377話 マスコット爆誕
荷物を抱えて陽だまり亭へ戻ると――
「アタシだって、寂しいんさよぉぉおお!」
「分かる! 分かるぞ、ノーマたん! さぁ飲むのだ! 今日はとことん付き合ってやる!」
――ノーマとルシアが盛大に酔っ払っていた。
「……ナタリア、ギルベルタ。排除を」
「帰ってくるなり人の給仕長をアゴで使わないように」
エステラがカウンター席で呆れ顔を晒している。
「帰ってたのか」
「うん。今し方ね」
「今し方で、……もうこれか?」
「ルシアさんは、最速で場に馴染む達人なんだよ、きっと」
ロレッタが買ってきた酒はとても美味いようで、二人のジョッキは止まらない。
いい酒が水のように消費されていく。
「こいつら、風呂どうする?」
「今日は危険ですので、明日の朝にでもお時間を作りましょうか」
「つか、ギルベルタ。平気なのか、アイツ?」
「平気、ルシア様は。最優先、今回の事業が、今は。三十五区にとっては」
いろいろ仕事はあるが、他区の領主も同じ事業に携わることになるので融通は付けやすいようだ。
ルシアが危惧するような案件は、他区の領主に関わることがほとんどらしい。
なら、平気か。
「ルシアの別荘、急がせた方が結果的に迷惑が減りそうだな」
「どっちにしても四十二区まで来ちゃうからね」
くすくすと笑うエステラのそばへと歩いていく。
カウンターの向こうでは、ジネットがお茶を入れてくれている。
「おかえりなさい、ヤシロさん。ハビエルさんも。お茶はいかがですか?」
「もらおう」
「ワシも頼む」
飲んだくれがくだを巻いているフロアの席は避けて、カウンターの少し高い椅子へ腰を下ろす。
飲んだくれへの給仕はナタリアとギルベルタ、そしてマグダとロレッタが担当している。
「ほら、あーんだ、義姉様」
「ん~、おいひぃです! マグダっちょの作った揚げたこ焼きは、表面はカリッと、中はとろっとしていて絶品です! また腕を上げたですね、マグダっちょ!」
いや、ロレッタは餌付けされてるな。
酔っ払ったルシアに抱きかかえられ、ヒザの上でエサをもらっている。
「ウチの連中が見たら羨ましがるだろうなぁ、アレは」
木こりにも、ロレッタファンが多いらしい。
ゴージャス且つ完璧な美貌を持つイメルダもいいが、ロレッタのような素朴で元気な女子を見るとほっと心が安らぐのだそうだ。
つか、ハビエル。自分の娘を完璧な美貌とか……お前はほとほと親馬鹿だな。
「だいたいさね、ヤシロはいっつも大工ばっかり……」
あ、いかん。
ノーマが愚痴モードに入った。
「イメルダ~」
「はぁ……二日続けてですの? しょうがありませんわね」
イメルダを派遣すると、ノーマとルシアが「ぱぁぁあ!」っと表情を輝かせてイメルダに飛びついた。
「離しなさいまし! お酒クサイですわ!」と酔っ払いを引き剥がすイメルダ。もうすっかり慣れたもんだ。酔っ払いさばきが板に付いている。
「では、皆様。本日も客間をお借りして、秘密の女子会を開催致しましょう」
「おぉっ、それはよい提案だ、給仕長! 行こうではないかイメルダ先生、ノーマたん!」
「今日こそ、ナタリアの恋バナを聞き出してやるさね」
ナタリアが面倒くさい二人を二階へと隔離してくれるそうだ。
これで静かになるな。
「なぁ、ウチ……ホンマに帰ったらアカンの?」
「リハビリだと思って、泊まってけ」
「誰がリハビリやのんな……」
「レジーナさん。今日はわたしと一緒に寝てくださいますか?」
「ん……まぁ、寝相、悪ぅても、えぇんやったら」
「はい。わたしも、寝相はそんなによい方ではありませんので、お互い様ですね」
マグダによれば、ジネットは抱きついてくることがあるらしい。
ジネットとレジーナが抱き合うベッドか……
「ウーマロに頼んでおっぱいベッドの発注を――」
「懺悔しぃや、自分」
うわぁ、レジーナに言われちゃったよ。
「エステラも泊まってくか?」
「うん。明日も三十一区に行くから、その前には一度館に帰るけどね」
俺が戻ってくるより前に、館へは一報を入れてあるらしい。
「ヤシロさん、ハビエルさん。お風呂が出来ていますよ。お先にどうぞ」
「おぉ、陽だまり亭の風呂は初めてだな。イメルダから聞いているぞ。楽しみだ」
「じゃ、俺は小さい方に……」
「そう恥ずかしがるな。一緒に入ろうじゃないか、な?」
複数ならともかく、オッサンと二人きりって、地味に嫌なんだけどなぁ。
「あとで詳細、よろしゅうに!」
……こんなのも湧くし。
消毒液ぶち撒けてやろうかな。
防腐剤の方が効くか?
「じゃ、ちゃちゃーっと入ってくるか」
オッサンの入浴シーンなど、どっこにも需要がないので割愛す――
「がっはっはっ! ヤシロよぉ。お前はもっと体を鍛えろ!」
「いってぇぇえ!? 背中を叩くな!」
「がはは! 綺麗な紅葉だ。酒が飲みてぇなぁ」
『ヤシロさーん! お酒をここに置いておきますのでー! 必要でしたらどうぞー!』
「さすが、店長さんだ! よし、ヤシロ、取ってこい!」
「素っ裸でか?」
「気にすんな。見られても減りゃしないわい」
だったら、素っ裸で大通りを練り歩いてみやがれ!
つーか、割愛させろや、オッサンの入浴シーン!
ちびり、ちびりと酒を楽しむハビエルに付き合わされ、随分と長い入浴になってしまった。
……くっそ、のぼせた。
「お酒を飲まれたんですか、ヤシロさん? 顔が真っ赤ですよ」
「……俺は一滴も飲んでねぇよ」
「大変です。座ってください。今、扇ぎますね」
ぱたぱたと駆け回り、俺の世話をしてくれるジネット。
「いや、いいから、お前も風呂行ってこい」
「ダメです。具合を悪くしてしまいますよ?」
「湯あたりやったら厄介やね。ちょっと見たるさかい、あっちで横になってんか」
「よし、ワシが運んでやろう」
微かに酔っ払ったハビエルが俺を小脇に抱えてフロアへ運ぶ。
俺は丸めた絨毯か。雑に運びやがって。
「では、ハビエルさん。こちらへお願いします」
テーブルを退け、ジネットが布団を敷いてくれる。
そこへ横たえられる。
う~……目が回る。
気持ち悪い……
「アカンか? 吐きそうか?」
「いや……大丈夫だ……」
頭上から降ってくるレジーナの声に、首を振っておく。
声が出てないなぁ、俺。けどまぁ、聞こえただろうし、いっか。
……と、思っていたら、頭をひょいっと持ち上げられた。
そして、少し高くなっている場所へすとんと落とされる。
後頭部に、柔らかい感触が。
「ちょっと目ぇ、見せてみ」
俺を覗き込むように、レジーナが背を丸める。
この体勢が出来るということは……今、俺の頭の下にあるのはレジーナの太ももか?
つまり、膝枕!?
「いや、おいっ!?」
「ちょっ!? 急に動きな!? ちゅーされるか思ぅたわ!」
「いや、しないけど!?」
ばっと顔を持ち上げたら、覗き込んでいたレジーナの顔に急接近してしまった。
そりゃそうだ。そうなるわ。
落ち着け、俺。
「ふふ。教会で風邪を引いた子は、シスターに膝枕をしてもらうとすぐによくなったんですよ」
「へー、教会のガキども、エッロ」
「もう。そんな感情じゃありませんよ。大切に思う心がそうさせるんです」
「いや、あの……ウチのは、ただの診察やさかい……大切とか、やめてんか。なんや……照れるわ」
自分でしておいて照れるな。
身動き取れないこっちの身にもなれ。
ぐいっと指で目を開かせ、レジーナが俺の診察を始める。
「なんや冷たいもんで体冷やした方がえぇね。店長はん、タオルと桶に水を頼むわ」
「はい。井戸の水を汲んできますね」
「ワシも手伝おう」
ジネットとハビエルが厨房へと向かう。
マグダたちは閉店作業を終え、二階で風呂の準備をしている。
フロアには俺とレジーナの二人きり。
「……悪いな」
「アホやな。病人が謝る必要なんかあらへんわ」
静かな声で言って、俺の髪をゆっくりと撫でる。
なんだか、すごく落ち着く。
「けど、気ぃは遣ぅたらなアカンで」
「気?」
なんのことかと問う前に、ジネットたちが戻ってきた。
「ヤシロさん、タオル当てますね」
一言断って、ジネットが俺の首筋に濡れたタオルを当ててくれる。
一瞬体がきゅっと縮むほど冷たい。
井戸の水は、相変わらずキンキンだ。
「もうちょっと、太い血管のあるところを冷やしたった方がえぇね。店長はん、ちょっと代わってんか」
「え? あ、はい」
言われるがまま、ジネットはレジーナの指示に従う。
指定された場所に座り、タオルを手渡し、俺の頭を引き取る。
俺の頭が、レジーナの太ももの上からジネットの太ももの上に。
「ふぇっ!?」
その状況になって初めて、ジネットが声を上げる。
いや、遅い遅い!
「えっと、あの……っ!?」
「あんま動いたら、頭ふらふらして気持ち悪なるで」
「はぅっ!? す、すみません、ヤシロさん」
俺の顔を覗き込んでくるジネット、だが……
おっぱいが「どーん!」と突き出していて、顔が半分くらいしか見えません!
「ありがとう、ジネット!」
「へぅっ!? も、もう……っ! ……懺悔してください」
小さぁ~い声で懺悔してくださいをもらった。
「あっほやなぁ、ホンマ」
呟くようなレジーナの声は、どこかほっとしているようで、穏やかな声音に聞こえた。
それから、腋や首など、太い血管の通っているところを冷やしてもらっているうちに、めまいはおさまり、気持ち悪さも引いていった。
「これでもう大丈夫やろう」
「ありがとうございます、レジーナさん」
「なんで店長はんが言うねんな」
からからと笑うレジーナ。
「ま、一宿一飯のお礼や」
それを俺に寄越すのはおかしいだろうに。
けどまぁ、思いがけずいい経験をさせてもらった。
そういえば、久しく膝枕なんかしてもらってなかったからなぁ。
これはいいものだ。
たまには具合を悪くするのもいい。
「さて。散々えぇ思いしたおっぱい魔神はんには、相応の罰も必要やろうな」
は?
のぼせたのがすでに罰だろうに。
「というわけで、木こりのギルド長はんのオケツ枕の時間やで!」
「しょーがねぇーなぁ」
「ノリノリでうつ伏せに寝るんじゃねぇよ、ハビエル!」
「しょーがねぇーなぁ」じゃねぇーんだわ!
ハビエルのケツ枕など死んでも御免なので、レジーナとジネットをさっさと風呂へと追い立てる。
けどまぁ、おかげで気持ち悪さはすっかりなくなった。
こりゃ、何かで恩返しをしないとな。
あの気持ちのよかった、膝枕に見合う何かをな。
翌朝。
早朝。
俺は自室から持ってきておいた蓄光ランタンをケースから取り出す。
「うぉっ!? 眩しっ!」
隣で寝ていたハビエルが突然の白い光に両目を覆う。
「なんだ、これは?」
「蓄光ランタンだ」
「あぁ、光るレンガか……しかし、目が痛くなるな、その光は」
慣れていないせいか、そういう体質なのか、この街の連中はこの光を強過ぎるという。
俺にしてみれば、蛍光灯には遠く及ばない代物なんだけどなぁ。
まぁ、懐中電灯を顔に当てられると眩しいと思うみたいなもんか。
「もうすぐジネットが起きてくる。その前に準備をするぞ」
「ん? 出来たのか?」
「もちろんだ。俺を誰だと思ってやがる」
「お前は、本当に器用だよなぁ」
当然のように、ハビエルは裁縫がまるで出来なかった。
なので、動きをマスターした後はさっさと寝かせた。
睡眠を妨害しないように、薄暗いランタンでちまちまと作業を進め、俺はテーマパークの秘密兵器を完成させた。
「さぁ、着てみてくれ。四十二区のマスコットキャラ『よこちぃ』の着ぐるみを!」
そう!
テーマパークには必須のアイテム、着ぐるみだ!
昨夜、店じまいを始めていたウクリネスに言って、もふもふのベロア素材の生地を大量に買い込んできた。ハビエルの金で。
ほら、いろいろデザインにも凝りたいし、「布が足りない!」とか「欲しい色がない!」とか、あとから発覚すると困るだろ?
なので、使い切れないほど買い込んできた。
余った生地は、俺が有効活用してやるから心配するな!
同じ生地で作ったぬいぐるみとか、絶対売れるから☆
テーマパークのキャラクターを俺が独断で決めるわけにはいかないので、そのお手本としてオリジナルのマスコットキャラクターを作ってみた。
「えっと、これを着ている時は声を出しちゃいけないんだっけ?」
「そうだ。着ぐるみではなく、こういう生き物がいると信じ込ませた方が、夢があるだろ?」
「子供たちには、夢を見ていてほしいもんなぁ」
この世界でも、子供たちのために吐く嘘は罰せられない。
……罰せられないわけではないが、そんなことをするヤツは少ない。
オバケの話も結構な数あったし、子供に話して聞かせるおとぎ話は嘘の範疇に含めなくてもいいだろう。
悪用されないように手は打っておくけどな。
「中に人はいない」とは言わず、「あれは、あぁいうものなんだよ」って感じで。
「で、こんな感じか?」
「そうだ。ちょっとオーバー過ぎるくらいでちょうどいい。言葉がしゃべれない分、体で感情を伝えるんだ」
着ぐるみの動きや心得を、一晩かけてハビエルに叩き込んだ。
本当は二着作って俺も着込みたかったのだが、説明する人員もいるし、一晩で二着はさすがにしんどかった。
のぼせたのもあるし。
なので、今回は一着だけだ。
デザイン画は出来ているので、日が昇ったらジネットに手伝ってもらって仕上げてしまおう。
「……くそ、やっぱファスナーが欲しいな」
「ん? なんだって?」
「なんでもねーよ」
着ぐるみの背中には、狭い間隔で小さなボタンを縫い付けてある。
屈んでもぱっくり開かないように。後ろから見てもバレないように。
ただ、そのせいで着脱が物凄く面倒くさい!
ファスナーがあれば簡単なんだけど……
そしておそらくファスナーを作るくらいの技術はすでに四十二区には揃っているのだけれど……
ノーマとウクリネスが死ぬ。
もうちょっと黙っておくか。
テーマパーク関連で仕事が増えそうだし。
でも、面倒くさいんだよなぁ……
背中のボタンを留め、やたらとデッカイ頭を被らせれば――
「ほい、出来た。これで、お前はよこちぃだ」
「…………」
ハビエルこと、よこちぃが無言でこくりと頷き、ひらひらと大きなジェスチャーで手を振ってみせる。
うむ! 上出来だ!
よく一晩でそこまでマスターしたな。
「マスコットが受け入れられれば、小さい女の子が可愛らしい耳付きカチューシャを付けるようになるぞ」と言っただけで、とんでもない張り切りようだった。
触覚カチューシャとか、ハロウィンのカチューシャとか、こいつはいちいち喜んでいたからなぁ。
「ヤシロ」
ハビエルが、周りに誰もいないことを確認して、小声で尋ねてくる。
「よこちぃは男なんだよな?」
「あぁ、そうだ。恋人の『したちぃ』とラブラブのカップルという設定だ」
マスコットキャラは男女それぞれを用意するのが鉄則だ。
男も女も、揃ってグッズを買うようにな。
そして、『仲良し』という関係性は、見る者にほんわかとした癒やしを与える。
ラブラブカップルという設定の可愛らしいマスコットキャラは、売れる!
あぁ、ちなみに、名前の由来は『よいこな男の子』のよこちぃと『親しみやすい女の子』のしたちぃだ。「『よ』い『こ』」と「『した』しみ」だな。『ちぃ』は可愛らしさの表現だ。
うむ、我ながらいい名前である。一分の隙もない!
「男なら、紳士的に振る舞わねぇとな」
「あぁ。ただし、可愛らしくな」
「了解!」
ビシッと敬礼をして、ハビエルが自主練に励む。
まずはジネットに見せて、したちぃの図案を見てもらって、一緒に作る。
で、中に俺が入れば、今日の日中にお披露目が出来るな。
ウクリネスが「昼までに時間を作って完成品を見に行きますね、絶対!」と意気込んでいたので、それまでには完成させて、関連グッズを作ってもらおう。
あくまで、テーマパークの前哨戦なので、そこまで本腰を入れたものじゃないけどな。
「ヤシロさん……?」
フロアから白い光が漏れていたからだろう、ジネットが厨房を素通りしてフロアへとやって来た。
「もう起きてらっしゃ……え?」
ひょっこりと顔を覗かせたジネットが、まばゆい光の中に立つ俺と、よこちぃを見て目を丸くする。
「ジネット、見てくれ。これが、四十二区のマスコットキャラ、よこちぃだ」
ちなみに、よこちぃは生花ギルドの森で採れる桃の妖精という設定で、全体的なフォルムはロシアンブルーのような雰囲気ながら耳に桃の実を付けている。
したちぃは、ハムっ子農場で採れるスイカの妖精で、大きなりぼんにスイカが付いている、全体的にシャムネコっぽい女の子だ。
「えっと……いらっしゃいませ、ようこそ陽だまり亭へ」
おぉーっと!
ジネットがよこちぃをお客さんと認識した!?
「あの、ヤシロさん。……お知り合い、ですか?」
やだ、この娘、心がピュア過ぎて直視できない!
よこちぃを『そーゆー生き物』として受け入れちゃってる!
サンタを信じる幼い子供のように!
「…………」
よこちぃがジネットの前に歩み寄り、紳士的な礼をしてみせる。
そして「よろしくね」と言わんばかりに大きなアクションで手を振る。
「あはっ。とっても可愛らしいですね」
そんなよこちぃの動きに、ジネットが笑みを浮かべる。
「中に入っているのはハビエルさんですか?」
あぁ、残念。
さすがに人が入ってるって分かったか。
「正解だ。こういう生き物がいるって信じるかと思ったぞ」
「一瞬、何人族の方かなぁ~と思いましたけれど、背格好がハビエルさんに似ていましたので」
一瞬は信じたのか。
惜しいな。
「ガキどもは信じると思うか? こういう不思議な生き物がいるって」
「どうでしょうか。でも、子供たちはきっと好きだと思います。とても可愛らしいですから」
ジネットの反応を見て安心する。
これなら、どこに出しても好感触を得られるだろう。
「エステラたちにも見せてやりたいな」
「では呼んできましょうか? 先ほど気配がしましたので、おそらく起きてると思いますよ」
そんな話をしていると、フロアにイメルダがやって来た。
「なんですの、随分と眩しいですわね。ヤシロさんはもう起きて――」
そして、先ほどのジネットと同じように、よこちぃを見て固まる。
「…………」
ハビエルが渾身の可愛いアピールでイメルダに手を振る。
紳士的に。でも、可愛らしく。
それをじぃっと見つめていたイメルダは――
「ていっ!」
――床を蹴って駆け出し、よこちぃに飛びついた。
「可愛いですわ! なんと可愛いのでしょう! 可愛いなれど、可愛いければ、可愛かろう!」
なに活用だ、それは。
「ヤシロさん、なんですの、これは!?」
「マスコットキャラだ」
「とてつもなく可愛いですわ! 抱きしめずにはいられないほどに!」
「それは嬉しいんだが、中に入っているのは――」
「中に人など入っておりませんわ!」
ジネット以上にピュアな人がいたー!?
うん、でも、こいつは危険なのでネタばらしをしておこう。
「それの中身はハビエルだ」
「お父様ですの!?」
「…………」
よこちぃは大きなアクションで「そうだよ~」と答える。
「お父様ですの……」
そう呟いて、イメルダはこくりと頷く。
「では、甘え放題ですわね!」
そして、思いのままによこちぃに抱きつき、顔をぐりんぐりんとこすりつけた。
うん、この街でも着ぐるみは受け入れられそうだ。
そんな確信を得て、ジネットと二人、微笑ましい親子の触れ合いを見つめて笑った。
「か、かわいい……っ!」
エステラが両腕を微妙な位置に持ち上げ、うずうずさせている。
飛びつきたい衝動を必死に抑え込んでいるようだ。
「中はお父様ですわ。淑女は慎みをお持ちなさいまし」
と、よこちぃにべったりくっついて得意げなイメルダ。
「ナタリア、中、代わって!」
「サイズ的に難しいかと」
よこちぃに抱きつきたいらしいエステラ。
日本じゃ、彼氏持ちの女の子も平気で抱きついてたけどなぁ。
マスコットキャラクターの中には、人なんていないのだから。
それでヤキモチを焼く男は少数派だ。
……たとえ、中身がド変態オヤジであろうと、知る由はないからなぁ。
「一応、中に人はいないという設定で、テーマパークに行けばこういうキャラクターに会えるってことにしたいんだが」
「えぇっ!? よこちぃ、三十一区にあげちゃうの!?」
「いや、こいつは四十二区のマスコットキャラだ」
「よっしっ! よこちぃ、ゲットだぜ!」
どこで覚えた、そんなセリフ。
渾身のガッツポーズを決めるエステラ。
しかし、アレだな。
こうまで抱きつきたがるとなれば、対策が必要だな。
この街は日本ほど開放的ではなく――見せパンも全然流行ってくれないし――どうやら淑女としての振る舞いがかなり重視される傾向にある。
だから、中に男が入っていると女子は抱きつきにくいのだ。
おまけに、抱きついた後、中の男が勘違いしてストーカー化する……なんてことも考えられなくもない。
日本の物を、日本と同じ感覚で導入するのは危険をはらむ。
「着ぐるみの中身は女子に限定するか。かなり大変だけど」
「そうすれば、エステラ様のような困ったおこちゃまは抱きつけますが――」
「誰がおこちゃまなのさ!?」
お前だ。
「――逆に、中に入る女性が危険ではありませんか? 男性に抱きつかれ放題というのは……」
「可愛いものを見て抱きつきたがるのは、圧倒的に女子の方が多いだろう?」
「確かに、そうですね」
「女の子のキャラに抱きつこうとする男を、お前らはどんな目で見る?」
「成敗しますね」
そういう目で見られると思えば、強引に抱きつこうとする男はそうそう出てこないだろう。
「でもさ、よこちぃは男の子だよね? 男同士なら抱きつけるんじゃないの?」
「あのな、エステラ、想像してみろ。男を見て『かわいぃ~!』って抱きつきに行く男を」
「あ…………ん~、微妙だね」
「そんなことをするのは金物ギルドの乙女くらいだし、あの連中なら、たぶんセーフだ」
この街の男連中を見る限り、相手の許可もなく急に抱きつくようなことはしないと思う。
紳士的にってことをことさら気にかける男が多いし、極端なまでに女性を避ける男も多数いる。
子供には夢を見させるが、大人には真実を教えておいてもいい。
「中には女子が入っているから、許可なく抱きついたら即捕縛」ってな。
「キャラの方からちょっとしたサービスくらいなら、してやってもいいだろう。そういうのが地味に嬉しかったりするもんだ」
言って、ハビエルからよこちぃの頭を外す。
「ちょっと、ヤシロ、やめて! 夢が壊れる!」
「いや、あのよぉ。面と向かって、よく言うよなぁ、領主さんよぉ」
首から上だけハビエルになったよこちぃがげんなりした声で言う。
「あれ、ハビエルってエステラのこと『領主』って呼んでたっけ?」
なんか違和感。
そういえば、ハビエルってエステラのことあんまり呼んでなかったかも?
「いや、まぁ、アンブローズは自分の姪っ子みたいなもんだから、気軽に『エステラ』と呼んでやれって言ってたんだが、この一年での目覚ましい成長を見るとなぁ……、ちゃんとレディとして扱わなきゃなぁ~ってよ」
「それは、とても嬉しい言葉ですけど、ボクとしては親しみを持って『エステラ』と呼んでいただけた方が嬉しいですよ」
「そうか? なら、そうさせてもらおう。ワシに対しても、堅苦しい言葉遣いは必要ない。ヤシロほど酷いのは困るが、アンブローズにするくらい砕けた口調が好ましい」
「うん。分かったよ、ハビエル。……って、オジ様にはこんな砕けた言葉は使いませんけどね」
エステラがにこ~っと笑う。
親戚のおじさんを見る幼い子供のような無防備な笑みだ。
ハビエルも、イメルダを見る時とも、妹たちを見る時とも違う、嬉しそうな目でエステラを見ている。
「ハビエル」
そんなハビエルに問う。
「エステラの成長が、目覚ましい?」
「うるさいな! 絶対引っかかってると思ってたけど、一回流れた話を蒸し返さないでくれるかい!?」
とある一部に限定すれば、まったく成長していないもので、つい。
「ところで、ヤシロ様。その頭を使って、何かされるのではなかったのですか?」
「ん? あぁ、そうだったな」
ハビエルから奪ったよこちぃの頭をすっぽりと被る。
これで、顔だけよこちぃの誕生だ。
夢の国のネズミがやりそうな、可愛らしいポーズをいくつか取ってみせる。
「う~ん……、顔はよこちぃだけど、体がヤシロだから、微妙な気分だね」
難色を示すエステラ。
そんなエステラのほっぺたに、よこちぃの鼻を押し当てる。
ほっぺチューだ。
「ふなぁぁあ!?」
チューされた頬っぺたを両手で押さえ、エステラが飛び退く。
よこちぃの頭を脱いで、顔を赤く染めるエステラに問う。
「――と、これくらいのサービスなら、可愛げがあって許されるんじゃないか? 割ときゅんとしただろ?」
「きゅ、きゅきゅきゅ、きゅんどころじゃなかったよ!?」
驚き過ぎだ。
試しに、よこちぃの頭を持って、もう一度エステラのほっぺたに押し当てる。
「……これは、なんか、微妙だね」
「中に人が入っていても、触れるのは着ぐるみだから、そこまで騒ぐほどのことじゃない」
「いや、でも、中がヤシ……いや、中に人がいると思うと……心臓が痛いよ……」
まぁ、これも文化として根付いていないからだろうな。
心臓を押さえて弱るエステラに代わって、ナタリアに実務的な話を振る。
「一応、マスコットキャラには護衛を付けて、不届き者を排除できる体制を取っておけば、大きな問題は起こらないだろう」
「そうですね。オープンまでの間に、いろいろ訓練が必要になりそうですが」
「そこは頑張ってもらうさ。客が目一杯楽しむためには、運営側が血のにじむような努力をしなければいけない。商売とは、そういうものだ」
「その辺りも含めて、領主会議の議題にいたしましょう。ヤシロ様。マスコットの動きやルールについての説明を、実演込みでお願いできますか?」
「そうだな。実際見ないと分かりにくいだろうしな」
そこら辺はやってやってもいいだろう。
中身は誰かにやらせるかもしれんが。
「それで、ジネット」
「はい」
先ほどからしたちぃの図面を見ていたジネット。
随分と真剣に見ていたな。
「もう一着、大至急作りたいんだが、手伝ってくれないか?」
「はい! わたし、この図面を見て、是非お手伝いしたいと思っていたんです。あのですね、ここの縫い方なんですが――」
「あぁ、そこはやりながらでいいから、作業に取り掛かろう。マグダたちが起きてくる前に出来上がれば、反応を見てみたいからな」
「そうなると、時間がありませんね。ノーマさんがいてくださると、随分と助かると思うのですが……」
「いや、ノーマは寝かせてやってくれ」
ホント、死んじゃうから。お肌が。
「僭越ながら、私がお手伝い差し上げます」
ナタリアがすっと前へ進み出る。
完璧超人ナタリアなら、裁縫の腕前も期待できそうだ。
「そういうわけで、ハビエル。朝飯が遅くなっちまうが」
「大丈夫だ。もうしばらくよこちぃの動きを練習しておくよ」
「でしたら、お父様。ワタクシが監督いたしますわ。今でも十分愛らしいですが、よこちぃにはまだまだ可能性が秘められていますもの!」
「エステラには、着ぐるみの説明を頼む。俺が中に入ると、しゃべれなくなるからな」
「分かった。設定資料をくれれば覚えるよ」
というわけで、役割分担を済ませ、俺たちは即座に行動を開始する。
完璧超人ナタリアと、家事の達人ジネットの腕前はすさまじく、見る見るうちに着ぐるみが縫い上げられていく。
昨日のうちに裁断まで終えていたのがよかったのだろう。
ただ、したちぃはドレスっぽい衣装だから、そっちが大変そうなんだよなぁ。
まぁ、クオリティアップは、ウクリネスにでも頼んで追々でいいだろう。
「ねぇ、ヤシロ」
設定資料を読んでいたエステラが、ちまちまと縫物をしている俺を呼ぶ。
眉間に、深い、深ぁ~いシワを刻んで。
「このキャラの名前なんだけどさぁ」
「『よいこのよこちぃ』と『親しみやすいしたちぃ』だよ! そう書いてあるだろう!?」
勢いで誤魔化す!
「……他意は?」
「ジネット、この名前どう思う!?」
「とっても可愛いと思いますよ」
数の暴力!
どーだ、多数派には強く出られまい!
「……でもまぁ、もうすでによこちぃに馴染んじゃったし……由来がこれなら……まぁ……いい……の、かな? ……ん~…………いいか」
こうして、最難関を辛うじて突破し、四十二区にマスコットキャラが誕生した。
「ふぉぉおお!? なんですか、この可愛い生き物は!?」
寝坊組の中で、一番に起きてきたロレッタが瞳を輝かせる。
その視界には、大きな紳士よこちぃと、キュートで可愛いしたちぃが並んで立っていた。
間に合ったよ。
すげぇな、ジネットとナタリア。
最悪、したちぃはドレスなしの真っ裸状態でもいいかと思ったのだが、女子二人が「そんなのダメです!」と、根性で間に合わせてくれた。
最後の方、ミシンを見てるみたいだったもんなぁ、ジネットの手つき。
「大変好き、私は、こういうの」
ギルベルタがしたちぃこと、俺の方へふらふらと寄ってくる。
近くに来たギルベルタの頭をぽんぽんと撫でてやると、『ぱぁぁぁあ!』っと表情を輝かせる。
出会った当初の無表情少女の面影は、もうそこにはない。
随分と感情を見せるようになったものだ。
「あの、あのあの! あたしにもナデナデしてほしいです!」
挙手をして声を上げるロレッタ。
よこちぃがロレッタの頭をぽんぽんと撫で、俺が大サービスでほっぺチューをしてやる。
ほっぺチューの後は、「恥ずかしい」と言わんばかりに両手で口を押さえて、足をパタパタさせておく。
千葉の夢の国で見たことあるんだ、こーゆー動き。
「ふぉぉお!? チューされたです! もう無理です、可愛過ぎです! 抱きつくです!」
「中身はヤシロだよ」
「お兄ちゃんなら、抱っこくらい許してくれるはずです!」
着ぐるみにテンションが振り切れてしまったらしいロレッタ。
両手を広げてうずうずしている。
ので、ギルベルタと一緒にぎゅっとハグしてやった。
二人同時なら、いやらしさも出ないだろう。
「包まれる、幸福感に!」
「これ、嬉しいです!」
はしゃぐ二人の向こうで、腕を組んで静かに状況を見守っていたルシア。
値踏みするような視線をこちらに向け、静かに、ゆっくりと近付いてくる。
「ふむ。したちぃよ」
そして、なんの断りもなく抱きついてきやがった。
「嫁に来てくれ!」
「…………!」
思いっきりチョップをくれてやった。
「痛いではないかぁ、したちぃよ~、えへへ、えへ」
もうダメだ、この人。
領主として取り繕う気持ちをどこかのドブにでも捨ててきてしまったらしい。
突っ込んでやりたいが、まだマグダが来てないから場をぶち壊すわけにもいかない。
しょうがない。
「…………」
「へ? あの、したちぃさん!?」
ルシアから逃げるようにして、ジネットの背後に回り、ジネットの腕をぎゅっと胸に抱きしめる。
守って、ジネット姉様!
「ふふふ。よしよし。急にあんなことを言われてびっくりしてしまったんですね。ルシアさんも、ダメですよ。まずは、仲良くなって、もっとお互いのことを知ってからでないと」
うん、そーゆーことじゃないんだけど、まぁそーゆーことでいいか。
どうやら、この街では着ぐるみがとても受け入れられやすい傾向にあるようだ。
大人がここまではしゃげるなら、ガキどもも容易いだろう。
……あとは、小生意気なガキが絶対ケツキックを喰らわせてくるから、その対策を考えないとな。
「おはよ~さん……なぁ、聞いてやぁ。トラの娘はんがまたなぁ……って、なんやのん、これ!?」
今日もまたマグダを起こしてきたらしいレジーナが、マグダを胸に抱いた状態で固まる。
見たこともない着ぐるみが二体、フロアで女子に取り囲まれている光景は、寝起きの脳には情報過多なようだ。
「……むむ」
マグダの耳がピクリと動き、次の瞬間、俺とジネットのちょうど間に飛び込んできた。
レジーナの胸を蹴って。
蹴られたレジーナは「どふっ!」と声を漏らして床へと蹲る。
「……よき」
飛んできたマグダをキャッチすると、マグダはしたちぃにぎゅーっとしがみついてきた。
折角なので、ジネットと一緒にぎゅっとハグしてやる。
いや、ほら。
ジネットは朝から着ぐるみにハグされてなかったからさ。
ぎゅってしたそうにしていたが、中が俺やハビエルだと知っているので遠慮してたみたいなんだよな。
なので、これくらいはいいんじゃないかと。
着ぐるみの時は特別だ。
「……なぁ、自分。ウチに対して、ちょっとは『悪いなぁ』とか、思わへん?」
レジーナの訴えはマグダには届かず、マグダは俺の腕の中ですぴすぴと鼻を鳴らしていた。随分と機嫌がよさそうだ。
「ほんで、なんなん、これ?」
「マスコットキャラクターのよこちぃとしたちぃだよ」
立ち上がったレジーナに、エステラがマスコットキャラを紹介する。
「横乳と下乳かいな。エッロ」
「よいこのよこちぃと親しみやすいしたちぃだよ!?」
「名前考えたん、どーせおっぱい魔人はんやろ? 100%乳やん」
その通りだけども!
どーせとか言うな!
「心が卑猥な人には、そのように聞こえるのです」
と、甲高い女の子ボイスでそんなことを言ってみる。
「したちぃがしゃべったです!?」
「女性のように高く、ヤシロ様の声とは思えませんでしたね」
「ホント、器用だよね、君は……」
腹話術や声色なんてのは、詐欺師の必修技能の一つだ。
それでうまいこと話が逸れて、名前の由来は有耶無耶になる。
いいんだよ、四十二区のマスコットなんだから、よこちぃとしたちぃで!
桃とスイカの妖精だしね!
桃パイとスイカップの!
「あとはノーマだけだけど……ノーマは、もう少し寝かせてあげようか」
全員にお披露目して反応を見ようという話になっていたが、ノーマは睡眠が優先された。
「では、お食事にしましょう。ヤシロさんとハビエルさんは、このあと教会でも着ぐるみですから、こちらで召し上がっていってくださいね」
「ボクたちも、ここで朝食を済ませておこう。子供たちがはしゃぎそうだから」
「ですね。ウチの弟妹が大はしゃぎしそうですから、のんびりご飯食べてる暇はきっとないです」
「……よき」
「マグダさんは、こっち側に早くいらしてくださいまし」
楽しむ側に残ろうとするマグダを、主催者側へと引きずり込むイメルダ。
マグダ世代には深く刺さるのかもしれないなぁ、マスコットキャラ。
「しかし、着脱が大変だな、この着ぐるみってのは」
よこちぃの頭を外したハビエルが言う。
絶対に一人では着られない上に、付け外しの難しい小さなボタンがたくさん付いているので、着るのも脱ぐのも時間がかかる。
着せられる方も、結構大変なんだよなぁ、これ。
「ファスナーがあればもっと楽になるんだが」
「ふぁすなぁ? それはヤシロでも作れないようなものなのかい?」
俺の着ぐるみを脱がすジネットの手元を見て、「うわぁ、面倒くさそう」という顔をしていたエステラが聞いてくる。
「いや、今の四十二区なら作れるだけの技術はあるんだが……ノーマとウクリネスの協力が必要になるんだよ」
「あぁ、それじゃあ――」
「頼めないよね」と、エステラが同意を示す前に、陽だまり亭の入口と厨房から、同時に声が聞こえてきた。
「「詳細、プリーズ!」」
入口にウクリネス、厨房にノーマが立っていた。
好奇心に輝く瞳を爛々と輝かせて。
あぁ……バレちゃったか。
「ハビエル……」
「あぁ。分かった」
視線で合図をして、俺とハビエルは素早く着ぐるみの頭を被る。
「「ようこそ、陽だまり亭へ」」
「ワシ、よこちぃ」
「ワタシ、したちぃ」
「あら、可愛らしいこと。それで『ふぁすなぁ』についてなんですけども」
「服屋と金物ギルドの協力が必須なんさね? 詳しく聞かせておくれな」
あ、ダメだ。もう手遅れっぽい。
「睡眠時間を確保するって約束できるなら、教えてやらんことはない」
「約束します!」
「今日もばっちり寝たさね!」
もしかしてこの人たち、『精霊の審判』を知らないんじゃ?
よくそんな平気な顔して嘘っぽいこと言えるよねぇ。
怖いわぁ、この街。詐欺師が跋扈してるんじゃないかしら。
「……定期的にハムっ子を派遣して、作業場の視察を行うからな? 地獄になってたら強制終了させるからな?」
「大丈夫です。ウチの従業員は、みんなタフですから」
「ウチの男衆も、殺したって死にゃしない連中さね!」
だから、死の淵を覗くような重労働を強いるんじゃねぇと言ってるんだよ!
「……エステラ」
「うん。これはもう、教えてあげて、さっさと完成させた方が、きっと被害が少なくて済むよ。……大丈夫、特別手当を、領主からつけておくから」
しょうがないので、ジネットが朝食を作っている間に、ファスナーの原理と、必要な金具の設計図、金具を布に取り付ける方法を、貪欲な仕事亡者に伝授した。
あとがき
よいこのよこちぃと
親しみやすいしたちぃです!
それ以上でも以下でもありませぬ!
でもまぁ、もう一人お友達を増やすのだとすれば、名前は――
『ぽろり』
ですかね(≧▽≦)
え、何がとか、そんなんじゃないですよ?
名前ですよ、名前。
よこちぃ
したちぃ
ぽろり
ね?
名前を見るだけでわくわくしますでしょ?
それこそが、マスコットキャラクターの魅力なのです!
というわけで、
ヤシロさんが本気を出して着ぐるみを作りました!
……いや、無理ですからね?
一人で、一晩でなんて、不可能ですよ?
でも、それをやってのけちゃうのがヤシロさんなのです!
そして、翌朝、ミシンをも凌駕するジネット&ナタリア。
あぁ、あの街には常識なんてものは通用しなんだなぁと、
再認識したエピソードでした。
本編でヤシロが、「したちぃのドレスは無理かもなぁ」なんて言ってましたが、
ドレスより何より、
着ぐるみの頭!
あの、結構しっかりした造りの頭を作る方がよっぽど無理ですからね!?
ノウハウ、どこで仕入れてきたんでしょう。
なんにせよ、無事にマスコットキャラが完成しました。
きっと、どんなに激しいダンスをしても、
首が「ぽーん!」ってしない仕様になっていることでしょう。
そういうところ、手を抜かないのがヤシロさんです。
夢が壊れないように、丁寧に、大切に、慎重に対策を立てていることでしょう。
夢って、お金をじゃんじゃか使ってもらえるいい商材ですものね!
アイドルや声優、アニメーターや漫画家、小説家、棋士やスポーツ選手
憧れの職業へ就くために専門学校やワークショップ
そして養成所なんてところへ通うわけですよ。
入所するだけで20万とか30万とかそれ以上とか……
年間費も数百万とか……
でも!
それを払えちゃうんです!
そう、夢のためならね☆
私も養成所に通いたいなぁ……
バストアップマッサージ専門のマッサージ師養成所に!
バスト\(≧▽≦)/アッパー!
いつか、自分の店を持てるように……いいえ、たとえ自分の店が持てなくても、
夢を追いかけることが大事なんです!
研修とかあるかもしれませんし!
やっぱり、実践に勝る練習はありませんし!
実際やってみないと気が付けないことって世の中多いって言いますし!
やりましょう、実習!
実地研修!
被験者大募集!
入所費が30万?
一括でお支払いいたしますとも!
お金ってね、使うために存在しているんですよ☆
なんなら、体験入学だけでも!
いろんな職業が体験できるテーマパークにこっそり紛れ込ませておいてください、
バストアップマッサージ師を!
なんでしたら、
様々なアプローチでバストアップを図る、
バストアッパーたちが鎬を削る職業を一手に集めた
バストアップ型テーマパークとか!
……そんなテーマパーク、どこかにないですかねぇ。
あくまで、テーマパークですよ?
決していかがわしいお店ではなく、
夢と希望と愛に満ち溢れた、テーマパークです。
ないですかねぇ~(*´ω`*)
以前よく行っていたマッサージ屋さんに
『マッサージ師募集』みたいなチラシが貼ってありまして
なんか、マッサージの学校があるみたいで
そこへ行くと資格が取れるとかなんとか
ちょっと興味あったんですよね。
私、人にマッサージしてあげるの、結構好きなんですよ。
「うまいね~」とか言ってもらえると有頂天ですし
ただ、すぐに指が痛くなっちゃうので長時間は出来ないんですよね
プロのマッサージ師さんは90分コースとかやってくださるんですよ。
親指もげない? って、いつも不安になります。
私がやると、五分くらいで親指が「もうムリぽ!」って悲鳴を上げますもの。
で、爪が白ぉ~くなるんですよね。
変に力が入り過ぎちゃって。
学校に通えば、そういうのもうまく回避できるようになるんですかねぇ?
マッサージ師かぁ……
この数年で5~6人捕まってますよね?
猥褻行為をしたマッサージ師さん。盗撮とか含めて。
まぁ、私はそんな卑劣な行いは致しませんが……
念のため、やめておきます☆
\(≧▽≦)/
念のためですよ、念のため。
まぁ、絶対そんなことはしないんですけども、
人生って、いつ、どんなことがきっかけで変貌するか分からないじゃないですか。
ですので、念のため、です☆
あぁ~、女子高の教師になりたーい!
もしくは、学校に健康診断に行くお医者さん!
いやいや、邪な下心なんか微塵もないですよ?
もちろん、職務を全うし、多くの人たちのお役に立ちたいという純粋な思いから志望しているわけですが、
念のために、諦めておきます。
ほら、最近はすぐ動画で証拠が残せる時代ですから。
SNSで拡散されちゃう時代ですから。
念のため、ね☆
というわけで、今後も今の職に就いてほそぼそとお仕事をし…………
着ぐるみの中の人、もしかして天職かも!?
ほら、私って、子供が大好きですし(健全な方の意味で)
女性の笑顔が大好きですし(もちろん健全な意味合いで)
ハグとかほっぺチューとか大好きですし!(健全! 健全ですよ!)
でもまぁ、念のためにやめておきますかぁ!
そういえば、
世間はすっかり夏休みなんですねぇ~
真っ黒に日焼けしたお子様たちをよく見かけるようになりました。
男の子は全身真っ黒なんですが、
女の子は水着の跡が肩とかに残っちゃって、ちょっと白いんですよねぇ
なんだか、水着の跡って、健康なお子様って感じがして、可愛らしいですよね
(」゜∀゜)」< もういっそのこと、ビキニになりたーい!
ほら、覆い隠すの、得意ですし!
優しく包み込みますし!
もちろん、健全な意味で☆
……おかしい。
ちょっと前まで体内に溜まりまくっていた毒素を全部吐き出してきたら、
体内にエロスしか残っていませんでした
毒素と一緒に、大切なものがいろいろ零れ落ちていったみたい!?
Σ( ̄□ ̄|||)
ちょっと抜き過ぎましたかねー
体内にあるもの全部抜いたら、頑固にこびりついていたエロスだけ残っちゃった感じですかねー
いや~、まいっちんぐ☆(・ω<)>
とりあえず、
体内に渦巻くエロスを覆い隠す、
『世間体』や『倫理観』という名のカバーが復活するまで
大人しくしておこうと思います。
でもまぁ、私の『倫理観』、シースルーなんですけどね☆
(」゜∀゜)」< エロスが透けて見えてるよー!
今年の夏は『自重』をテーマに生きてみようと思います。
とりあえず、明日から頑張る!\(≧▽≦)/
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




