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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第三幕

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388話 試行錯誤

「ただいまっ!」


 エステラがにっこにこ顔で陽だまり亭へやって来る。

 マグダたち屋台チームも上機嫌だ。


「……当然完売させてきた」

「物凄い盛り上がりだったです! あっ、あんかけかた焼きそばを作ってるところあったですよ!」

「ただいま戻りました。ヤーくん、ジネット姉様。テレサさんは先にお家へお送りしてまいりました。エステラ姉様たちもお付き合いくださったんですよ。ヤーくんからもお礼を言ってくださいますか。私たちのためにと申し出てくださったんです」

「ヤシロ様。カンパニュラさんはいくらで売っていただけますか」

「他所の領主候補を買おうとするんじゃねぇよ、ナタリア」


 いくら可愛くてもあげません。


「どうしたのヤシロ? なんだか眠そうだね」


 当たり前のように俺の向かいの席へ座って、エステラが俺の顔を覗き込んでくる。

 まぁ、ぼ~っとはしてるな。


「たった今起きてこられたところなんですよ、ヤシロさんは」

「え!? ボクたちが頑張って働いていた時に寝てたの!?」

「……その代わり、お前らがこの後ゆっくり眠っている間中ずっと、ノーマとウクリネスの相手をさせられるんだよ」

「いつもありがとう、ヤシロ。体をいたわって、休める時には休んでね!」


 ズルいとでも言いそうだったエステラが手のひらをくるっと返して俺に握手を求めてきた。

 やめい。その握手、応じたらメンドクサ担当に任命されそうで怖ぇんだよ。


「ヤシロさん、精油がいい感じになっていますよ」


 ジネットが金色に輝く液体の入った小瓶を持ってくる。

 こいつは、マセレーション法という古式ゆかしい――まぁ、昔っから使われている原始的な抽出法で作ったヘリオトロープの精油だ。


 ヒマワリの種から抽出したオイルに、潰して柔らかくしたヘリオトロープを入れておく。

 ドライフラワーをオイルに浸けて香りを楽しむマセレーションオイルの応用だな。

 植物の香りがオイルの中に溶け出して香料となる。


 ま、数時間浸けただけじゃ気休め程度の香りにしかならないだろうが……


「めっちゃいい香りになってる!?」


 えっ!?

 いやいや!

 おかしくない!?


 数日かけて作ったマセレーションオイルでもここまで強い香りはしないぞ!?

 なに? どんな化学反応!?

 もしかして、ヘリオトロープによく似た魔草だった!?


「わぁ、いい香りですね」

「すごく甘い香りだね。ボク、こういうの好きだなぁ」

「むはぁ! 本当にすごく美味しそうな香りです!」

「……いっき、いっき、いっき」

「マグダ姉様、いくらロレッタ姉様といえど、さすがに油の一気飲みは危険だと思いますよ」


 カンパニュラが止めるが、多少の無茶は許容範囲と認識してる物言いだな、アレは。

 カンパニュラのことだから、正確に「ここまではセーフ!」という線引きをしているのだろう。

 さすがロレッタだ。カンパニュラにも弄られる余地があるのか。


 いや、それよりも……


「本当は、申し訳程度の香りでも付けばラッキーって思ってたんだが……」

「ここまで香りがついたのは想定外なのかい?」

「あぁ。だから、ミリィに頼んで蒸留法でちゃんとした精油を作ってもらうことになってるんだ」


 蒸留法で作ったエッセンシャルオイルは純度が高く、純粋な香りを堪能できる。

 植物油の中に香りが溶け込むマセレーションオイルよりも、よりダイレクトにヘリオトロープの香りが楽しめるだろうと思ったのだが……このマセレーションオイルで十分だな。


「じゃあ、上の二人が起きる前にハンドクリームの試作を始めるか」


 材料はレジーナからもらってきている。

 より肌に優しく、しっとりと保湿力の高くなる配合を考えたとかで、品質はかなりいいものになっている。

 もっとも、俺がここで作れば品質は面白いほど落ちてしまうが……まぁ、試作品だし、本製品にする時には専用の工場を作る予定なので問題はないだろう。


 工場の建設、運営は行商ギルドが全面バックアップしてくれる。

 もともと、商品を作るために様々な工場を作ってきたのが行商ギルドであり、ノウハウはかなりの量蓄積されている。


 なので、丸投げでいいだろう。

 アッスントなら、きちんと利益の出る体制を整える。

 俺は新事業を立ち上げ、それを適所へ販売する。あとのことはその道のプロがやってくれる。


 これで、行商ギルドから売り上げの一部が領主へと流れ、そこから俺へと幾分か入ってくる。

 エステラを噛ませているのは、後々の権利とか管理が面倒だからだ。

 俺のおかげで儲けているのだから、俺のわがままくらい喜んで聞いてくれればいいのによぉ。おっぱいカーニバルとか。でなければおっぱいフェスティバルとか!


「おっぱい感謝祭サンクスギヴィング!」

「君のもたらした改革による貢献のほとんどが逮捕免除に消えているのはもったいない事実だよね」

「はい。領主への貢献がなければ今頃懲役刑の真っ只中でしょうね、ヤシロ様は」

「なんだ、領主の前でおっぱいの話をするのは重罪か!? 羨ましいからか!」

「その不敬な態度が問題なんだよ!」

「エステラ様の前でおっぱいの話をするのは、殺人未遂に等しい行為です」

「そこまで心抉られていないから!」

「「いや、抉れてるけど?」」

「君たちは二人まとめて投獄されたいのかい!?」

「ナタリアが牢屋でも真っ裸で寝るならな!」

「はい、私は牢屋でも真っ裸で寝ます!」

「今日からの十日間で、ボクが君たちをきっちりと教育し直してあげるよ!」

「もう、ヤシロさん。……ダメですよ」


 ぺきょっと、額を押してくるジネット。

 また俺ばっかり。

 ナタリアだって全力疾走で暴走してただろうに、今。


「お兄ちゃん、試作品を作るなら、あたしがお手伝いしてあげるです!」

「……マグダも、きっとそういうのは得意」

「疲れてねぇのかよ?」

「陽だまり亭で鍛えられたあたしたちは、イベントくらいじゃ疲れないです!」

「……余裕のヨシュア・レイフォード」


 だから、誰なんだよ、ヨシュア・レイフォード。


「じゃあ、今日あったおもしろエピソードでも聞かせてくれ」

「あ、それはわたしも聞きたいです」

「任せてです! とっておきのお話があるですよ」

「……第一回、担々麺の乱」

「あぁ、その話はあたしがしたいです!」

「あぁ、確かにアレはすごかったよね」


 エステラも知っているようで、口元がちょっと笑っている。


「では、お茶を用意しますね。みなさん、お腹は平気ですか?」

「食べたは食べたんだけど……なんか、小腹が空いてる感じがするんだよね」


 イベントで物を食うとそうなる時がある。

 飲み会の後、家に帰ってからお茶漬けが食いたくなる感じだな。


「では、軽いお食事を用意しますね」

「うん。ありがとうね、ジネットちゃん」

「お手伝いいたします」

「ありがとうございます、ナタリアさん。では小鉢の用意を――」

「……では、ロレッタはお風呂の用意を、カンパニュラはマグダと一緒に閉店準備を」

「合点承知です! あたし、もう一人でお風呂沸かせるですからね!」

「では、私がテーブルを拭いておきますね、マグダ姉様」


 ぱっと役割分担がなされ、各人が散らばっていく。


「で、一人働かない領主なのであった」

「ボクは君の監視役だよ」

「目の保養してるだけじゃねぇか」

「あれ、知らないのかい? 視力って、酷使しても強靱にはならないんだよ」


 あぁいえばこう言う。

 口の減らないヤツだ。

 乳は減りきってるくせに!


「イベントはどうだった?」

「大盛況だったよ」


 人が捌け、二人きりになったので試作の準備をしながら聞いてみる。


「『BU』からもたくさん人が来ていてね、アトラクションには長蛇の列が出来ていたよ。明日も、人出は減らないだろうね」

「入場料取っとけばよかったのに」

「ホントだね。あ、ミスター・オルフェンも来てたんだよ。会場を見て、入場料を取ることに自信を見出してた」


 ま、小規模ながらも、テーマパークでやろうとしていることをそのまんまやってるわけだからな。

 そこが人気なら、三十一区のテーマパークに手応えを感じるのも頷ける。


「ちょっと惜しくなったか?」


 三十一区より先にテーマパークを作ることも、四十二区なら出来るだろう。

 そうすれば、客をごっそり奪い取れる。


「まぁ、もったいない気はするけど、でもやっぱり、テーマパークは三十一区に任せるよ」


 会場の狂乱でも思い出したのか、エステラは「にししっ」と嬉しそうに笑う。


「ウチの領民たちはお祭りが大好き過ぎるからね。常設しちゃうと経済が停滞しちゃうもん」


 おぉ、誰にも強要されていない素の「もん」が出たな。

 エステラは最近、こういう油断したような表情をよく見せる。


「エステラ、か~わいい~」

「へぅ!? な、なにさ、急に!?」

「『しちゃうもん』だって」

「そ、そんなこと言った、ボク?」

「言ったもん」

「うわぁ、可愛くな~い」

「そんなことないもん。可愛いもん。ミリィとお揃いだもん」

「なんでミリィ? ……あぁ、そういえば生花ギルドの人が何か言ってたな。君がミリィに悪さしたんだね?」

「悪さはしてねぇよ。可愛さを添加しただけだ」

「悪さじゃないか。ミリィの可愛さを独占するのは重罪だよ」


 くつくつと笑い、生花ギルドと話した内容を教えてくれる。

 ゴムの木とヘリオトロープを空いている土地に移植して管理するという話だ。


 ゴムの木は東側の、レジーナの家の近くに移植するらしい。


「ヘリオトロープも東側にと思ったんだけど、大通りからこっちへ少し入ったところにある空き地を利用しようと思うんだ。ミリィが通いやすいように」

「そうだな。うまくいけば株を増やして香料用に栽培することになるからな」

「土地は領主と生花ギルドの共同出資ということになったよ」


 つまり、格安で貸し出すということだな。


「お人好しは破産するぞ」

「大丈夫だよ。十二分に利益の見込める投資だからね。ばっちり売れる商品を頼むよ」


 まぁ、適度に頑張るさ。

 四十二区の財政破綻なんて御免だからな。


「万事うまくいったら、いつかまとめてご褒美をあげるよ」

「じゃあ、真っ裸で首にリボンを――」

「却下」

「しょうがねぇ。真っ裸でおっぱいをリボンで隠すように――」

「却下」

「大丈夫だ。その際、おっぱいには立体的に見えるトリックアートを施してやるから」

「その話、もうちょっと詳しく」

「『却下』って言えや」


 食いついてんじゃねぇよ。


「楽しそうですね」

「あぁ。おっぱいの話で盛り上がってな」

「ボクは盛り上がってないよ!?」


 お茶と軽食を持って戻ってきたジネットに「めっ、ですよ」と軽く叱られ、夕飯にはちょっと遅い、夜食をいただいた。


 炙った鯛が載った、贅沢な鯛茶漬けだった。


 うまーっ!






「初めての担々麺に、最初ほとんどの人は懐疑的だったです。それもそのはず、スープが見るからに真っ赤でとても辛そうだったからです!」

「……そこへ狩猟ギルドの男が一人やって来て、担々麺を注文した。観衆がどよめく」

「狩人さんは2辛を食べて、『辛ぁー! だが、これくらいパンチの利いたラーメンも美味いぜ』と、男らしさを見せびらかすように得意満面で担々麺を食べ続けたです」

「……しかしそこへ、オメロが現れる。2辛で額に大粒の汗を浮かべる狩人を一瞥して鼻で笑うと――5辛を注文した」

「その時会場全体がどよめいたです! ね、エステラさん!?」

「あぁ、確かに。『え、アレの倍以上辛いの?』って反応だったよね、アレは」

「……提供された5辛の担々麺は、見るからにスープが真っ赤」

「それをおもむろに、オメロさんが食べたです! それも豪快に! 『ひぃぃーい! 辛ぇ! けど、美味ぇ!』――オメロさんのその咆哮は、きっと四十二区史に刻み込まれたはずです。それほどの衝撃があったです!」

「……そして、隣で額に汗して2辛を食べる狩人に向かって、オメロが一言。『ま、通は5辛だわな』」


 ……オメロって、割と調子乗りだよな。

 だからデリアに洗われるんだっつの。


「オメロさんの挑発を受け、立ち上がったのは狩猟ギルドでした! 『川漁に負けるな!』『漢を見せろ!』『あのアライグマに目に物を見せてやれ』と盛り上がり、こぞって5辛を注文したです」

「……しかし、5辛は勢いだけで食べられるものではない」

「うん……騙されて食べたけど、……アレはただ事じゃなかったよ」


 エステラが俺を睨む。

 あれは、お前にも悪いところはある。責任はフィフティーフィフティーだ。


「そして轟く大絶叫! しかし、そこでめげないのが狩人の漢たちです! 涙目になりながらも『この程度で勝ち誇るたぁ、川漁の男どももおめでてぇよなぁ』と逆に挑発したです!」

「……それで黙ってないのが川漁ギルド。漁師総出で5辛を頼み、会場は一気に我慢大会の様相を呈する」

「そこでウッセが、『5辛も食えねぇようなヤツは男じゃない』とか言ったもんだからさぁ、牛飼いや大工たちも触発されちゃって大変だったんだから」


 エステラが肩をすくめて苦笑を漏らす。

 それ以降は、度胸試しとばかりに男どもが5辛の担々麺に群がり、ヒーヒー言いながら真っ赤なラーメンをすすっていたらしい。

 なんだろうなぁ、キャラバンで男どもがジネットの足つぼに挑戦したみたいな感じなのかね。

 この街の男連中は単純だよなぁ。

 男を見せればモテるとでも思ってんのかねぇ。きっと、その様を見ていたお嬢様方は冷ややかな視線を送っていたことだろうよ。


「そして、そこに現れたのがモコカとバルバラだよ」

「あいつらも来てたのか?」

「二人とも、今日は休みで一緒に遊びに来たんだって」


 そんな仲になってたのか。

 運動会から友達だとは言っていたが、一緒に遊びに行くほどとはねぇ。


「それで、バルバっちょはちょっと残念な娘なので、担々麺とかよく分かってなかったです。『みんなが食ってるやつ、アーシらも!』って注文してきたです」

「あいつには思考能力ってもんがないからな」

「そんなことはないですよ、ヤーくん。バルバラ姉様はテレサさんに似てとても思慮深い方です」

「でもなカンパニュラ。たぶんあいつ『思慮』って言葉知らねぇぞ?」


「そっかぁ、アーシ、なんか深いんだぁ」くらいにしか感じないと思うぞ。


「……一応忠告はしたが、『みんな美味そうに食ってるから、いい!』と5辛を食べ始める」

「けれど、次の瞬間、観衆は衝撃を受けたです!」

「……バルバラもモコカも、5辛の担々麺を平然と食べ、『ちょっと辛いな』『けどマジうめぇですよ!』と完食した。スープも」

「あははっ、あの時のウッセたちの顔……君にも見せたかったよ」


 エステラが膝を叩いて笑っている。

 相当間の抜けた顔をしていたのだろう。


「バルバラさんたちは、あの辛さが平気だったんですね」

「バルバラとモコカだからなぁ、味覚が備わってないのかもしれんぞ」

「ちゃんと備わってますよ、ヤーくん」

「『辛い』を知らない可能性も」

「ヤーくん」


 カンパニュラは妙にバルバラを庇うな。

 お泊まりした時に随分と懐いたようだ。


「それ以降、女性のお客さんも増えたです!」

「……予想に反して3辛や4辛もたくさん売れた」


 平均的な2辛と、面白半分で頼まれる5辛に集中するかと思われたが、自分に合った辛さを求めるまともな客が割と多かったらしい。

 予想以上に受け入れられるのが早かったな。


「俺の故郷でも、辛い物好きな女性は多かったんだよなぁ。普通の料理に唐辛子を『これでもか!』って振りかけて真っ赤にして食べたりしてな」

「そうなんですか? 話を聞いただけでお口の中が辛くなった気がします」


 ジネットは「むきゅっ」と口元を押さえるが、もしかしたら、四十二区に激辛ブームが来るかもしれないなぁ。


「食った客の反応はどうだった?」

「最初は辛さしか感じてなかったみたいですけど、後半は美味しそうに食べてたです」

「……辛さは、峠を越えると後を引く模様」

「私にもそのように見えました。きっと明日からはリピーターさんがたくさん増えると思います」


 店番を担当した三人がそう判断したなら、きっとそうなるのだろう。

 逆に、シフォンケーキの売れ行きはそこそこ止まりだったそうだ。


「ジネットも、十日のうちどこかで参加しろよ。その時は俺が店を見てるから」

「いいんですか?」

「好きだろ、賑やかなの」

「はい。では、ヤシロさんもいつか一緒に行ってくださいね。マグダさんたちとも、ヤシロさんとも、一緒に屋台へ立ってみたいですから」

「んじゃ、順番にな」

「はい」

「任せてです! お留守番はお留守番で、割と楽しいです!」

「……陽だまり亭を任されたという誇りが、なんとも言えずに嬉しくもあり」

「私はまだ一人では任せていただけませんので、姉様たちを尊敬します」

「むにゃ~! カニぱーにゃの尊敬は格別です!」

「次女姉様も三女姉様も、ロレッタ姉様を尊敬されていましたよ」

「あの子たちの尊敬は薄っぺらいです! 家にいると、無自覚でアゴで使おうとするですよ!? 『あ、一階に行くならついでにお茶持ってきて~』って! 特に次女が!」

「それだけ愛されているということですよ、ロレッタ姉様」


 それは愛なのだろうか。

 つか、カンパニュラ。……次女姉様って。


 とかなんとか言いながらも、俺は手を動かしていた。


「よし! まぁ、こんなもんだろう」


 こねこねまぜまぜ作っていたハンドクリームの試作品が完成し、自分の手の甲に付けて使用感を確認する。

 べたつきもなく、さらスベだ。

 香りも甘く、心地よい。バニラよりもチョコレートに近い匂いになったな。

 もし、ミリィの作る蒸留法の精油がバニラっぽければ、マセレーション法も採用して、バニラとチョコの二種類作るのもありだな。

 一個の入れ物に二種類入れて、ミックスソフトクリームみたいにしても面白いかもしれない。


「ジネット。もう料理はしないな?」

「はい」

「じゃあ、ちょっと試してみてくれるか?」

「いいんですか?」

「気になるところがあれば言ってくれ」

「……では遠慮なく」

「忌憚なき意見を言うです!」

「ほら、カンパニュラも並びなよ、ボクは君の次でいいから」


 ジネットの後ろにずらりと列が出来る。

 いや、別にいいんだけどさ。


「塗っていただけるサービスはございますか?」

「こんくらい自分で塗れよ、ナタリア」

「ちなみにこれは、手ではなく胸元に使用することも可能でしょうか?」

「じゃあちょっと試してみようか! しょうがないから塗ってやろう!」

「ヤシロ、追い出すよ?」


 まだ感想も聞いてないのに!?

 つーか、居候が偉そうじゃね!?

 ……まぁ、俺も居候みたいなもんだけども。


「わぁ、いい香りです」

「……これを付けて寝ると、たぶん手を食べる…………ロレッタが」

「あたし、そこまでおバカじゃないですよ!?」

「でも、甘いお菓子を食べる夢を見られそうですね」

「しっとりしてるのにべたつかなくて、塗り心地も悪くないね」

「普段から水仕事やナイフ仕事をしている給仕たちは喜ぶでしょう」

「ちょっと待って、ナタリア。ナイフ仕事ってなに?」


 普段からそんなおっかない仕事してんの、お前んとこの部下たち?


「じゃあ、ジネット、ナタリア。前に約束したご褒美はこれでいいか? この後ノーマやウクリネスと容器を作るからさ」

「はい。ありがとうございます」

「特製ブレンドですね。大切に使用させていただきます」

「エステラとルシアの分もこれな」

「やったね。量産されるまでたっぷり自慢しよ~っと」

「で、マグダ、ロレッタ、カンパニュラは今日頑張ってくれたから」

「もらえるですか!? やったです!」

「……ヤシロは気配りの出来る男」

「ありがとうございます、ヤーくん。あの、出来れば……」

「テレサの分もな」

「はい! ありがとうございます!」


 自分がもらえることよりも嬉しそうに言うカンパニュラ。

 第二の微笑みの領主様になりそうだな、これは。


「じゃあ、そろそろノーマたちを起こして――」

「呼んだかぃね?」

「うふふ。久しぶりにたっぷり眠って気力体力共に十分ですよ」


 厨房への入口の前に、ノーマとウクリネスが立っていた。

 これから戦場へ向かうかのような、迸る闘気を全身に纏って。


 さぁ、夜は長くなりそうだ。






 エステラたちが風呂に入っている間、俺たちはデザイン会議を行っていた。

 ヘリオトロープを模したデザインにするのか、はたまたラグジュアリーでエモーショナルな映えるデザインにするのか……


「やっぱり、これが一番素敵さね」

「私も、これがいいと思います」


 そんな中、ノーマとウクリネス、双方が選んだのはしたちぃのシルエットを取り入れたデザインだった。


 ハンドクリームの入れ物を両手で大切そうに包み込み、胸の前でぎゅっと握る俯き加減のしたちぃ。それを横から見たシルエットになっていて、少々センチメンタルな印象を受けるデザインとなっている。


「淡い恋心を感じるさね」

「そうですね。このハンドクリームをつけて少しでも女の子らしく素敵になって、意中のあの人に少しでも良く思ってもらいたい――そんな思いがひしひしと伝わってきます」


 へー、そんなもんかねぇ。


「さすが、ヤシロちゃんですね。女心を刺激するデザインをよく分かってます」


 まーね。

 美容と恋、そこに人気のマスコットが合わさったのだから、女子の財布の紐がゆっるゆるになるのは世の理だ。


「缶も袋も同じデザインにするんですか?」

「それじゃ味気ないさね。袋から出したらまた新たな驚きがあってこそ感動が生まれるんさよ!」


 ノーマの意見はもっともだ。

 最初に見て「かわいい!」と思ったデザインでも、中身を取り出して同じデザインだったら「あ、同じなんだ」と、マイナスでこそないが感動がプラスされない。

 停滞は後退と等しい。

 感動は常に現状を上回っていかなければいけないのだ。


「こいつは袋のデザインにしよう。したちぃが握っているのがどんなものなのか、袋から取り出すと分かるってコンセプトで」

「なるほどです! それだと、なんだか宝箱を空けるような特別感が生まれますね! さすがヤシロちゃんです!」

「それなら、缶のデザインは一目見てきゅんとするような意匠にしないといけないさねぇ……腕が鳴るさね」

「えっ、胸が!?」

「……なんで褒めたそばからしょーもない発言が飛び出すんさね、あんたは……」

「ヤシロちゃんですからねぇ」


 なんだ、胸は鳴らないのか。

 聞いてみたかったのに。


「したちぃのシルエットは、コスメ関係の商品全部に付けてもいいかもしれないな。『恋するしたちぃシリーズ』とか言って」


 シリーズにすれば、全種類集めたいという者が必ず現れる!

 普段使わないようなものでも、シリーズものだからと手に取ってしまうのだ!

 化粧水や乳液、ファンデーションにマスカラ……おぉっと、忘れるところだった、化粧落としも必要だな。……ふっふっふっ、これは売れる!


「『恋するしたちぃシリーズ』……いい響きさねっ」


 なんか、ノーマの胸に突き刺さったらしい。

 シリーズ全買いする人が、思いのほか身近にいた。


「このマークを全面に入れるか、すみっこに小さく入れるか……悩むな」

「両方作って比較すればいいじゃないですか。私、刺繍は得意なんですよ」


 知ってるよ。

 驚くような腕前のジネットをも凌駕する熟練の腕だ。

 美しさもさることながら、ミシンが裸足で逃げ出すような速度で刺繍できるチート級の腕前の持ち主だ。


 ……まぁ、ミシンが靴穿いて逃げ出す方がびっくりするけどな。「えっ!? ミシンが靴を!?」って。


 んなことはどうでもいい。


「あとは形状なんだが、ただの巾着じゃつまらないよな」

「そうですねぇ。シリーズにするならたくさん持つ人も出てくるでしょうし……」


 日本でも、商品を入れる専用の袋というものは存在する。

 男で言えば、電気シェーバーなんてものにも専用の袋が付いている。ま、ほとんどのヤツが一度も使わずにゴミ箱行きなんだろうけど。俺も使ったことはない。


 それでは困るのだ。

 袋がただの付属品ではなく、その袋にも価値が見出せなければ!


「持ち運ぶことに重点を置いたデザインにしてみるか」

「ヤシロちゃん、それ、詳しく!」


 ウクリネスの瞳が光る。


 シェーバーの専用袋が使用されないのは、シェーバーを持ち運ばないからだ。

 旅行に持っていく時に入れるヤツもいるんだろうが、基本家に置いておくものだからな。

 ハンドクリームも、寝る前に塗る程度なら家に置きっぱなしになるだろう。

 そうなれば、使いやすいように袋からは出して置いておく。そうすると、袋は邪魔になるので引き出しの奥にでもしまいっぱなしになる。


「だから、服のどこかに取り付けられるようにして、その袋を身に着けていること自体がオシャレに見えるような造りに出来ないかな?」


 持ち運ぶなら、リップとかの方がいいんだろうが、それはまた後日開発するとしよう。


「いいですね! 紐を長くして首から下げられるようにしておくとか、あとは……」

「ベルトに通せるようにしておくのはどうかぃね? ウチのギルドでは、ベルトに道具ホルダーをぶら下げるんさよ。あんな感じでさ」


 ベルトに通せる紐を付けて、腰に可愛らしいポーチをちょこんと付ける。

 それはありだな。


「ベルトをしない女子もいるだろうから、首から下げるタイプとベルトに付けるタイプ、あとはピンかぱっちん留めでカバンに取り付けられるようにしておくのがいいだろう」

「ピンなら、どこにでも付けられますね!」

「ぱっちん留めはもうマスターしたからねぇ、いくらでも量産できるさよ!」


 この街のカバンは、ランドセルのようにカバン本体に前掛けを垂らして蓋をする形状が多い。

 なら、その前掛けに取り付けられる工夫をすれば、誰でも簡単に持ち運べるようになるし、他人からも見えやすく、「あ、あの人、あのハンドクリーム持ってるんだ」と一目で分かる。

 そうなれば、「私も欲しい」と連鎖的に顧客が増えていく。


 ……まぁ、ファスナーの登場でカバンの形状が大きく変わってしまいそうな予感はあるんだが……ピンだったらどんなカバンにも付けられる! きっと大丈夫!


「ちょっと、デザインしてみますね! そちらは、缶のデザインを進めててください!」


 イメージやアイデアが脳の奥から噴き出してきたようで、ウクリネスがちょっと離れた席へ移動して猛烈なスピードでデザイン画を描き始めた。

 何枚も何枚も。描いては次、描いては次と。


 あぁなったら、もう誰にも止められない。


「缶のデザインはヘリオトロープにしておくか?」

「そうさねぇ……今後、ハンドクリームの種類が増えるんなら、中が分かりやすい方がいいとは思うけど…………したちぃ」


 お前も使いたいんだな、したちぃ。


「じゃあ、よこちぃがヘリオトロープの花束をしたちぃにプレゼントしているようなデザインにするか?」

「それは素敵さね!? よこちぃに贈られた花なら、したちぃが大切そうに握り締めている理由も納得さね!」


 袋のデザインとの関連も生まれて、商品に物語が出来る。

「したちぃが何かを大切そうに握りしめているなぁ」からの「あぁ、これを抱きしめていたんだね、納得☆」という流れだ。


 ま、ヘリオトロープは花束には出来ない花なんで、鉢植えになるだろうが……絵になるかな?

 そこはデフォルメして一輪の花を大きく描くか?

 量産するとなると、あんまり細かいイラストは無理だしなぁ。


「ヘリオトロープってのは、どんな花なんさね?」

「アレだ」


 カウンターに飾ってあるヘリオトロープの鉢植えを指さす。

 アロマティカスの隣で、真っ白な花を咲かせている。


「小さい、可愛らしい花さねぇ。是非、あの可憐さを活かしたいさね」

「細かいと大変だぞ?」

「そのためにアタシを頼ったんじゃないんかぃね? アタシなら、どんな細かいデザインでも対応できるさよ」


 缶の蓋には塗料で色を付ける。

 お風呂のオモチャにも使用した塗料とコーティング剤を使う予定だ。


 薄い鉄板をくり抜いて型を作り、その上から塗料を塗布することで、缶の蓋にイラストを印刷する。

 金型を四種類くらい用意して、順番に色を載せていけば、カラフルな印刷が可能になる。

 まずは輪郭、次は鼻、最後に目――みたいな感じでな。


 ただ、加工しやすく、且つ壊れにくい鉄板を用意することと、その鉄板を加工すること、この二点が非常に難しい。

 加工しやすくても簡単に曲がったり欠けたりするようでは量産には使えない。


 そこそこ硬い鉄板に、細かい模様を描き、それが綺麗に出るようにくり抜いていかなければいけない。


 そんな印刷方法をノーマに説明すると――


「それは面白そうさね! 早速作業に取り掛かりたいところだけど、さすがに陽だまり亭じゃ無理さね。ヤシロ、ちょいとウチの工房へ来ておくれでないかい?」

「では、私もお供いたしますよ! ヤシロちゃんと話し合って、いろいろ微調整したいですから!」

「なら、店から材料を持っておいでな」

「分かりました! ……くぅぅっ! 今夜は眠れそうにありませんね!」


 ちょっと燃料を投下したらめっちゃ燃え上がってしまった。

 この二人のバイタリティの出所を突き止められれば、きっと人類は永久機関を手に入れることが出来るだろう。


「ほら、ヤシロ。あんたも早く準備するさね。――今夜は寝かさないから、覚悟しとくんさよ☆」



 とっても妖艶な微笑で言われたわけだが……なぜだかまったくときめかない。

 目がな……ワーカーホリック……いや、ジャンキーの目をしてた。



 そして、宣言通り、寝かせてもらえなかったよね。






 最終的なデザインは、よこちぃが片膝を突いてしたちぃへプレゼントを贈っているイラストになった。

 手に持っているのは小さくはっきりとは見えない。

 見様によっては、アメリカあたりのプロポーズのように見える。

 よこちぃとしたちぃの全身を入れたことでプレゼントははっきりと見えなくなった。

 なので、よこちぃたちを取り囲むフレームにヘリオトロープの花を散りばめてデザインした。

 周りのフレームを変更すれば、真ん中の絵は使い回せる。


 ただ、そのせいで金型が増えてしまった。

 よこちぃとしたちぃのイラストを描くための金型が四枚。

 フレームを描くための金型が三枚。

 計七枚になった。


 作るのもさることながら、枚数が増えれば着色工程も大変になる。

 一色ずつ乾くのを待つ必要があるし、少しでも金型がズレれば色を全部落として最初からやり直しだ。


 しっかりと着色された色を落とすには溶剤を使用するのだが、その溶剤がブリキに残っていれば、当然ながら上に色を載せても綺麗に発色してくれない。

 溶剤を落とすための洗浄が必要になり、洗った後乾かす時間がかかる……と、途方もない作業になる。


 それを解消するために、『初心者でも完璧に着色できるマシーン』の制作に取りかかることになった。


 リスクマネジメントという言葉を知っているだろうか?

 企業が行う事業に関し、それが引き起こすであろう問題点を事前に洗い出し、対策を立て、損益や被害を未然に防ぐために必要な考え方である。


 たとえば、飲食店であれば、『食中毒が発生するリスク』というものがあげられる。

 そのリスクを減らすためにどのように行動するべきか――そう。衛生管理だな。

 手洗いや調理場の清掃、消毒はもちろんのこと、食材に関しても危険なものは使用しないように考慮する必要がある。

 信頼できる農家から野菜を買い取り、清潔な調理場で、検証されたルールに則って調理をすれば、食中毒のリスクは限りなく低減させることが出来る。


 ――というのを、気が遠くなるほどいくつもいくつも積み重ねて、企業が企業として信頼を失わず顧客満足度を上げるため、日夜あれこれと考えられ実行されているのがリスクマネジメントというものだ。


 そのリスクマネジメントの最たるもの。

 必ずと言っていいほど、ほぼすべての企業が頭を悩ませる最大のリスク。

 それが、ヒューマンエラー。つまり、人間による仕事のミスなのだ。


 こればっかりは、どんなにルールを設けても、どんなに素晴らしい策を弄しようとも、絶対になくならない。

 リスクマネジメントの観点から言えば、『ヒューマンエラーはなくならないもの』と捉えるのが妥当であり常識的である。


 なので、如何にして『人の手による失敗を軽減するか』が最も重要な要素となる。


「というわけで、ハンドルを回すだけで自動に色が正確に着色されていくマシーンを依頼したわけだが……」

「……はぁ、はぁ……まぁ、アタシにかかれば、ざっとこんなもんさよ」


 ノーマ、頑張り過ぎ!


 マシーンの仕組みは単純で、缶がピタリとハマる穴を開けた鉄のコンベアーを作り、ハンドルを回転させることでそれが動くようにする。

 そのコンベアー上部の定められた位置に金型を設置する。

 当然、缶の蓋にピタリと合うようにだ。ミクロン単位の精度にこだわった。


 金型の下に蓋が来ると、ローラーが下りてきて着色を開始する。

 着色が終わった缶は、その先の缶置き場へと流されていき、染料が乾くまで待機となる。


 その間に、金型とローラーと染料を交換すれば、二度目の着色が出来るというわけだ。

 量産するのであれば、この機械を着色の回数分作ればいい。

 本当は一本のレーンですべての着色が出来れば最高なのだが、四十二区の技術で完全オートメーション化は不安が大き過ぎる。

 人の目によるチェック、検品を行った方がいい。

 ローラーでの着色にしたって、色が掠れるかもしれないしな。


 そして、重要な点がもう一つ。

 実は今回作ったこのマシーンには、俺の野望を叶えるための布石が仕込まれているのだ。


「しかし、このチェーンっていうのは、今後使い道が無限に広がりそうな大発明さね!」


 そう。

 コンベアーを動かすためにチェーンを使用しているのだ。

 自転車の動力となる、あのチェーンだ。


 ブッシュベアリングを使用して軽く回転する鉄製の小さなパーツを組み合わせて作られたチェーンは随分と原始的で動きも重いが、これを元に改良を繰り返せば、そう遠くないうちに自転車のあのチェーンに進化するだろう。

 0から1へは果てしなく遠くても、1から100は意外と近いのだ。


 ……あと、小出しにしないとノーマが死ぬ。


「このチェーン、改良が必要な気がするさね!」

「改良はいいけど、性能が上がり過ぎて金型とブリキの缶がズレるなんて事態は避けてくれよ」

「む……そぅ、さね。……改良は別途、趣味の範疇でやるかぃね」


 カロリー消費の激しそうな趣味だな、おい。


「けど、これでなんとか完成しそうさね」

「テストしてみて行けそうなら、とりあえず二十個ほど作ってみるか」

「さね」


 白み始めた空の下、ノーマが着色マシーンをセットする。


 まずは一色目。

 一つ着色しては、デザイン画と見比べて違いがないか、滲みや欠損がないかを確認する。

 一つ目の合格が出たら、一気に十個目までを着色し、抜き取り検査で三個チェックする。

 それでOKが出れば、最後まで一気に着色してしまう。


 二十個着色が済んだら、全体検査を行いつつ乾燥だ。

 その間、ノーマには金型のローラーの交換を行ってもらう。


「ヤシロちゃん。見てください。試作品です」


 ウクリネスの入れ物もほぼ完成している。

 刺繍はやはり全面にバーンと入れることになった。

 ハンドクリーム自体が小さいものだし、カバンに付けると目立たなくなる。

 その小さな範囲の中でさらに刺繍を小さくすると、遠目にはまったく分からなくなるというのが理由だ。


 ハンカチや服に刺繍する時は、すみっこに小さく入れるとオシャレだとは思うけどな。


「スナップボタンを使ってベルトを外さずにベルトに取り付けられる仕様にしてみました」


 鉄製の「ぱちっ」っと留めるスナップボタン。

 それを幅広のヒモに取り付け、ベルトを外さなくてもポーチの着脱が出来るように改良されたウクリネスの自信作。

 確かに、これならオシャレをした後にプラスワンで取り付けられてお手軽だ。


「その他に、ピン留めタイプと肩掛けタイプを作りました」

「肩掛けというか、ネックレスみたいなサイズだな」

「あまり長くても、邪魔ですからね」


 確かに、直径5センチ程度の小さなポーチを斜めがけしていても、ぷらんぷらんして邪魔だろう。

 胸元に来るくらいでちょうどいい。


「ですが、そうですね。『肩掛け』という表現はやめて『ネックレスタイプ』としましょうか」


 ネックホルダーというよりかはネックレスの方がオシャレっぽい、か?

 そういや、昔ミネラルウォーターを首からぶら下げるのが流行った時代があったっけなぁ。

 日本ではお守りを首からぶら下げてるヤツも普通にいたし、受け入れられないってことはないだろう。


 俺なら、カバンに付けるかベルトに付ける方を選ぶけどな。


「ヤシロ、二色目始めるさよ」

「もう乾いたのか?」

「たぶん大丈夫さね」

「滲んだらやり直しだぞ」

「大丈夫さよ。失敗してもいいように二十もやってんだからさ」


 ま、そうなんだけどな。

 トライ&エラーを繰り返して最適を探るってのには賛成だ。

 じゃ、二色目やるかね。


「んぁあああ! 滲んださね!」

「……ま、そりゃそうだろうな」

「いや、ここんとこ手書きで修正したらバレないさね……たぶん!」

「分かったよ、俺が修正しとくから、次のスタンバイ頼むな」



 そんなトライ&エラーを繰り返し、日が完全に昇るころ、入れ物は二十個完成した。







あとがき




手探りが好きです。

「まさぐり、まさぐり」


宮地です!



試行錯誤、いいですね!

「こうすればうまくいくんじゃね?」「うわぁ、全然ダメだ!」

みたいなトライ&エラーを繰り返し、なんとかかんとか見られるレベルに持ってきて

自信を持って発表すると、自分よりはるかに凄まじい技術を持った人と出会って

「うわっ、俺、全然ダメ!?」

ってへこむ。


そういう経験を経て、人は大人になっていくんですよねぇ。

そうして身に付けた技術って、いつまでもなくさなかったりして、

得難い宝になっていたり。


とはいえ、

昔は、独学で時間を浪費するなら、高い金を払ってでも誰かに師事しろってよく言われました。


確かに、独学で頑張って、なんとか形になった頃、

周りを見渡せば自分より若い人たちだらけだった、みたいな経験はたくさんあります。

「もう十年早く身に付けとけよ」って状況、多かったです。


ラノベも、私と同時期デビューの人はみんな私より若かったりしましたしね。

好きなアニメの話題で一世代ズレがあったり……


「あ、それ再放送で見ましたよ」とか……

私はオンタイムで見ていたさ……(´・ω・`)



ギターも、今はゆーちゅーぶで上手い若い人多いですよね。

いぶし銀な老齢のテクニックで魅せるオジサマも多数いらっしゃいますけども。

私はまだまだへたっぴ~ですし。

独学の限界ですねぇ。

一度先生に教わりに行ったことがあったんですよ。

半年ほどでしたけれども。

理論から、噛み砕いて教えてくださり、

テクニックよりも知識が増えた感じでした……つまりまぁ、うまくはなってないんですけども、

それでも、おかげさまで作曲が出来るようになりました。

すごく初級レベルですけども。



あと、シナリオも先生について学びました。

テレビドラマの脚本を書くようなヤツです。

セリフや言葉遣いにこだわってしまうのは、脚本畑から出てきたからなんだろうな~と思います。

キャラの名前も、字面よりも口にした時の言いやすさや、しっくりくる感を重視しています。



なんか優しくて、ほわほわした性格だから「フェアリー」とか「ホビット」とか「エルフ」みたいなふわっとした語感の名前がいいなぁ~。あ、でも店を一人で経営しているからふわふわの中にも揺るぎない芯が一本通っているピリッとした感じも欲しいなぁ~



という感じで『ジネット』と名付けたり。


濁点と『っ』を使うと「カキッ!」っとした印象になりますよね。

でもひらがなで書くと「じねっと」ってちょっと柔らかい印象になるという。

あと、ヒロインが増えると、自然と最後が『あ段』になることが多いので『あ段』で終わらない名前がいいな~と。


エステラ

ナタリア

マグダ

ロレッタ

レジーナ

デリア

パウラ

イメルダ


……このように。

最後を『あ段』にすると、なんとなく女の子っぽい名前になりますよね。

あとは「い」で伸ばす感じでしょうか。


ミリィ

ネフェリー

レッツパーリィー!

おパンティ!


とか。


……すみません、そろそろふざけたくなってきまして。


そんなことも考えつつ、

『ジネット』だけが『ババーン!』と浮く、目立つ、目に留まる、

そんな名前になっていれば、いいなぁ~って。



この辺は試行錯誤して、長い年月かけて掴んだ感覚というか

「こうしよう!」とか考える前に、なんとなく「そうなってた」っていう体に沁み込んだ感覚なのですが、

試行錯誤を繰り返し、トライ&エラーを繰り返した結果手に出来た、私の数少ない宝物だと思っています。


いや、まぁ割と普通の話なんですけどね(^^;

こう、なかなか教えたり教わったりが難しい内容、ということで。



最近では、どんなジャンルでも

ネットで「こうするとうまくいくよ!」っていう動画とかサイトとかがあるので

とても重宝しておりますが、

案外、手探りで失敗しまくるのも楽しかったりするんですよ。


時間は恐ろしいほどかかりますけどね!(゜Д゜;)



ノーマたちの楽しんでる様子が伝わればいいなぁ~と思いつつ、

モノ作りに苦戦していたころを懐かしんでみました。




さて、懐かしいと言えば……

つい先日の話なんですけども



懐かしい要素が皆無!?(゜Д゜;)



いえ、あの、

私、京都出身なんですけども、

先日職場で、めっちゃマウントを取られまして

それはもう、「そんなにとりにくる!?」っていうくらいにマウントを取られまして


噂の新人君なんですけども――



新人君「宮地さんって、京都出身ですよね?」

宮地「そだよ~」

新人君「あぁ、じゃあ知らないっすかねぇ? 大阪の人は100%知ってるんですけど」

宮地「のっけからマウント取ってくるね!?」

新人君「あのぉ、『459』って知ってます?」

宮地「『459』? え、なに? 109みたいなヤツ?」

新人君「あ、やっぱ知りません? 知らないかぁ~、京都じゃ仕方ないっすよねぇ」

宮地「いらっ(# ̄Д ̄)……で、それって何?」

新人君「大阪の人はみんな知ってるんですけど、――肉まんです!」

宮地「『551』な!?」( ゜Д゜)

新人君「えっ!?」Σ(・ω・ノ)ノ!

宮地「『551のほ~らい♪』だよ!」

新人君「あ、あっ、じゃあアレは知ってます? アメ横!」

宮地「アメ村! アメ横は東京!」

新人君「え~っ!? じゃあ、ひっかけ橋は!?」

宮地「いや、そこは間違えへんのんかい!? そこまで来たら『ぶっちゃけ橋』とか言えや! 大阪を語るなら、三段オチの基礎くらい学んでからにせんかーい!」( >Д<)/

新人君「大阪の知識なら勝てると思ったんだけどなぁ……」

宮地「地元どこだっけ?」

新人君「僕ですか? 神奈川です」

宮地「関東人!? よくそれでマウント取ろうとしたな!?」

新人君「でも、地元の友達がいるんで」

宮地「大阪の子?」

新人君「伊丹市です」

宮地「兵庫県じゃねぇか!?」

新人君「でも隣の県なんで!」

宮地「京都も隣だけど!?」

新人君「マジっすか!?」

宮地「地理も不安だな、君!?」



宮地さん、

関東の子に関西の知識でマウントを取られかけるの巻。



……なぜ、あんな勝ち誇った顔で。

話しかけてきた時の「俺、なんでも知ってるんっすよ」な顔はなんだったのか。


そして、散々大阪の楽しかった土産話をしたあとで――



新人君「あ、ちなみに、お土産は買ってきてないっす」

宮地「こんだけ話聞かせといて!?」Σ(゜Д゜;)



ごめん、途中からちょっと期待しちゃってた!

最後に「これお土産です」って来るんだと勘違いしてた!?

恥っず!(/ω\)


えぇい、無邪気な顔でにこにこするな!

「行ってみるといいですよ~」って勧めるな!

行ったことあるから!

大阪城のそばに住んでたこともあるから!



なんだか妙に懐かれておるようで、

最近よく話しかけられるようになりました。



新人君「宮地さ~ん。関西の人なら、なんか突っ込んでくださいよ~」

宮地「ならボケろや!?」(;゜Д゜)/

新人君「乗りツッコミしてくださいよ~」

宮地「なら乗せろや!」(;゜Д゜)/

新人君「あ、じゃあじゃあ! 大阪とかけまして、スマホと解きます」

宮地「……その心は?」

新人君「え? 心?」

宮地「君のお笑い知識どうなってるの!? 基礎だよ、その辺!?」

新人君「えっと、どーゆーことです?」

宮地「だから、こうするんだよ! 京都とかけまして、‘80ポップスと解きます、その心は――舞子マイコーが踊ります(ドヤァ)」

新人君「……え、まいこー?」

宮地「ジャクソン!」

新人君「まいこー、じゃくそん……?」

宮地「くっそ、ジェネレーションギャップっ!」(;゜Д゜)



……ふむ。

なんだか遊ばれてる気がしてきました。

明日、会社でイジメてきます☆


まぁ、彼も今、手探りでお笑いを試行錯誤しているのかもしれませんね。

いつか、彼が大物お笑い芸人になる日が……


……まぁ、こないでしょうね。

(ヾノ・∀・`)ナイナイ



まっ、私はいまだに、他人とのコミュニケーションが手探りですけどね!

( ̄▽ ̄)ドヤァ



円滑なコミュニケーションを夢見て……

次回もよろしくお願いいたします!


宮地拓海

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ホントだ、ヒロインの名前の最後はア段になってる。気が付かなかったなぁ… メド…ラ……? [一言] オメロとかいう泳げないアライグマ、意外と良い男なのになんでデリアに沈められまくるんだ?…
[良い点] 「万事うまくいったら、いつかまとめてご褒美をあげるよ」 「じゃあ、真っ裸で首にリボンを――」 「却下」 「しょうがねぇ。真っ裸でおっぱいをリボンで隠すように――」 「却下」 「大丈夫だ。そ…
[良い点] エステラ「ボクは盛り上がってないよ!?」 [一言] サゲとして秀逸すぎる おあとがよろしいようで
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