、『ウチの婆さん』なんて言ってくれるのね」
こちらを向いた顔は、なんとも幸せそうに微笑んでいた。
目尻には小さな光の粒が浮かんでいる。
「ムムお婆さんは、わたしにとって、本当のお祖母さんも同然ですよ」
「ありがとうね、ジネットちゃん…………ありがとう」
ジネットがムム婆さんの手に手を重ねる。
うん、うん、と、ムム婆さんは何度も頷いて、その言葉を噛み締めているようだった。
……それはそうと、俺の手、ムム婆さんの手、ジネットの手と重なっているのでちょっとした運動部の円陣みたいになってるな、これ。
「ふぁいとー!」って言ったら「おう!」って言ってくれるだろうか。
言わないけど。
「ヤシロちゃんは、子供にも目上の方にも優しいのね」
ウクリネスがしみじみといった口調でそんなことを言う。
「ガキに優しくした覚えはないが、年寄りに優しくしておくと遺産がもらえる可能性があるからな☆」
「ふふふ。そうね。ヤシロちゃんに何が遺せるのか、今から考えておかなきゃね」
「そんなものはいりませんから、いつまでもお元気で、長生きしてくださいね、ムムお婆さん」
あれ、ちょっと待ってジネット。
俺にくれるって言ったものを、なんでお前がいらないって辞退してんの?
俺の遺産なんですけど?
……まぁ、でもあれか。
「長く生きてくれた方が、お金がっぽり稼いでくれそうだしな。長生き頑張れよ」
俺の言葉に目を丸くしたムム婆さんは、ジネットと顔を見合わせると弾けるように笑い出した。
「そうね。それじゃあ、うんと長生きするわね」
そう言って笑うムム婆さんは、今の姿しか知らない俺の目から見ても、昔の面影を残しているように見えて、「あぁ、この人、若い頃はマジで美人だったんだろうなぁ」とか思ってしまった。
そんなやり取りを、ベルティーナは少し離れた位置から静かに見守っていた。
そのまま彫刻にすれば、女神像としてどこぞの大聖堂に飾られそうな、慈愛に満ちた微笑みを湛えて。
しまったなぁ。
このやり取りをもっと早くしておけば、きっとさっきの懺悔は回避できたに違いないのに。
しくじったなぁ。
「じゃあ、詳細を詰める前にエステラに許可取っとくか」
「許可するよ」
ひょこっと顔を覗かせるエステラ。
懺悔の煽りを喰らわないように衝立の向こうに避難してたくせに、随分タイミングよく顔を出すじゃねぇか。
「君がアッスントを呼んだ時点で何かあるって分かったからね。内容は聞かせてもらっていたよ」
「盗み聞きしてねぇで、出てこいよ、だったら」
「ナタリアに書類を用意させていたんだよ。ヒカリとマモルのために、すぐにでも子供服を手に入れたかったんだろう?」
「アホか。ふと思いついたから、誰かに先を越されないように早急に話をまとめただけだ」
なんで他所のガキのために俺が頑張るんだよ。
ねぇーよ。
「アッスント、東側とニュータウンに空き店舗があるんだけど、店を二軒出して連携させることって可能かい?」
「そうですね。商品の種類が異なるということは出てくるでしょうが、連携自体は可能ですね」
「よかった。子供を連れて遠くに行くのは大変だからね。なるべく近くにそういうお店があると助かると思ったんだ」
「さすがですね、エステラさん。領民の目線に立てる領主様を、私は誇りに思いますよ」
「褒めても何も出ないよ」
眉を曲げて手を振るエステラ。
なんか、仕事が出来るヤツに見える。
「なんか、先を見通せるキレ者かと錯覚しかけた」
「錯覚じゃないよ! ボクは、割と先を見通して行動してるんだから」
「そのキレ者感を塗りつぶす勢いでポンコツ感出してたからさぁ。『キレ者をポンコツでコーティングしました』みたいな」
「ポンコツじゃないやい!」
わぁ、ポンコツな返し。
それでこそエステラだ。
「ポン……エステラ様」
「今、なんて言いかけたのかな、ナタリア!?」
今日は全方位ナタリアセンサーが稼働しているようで、ナタリアが登場と同時にエステラをイジる。
よく聞こえる耳だこと。
「手続きは滞りなく終わりましたが、一つ問題が……」
「え、何があったの?」
「ルシア様が食いつきました」
「その計画、三十五区でも実施したいのだが、連携せぬか、エステラよ」
「わぁ……嬉しそうな顔してますねぇ、ルシアさん」
意気揚々と現れるルシア。
「連携」と言う名の脅迫だな、あれは。
「ムム婆さんは貸さんぞ」
「ふむ。……では、ムムよ。我が区の者に技術を教えてやってはくれぬか? そなたの染み抜きは実に見事だとトレーシーが絶賛しておったのでな」
トレーシーが所構わず吹きこぼす鼻血が染み込んだシルクのハンカチ、いつ見ても真っ白だと思ったら、ムム婆さんが染み抜きしてたのか。
そりゃすげぇな。
純白のハンカチが真紅に染まるくらい鼻血染み込んでたのに。
「家へ来ていただけるなら、いくらでもお教えしますよ」
「ふむ。では、教育にかかる費用とその者たちの宿泊、食事にかかる費用は私が持とう。必要な分を計算して請求してくれ、給仕長よ」
「承りました…………ムムさんに師事するとなれば、住まいは西側になりますが?」
「なんの問題もない」
四十二区の西側は、かつて湿地帯の大病が発生した折、住人の大半が逃げ出し放棄した土地だ。
そこに住むことになるがいいのかとナタリアが尋ね、ルシアが何の問題もないと答えた。
これがきっかけで、西側に人が増えていくことになるかもしれないな。
というか、すでに木こりギルドの支部が出来てるし今さらといえば今さらだが、こうして他区の領主が明言することには大きな意味がある。
こういう積み重ねが偏見をなくすのだ。
「それじゃあ、裁縫上手な者たちと、裁縫上手になりたい者たちへの声掛けをよろしくね。あ、明日からでいいから。今日はヤシロたちの誕生日会だからね」
「いや、別にそんなもん気にしなくていいのに」
「――ナタリアが、お祝いしたいんだよ」
こそっと、耳打ちしてくるエステラ。
そんなことしても、ナタリアにはバッチリ聞こえていたようで「こほん」と咳払いをしていた。
聞かれてもよかったらしく、エステラも「にしし」っと笑っていた。
「ちなみに、ジネット。子供服は――」
「作れます!」
話を振ると、食い気味に返事が飛んできた。
まぁ、ジネットなら、教会のガキどものために服を作ってやることもあるのだろう。
「じゃあ、何も用意してなかったから、いっちょ作ってみるか」
「用意、とは?」
「誕生日プレゼントだ。俺はいっぱいもらったが、あっちにまだもらってないヤツが二人ほどいるだろ?」
衝立の向こうを指さして言えば、ジネットは「ぱぁあ!」っと表情を輝かせる。
「では、すぐに準備しますね。布はたくさん余っていますから」
「私もお手伝いしていいですか? ヤシロちゃんと一緒に作る機会って、実は全然なかったんですよね。隣で作ってみたいわ」
「あの、私もお手伝いさせてください。大丈夫です、教会の子供たちの服を作ることもありますので、きっと足手まといにはなりません」
「それじゃあ、私も参加させてもらおうかしらねぇ。……ふふ、ジネットちゃんが小さい時以来ね、子供服を作るなんて」
ウクリネスに続いてベルティーナとムム婆さんまでもが参加を表明する。
ムム婆さん、ジネットの服とか作ってやってたんだ。
祖父さん一人じゃ、そこまで手が回らなかったんだろうな。
「懐かしいですね。昔、ムムお婆さんにお裁縫を教えてもらったこともあるんですよ。シスターとは違ったやり方で、とても勉強になりました」
ジネットの師匠はベルティーナとムム婆さんなのか。
ホント、母親と祖母だな。
「ちなみに、一時間くらいでなんとかなりそうか?」
「それは……少し難しいですね」
服を作ると言っても、いつまでも出産直後のウェンディをここにとどめておくわけにはいかない。
結構元気そうで、食欲もあるらしいので、軽く飯を食ってもらって、早めに家に帰らせてやろう。
なので、服を作る時間は限られる。
「私もお手伝いいたしますし、ギルベルタさんとノーマさんにも協力を要請しましょう」
ナタリアはやる気だ。
「じゃあ、私が作業を分担して割り振ってもいいかしら?」
「そうですね。ウクリネスさんに取り仕切っていただけば、なんとかなるかもしれません」
プロと給仕長、そして家事スキルカンストのジネットと、その師匠である母親と祖母代わり。
なんとかなる気がしてきた。
「で、エステラ。……手伝わないの?」
「ボクは、それ以外のサポートを引き受けるよ」
まぁ、絶対足引っ張るもんな。
仕方ないとはいえ、いちいちちらつくポンコツ感。
残念女子だなぁ。
「では、布を取ってきますね」
「あ、ジネットちゃん、ボクも手伝うよ」
ジネットとエステラが二階へ向かい、残った者でデザインを考える。
「まずはベーシックなベビー服を描きますね」
と、ウクリネスがデザインを描く。
「ここにスナップボタンを付けて、ここんところを、こう、こっちに開くようにしておくと、おしめの交換が楽になるぞ」
「なるほど。あ、ではここはこんな感じで……」
「あの、子供たちをお着替えさせる時なんですが、足をばたつかせるので裾を通すのが大変なんです」
「なら、こういう構造にしてみたらどうだ?」
「まぁ、可愛らしい。ヤシロちゃんは、何人か赤ちゃんを育てたことがあるのかしら?」
「ねぇよ」
ムム婆さんが怖気の走るようなことを言う。
こんなもんは一般論だ。
日本のベビー用品店を思い浮かべれば、アイデアなんかいくらでも出てくる。
「では、この構造で型紙を作りますから、ヤシロちゃんはデザインをお願いしますね」
プロに丸投げされてしまった。
まぁ、適当でいいか。
紙にいくつかデザインを描いていく。
揃いの方が見栄えするだろうな。
よこちぃとしたちぃとか、使ってみるか。
「ほい、こんな感じでどうだ?」
「あら! あらあらあらあら、可愛らしい!」
俺のデザインを見て、ムム婆さんが声をあげる。
普段聞かないような大きな声に、ちょっと心臓が跳ねた。
その声を聞きつけて、こちらに集まってきた者たちがいた。
ギルベルタ、ノーマというナタリアが呼んできた者の他に、シラハ、シンディ、そしてマーゥル。
「マーゥルも裁縫できるのか?」
「あら、私、案外好きなのよ?」
「主様はお上手ですよ。まぁ、まだまだ負けませんけれどね」
「まったく、シンディは負けず嫌いなのだから……」
つーか、マーゥルが作った子供服とか、セロンのヤツ、ビビって使えないんじゃないか?
「お待たせしましたぁ」
大量の布を抱えて、ジネットとエステラが戻ってくる。
……何着作るつもりだってくらいの量だ。
そんなに持ってくるつもりなら俺に言えよ。手伝ったのに。
「わぁ、可愛いですね! これを作るんですか?」
「人手が増えたから、もうワンセット作っちゃいましょうか。さっきヤシロちゃんが『ありきたり』って没にしたやつ」
俺がこっそり没にしたデザイン画を拾っていたらしいウクリネス。
……没にしたのをみんなに見せんなよ。
「これもすごく可愛いですよ。没にするなんてもったいないです」
「そう思うわよね、ジネットちゃん。だから、作っちゃいましょう」
もう、好きにすればいいけどよ。
「ふふ、楽しい時間になりそうね」
ムム婆さんの周りには、妙齢のレディが並んでいる。
……絵面、濃。
そうして、俺たちは衝立の外でこっそりと赤ん坊の服を作り始めたのだった。
あとがき
汽車を待つ君の横で時計を気にしている、宮地です☆
名残り牛は、振る時お尻らしいですよ。
ちょっと意味は分かりませんけれども
さぁ、二話目です!
元気出していきましょう!
\( ̄▽ ̄)/
ヤシロがレディたちに混ざってお裁縫です。
女子だらけのお裁縫大会です。
……おばちゃん、おばあちゃん率ちょっと高めですけども
意外にも裁縫ができるマーゥルさん。
貴族の令嬢ですので、嗜み系はほぼすべてマスターしております。
庭弄りも、華道の延長線なのかもしれませんねぇ。
ちなみに、ルピナスもいろいろ叩き込まれているので嗜み系は得意です。
良き母、良き妻、良き女性なんです、あの人。
問題があるとすれば、アグレッシブ過ぎる性格面くらいでして……
という、さすが貴族!
な女性がいる一方、エステラとルシアはまるっきり戦力外です(笑)
嗜んでおりません。
時代、なのかもしれませんねぇ
多様化の波でしょうか
料理は出来ないですけども、ナイフ投げはめっちゃ上手いですので、エステラさん。
プラマイゼロです、たぶん(*´ω`*)
もしくは、一つを犠牲にすることで他の選択肢がパワーアップする、特化型なのかもしれませんね。
ほら、防御力を捨てて攻撃力を二倍する、みたいな?
つまり、
「ご飯にします? お風呂にします? それとも、わ・た・し?」
の、
ご飯とお風呂と私が、
1:1:1だった時
エステラさんは
0:1:2、ないし、
0:1.5:1.5、もしくは、
0:2:2(←特攻効果で威力二倍)
みたいなことになる可能性があります!
こりゃあ、エステラさんの新妻期間が楽しみで仕方ありませんね!
「よぉ〜し、お風呂でお前をご飯にしちゃうぞ〜☆」
てなもんです!
いいなぁ!
そんな新妻なら、ご飯くらい作れなくてもいいですよね!
世界にはコンビニという素敵なものがあるわけですし!
セブンの「金の〜」シリーズ、美味いっすからね!
それでも、どうしても
「新妻の手料理が食べたいやい! 食べたいやい!」という聞かん坊さんは、
ご飯を活かすためにお風呂を犠牲にしてみてはいかがでしょう?
ご飯:お風呂:私
2:0:2
このステ振りです!
あ、ステ振りっていうのは、ゲームでたまにあるシステムで、
ステータス(=キャラクターの強さで、攻撃力や防御力や素早さなど様々な種類がある)に
ポイントを好きなように振り分けて、自分好みのキャラクターを作ることが出来るヤツのことで、
ステータスにポイントを振り分ける、で、ステ振りというのです、説明終わり!
ちなみに、今回は特殊ルールで、どこかを0にすることにより、振り分けられるポイントが二倍になるものとします。
で、
ご飯:お風呂:私
2:0:2
です!
私=いちゃいちゃ
だとするならば、
美味しいご飯も食べられるし、イチャイチャも出来ます!
ただし、新妻は一切風呂に入りません!
絶対に入りません!
夏場でも頑なに入りません!
だって、お風呂が0だから!
……いや、それだと、ご飯が0の時は食事をしないことに…………
仙人か!?Σ(゜Д゜;)
分かりました、
ご飯0の時はご飯を作ってもらえない
お風呂0の時は沸かしてももらえないこととしましょう
お風呂に入りたければ自分で沸かして自分で掃除もして、シャンプーの補充も自分でやるのです。
……いや、全然やってますけどね!?
まだ介護のお世話になる年齢でもないですし!
じゃあ、こうしましょう、
一緒にお風呂に入ってもらえない!
これはダメージ大きいでしょう!?
新婚さんは一緒にお風呂入りたいですよね!?
むしろそのために結婚したまでありますよね!?
でもダメです!
お風呂にステ振りしなかったので、ダメでーす!
新妻「おはよう。おはようのちゅ〜は? ……ちゅっ、えへへ〜。朝ご飯できてるよ。一緒に食べよう☆ でも、お風呂だけは絶対一緒に入らないから! 絶対ぇぇぇぇぇ入らねぇぇぇぇええからぁぁあああ!」
何か秘密持ってませんか、その新妻さん!?
Σ(゜Д゜;)
大丈夫ですか!?
探偵さんとか雇います?
お風呂を0にするのも危険ですね。
では、
ご飯:お風呂:私
2:2:0
とステ振りしてみましょう。
すると、こうなります。
――夜
あ〜、疲れた〜
お、いい匂い。夕飯出来てるんだなぁ〜
リビングのドア「がちゃー」
……誰もいない。
……あ、テーブルに手紙が――
『食事とお風呂の用意をしておきました。ご利用ください』
寂しい!
(´;□;`)
これ、結婚のぬくもりとか一切ないですよ!?
私が0の時は、いちゃいちゃ(≒おもいやり)がまったくなくなるんですか!?
いや、まって!
お風呂は「一緒にお風呂に入ってくれる」だったはず!
なら、お風呂に2ステ振りしているのだから、一緒には入ってくれるはず!
お風呂場へ!
がちゃ――
新妻「私は隅っこの方に立って待機しているので、適当に体を洗って適当に湯船に浸かって、一切私に話しかけることなくさっさと出ていってください。あと、こっちは見ないようにお願いします、馴れ馴れしい」
にゃぁぁあああ!
(ノД`)
いちゃいちゃしたい!
私は、いちゃいちゃしたいのです!
(」>□<)」 ぬくもりがほしーぞー!
やはり、
ご飯:お風呂:私
1:1:1
まんべんなく揃っている方がいいですね
ご飯もお風呂も、愛情があればこそです
エステラさんには、何も犠牲にすることなく、普通の幸せな新婚生活を送っていただきたいですね
(*´ω`*)
……いや、待ってください
エステラさんはすでに多大なる犠牲を払っているので、
2:2:2
と、全体的に高いステ振りが可能なのでは!?
すでに多大なる犠牲を払っているので!!
エステラさんがどんな新婚生活を送るのか
楽しみに見守るといたしましょう
……あれ?
今回、何の話をしていたんでしたっけ?
最初に元気出していきましょうって言ってたので、
元気だけは十分出ていたとは思うのですが……うぅ〜む……
ま、\( ̄▽ ̄)/いっか
次回もよろしくお願い致します。
宮地拓海




