347話 濃霧の中
マーゥルの館に着くと、頼んでもないのにマーゥルが出迎えに外へと出てきた。
キラキラした瞳で「これがブロッケン現象?」と俺に詰め寄ってくる。
四十二区での説明会を受け、そのような発想になったのだろうが、残念だったな。これはただの濃霧だ。
ブロッケン現象というのは、霧が発生した際に背後から日光などの光源に照らされて影の周りに虹のような光の輪が浮かぶ現象で……あ、いや、たしか影だけでもブロッケン現象と呼ぶんだっけか? じゃあ、これもブロッケン現象でいいのか?
まぁ、いいか。オールブルーム流のブロッケン現象ってことで。
俺がそんなことを考えている間も、マーゥルは濃霧と戯れくるくる舞っている。
落ち着きのないオバサンだな、まったく。
うきうきわくわくしているマーゥルは、「楽しいことしてくれたら今後もいろいろ融通しちゃうわよ」的なにっこにこ顔をこちらに向けてきていたので、しばし『ブロッケン現象体験』という名の影遊びをさせてやった。
濃霧の中にマーゥルを立たせ、後ろからカンテラで霧の上にマーゥルの影を浮かび上がらせる。
霧が揺らめくと、マーゥルの影が不気味に踊っているように見えた。
……いや、違う。濃霧の中でマーゥルが不気味な踊りを踊っていた。
これがベルティーナやミリィなら幻想的な、もしくは妖精的な神秘的風景に見えたのかもしれないが、マーゥルなので妖怪的な恐ろしさを感じる。
妖怪・濃霧踊り。
俺たちはいつまでこの踊りを見せられるのか……
「陽だまり亭できっと心配しているだろうから」と、適当なところで切り上げマーゥルの館を後にする。
切り出さなきゃ、霧が晴れるまで付き合わされかねない勢いだった。
さすがジネット。どこに行っても免罪符になってくれる。
「そうね。店長さんが心配しているわね」と、マーゥルもすんなりと納得してくれたし。
そうして、ニューロードを通って四十二区へと舞い戻る。
……が、ニューロードの中まで霧が立ち込めて、もう、危ないやら怖いやら。
壁に手を付けながら慎重に歩を進める。
長い長い下り坂を、ゆっくりゆっくり下ってく。
「こりゃ、下手したら遭難しちまうぞ……」
「……大丈夫。マグダがついている」
耳をぴこぴこ動かして「……においを辿れば帰れる」と頼もしいことを言うマグダ。……耳、関係ないじゃん。
「陽だまり亭に戻る前に、教会へ寄ってもらっていいか?」
「うむ、そうじゃの! お姉ちゃんが心配じゃからの!」
リベカが嬉しそうに食いついてくる。
まぁ、ソフィー『も』心配、というか。
「ベルティーナに話を聞いておきたくてな」
「ウィシャート自らがブロッケン現象を目撃したんだから、教会に誰かを派遣することはないんじゃないのかい?」
あいつがそんなに素直な性格ならいいのだが……
「一つ気になっていることがあってな」
俺は、会談中のある場面を思い出して語る。
「会談の途中で執事ウィシャートが下っ端に合図を送っただろ?」
「……いつのこと?」
「ブロッケン現象の話をした時に、紅茶を入れてた給仕に合図を送ってたんだよ」
どうにもそれが気になってな。
「まさか、この濃霧の中、あの会談の途中でウィシャートが確認させに人を派遣したっていうのかい?」
「それを確認しに行きたいんだよ。思い過ごしならそれでいい」
一応、注意するように言った手前、会談がどうなったかの報告もしておきたい。
一寸先が見えないようなこんな濃霧は、それだけで十分不気味だ。
ガキどもが不安がっているかもしれない。
そんなガキどもを守る立場のベルティーナは、もっと気分が滅入っているかもしれない。
なので、ウィシャートが自分で踊る影を目撃したこと、その影響で子飼いが来る可能性が低くなったことくらいは伝えておくべきだろう。
不安なまま夜を迎えるのは心労を伴う。疲れることは、なるべく少ない方がいい。
「むふふふん。我が騎士は、わしのお姉ちゃんにも優しいのじゃ」
いや、だからソフィーじゃなくてベルティーナな?
ソフィーはついでだ。
考え過ぎならいいと思いつつ、視界の悪い中マグダを先頭に教会へと向かう。
そこで、俺は予想通りというか、やっぱりかと呆れる思いというか、ウィシャートという人間の小物っぷりを再認識させられた。
「ブロッケン現象に関して、子供たちに話を聞きに来られた方がいましたよ」
教会に着いた俺たちを迎えたべルティーナに話を聞けば、そんな答えが返ってきた。
……やっぱり、即実行してやがったか。
「なんというか、凄まじい行動力だね」
「あの時点で、ウィシャート側はかなり苦しい状況だったからな」
説明会へ偵察に差し向けた子飼いが誰一人として帰ってこず、横柄な態度で出迎えて萎縮でもさせてやろうと目論んだエステラにはカウンターを喰らわされ、あの手この手で足を引っ張ってやろうと準備していたであろう難癖すらろくにつけられない状況だった。
だったら、とても信じられないような、見たことも聞いたこともない現象を「嘘だ」と暴き、立場を一発逆転させてやろう。――そんな発想になったのだろう。
あのまま、エステラ優位の状況で帰したくなかったウィシャートは、すぐさま偵察を放ち、自分に有利な情報を得ようとした。
で、大急ぎでこの教会までやって来たわけだ。
「随分と乱暴な男でしたよ!」
ぷりぷりと思っているのはソフィーだ。
談話室の奥では、寮母のオバサンたちが困ったような顔で身を寄せ合い、あいまいに微笑んでいる。
ソフィーの荒れ具合にドン引きでもしてるのか?
「ブロッケン現象などというものは到底信用できぬと、その方はおっしゃいまして」
怒り狂うソフィーを宥めつつ、ベルティーナが当時の状況を説明してくれる。
「私は、この目で確かに目撃しましたと、当時の状況を説明したのですが――」
「その輩は、あろうことかベルティーナさんに『ブロッケン現象など存在しないと認めろ』と脅しをかけたのです!」
嘘を吐かない教会のシスターが、俺たちにとって都合がいい――言い換えればウィシャートにとって不都合な証言をした。
それを受け入れられないウィシャートの子飼いは、ベルティーナの証言を捏造しようとした。
力で脅し、ベルティーナに嘘の証言をさせようとしたのだ。
「子供たちがどうなってもいいのかなどと抜かしたので、私は愛用のモーニングスターを持ち出し、威嚇しました」
「椅子が一脚壊れたわ」
「それは、後程弁償いたします」
寮母のオバサンがぽそっと被害状況を教えてくれる。
……ソフィー。椅子、壊すなよ。
「そうしたら、あろうことか、ベルティーナさんに『精霊の審判』をかけるなどと抜かしやがったのですよ、あの【自主規制】男!」
おぉう……シスターが絶対言っちゃいけない発言が飛び出したぞ、今。
ベルティーナがめっちゃ困り顔だ。
あとで懺悔室へ連れて行くといい。
子供たちを守ろうとしてくれたから、今回は不問に……なんて甘いことを言っていてはソフィーの矯正は出来ないぞ。
とりあえず、すぐに鈍器を持ち出そうとするあの性格を矯正してほしい。教会が責任を持って。
「ところが、その最中に子供たちが騒ぎ出しまして」
と、ベルティーナの声が柔らかくなる。
現在、霧に包まれた庭先でわーきゃー騒いでいるガキたちの方を向いてにこりと笑う。
「急に霧が深くなったと思ったら、子供たちが『影が出てる』と」
ウィシャートの子飼いがいる最中に濃霧が発生し、ブロッケン現象が起こったらしい。
もちろん、偵察に来ていた【自主規制】男もその現象を目撃したのだろう。
「ベルティーナさんを嘘吐き呼ばわりした恥知らずな【自主規制】男は、真実を目撃して鼻水を垂らしながら退散していきましたよ! ザマァミヤガレ【自主規制】野郎です!」
「ベルティーナ。累積アウトだろ、これはもう」
「困りましたね」
勝ち誇り、男が逃げていったのであろう方向へ『お子様には見せられないジェスチャー』を決めるソフィー。
俺、そーゆーの、悪党の手下しかやらないもんだと思ってた。
「とにかく、こちらは無事でしたよ。椅子一脚以外は」
あ、ベルティーナもきっちり怒ってるっぽい。
ん。じゃあ、お説教は任せた。
残念だったな、リベカ。お姉ちゃんはもうちょっと教会に居残りだ。
そうだな、たぶん小一時間くらいだろう。
しっかり反省しろよ、ソフィー。
「とりあえず、シスターたちに危害が及ばなくて安心しました」
「ありがとうございます、エステラさん。きっと――」
深い霧が覆う窓の外へ視線を向け、ベルティーナは胸の前で手を組む。
「精霊神様が私たちを守ってくださったのでしょう」
ベルティーナは、それが真実であるかのように語る。
おそらく、一片の迷いもなくそう信じているのだろう。
祈ったくらいで助けてくれるような、慈愛に満ちたヤツじゃないと思うけどなぁ、精霊神は。
とはいえ、精霊神は依怙贔屓の塊みたいなヤツだから、お気に入りのベルティーナを守ったというのであれば、それはなんとなく納得も出来る。
もしくは、今さらになってようやく俺の素晴らしさに気が付き、遅まきながらも協力する気になったとか? ……ま、それはないな。
神の御力か偶然の産物か。
異常気象によりオールブルームを覆った深い霧は、今回の騒動を手早く解決させるのに一役買ったのは事実だ。
こいつがなきゃ、もう一手二手余分に手駒を打つ必要があっただろう。
だからと言って精霊神の加護だと妄信して感謝する気にはなれないが……
もしかしたら、今回の騒動の成り行きをどこかで見ているのかもしれないなと、そんなことを頭の片隅で少しだけ考えてしまった。
教会を後にし、マグダの先導に従って歩き慣れた道を歩く。
……前が見えねぇえ!
怖いぃぃいい!
「これで、何か『ぶにっ』っとした物を踏むと、恐怖ですよね」
「おもむろに怖いこと言い出さないで、ナタリア!?」
「……探す?」
「探さなくていいから、最短ルートで陽だまり亭に向かってくれるかい、マグダ!」
「……最短……本当に?」
「エステラ、最短ルートはモーマットの畑を突っ切るルートだ。マグダ、最安全ルートで頼む」
「……了解」
マグダが先頭を歩き、マグダの両肩に手を置いてリベカが続く。
俺はその後ろを歩き、エステラとナタリアは俺の両隣を歩いている。
……おい、ナタリア。その位置取りでいいのか? エステラの警護放棄してないか?
「皆の者、そう緊張せんでよいのじゃ。もうすぐ陽だまり亭じゃ。みんなの声が聞こえて落ち着くのじゃ」
ウサ耳をぴこぴこ揺らして一人で表情をほころばせるリベカ。
教会を出る際、俺の耳にも届いていたソフィーの悲鳴は耳をくるくる巻いて完全シャットアウトしていたのにな。
姉の絶叫は聞きたくなかったと見える。
ベルティーナの怖さを、こいつも知ってるからな。大好きな姉と言えど、自分の命と天秤にかければ見捨てる対象になるのだろう。
マグダやロレッタが、ジネットの足つぼに近付かないのと同じ心理だ。
「……あ、少し待って」
先頭を歩いていたマグダがふいに立ち止まる。
どうしたのかと思ったら、急に顔を背けて耳を寝かせた。
「……どうやら、今は足つぼタイム」
「大丈夫だ。カンパニュラの末端冷え性解消マッサージだろ? あれに害はない」
「……いや、グーズーヤがいる模様」
「うむ。なにやら男が『店長さん、足つぼの力加減覚えたんですか? じゃあもう安全ですね。いや~、実は前からちょっとだけ興味があったんですよね~』と申しおるのじゃ」
あ~ぁ、グーズーヤ。
お前は、どうしてそう見えている地雷の上に全力着地するようなマネを……
「……店長の纏うオーラが変化した」
「うむ。『そうなんですか? では是非体験してみてください。本来の足つぼは健康にもよい素晴らしいものなんですよ』と申しておるのじゃ」
あ~ぁ。ジネットのスイッチ入っちゃった。
あいつは褒められると暴走する傾向が強いってのに……
「……ウーマロのニオイもするけれど、止める気配は皆無」
「うむ。『うわぁ……』と、小さぁ~い声で呟いたきりじゃの、大工の棟梁殿は」
あ~ぁ。ウーマロ。見捨てたか。
そして、数瞬後――
「ぎゃぁあああああ! 全然手加減覚えてないじゃないですか、やだー!」
という絶叫が轟いた。
「……今、一人の犠牲者が天に召された」
「うむ。『ぎゃぁあ、全然手加減覚えてないじゃないですか、やだー』と申しておったのじゃ」
「うん、それはしっかりと聞こえたから」
エステラが渋ぅ~い顔で目を細める。
おい、なんとかしろよ。お前の親友だろ、あの足つぼ魔神?
「……店長が追い打ちをかける模様」
「うむ。『グーズーヤさん、最近睡眠が足りていませんね? ここは安眠のつぼなんですよ』と――」
「あんぎゃろえれぴれぽるぱろぴょーーーーーん!」
「――申しておるのじゃ」
「リベカさん。途中で奇っ怪な鳴き声が聞こえてきたら、もう最後まで言い切らなくていいですよ。おおよそ理解できますんで」
エステラが道端のお地蔵さんみたいな顔で言う。
悟りを開くんじゃないよ。向き合え、現実と! お前の親友と!
「じゃ、ヤシロ。ジネットちゃんのこと、よろしくね」
「丸投げすんなよ、親友」
「親友としては、ジネットちゃんのすべてを許容したいと思っているんだよ」
「つまり、すべてを受け止める覚悟があると」
「隣に寄り添って見守る所存だよ☆」
「寄り添うだけでなんの役にも立つ気がねぇな、お前」
ダメな友人だな、こいつは。
ダメなもんはダメだと言わないから、この街には問題児が増えるんだ。
ソフィーとか、リベカの姉とか、二十四区の鈍器シスターとか。あとソフィーとか。
「……よし。生け贄のおかげで魔神は鎮まった。帰るなら今がチャンス」
「うむ。大工の棟梁が『店長さんが、妙にすっきりした顔してるッス』と申しておるのじゃ」
こいつらはいいよなぁ。
危険な状況を離れた場所から察知できるんだもんよ。
なるほどな。
いつもマグダがタイミングよく現れるのは、これくらい離れた場所からでも店内の状況が探れるからなのか。
「……私はまだ中の気配までは探れません…………悔しいですね」
で、この距離では中の気配を探れないナタリアは、何気にマグダにジェラシーを感じていると。
そこは獣人族のアドバンテージだろうな。
「あと2メートルほど近付けば私も……」とか言ってるお前も大概だけどな、ナタリア。
陽だまり亭の中を台風が通り過ぎたことを確認し、俺たちは再び歩き出した。
少し歩くと、遠くにぼんやりと明かりが見える。
光るレンガが、微かな光を発している。朝から雨だったにもかかわらず、頑張って発光している。
あぁ、やっと帰ってこられた。
「……では、先頭をヤシロに譲る」
「なんでだよ?」
「入れば分かる」
マグダに背を押され、俺が先頭で陽だまり亭へと入る。
ドアを開けると、すぐそこの床にグーズーヤの遺体が転がっていた。
ので、踏む。
「あんぎゃぁああ!」
「ジネット、ただいま」
「おかえりなさ……あの、ヤシロさん。踏んでますよ?」
「ん? うわ、ばっちぃ」
「……ヤシロさん、全部分かった上でやっているとは思うんですけど……さすがにひどいっす……」
グーズーヤが床の上で泣いている。
お前、ちゃんとあとで床拭いとけよ。
「……うむ、さすがヤシロ。期待通り」
「君は本当に絶妙にヤシロのよくない部分ばかりを吸収して成長しているようだね、マグダ」
満足げに腕を組んでうんうん頷くマグダを、エステラが細ぉ~く細めた目で見つめる。
「みなさん、おかえりなさい。大変でしたね。今、タオルをお持ちしますね」
濃霧の中を歩いてきた俺たちは、全身しっとりだ。
ずぶ濡れというほどではないが。
傘なんかあってないようなものなのですでに差していない。
「店長さん、あたしがタオル持ってくるです!」
「私もお手伝いいたします、ロレッタ姉様」
「ぉてちゅらいー!」
ロレッタに続いてカンパニュラとテレサが駆けていく。
「では、タオルはみなさんにお任せしましょう」
そう言って、ジネットが俺の前髪の水滴を払ってくれる。
「おかえりなさい、ヤシロさん」
「ん? どうした改まって?」
「さっき、途中までしか言えませんでしたので」
えへへと、目の前でジネットが微笑む。
おぉう、なんだコレ!?
持って帰っていいヤツか?
「それから、そろそろ退いてあげないと、グーズーヤさんが可哀想ですよ?」
「店長さん、言う順番おかしいな~とか思わないっすかねぇ!? 僕、ず~っと乗られっぱなしなんですけどねぇ!?」
「ウーマロ~、不法投棄すんなよ~」
「それは飛んで火に入った虫ッスよ」
責任者が責任を放棄しやがった。
悪評をバラ撒いてやろうか、トルベック工務店。炎上しろ。
「……リベカ、中へ」
「うむ、ありがとうなのじゃ、永遠のライバルマグダ」
マグダがリベカの背を押し店内へと誘う。
そして、次いで自分が入ってくる。
「では、エステラ様」
「うん」
「お先に」
「なんでさ!? そこはボクに譲るところだろう、普通!?」
エステラを押しのけ、ナタリアが店内に入る。
忠義に厚い給仕長でよかったな、エステラ。
「まったく……」
不満顔で店内に入ろうとしたエステラ。
だが、その時、雨樋から「たぱぱぱぱ!」と水滴がしたたり落ちてくる。
「うわっ!?」
かかる位置ではなかったものの、急に落ちてきた水滴に驚いてエステラが大きく取り乱し、体をのけぞり、足を滑らせ、入り口の前で盛大に尻餅をついた。
どろっどろの、濡れた土の上で。
「エステラ、お前……どうしても陽だまり亭の玄関前に尻型を作りたいのか?」
「そんなわけないだろう!? も~ぅ!」
毎度毎度、雨が降る度に尻を汚すな、お前は。
これもきっと、精霊神の加護なんじゃねぇの?
笑いの神がお前に微笑みかけてるんだよ、きっと。
「あ、あの、エステラさん。すぐに着替えをご用意しますね」
「あぁ、ジネット。俺の部屋にエステラ用の着替えがあるから、持ってきてやってくれ」
「宣伝Tシャツだな!? またアレを着せるつもりなんだね!?」
むぅむぅ文句を言いながらも、他に着られそうな服もなかったので、エステラはお馴染みの宣伝Tシャツに袖を通すことになった。
あ、そうそう。
グーズーヤはばっちぃので処分しておいた。
「あぁ……あったかぁ~い」
エステラが味噌ラーメンを啜りながらほっこりと白い息を吐き出す。
コクのある味噌の香りが漂う、あったかい息だ。
「胸の奥がぽかぽかするね」
その胸の全面には『美味い! 安い! 可愛い!』と書かれている。
……ぷぷぷっ。
「笑うな!」
「さすがエステラ様です。そこまで完璧に着こなせる人は他にいないでしょう」
「嬉しくないよ、ナタリア」
「何より、読みやすいです!」
「うるさいよ! 言うと分かっていたけどもうるさい!」
かつて、ナタリア対策のために袖を通した宣伝Tシャツも、今ではしっかりナタリアにいじられるアイテムとなっている。
歴史って、こうやって積み重ねられていくんだろうなぁ。
「今、お風呂の準備をしますから、入っていってくださいね」
「ありがとうございます、店長さん」
「君じゃなくてボクに言ってくれたんだよ、ジネットちゃんは!」
「うふふ。ナタリアさんも是非」
「はい! 突っつき合いましょう!」
「ジネットちゃんから離れろ、危険人物!」
ナタリアの首根っこを掴んでジネットから遠ざけるエステラ。
自分の躾が行き届いていないせいだと自覚しているのか、あいつは?
「それにしても、いつになったらこの霧は晴れるんだ?」
こんな状況じゃ、危なくて表にも出られない。
「グーズーヤさん、大丈夫でしょうか?」
ばっちぃので追い出したグーズーヤのことを、ジネットが気にかけている。
「大丈夫だ。あいつならきっと、予想を裏切らず用水路に嵌って面白い感じで『たすけてー!』って叫んでるはずさ」
「いえ、あの……そういうことにならなければいいなと思っているのですが?」
えっ!?
そーゆーのがグーズーヤの持ち味なのに!?
「リベカっちょ、帰れないようなら、今日も泊まっていくですか?」
「うむ、それもまた楽しいのじゃ。今夜はロレっちょも一緒に寝るのじゃ!」
「うぅ~む、そう申し込まれては断れないですね!」
おーおー、ここの住人じゃないヤツらが勝手なことを。
「ジネット」
「はい。準備しておきますね」
「一緒に追い出すぞ」
「いえ。むしろ囲い込みます」
くっ、ジネットが非協力的だ。
賑やかなのが好きだからなぁ、ジネットは。
「ナタリア。この霧はどれくらいで晴れるか予想できるかい?」
「申し訳ありません。オーウェン流天気予報術でも予測不可能な濃霧です。そもそも、本日こんなに霧が出るとは思いませんでした」
かなりの的中率を誇るナタリアのオーウェン流天気予報術をもってしても予測できないほどの異常気象なのか、この濃霧は。
本気で精霊神の干渉があったのかもしれないな。
「でも、なんだか幻想的ですよね。まるで違う世界に迷い込んだみたいです!」
ロレッタが窓の外を見つめてはしゃいでいる。
俺は遭難したような気分にしかなれないけどな。
……ふむ、でも待てよ?
「この幻想的な中、非日常な風景を眺めながら風呂に入ったら気持ちよさそうじゃないか?」
「それは素敵ですね、お兄ちゃん! 霧に包まれて温かいお湯に浸かる……きっと楽しいです!」
「よし! じゃあウーマロ、今すぐ風呂場の壁という壁をすべて取っ払ってきてくれ!」
「ウーマロ、そこから一歩も動かないように!」
「言われなくても、そんな暴挙に加担は出来ないッスよ!?」
エステラが非情な強権を発動し、裏切り者のウーマロが俺に仇をなす。
なんてヤツらだ。
血も涙もない連中だ! いいや、乳も涙もない連中だ!
「乳なしコンビが!」
「あるわ!」
「いや、オイラにはないッスよ!?」
「いえ、エステラ様並みにはございますので」
「ナタリアうっさい! うっさいし、うるさい!」
ナタリアが首根っこを掴まれ、店の外へと放り出される。
酷い主だなぁ、まったく。
「うちの宣伝Tシャツを着て非道な行いをするんじゃねぇよ。悪評が立ったらどうする」
「これは正当な抗議であり、意義ある制裁だよ」
エステラと言い合っていると、隣でジネットがくすぐったそうに身をよじっていた。
なんだ?
「どうかしたか?」
「いえ、あの……」
緩む頬っぺたを両手でむにむにさせながら、ジネットがはにかんで言う。
「ヤシロさんが陽だまり亭のことを『うちの』と言ってくださると、なんだか、こう、嬉しいような、くすぐったいような気がしまして……」
「あ、悪い。お前と祖父さんの店なのにな」
「いえ! 是非そう呼んでください! むしろ、みんなのお店だと思っています!」
ジネットがずいっと迫り、真剣な瞳で訴えてくる。
と、同時に、ロレッタやマグダもずずいっと迫ってくる。
なんだ、この圧は!?
なんの訴えだ!?
「……みんなの陽だまり亭」
「はいです! マグダっちょやあたしも含めて、みんなの陽だまり亭です! よね!?」
なんでか物凄く嬉しそうだ。
ジネットがそれでいいと言うならそれでいいんじゃないのか?
俺に訴えるな。
ジネットに言え。
「わしも混ぜてほしいのじゃ!」
いや、リベカの陽だまり亭ではないだろう。
エステラでも怪しいくらいなのに。
「では、店長さん! 『うちの』陽だまり亭の新メニューを、出かけていたお兄ちゃんとマグダっちょにお披露目です!」
「はい。少々お待ちください」
言って、ジネットが小走りで厨房へ向かう。
……遅い遅い。
ロレッタの匍匐前進の方がきっと速い。
そして待つこと数分。
厨房からはたまらん香りが漂ってくる。
あぁ、これは、アレだな。
「美味く出来たのか?」
「その問いには、自信を持ってイエスと答えるです! これはちょっと、すごいものが誕生したですよ!」
「……ヤシロは、何か分かった?」
「行く前に教えておいたやつだ」
もうちょっと漬けておく時間が長くても美味くなるだろうが。
「お待たせしました。鶏肉の塩麹焼きです」
ジネットの持つお盆の上には、予想通りの一品が、予想以上の美味そうなビジュアルで載っていた。
「おぉっ!? これは、今朝言っておった料理なのじゃ!? 実に美味しそうなのじゃ!」
「リベカさんも試してみてくださいね」
「うむ! いただくのじゃ!」
「ボクも!」
「お前はさっき味噌ラーメン食ってただろうが」
「味噌ラーメンと塩麹焼きは別腹だよ」
複雑にジャンル分けされてんだな、お前の胃は。
まぁ、腹に余裕があるなら食えばいい。
塩麹焼きは、表面が若干焦げつつも、中までしっかりと火が通り、それでいてとても柔らかく噛めば噛むほど肉のうまみが染み出してくるジューシーな味わいだった。
「これは美味いな! 予想以上だ」
「ありがとうございます。リベカさんの塩麹が優れているからでしょうね」
「むふふん! さすがジネットちゃんなのじゃ! そこんとこ、よく分かっておるのじゃ!」
リベカもご満悦だ。
エステラも一口かぶりついて、感想も言わずに二口目にいっている。
かなり気に入った時の反応だな、あれは。
「私。この料理のためになら亭主を捨てられます」
「お前に亭主はいないだろ、ナタリア」
「それくらいの感動です」
それが果たして、どのレベルの感動なのか分かりかねるが、とにかく気に入ったということだろう。
確かに美味い。飯が欲しくなる。
「こちらを、スライスして塩麹ラーメンにトッピングすると、きっと美味しくなりますよね」
「うむ! 二十四区のラーメンはそれに決定なのじゃ!」
「領主でもないヤツが勝手に決めていいのかよ」
「う、うむ……義父様には、わしから、ちゃんと説明するのじゃ……」
お~お~、照れてやんの。
好きな男の父親を義父様と呼ぶのはまだ恥ずかしいのか。そうかそうか。抜ければいいのに、ドニスの一本毛。
「フィルマン、変な虫に刺されて患部がめっちゃ腫れろー!」
「え、これ、なんかヤバくない? 大丈夫なの!?」って不安になるような腫れ方をすればいい。未知の虫に刺されて腫れるとか、心労がヤバいことになるからなぁ。
「君は、どうして幸せそうなカップルを目の敵にするのさ?」
「どうして? 理由が必要か!?」
「理由もなく、ただただ妬ましいのかい? ……情けない」
情けないとはなんだ、情けないとは!
これは世界の意思だ!
ところかまわずイチャつくカップルは爆発すればいいのだ! 男の方が!
「あ、そうだ。爆発で思い出したけど――」
「どこから出てきたのさ『爆発』なんて単語が……」
呆れるエステラをスルーして、リベカに問いかける。
「例のアレは、どうだった?」
問えば、リベカが得意げな表情を浮かべる。
ばっちりうまくいった様子だ。
「うむ。我が騎士に言われたように、ゴッフレードからの荷を受け取った者の足音を追跡した結果――」
言いながら、リベカが店内を移動する。
店の奥に置きっぱなしにしてあったウィシャート邸の模型の前へ。
そして、俺たちが怪しいと睨んでいた、やたらと柱が頑丈に作られている一角を指さす。
「この部屋の二階へと運び込まれたのじゃ」
「やはり、そこが宝物庫か」
リベカには、ゴッフレードから『バオクリエアからの贈り物(偽)』を受け取った相手が、どこへ移動するのか、足音を聞いて探ってもらった。
あらかじめ模型を見せ、見取り図の予想図を渡し、足音がどの部屋へ向かうのかを調査してもらっていた。
うまくいけばいいなくらいのつもりだったが、リベカはしっかりと役割を果たし、貴重品の保管場所を探り当ててくれたようだ。
「この部屋にはいろいろと保管されておるようじゃ。鍵の音が三回したのじゃ。かなり厳重なのじゃ」
三つのドアを施錠してあるのか。それは厳重だな。
まぁ、俺なら簡単に突破できるけど。
「取り返しに行くつもりなのじゃ?」
「いいや。アレは連中の手の中にあってこそ効力を発揮するものだ」
とはいえ、他にもいろいろお宝が保管されているなら、そこを荒らすわけにはいかないか……
「エステラ。マーシャに頼みたいことがあるから連絡を取ってくれ」
「分かった。ちょうど工事再開の連絡をする予定だから一緒に伝えておくよ」
鶏肉の塩麹焼きを平らげ、エステラが席を立つ。
「さて、もう一仕事頑張ろっかな」
指を組んで頭上へ持ち上げ、腕を後方に逸らしてストレッチをする。
なのに――
「「「すとーん」」」
「うるさい、ヤシロ、ナタリア、マグダ」
「むぅ! ダメですよ、ヤーくん」
俺だけがカンパニュラに怒られた。
贔屓まで受け継がなくていいのに。
「明日は港の工事の再開を宣言して、その後で三十五区だね」
「おう。忙しいな、領主様は」
「誰かさんのおかげでね」
それはこっちのセリフだっつーの。
「それじゃあ、カンパニュラ。明日の昼頃迎えに来るから、準備をしておいてね」
「はい。楽しみにお待ちしております、エステラ姉様」
カンパニュラの返事を聞き、満足そうに頷くエステラ。
「じゃ」と手を上げ、エステラが陽だまり亭を出ていく。
ナタリアを残して。
「君も帰るんだよ、ナタリア!」
「ちぇ~」
不服そうに、ナタリアがエステラに続いて店を出ていく。
あのコンビ、濃霧の中でどつき漫才とかして用水路に嵌らなきゃいいけどな。
「ヤシロさん。明日から港の工事が再開できるんッスか?」
エステラがいなくなった途端、ウーマロが俺に詰め寄ってきた。
エステラがいる時に、エステラに聞けよ。公共事業に関してはあいつの管轄だっつーの。
「明日の朝、盛大に再開式でもやってやるか。どーせ、ウィシャートが偵察を寄越して俺やエステラの監視をするだろうし」
ウィシャート目線で見れば、今回の会談は思い通りの結果が得られず、不本意ながらも明日港の工事が再開してしまうわけだ。
となれば、些細な問題でも見つけ出してなんとかして難癖をつけてやろうと躍起になるはずだ。
それこそ、重箱の隅を突っつき回す勢いで。
必ず、偵察を寄越す。
……そうなると、俺とエステラが四十二区を空けるのは非常に危険だ。
今回、まんまとウィシャートをあしらった俺とエステラは、ウィシャートの中のブラックリストに名を連ねることになっただろう。
要注意人物というところだ。
その二人が揃って四十二区を空けるとなれば、くだらない見栄とプライドと虚栄心の塊であるウィシャートがよからぬ野心をくすぶらせかねない。
俺らがいなければなんとかなる――と、そう甘く考えてはいないだろうが、俺らがいないところでトラブルを起こして、俺らが帰ってきた時に臍を噛むような状況を作っておいて「ザマァミロ」と留飲を下げる――くらいのことはしてきそうだ。
俺の中で、ウィシャートという男はそういう扱いに成り下がっている。
で、悲しいかな、ヤツならマジでそういうことをしてくるだろう。
だからこそ、港の工事は必要以上に派手に、華々しく、俺とエステラが揃って出席してその存在感をアピールする必要がある。
そして、存在感をそのままに三十五区へ出かけられるようにちょっとした細工が必要になる……の、だが。
「なぁ、ジネット」
「はい。なんでしょうか?」
にこにこ顔のジネットに問う。
「そろそろ、眠たくならない?」
「へ? いえ。まだまだ平気ですが」
だよねぇ~。
まだまだ全然営業時間だもんね~。
なんなら、夕方のピークすらまだだもんね~。
「洗濯物とか溜まってないか? まとめて洗ってみてはどうだろうか?」
「こんなお天気なのに、ですか?」
だよね~。
オールブルーム史に名を残しそうな規模の濃霧だもんねぇ。
洗濯物、乾かないよねぇ……
「あの……、もしかして、わたし、ヤシロさんのお邪魔になっていますか?」
と、なんとも悲しそうな顔をするジネット。
いやいや。邪魔じゃない邪魔じゃない。
全然邪魔じゃないんだけど……
「まぁ、俺の方から出向いていけばいいか」
外が濃霧だから出歩くのが面倒くさく、だが明日までになんとしても必要な物があり、だったらテメェの方から御用伺いにやって来いよと『あの男』になら気安く言ってしまえるだけに、なんでわざわざ俺がアイツに会いに行くために苦労をしなければいけないんだという思いが払拭できず非常に悶々とするわけではあるが……この場所で『あんなもの』を依頼するわけにはいかない。
特に!
ジネットの前では。
「お出掛けになるんですか? まだ霧は晴れていませんよ?」
「本来なら、拒否権なしで呼びつけるところだが……まぁ、仕方ない。俺から出向いてやるよ」
「……ウッセ?」
「いや、ウーマロさんじゃないですかね?」
「オイラ、ここにいるッスよ、ロレッタさん!?」
呼びつけても心が痛まないリストからウッセとウーマロの名があがるが、残念ながらその二人ではない。
そう、会わなければいけないのはそのどちらでもない、アイツだ。
あ~ぁ、会いに行くの面倒だなぁ~……
「ごめんくだされ! 仕事が一段落したので、ラーメンをいただきにまいったでござる!」
「だからって来てんじゃねぇよ、ベッコ! なんで来るかな!? 呼んでもないのに!」
「拙者、何かしたでござろうか!?」
「これからお前に、お願いしたいことがあるんだよ!」
「この状況、どう見てもお願いしたい人の態度ではござらぬよ、ヤシロ氏!?」
くそう! くそぅ!
出かけなくてよくなったのはありがたいが、ジネットがいるこの場所で『アレ』の制作を頼むのは避けたい。
折角最近記憶が薄れて欲しい欲しい言わなくなったのに……っ!
「それで、拙者は何を作ればよいのでござるか?」
「察しろ」
「無理難題が過ぎるでござるよ、ヤシロ氏!?」
「俺の表情や雰囲気から察しろよ! 何年顔見知りやってんだ!?」
「顔見知りに求めるにしては要求が高過ぎるでござるよ!? 熱愛カップルでもギリクリア出来ない要求に思えるでござる!」
く……っ!
察しの悪いヤツめ!
「あの……、わたし、お邪魔でしたら席を外しましょうか?」
なんとも悲しそうな顔でこちらを窺うジネット。
ほらみろ! お前の察しが悪いせいで――いや、俺の言い方がまずかったかもな。
……はぁ。
しょうがない。ジネットを悲しませたいわけじゃないしな……
「ジネットは今、ラーメンに夢中だ。だからきっと、他のしょーもないことに興味をひかれたりはしないだろう、うん、きっとそうだ」
「なんか、お兄ちゃんが自分自身に言い聞かせてるです」
「……ただし、限りなく高い確率で徒労に終わると自覚している口振り」
「あぁいうのを、『前振り』って言うんッスよね」
うっさい。
ウーマロうっさい。
願いは口にすると叶うんだよ。
だからきっと、ジネットはあんなしょーもないものに、俺が今から作れと命じる物に興味なんか示さない。そうに違いない! そうに決まった!
えぇい、ままよ!
神がいるなら、俺の願いを聞き届けろ!
「ベッコ。明日までに、俺を模した等身大の蝋像を作成してほしいんだが」
「英雄像ですね! ついに制作が解禁されるんですか!? 待っていた甲斐がありました! ベッコさん、わたしにも是非三体お願いします!」
めっちゃ食いついたぁ!?
神も仏もあったもんじゃねぇな、この世の中は!
つか、ジネット? なんで三体?
え、飾る用、保存用、いざという時用?
いらねぇよ、三体も!
「では、民衆の盾となり、ウィシャート邸へ乗り込んだ際の勇ましい英雄像を作るでござる!」
「そんな仰々しいもんじゃねぇよ、欲しいのは! っていうか、お前見てないだろ、俺がウィシャートん家入ったとこ!」
「英雄像でござったら、拙者、想像の中の物をいくらでも具現化できるようレベルアップしたのでござる!」
「しょーもない進化を遂げてんじゃねぇよ!」
「素晴らしいです、ベッコさん! では、窓辺で微笑む英雄像なんていうものも……?」
「むろん、制作可能でござる!」
「では、それも三体!」
「どこに置く気だ、ジネット!?」
いいから落ち着け!
落ち着いたら、代わりにお乳突いてあげるから! ね!? ギブ&テイク!
「……ヤシロ。それではギブ&ギブ」
「俺、しゃべってないのに、返事してこないでくれる!?」
マグダ、ついに人の心を読む術を!?
「お兄ちゃんは、表情と視線が正直過ぎるです」
バッカ、ロレッタ、ばか!
おっぱいのことを考えたら、そりゃあおっぱいを見るだろうが!
おっぱいのことを考えていなくてもおっぱいは見ていたいというのに!
「けどヤシロさん。英雄像なんか作って、何をする気なんッスか?」
「英雄像じゃねぇ、俺の等身大蝋人形だ」
群衆を導くような要素はいらねぇんだよ。
なるべく自然体の、普段着の俺である必要がある。
「俺とエステラの蝋像を、着色ありで大至急頼む」
「ヤシロ氏とエステラ氏の蝋像でござるな。久しぶりの蝋像の依頼、しっかりと勤め上げてお見せするでござる!」
「では、そのついでにわたしの――」
そっと、ジネットをベッコから引き離す。
暴走してますわよ、店長さん。
おぉ、怖い怖い。
まぁ、何がしたいかって言うと……大脱出、かな?
マジックショーでよくある、ステージ上にいたマジシャンがいつの間にか観客席の後ろの方に移動している~みたいなヤツだ。
トリックは意外と単純。だが、多くの者が間近で見ていても案外バレない、優れたエンターテイメントでもある。
俺たちそっくりな蝋像の他に、影武者でも用意しておけば一日くらい誤魔化せるだろう。
「エステラの影武者はロレッタでもいいな」
「え、じゃあ、あたし、明日は一日中さらし巻くですか? 結構苦しそうです……」
「うん。今の発言きっちりエステラに伝えておくな」
「はぅ!? 怒られる未来しか見えないです!?」
まぁ、認識は間違ってないけども。
そんな感じで、明日に向けての準備を進めて、その日は終わった。
ジネットに無用な火を点けてしまったことだけが悔やまれる。
あとがき
はい、宮地です!
宮地、なん、です、が(←鼻濁音)
え~……
感想返し、滞っております。
今しばらくお待ちいただければと……
(;>□<)ごめんなさいっ!
そのうち、
追々、
めいびー、
お返事できるかもしれないかなとは思うのですが……
異世界詐欺師のストックがないんですっ!(;_;)
すぐストック作って、また余裕を取り戻しますので、今しばらくお待ちくださいっ!
……と、出来ればカクヨムやノベリズムで読んでるよ~ってお友達がいる方はご伝言よろしくお願いします。
このあとがきも書いて出しです。
昨日書いて今日公開、そんなみっちりスケジュールです。
ギリギリでいつも生きていたいとか言った覚えはないのですが、
むしろゆったりと、まったりと、ふっくらと、
ゆっさゆっさをいつも見て生きていたいのですが、人生ままなりません。
ママならざるものです。
……じゃあパパなんでしょうか?
人生は、パパである。
うむ、名言っぽいですね。
でも、漢字の方がパパよりカッコいいでしょうか……
人生は乳である
……あぁっ!?
ウチのPCの文字変換、『父』より『乳』の方が優先度が高い!?
でもまぁ、言葉としては間違っていないかもしれません。
人生とは乳である
――宮地拓海
うん
哲学の本に載っていても違和感がないような気がします。
哲学の本を出版されている編集部の方、ご連絡お待ちしております☆
けれどまぁ、
お尻も、いいですよね~
そんな、心温まる出来事に遭遇したんですが、聞いていただけますか?
あれ?
興味ないですか?
でもでも、
『「お尻っていいよね」っていう心温まる話』の方が、
『「心って大事だよね」っていうお尻が温まるお話』よりもよくないですか?
読んでてじんわりおしりが温かくなるのって、不快じゃないですか?
あったか機能付きの便座みたいで割と好きですか?
では、お尻が温まるお話も、今後は積極的に収集するようにいたしましょう。
今回は、お尻ではなく心が温まるお話で勘弁してください。
……まったく、ここの読者様ってば、心温まるお話よりお尻温まるお話がいいとか……
どんだけお尻好きなんでしょうかねぇ、まったく……
それで、お尻のお話なんですけども
(≧▽≦)ノシ 聞いて聞いて!
アレはもう全国に広がったんですかね?
ゼブ○イレブンのレジなんですけど、
お金の払い方が、半分セルフ? みたいになってるんですね。
たぶん、ウチの実家の近くではまだそういうのは導入されていないでしょうし
なんなんら、セブ○イレブンにも届かずにファイブナインくらいかもしれませんし、
一応、説明をしておきますね。
バーコードは店員さんが読み取るんですが、
その後、レジスターから音声が流れて
レジ「お支払方法を選択してください」
と言われ、
タッチパネルで現金とかクレジットカードとか、電子マネーとかを選ぶんです。
まぁ、私は大体電子マネーで支払うんですけども
で、電子マネーでの支払いを選ぶと――
レジ「タッチ音が鳴るまで、電子マネーをタッチしてください」
と言われ、
なんかレジの画面の横の方の光ってる部分に電子マネーを触れさせていると
「ピッ!」って音がして
レジ「レシートをお取りください」
って言われて、お会計が完了する
という、そんなシステムになってるんですよ、わたしの地元の人たち!
知ってました!?
え、地元のヤツ、まだスリーシックスなんですか?
じゃあセブ○イレブンになるまで
まだまだ時間かかりそうですねぇ(´・ω・`)
で、これって慣れてくると、
もう言われること分かってるんで、
説明も聞かずにぽんぽん先に進んじゃうんですよね。
そしたら音声が終わる前に次の工程に進んじゃうので――
レジ「お支払方法、タッチ音が鳴るまで、レシートをお取りください」
という、斬新な提案をされるんです。
レシートを取ることによって支払いを!?(;゜Д゜)
いつまでもタッチ音が鳴らなかったら残業の可能性も!?(;゜Д゜)
一体それでセブ○イレブンになんのメリットが!?(;゜Д゜)
と、毎回妄想して楽しんでおるわけ、なん、です、が(←鼻濁音)
今日、そんなセブンで可愛らしい母娘連れを見たんです。
私の一つ前に並んでいた母娘なんですが、
お母様が二十代前半くらいの快活そうな方で、
娘さんは四歳くらいでしょうか?
とっても可愛らしい女の子でした。
レジの間、女の子はず~っとお母様の隣に立って
お母様を見上げていたんですが――
レジ「お支払方法を選択してください」
女の子「ママが払います!」
店員「(やだ、この娘可愛いっ!)」←みたいな顔
レジ「現金をお入れください。終わりましたら確認ボタンを押してください」
女の子「はい! ママ、いれてね」
お母様「はいはい」
女の子「おわったら、ボタンおしてね」
お母様「はいはい」
店員「(もう、にやにやが止まらない)」←みたいな顔
と、そこまでは微笑ましかったんですが、
その直後、お母様は悲鳴を上げることになったんです!
レジ「おつりとレシートをお取りください」
女の子「はい!」
と、元気よく返事をし、
女の子は全力でお母様のお尻を鷲掴みっ!
お母様「ぅひゃぁぁあああ!?」
店員「(びくぅっ!?)」
お母様「なに!? なになになに!?」
女の子「おしりとれしーと!」
お母様「お尻じゃなくて、おつり!」
店員「ぶはっ! す、すみませ……くすくすくすっ!」
お母様「……すみません」(顔、真っ赤)
いや~、
めっちゃ可愛かった(*´▽`*)
女の子ももちろん、
お母様も、
そして、新人っぽいレジのお姉さんも
あの瞬間のあの空間、
とってもアットホームな空気が流れてましたよね
さすが、3~4歳くらいの女の子は最強ですね。
どんな時代でも、すべての人を笑顔にしてしまう
そういうパワーを持っているんですよね。
宮地「手伝おうか? おじさん、お尻のプロだよ☆」
と、声をかけられなかったのだけが心残りです……
普段から、おっぱいの半分でもお尻に情熱を注いでおけば、
今回のような場面でも、臨機応変に対応できたのでしょうが……
悔やまれます!(´>△<`)
ね?
「お尻っていいよね」っていう心温まる話だったでしょ?
新年度を迎え、
私も気分一新、
これまでおっぱい100%だったところを、
お尻や脚、ウェストラインやうなじの趣にも意識を向け、
より多角的に美しさや尊さを追求していく所存です!
ですので、今後は
お尻40%
脚35%
ウェスト15%
うなじ10%
おっぱい100%
これで行こうと思います!
ん?
トータルが十割超えている?
そんなものは些末なことです!
おっぱいは常識を凌駕するのですっ!!
( >Д<)ノシ ジョーシキですよっ!
では、いずれ近いうちに、お尻が温まるおっぱいのお話を仕入れてきますね☆
……ん? 何か目的が変わったような?
ま、些末なことですね♪
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




