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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第三幕

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498/821

300話 大キャラバン隊が行く! 午後の部&二日目

 キャラバン出張イベント午前の部で、エステラが盛大に痴態をさらしたことで、ナタリアからエステラの使用にNGが出た。

 さすがにあれだけ大勢の前で、『微笑みの領主』として知名度が上がっているエステラが「あはん」だの「うふん」だの色っぽい吐息をまき散らすのはマズいと判断されたようだ。

 ナタリアは、エステラの将来と、クレアモナ家の未来が不安になってしまったのだ。


「ただでさえ乳がないというハンデを背負っているのに」と。


「誰の乳がハンデか!?」

「乳なき娘」

「よぉし、ケンカだ! 今日こそその主を主とも思わない性根を叩き直してやる!」


 とかなんとか、賑やかにじゃれ合っていた。


 というわけで、午後の部では別の美女にデモンストレーションをお願いすることになった。


「……なんか、妙に視線が刺さるさねぇ」


 すらりと美しいノーマの足が湯を張った桶から持ち上げられると、その場にいたオッサンどもの視線が一点に集中した。

 視線をはっきりと感じるレベルのガン見が辺り一帯から注がれる。


「まったく……しょうがない生き物さねぇ、男ってのは」


 それを、照れるでなく、かといって安っぽく見せつけるでもなく、なんとも妖艶にあしらうノーマ。

 すげぇな、男のあしらい方が大ベテランじゃないか。彼氏いたこともないのに。


「ヤシロ、……痛くしたら、お仕置きさよ」


 う~む。

 それはそれで楽しみなような……

 まぁ、こっちは『気持ちいい足つぼ』をアピールするチームだからな。

 オモシロリアクション部門は、泣きが入ってリタイアしたリカルドに代わり、キャラバンの護衛に駆り出されていたグスターブに任されている。


「イーターイー! もーおーやーめーてーくーだーさぁぁーい!」


 甲高い声が、今日はさらに1オクターブ高くなっている。

 薄いガラスなら超音波で割れそうだ。


「ひゃはっぁああああ!? ぴきゃぁぁあああ!」


 生まれたてのプテラノドンみたいな声だな、あいつ。


 ただ、悲しいかな、オッサンどもの視線は絶妙なS字のラインを見せつけるように椅子に腰掛けるノーマに釘付けだけれど。


「じゃあ、ノーマ。軽めで行くぞ」


 確認を取って、優しく足つぼを開始する。

 軽くこりをほぐして――


「ぁ…………んん。気持ちいいさね」


 ぐっすり眠れるように、腸関連のつぼを押して――


「そっ……こ、は…………ちょっと、痛い……さね……っ!」


 そして、最も疲労が溜まっているであろう、肩、首、眼精疲労のつぼをじっくりと丹念に揉み上げる。


「んんっ……くっ…………くふぅ……んっ」

「「「ノクタァァァァアーーン!」」」


 今ここに存在するすべてのメンズの心が一つになった。

 言葉の意味はよく分からんが、なんとなくそう叫びたくなる瞬間だった。




 ――みたいなことがあり、俺はエステラとナタリアに呼び出しを喰らった。


「風紀が乱れる」


 お叱りを受ける俺。

 俺はまっとうに足つぼをしているだけなのに。


 叱られる俺を見つめる瞳は、「まぁ、仕方ないよなぁ」みたいな同情が四割。「大丈夫、それでもオレたちはお前の味方だぞ!」みたいな熱い視線が六割くらいか。


 一通り足つぼを終えた後だったので、俺のマッサージを受けた女性たちも「あんな卑猥なの、許せないわ!」みたいなことは言わなかった。

 ちょっと我慢できずに声を漏らして赤面してしまった女性客もいたしな。

 一応、俺に悪意がないことは、この場にいる者たちには伝わっているだろう。


 だから、叱られているとは言っても、非難されているのではなく、何か対策が必要だと言われている、そう見えているだろう。


「まぁ、足つぼをされると、思わず声が出ちゃう気持ちは分かるけどね」

「「「ですよね!」」」

「いや、君たちのは声が出るっていうか、悲鳴を上げてただけだから、ジャンルが違うよ……」


 エステラの言葉に全力の同意を示したのは、ジネットの手によって人生で初めて級の激痛を味わわされた男たちだ。

 筋肉ムキムキのマッチョメンが目尻に涙の粒を浮かべている様はなかなかにシュールだった。


「冷え性や便秘に悩んでいる女性は多いからね、足つぼは是非やってもらいたいところだけれど、こんな大勢のいる前で艶っぽい吐息を聞かれるのは恥ずかしいんじゃないかな?」

「いや、俺はめっちゃ楽しいけど?」

「君みたいな男がいるから恥ずかしいんだよ、女子は!」

「「「オレたちも全然ウェルカムです!」」」

「ごめん、他区の領民でおそらくほとんどの人が今日初対面だけど――うるさいよ、エロスの塊!」

「「「ぃやっふ~い!」」」


 エステラに罵られてオッサンたちのボルテージが最高潮だ。

 ……四十二区より酷いな、このオッサンどもの病気は。


「ヤシロ様、エステラ様。一つ、提案させていただいてよろしいでしょうか?」


 ナタリアが静かに観衆の前に進み出る。

 前に出てきたメイド姿の美しい女性に、男女問わず視線が集まる。


「ぁ……はぁ~ん」


 視線を独占したところで、S字の『しな』を作って艶っぽい吐息を漏らすナタリア。

 男が数名、直撃を喰らって地面に倒れ込んだ。


「簡易的な小屋を作って、外部から見えないようにしてはいかがでしょうか?」

「じゃあ真っ先に君を閉じ込めるよ、その簡易的な小屋にね!」


 この中で一番害があるのは、間違いなくこいつだからな。

 レジーナがいないと際立つなぁ、こいつの暴走ぶりは。


「ウーマロさんもいますし、デモンストレーションは表でやって、お客様の時は個室の中ということにすれば女性でも体験しやすいのではないでしょうか?」

「そうだね。足つぼはもっと広めたいし、一人でも多くの人に体験してほしいんだよね」

「まぁ確かに、子連れや旦那連れだと、艶っぽい声が出ちまうってのは困るか」


 俺が冗談めかして言うと、何人かの奥様が「うんうん!」と頷いていた。

 あの奥様たちは、やってみたいけれど恥ずかしいから今回は見送った連中なのだろう。


「じゃあ、明日は小屋を作ってもらって、その中でやるか」

「その方がよいでしょう」

「じゃあ、今回やってみたかったけど遠慮しちゃったみんなは、是非クーポン券を使って体験してみてね。この『リボーン』を買うと、足つぼが一回無料で受けられるクーポン券の他に、いろいろな割引が受けられるお得なクーポン券がついてるからさ」


 テレビショッピングよろしく、手に『リボーン』を持ってにっこりと売り込むエステラ。


「この商売上手め」

「そのためにここまで来たんだからね」


 そんな俺たちの会話を聞いて、その場にいた者たちが笑う。

 そして、興味を示した者たちが『リボーン』を購入していく。

 おぉ、すげぇ! 飛ぶように売れていく!


「すごい売れ行きですね」


『リボーン』を買う列を捌いていると、口周りがもこっとした毛に覆われている小柄な女性がそんなことを言ってきた。


「おかげさまでな」


 そう返事をすると、小柄な女性は何も言わず、小さく頭を下げて俺の前から離れていった。


「三部もらえるか? 職場のヤツらの土産にするんだ」

「お、もしかして三十八区から?」

「三十九区だよ。午前も見に来たんだぜ」

「そうか。楽しんでってくれよ」

「おう!」


 ――と、そんな会話をしながら、俺はずっと視界の端に先ほどの小柄な女性を捉えていた。


 やっぱり来てたか。


 あの小柄な女性は客じゃない。

 客なら「売れ行き」なんてもんは気にしない。

 言うとしてもせいぜい「すごい人気ですね」くらいだ。

 商品が売れている様を見て利益に思考が飛んでいくのは同業者――その中でも敵対関係、ライバル関係にあるヤツである可能性が極めて高い。

 自分と相手を常に比較している証拠だ。


 そして、俺が「おかげさまで」と言った時の、あの眼。

 あれはどう見ても好意的なものではなかった。


 あの女。

 情報紙発行会の関係者か……ウィシャートの寄越した諜報員か。


 どっちにせよ、こちらの情報は向こうに伝わるのだろう。

 しっかり伝えておけよ、「領主がうっかり色っぽい吐息を漏らしたせいで、三十五区では小屋を作ることになった」ってな。



 エステラが色っぽかったのは計算外だったが、もともとここでのデモンストレーションにはノーマを使うつもりでいた。

 ノーマにもその旨を説明してある。

 だから、今回は必要以上に色っぽくしてもらったのだ。足湯からずっとな。


 そうして、領主とナタリアから注意を受け、上からの命令で簡易的な小屋を作ることを義務づけられる。

 そんな流れだったのだ。




 これで、目隠しを作れる。




 ウィシャートの諜報員が見ている前で堂々と、ルピナスと内緒話をするための目隠しがな。






 三十五区に着く頃には、空はすっかり真っ暗だった。


「長旅お疲れ様です! みなさんのために足湯を用意しておきました。どうぞ、ゆっくりと疲れを癒やしてください」


 三十五区の大工たちが協力して巨大な足湯を作ってくれたらしい。

 水の重さに耐えられるように、いくつかに分かれてはいるが、これだけデカけりゃ全員で足湯を堪能できるだろう。


「ようこそ。歓迎するぞ、カタクチイワシ以外の諸君!」

「あ、ごめん、お湯跳ねちった」

「ぅお!? 貴様! お出迎え用のちょっと高級なドレスが濡れたではないか!」


 わざわざ俺の前まで来て俺だけを除外するからだ。

 そんなに構ってほしいのか、お前は。


 今回はさすがに領主の館というわけにはいかず、宿泊施設が多く軒を連ねる区画に程近い広場を貸してもらっている。

 キャラバンの馬車は今日から一晩ここに置いておく。

 狩猟ギルドのメンバーが寝ずの番で見張ってくれることになっている。


「ふむ。ミズ・ロッセルは必ず来ると思っていたのだがな」

「メドラなら、港の警護をしてくれてるよ」

「ヤシロのお願いじゃ、断れないもんね」


 横からエステラが口を挟んでくる。


 今回のキャラバン隊に同行するつもりでいたメドラだが、……メドラと一緒に外泊とかちょっと怖過ぎたので、うまいこと四十二区に縛りつけておいた。

「俺やエステラがいない間にウィシャートが港を強奪、または破壊しに来ないとも言い切れない。こちらの面子を潰すためなら、ヤツは何をしでかすか分からない。すごく危険なお願いになるが、メドラ、俺たちのいない四十二区を託せるのはお前しかいないんだ!」――てな。


「そうしたら、メドラさん、泣きながら二つ返事でOKしてくれてさぁ……ヤシロ、女性を泣かせるのは罪だよ? きちんとお礼をしておくようにね」

「四十二区も港の工事もお前の管轄だろうが。お前が好きなだけ労っとけよ」


 俺はただ、自分の身の安全を守っただけだ。

 文句を言われる筋合いも、クレームを受ける謂れもない。


 メドラが同行しない代わりに、キャラバンにはアルヴァロとグスターブが同行している。

 街の中ではそうそう目立ったことも出来ないだろうが……暗殺とか怖いからな。ちゃんと見張っててもらわないと。


「領主とギルド長家族は我が館に宿泊してもらうとして、他の者たちはこちらが用意した宿に分かれて宿泊してもらうことになる。各宿には、持てる力のすべてを出して誠心誠意もてなすよう言付けてある。どうか、長旅の疲れをゆっくりと癒してほしい」

「ありがとうございます、ルシアさん。皆を代表して感謝を申し上げます」

「よい。当然のことをしたまでだ」

「感謝の、ダイレクトパスやー!」

「むはぁあ! ハム摩呂たんからのプロポーズ、きたぁ!」

「違うですよ、ルシアさん!?」

「おい、いいのか? お前のとこの大工たちがドン引きしてるぞ?」


 ハム摩呂からの感謝に、痴態MAXなルシア。

 普段三十五区ではそんな姿を見せていないんだろうな、足湯を作ってくれた大工たちがドン引きしている。

 お前らは知らないかもしれないけどな、アレがルシアの本性なんだぞ。


 もしかしたら、素の自分を晒すことで領民との間の溝を埋めようとし始めているのかもしれないが……それにしても最初から飛ばし過ぎだ。それじゃ、溝が埋まる前に高い壁が出来ちまうっつーの。


「エステラに憧れてんじゃないか、ルシアのヤツ?」

「領民との関係については、よく言われてるよ。『どうすればそこまでフレンドリーになれるのだ?』ってね」

「ですので私が『乳ない弄りの賜物です』とお教えしたら、エステラ様にめっちゃ叱られました。理不尽な主に辟易です」

「辟易はこっちのセリフだよ、ナタリア!?」


 まぁ、確かに。

 ここ最近ではご近所のおば様や幼い女の子たちにさえ「今日も体操お疲れ様」とか「おおきくなるといいねー」とか言われてるらしいしな。

 ただ、不思議と男子に弄られているという話を聞かない。

 ……あぁ、そうか。ナタリアがそばで睨みを利かせてるからか。男でそんなことをすれば、もれなくナタリアからキツイお仕置きが課される。――俺以外は。

 なんだろう、この特別扱い?

 素直に喜んでいいものなのか?


「おい、オオバ。なんかいい匂いがするが、これは何の匂いだ?」


 なんでか俺の隣にいるリカルドがまるで知人かのように気楽な感じで話しかけてくる。

 やめてくれる? 知り合いだと思われるから。


「ゼラニウムだよ」

「聞いたことねぇな。でも香りはいいな」

「香りだけじゃねぇぞ。ゼラニウムは皮脂調整作用があるからスキンケアによく使われるんだ。あと、抗菌や止血剤として使われることもあるな。香りにはリラックス効果が望めるから、ポプリにして枕元に置いておくとぐっすり眠れるかもしれない。……ただ、残念ながら豊胸作用はない」

「その情報必要ないよね!?」


 リカルドと反対隣のエステラから文句が入る。

 ……なんで俺、領主に挟まれてるの?


「お前は花なんかにも詳しいんだな。生花ギルドに惚れている女でもいるのか?」

「三つ聞きたいんだが、お前はなんでそうデリカシーないの? なんでそんなにガサツなの? で、なんで俺の隣にいるの?」


 今回は四十一区の連中も大勢来てるんだからそっちに行けよ!

 素敵やんアベニューの状況とか、今回のイベントの感触とか課題とか発見とか、いろいろ話を聞くいい機会だろうが!


「ふふ、カタクチイワシよ。貴様はいつも領主に囲まれているな? 権力者に名を連ねるつもりにでもなったのか?」

「こいつらが勝手に寄ってくるだけだよ」


 そんな寝言をほざくルシアを含めて、左右と前方を領主に囲まれている。

 背後にはナタリアとギルベルタ。

 えぇい、息苦しい! 圧がすごいんだよ、お前らは。


「ナタリアは足湯に入らなくて平気なのか?」

「お気遣いありがとうございます。ですが、今は警戒を怠るわけにはまいりませんので」


 まぁ、怪しいヤツもいたしな。


「なんだ? 両隣に女を侍らせていないと不満なのか、カタクチイワシ? ギルベルタは貸さぬぞ」

「んなこと言ってねぇだろうが」

「顔に書いてあるぞ」

「え、マジか? エステラ、俺の顔に『リカルド暑苦しい、もうちょっと向こう行けばいいのに』って書いてあるか?」

「うん、書いてあるね」

「話変わってんだろうが!? ったく、これでいいかよ」


 冗談なのに、ちょこっと距離を空けるリカルド。

 そのちょこっと空いた隙間に、ルシアが割り込んできやがった。


 狭ぇよ!?


「どうだ? 嬉しいだろう?」

「そうだな、ここが足湯じゃなく混浴風呂だったら喜びの舞でも踊ってやるよ」

「裸でか? それは見苦しいな」


 楽しそうに笑い、ルシアはギルベルタに靴を脱がせてもらっている。

 マジで入るつもりかよ……三十五区の大工があわあわしてるぞ? いいのか?


「……で、どうだった?」


 靴を脱ぎながら、小さく、それでいてとても鋭い声でルシアが言う。

 あぁ、そうかい。それが目的だったわけか。


「……いたな。少なくとも、情報紙の関係者が一人」

「では、もう一人や二人は潜り込んでいるであろうな、ウィシャートの子飼いが」

「だろうな」

「手は打ってるのか?」

「まぁな」

「なら、よい」


 ひとしきり情報を聞き出し、ルシアが何事もなかったかのように湯に足を浸ける。


「あぁーごくらくごくらく!」

「オッサンか!? 声、太っ!?」


 あ~ぁ、三十五区の大工が白目剥いてらぁ。


「そうそう。ジネぷーよ」

「はぁ~い!」


 ジネットは、俺たちとは違う桶で、マグダやロレッタと一緒に足湯に浸かっている。

 今日一日離れたところにいたから、三人で互いに甘え合っているのだろう。

 陽だまり亭のブースを手伝ってくれていたハムっ子たちも一緒だ。


「シラハがな、今夜は是非とも陽だまり亭の者たちを招待したいと言っておったぞ」

「本当ですか。嬉しいです。では、みなさんでお邪魔させていただきます」

「うむ。そうすればシラハも喜ぶであろう。――ただし貴様はダメだ、カタクチイワシ!」

「なんでだよ」


 ぐるんっと、こちらに般若のような顔を向けるルシア。


「あれだけの女子が宿泊する場所に、貴様のようなケダモノを放てるものか! 我が屋敷で厳重に拘束してくれる! 貴様と、ハム摩呂たんを!」

「ギルベルター! このケダモノ、厳重に拘束しといてくれるか?」

「心得た、私は。その命令を」


 お前だ、危険なのは。



 ――と、いう体で、俺はシラハの館へ宿泊しない理由を作る。


 シラハの館にはオルキオがいる。そこに俺が宿泊すれば、何かしらの情報を聞いたかもしれないとウィシャートに悟らせてしまう。


 あくまで、明日ルピナスと会うのは偶然であると装う必要がある。

 下手に勘繰られそうなことはことごとく潰していった方がいい。


「俺は、まぁ、しょうがないからお前の館に泊まってやるが、ハム摩呂はシラハのところに預けるぞ」

「なぜだ!? 抱っこしてはすはすくんかくんかしながら眠りたいというのに!」

「だからだよ!」


 変態が正体をさらけ出し、三十五区の大工が泡を吹いて倒れたところへ、ちゃぷちゃぷ~っとのんきな波音を立ててハム摩呂が泳いできた。


「はむまろ?」

「なんで足湯に全身浸かってんだよ、お前は?」

「あったか~い!」

「そんなところに浮かんでると、踏むぞ~」

「ぅきゃ~!」


 足を持ち上げてゆっくり踏みつけようとすると、ハム摩呂がするする~っと泳いで逃げていく。

 エステラも面白がってハム摩呂を踏む素振りを見せる。というか、この桶にいる者みんながハム摩呂を踏もうと足を持ち上げる。が、ハム摩呂は器用に足の間を潜り抜け逃げ回る。さすがロレッタの弟。泳ぎが気持ち悪いくらいにうまい。


「うはぁあ! ハム摩呂たん! あれは捕まえたら持って帰れるのだな!?」

「そんなルールはねぇし、捕まるのはお前の方だ!」


 ドレスの裾をびっしゃびしゃに濡らして足湯の桶の中を、ハム摩呂を追いかけて右往左往していたルシアが、ギルベルタに首根っこを掴まれて強制退場させられていく。


 三十五区の大工たちは、ピクリとも動かなくなっていた。


 今日が、ルシアのもう一つのバースディかも、しれないな。

 よかったな、変態領主。

 それで領民とフレンドリーになれるかどうかは、知らんけどな。






 さぁ、細工は流々。

 あとは仕上げを御覧じろ――と、さっさと眠りにつくはずだったのだが。


「起きろ、カタクチイワシ」

「せめて『起きてるか』と聞いてほしかったよ」


 ルシアが、俺の寝室に侵入してきやがった。

 気心が知れた面子しかいないとはいえ、ハビエルやリカルドなんかも泊まっている館で、夜中に男の部屋に忍び込んでくるんじゃねぇよ。

 お前はそういうの人一倍敏感に防いでいかなきゃいけない立場だろうに。


「随分大胆な夜這いだな」

「ふん。寝言は寝てから言え」

「じゃ、おやすみ」

「寝るな!」

「どっちだよ!?」


 眠いんだよ、こっちは。

 一日中歩き続けて、働き続けてたんだからな。


 まぁ、こんな夜中にわざわざ人目を忍んで会いに来たということは、何か伝えたいことがあるってことなんだろうけれど。


「ウィシャートの件で何か情報でも掴んだのか?」

「いや、特にはないな」

「じゃあ、何しに来たんだよ!?」

「眠れないので恋バナでもしようかとな」

「修学旅行か!?」


 修学旅行がどんな言葉に翻訳されたのか知らんが、ルシアは笑ってベッドのそばまでやって来た。

 残念ながら、桃色な雰囲気など微塵も感じさせない空気で、な。


「足つぼというのは、大層気持ちがいいらしいな」

「あぁ。明日、ジネットにやってもらうといい」

「ハビエルが泣いたと聞いているぞ」


 ちっ!

 誰だ、情報を漏洩しやがったヤツは!?

 ルシアが泣き叫ぶところが見られたかもしれないのに!


「貴様はうまいらしいな、カタクチイワシ」

「痛くも出来るぞ。泣かしてやろうか?」

「そうすれば、給仕と衛兵がここに駆けつけるだろうな。不本意ながら、三十五区の領主として迎え入れることになるぞ」


 そう思うなら、不用意な行動は控えろと言いたい。言い聞かせたい。


「日頃の感謝を込めて私を労える、そんな機会を貴様にくれてやろう」

「素直に『興味があるからやってください』と言えんのか、お前は」

「ほれ、無駄口を叩いていないで、早くするのだ」


 ……ったくもう。


 足つぼをやるまで絶対帰らないと踏んで、俺はベッドから這い出す。

 ……ちっ。寝間着を見てもうろたえる素振りすら見せやがらねぇ。立場上、そういう隙は見せないように訓練されてるんだろうな。


 椅子に腰かけ、こちらへ向かって足を差し出すルシア。

 う……、めっちゃ細くてめっちゃ長い。肌も白くて綺麗な脚だ。くるぶしからふくらはぎにかけて「べろぉ~!」って舐めたら投獄だろうか? ……極刑だろうな。


 足つぼのために、ルシアの前に片膝をついてしゃがむ。


「ふふん。こうして貴様に傅かれるのは悪くないな」

「言ってろ」


 持ち上げられたルシアの足を太ももへと乗せ、足首を回して筋を伸ばしてやる。

「お、……ほぅ」と、感心したような声を漏らすルシア。

 こうして筋を伸ばすだけでも結構気持ちいいだろ?


「足つぼは悪い部分のコリをほぐしていくんだが……残念ながら『性根』のつぼはないんだよなぁ」

「必要なかろう。そこは悪くないのでな」

「お前、もうちょっと自分のこと見つめ直せよ」

「自慢になるが、第三者からの評価も上々でな」


 口の減らないヤツだ。

 だが、それでいて結構気は遣っているようで、胃腸付近がゴッリゴリに凝っていた。

 ストレス抱えてるなぁ、こいつ。

 ここを『ぐりっ!』っとしたら、ルシアの絶叫が聞けるのだろうが……衛兵につまみ出されるのは御免だ。今日は疲れたからベッドで朝まで寝たい。


「じゃあ、始めるぞ」

「うむ」


 少々癪だが、真面目に、気持ちのいい方の足つぼをしてやる。


「ほぅ…………ん、……なかなか……」


 何か、余裕をもったコメントをしようとしていたっぽいルシアだが、徐々に口数が減り、「うん」とか「ふむ」しか言わない時間がしばらく続き、最後にはただ呼吸の音がするだけになっていった。

 結構気持ちがいいらしい。

 やっぱり、相当疲れが溜まっているようだ。腰も肩もガッチガチだ。

 何よりストレスで内臓がいじめ倒されているようだ。


 こいつも、結構骨を折ってくれてるしなぁ……


 労いの気持ちがほんのわずかだが芽生え、一層丁寧にコリをほぐしていく。

 じっくり、ゆっくり、たっぷりと――


「ぁ、そこ…………ん…………ふ……んんっ!」


 思わず大きな吐息が漏れ、その瞬間「ばっ!」っとルシアの足が引っ込んでいく。

 顔を上げれば、ルシアは両手で口を押さえ、首から上を真っ赤に染め上げていた。


「も、もうよい! ……十分だ」


 勢いよく立ち上がり、スカートの裾を払い、足早に窓辺へ向かって真っ暗な空へと視線を向ける。

 室内の明かりに照らされ、窓ガラスにはルシアの顔が映り込む。

 ガラスに映ったルシアの瞳が、ちらりとこちらに向けられる。


「……エロクチイワシ」


 お前がやれっつったんだろうが。


「ウチの給仕を数名預ける。しっかりと足つぼの技を仕込むように」

「素敵やんアベニューに行け」

「そこのマッサージ師は貴様の弟子であろう? なら、腕のいい方に教わるのが効率的というものだ」

「こっちの負担が増えるんだよ」

「教えなければ、貴様の部屋に忍び込むぞ」

「淑女が使う脅し文句じゃねぇよ、それ」


 危険なメンズならウェルカムしちゃうぞ。


 なんにせよ、足つぼは気持ちよかったらしい。

 もっとじっくり味わいたいようだ。

 ジネットに講師をやらせてみるか。被害者はルシアだけに限定されるし。うん、そうしよう。


「はぁ……。ところで」


 一呼吸のうちに、また雰囲気をがらりと変えるルシア。

 まだ若干熱の残る頬を完全無視して、きりっと表情を引き締める。


「準備は万端なようだが、うまく誘い出せるのか?」


 ナタリアからギルベルタへと情報は伝達され、ルシアにも作戦は伝わっているはずだ。

 ルピナスと自然に会うために、敢えて俺をオルキオから遠ざけ、足つぼは小屋の中で行なうよう『俺以外の者からの指示』で決定された。


「受け入れ態勢が出来ていようと、肝心のルピナスが足つぼに興味を示さなければ、貴様の前には現れまい?」

「その点は大丈夫だ。ちょっと伝手があってな、そいつがきちんと連れてきてくれるはずだ」

「ほぅ? それは私の耳には届いておらぬな。確かなのであろうな?」

「あぁ。ルピナスの旦那が、ちょうどいいポジションの人間だったんでな」


 調べてみたら、なんとビックリ、四十二区に縁の深い人物だったのだ。

 なので、打ってつけの特使を送っている。明日には、きちんと連れ出してきてくれるだろう。


「そうか。なら、よい」


 ルシアも心配性だな。

 それが気になって、わざわざ夜中にこんなところまで出向いたのか。


「会うだけ会って、情報が得られればラッキー。なきゃないで、別の手を考えるからそれでもいい。そんな軽い気持ちでいるから、そう心配すんな」

「ふん、心配などしておらぬ」


 いつもの強気な表情がこちらを向いて、――らしからぬ柔らかい笑みを浮かべる。


「貴様なら、どうせうまくやるだろうからな」


 ……他区の領主に変な期待を背負い込まされるのは不本意なんだがな。


「うまく丸め込むのだぞ。なんなら、たらし込むでもよいぞ、得意だろう?」

「誰が……。人のもんには手を出さない主義でな」


 人妻は倫理的にアウトだし、……その人の旦那さんは、俺の情報が確かなら相当ヤバい人物だ。

 逆鱗に触れれば――洗われ(・・・)かねん。くわばらくわばら。


「何度か会ったことがあるが竹を割ったような気持ちのいい人間だぞ、彼女は」

「俺も、似たような情報を得てるよ。もっとも、情報提供者はルピナスの素性をまったく知らなかったみたいだけどな」


「えっ!? オッカサンって、貴族だったのか!?」って驚いてたな。


「ルピナスが、デイグレアに取って代わって三十区領主になってくれれば、こちらとしては理想的なのだが……彼女はダメだな。領主の器ではない」

「素行に問題でもあるのか?」

「いや。身内びいきが過ぎるのだ。オルキオの廃嫡の影響もあるのだろうが、家族を捨てるという行為に嫌悪感……憎悪と言ってもいいくらいの感情を持っておってな。そのせいか、家族に注ぐ愛情がいささか重いのだ。娘は苦労しておるだろうな」


 苦笑するルシア。

 愛情の重い母親か……確かに大変そうだ。


「故に、ルピナスは領主には向かぬ。おそらく領民よりも家族優先になってしまうだろうからな。それでは街は回らぬ」


 資質ってのは、割と重要だったりするからな。


「そういう意味では、オルキオの方が領主に向いておるかもしれんな」

「オルキオが?」

「うむ。自己の殺し方も知っておるし、駆け引きもうまい。何より――ゆずれないものを一つ、しっかりと持っておる。そういう人間は、いざという時に強さを見せつける。まぁ、年齢が年齢ゆえに、今から領主になるのは無理だろうがな」


 惜しい人材だと、ルシアは言った。

 オルキオって、貴族的には評価が高いんだな。

 だから、ウィシャート家も娘の教師役に選んだのかもしれないな。


 ただ、オルキオはゆずれないものを絶対にゆずらない性格ゆえに、実家と摩擦を起こしてしまったけれど。

 領主に向いていると言っても、あくまで『ルピナスよりかは』って一文が頭に付くのだろう。


 そう考えると、エステラはよくやってるよな。


「大変なんだな、領主って」

「あぁ。代わってやろうか?」

「いらんわ」


 誰がそんな面倒ごとを好き好んで抱え込むかっての。


「私が知る中で、一番領主に向いているのは貴様なのだがな」

「領主権限で、上半身裸ん坊政策を推し進める所存だが?」

「はっはっはっ! 残念だったな、三日で打ち首か。貴様らしい最期だ」


 領主クビどころか、クビ跳ねられちゃうのかよ。

 恐ろしいな、領主ってのは。絶対ならねぇ。


「まぁ、しっかりやれ」

「おぅ。お前もな」


 立ち上がり、ドアへ向かいかけたルシアがこちらを振り返る。


「『お前もな』? 私に何を頑張れというのだ」


 分かっていないルシアに、親切な人の仮面をかぶって教えてやる。

 ドアの向こうを指さして。


「怖ぁ~い給仕長からの、お・仕・置・き☆」

「守ってほしい思う、節度を、ルシア様には」


 ドアの向こうに、ギルベルタが立っていた。

 ルシアをしっかりと拘束するための荒縄を持って。


「待て、ギルベルタ!? これは違う! 誤解だ、ギルベルタァー!」


 深夜、館中に響くルシアの声を子守唄に、俺は朝までぐっすりと眠った。






 三十五区の大通り近くの広場に所狭しと様々なブースが設置され、イベント会場は近隣区の領民を含めた大勢の人で賑わいをみせる。

 早朝の準備の段階から、すでに物凄い人だかりが出来ていた。

 聞けば、昨日イベントを見た者たちも、もう一度参加したいと遠路はるばるやって来たらしい。

 なんなら、四十区から三十五区までの領民がここに押しかけている状況だ。


 ……あ、訂正。

 三十四区と三十三区、二十四区の連中も来ている。


 こんな近くまで来ているのにトレーシーがエステラに会いに来ていないのは、ジネットの足つぼブースがあるおかげかもな。


「「「師匠ぉ~! 再戦、お願いしますっ!」」」

「あ、みなさん。どうですかぁ~? 昨日はよく眠れましたかぁ~?」

「「「はい! ここ十数年で一番の心地よい目覚めでした!」」」

「それはよかったです」


 昨日、足つぼに悶絶していた大男たちが暑苦しい熱量で詰めかけている。

 ジネットは「やっぱり、足つぼは健康にいいんですね」なんて満足そうだが――いや、『再戦』って言われてるからな?

 健康にいいマッサージは『戦』じゃないから。

 なんだろう、都合のいいところしか聞こえてないのかなぁ?


 ねぇねぇ、ジネットさん?

 なんで足つぼ関連になると『闇』が濃くなるの?


 今回は、デモンストレーション要員は必要ないかと思ったのだが――


「今日はオレが挑戦するだゼ!」


 アルヴァロがめちゃくちゃやる気になっている。

 まぁ、あと数分もすれば悲鳴を上げていることだろう。


 まぁ、いいか。そんなに待たせる必要もない。

 今回は順番待ちのドMな顧客がたくさんいるようだし、見物客も多い。

 サクサク消化してしまおう。


「ジネット。まだちょっと早いけど、今日は客が多いし、俺は夕方には帰りたい。さっさとアルヴァロを葬ってやれ」

「葬るだなんて。くすくす」


 いやいや、ジネットさん。

 それを冗談だと思っているのはあなただけですからね?

 俺だってちょっと敬語になっちゃってるしね。


「では、アルヴァロさん。こちらへどうぞ」

「あ、そういえば今日からは室内なんだっけな。じゃあお前ら、ちょっと待ってるだゼ! オレは、勝って戻ってくるだゼ!」


 なんでそんな嘘吐くのかねぇ……

 メドラ、ちゃんと指導してやらないと、有能な若手を失っちまうぞっと。



「ぅにゃぁぁぁあああああっ!」



 初めて聞くような、『に』に濁点をいくつも付けたみたいな悲鳴が個室から響いてくる。

 ネコ踏んじゃってもそんな悲鳴は出さねぇだろってくらいの絶叫だった。


「…………オレ、調子に乗ってただゼ……もっと、修行、頑張るだゼ……」


 アルヴァロが鼻から下をネコ化させて、耳をぺたーんと寝かせて個室から出てきた。ドアのそばで膝を抱いて、まるくなってしくしく泣いている。

 なんだ、お前のそのへこみ方は!?

 わざとか!?

 ほらみろ、狙ったかのように女子たちにグッサグサ刺さってんじゃねぇか!

「やだ、あの子可愛い~」とか言われてんじゃねぇか!

 ズルいぞ、お前!

 もともとショタ心をくすぐりそうな少年顔のくせに、泣く時は獣化するとか! 剣道の試合で拳銃使うくらい卑怯だろ、それ!


「ママ、マグダ、軍師に続いて、オレが越えなければいけない人が出来ただゼ……その日まで、姉さんの身はオレが守るだゼ!」


 おぉ、なんか物凄ぇ頼もしいボディーガードが誕生したな、ジネット。

 そいつに餌付けしてみろ。絶対忠実な騎士になってくれるから。

 しかも、マグダ情報によれば、アルヴァロは恋愛とかさっぱりなタイプらしいし、うんうん、戦いと狩りに夢中なお子様なんだな。

 よし、ジネットの護衛を許可する。

 今回個室だからちょっと心配だったんだ。しっかり守れよ。


 あと、お前が手を出そうものなら……メドラとマグダをけしかけるからな?


「あの、アルヴァロさん、大丈夫でしたか? 飛び出していかれたので驚きました」

「あぁ、大丈夫だゼ! ちょっと、ママの拳骨に匹敵する痛さに驚いただけだゼ」


 えぇ……そんなになの?

 じゃあ、ジネット、魔獣を足つぼで倒せるじゃん。


「うふふ。大袈裟ですよ。でも、痛いのは不健康だからなんですよ。まずは、食生活を改善しましょうね」

「はい! するだゼ!」

「たまには陽だまり亭にも食べに来てくださいね」

「通うだゼ!」

「「「待て待て待てぇ~い、白トラ! 師匠の微笑みを独占しようなんざ、許されざる行為だぜ!」」」


 列に並んでいたドMガチムチメンズたちがアルヴァロの周りに詰め寄り抗議する。

 いつの間にこんなにファンを作ったんだよ、ジネット。


「うふふ。みなさん、足つぼを気に入ってくださったようで、嬉しいですね、ヤシロさん」


 いやいやいや……

 すごいなお前の目。曇りガラスでも一枚噛ませてるの? なのに世界がキラキラ輝いて見えてるんだね。

 えっと、まぁ……明日以降、マグダとロレッタにしっかり見張っておいてもらうようにしよう。


 あぁ……明日、客が増えそうだ。



 俺たちのフライング気味な足つぼでの絶叫を合図に、他のブースでも「じゃあこっちも始めるか」と営業が開始され、待ち詫びていた客が一斉になだれ込んでくる。

 やはり、人気はスイーツとファッションやメイク関連だ。


 そんな中、人混みをかき分けてこちらへ一直線に駆けてくる一行がいた。


「おぉ~い! ヤ~シロ~!」


 光を反射させる紫の長い髪を揺らし、デリアが駆けてくる。

 その後ろには、デリアよりもデカい大男がついてきている。

 短く刈り込まれた茶色い髪の中から、白くもこもこした耳が覗いている。

 クマ人族……いや、キツネ人族か?

 獣特徴が薄めな大男は少し不安そうに、先行するデリアの背中に見守るような視線を注いでいる。


「紹介するぞ。これがあたいのアンチャンだ!」

「あ、初めまして、だな。あんたがヤシロさんか。デリアが世話になっているようで、ありがとうな」


 シロ耳の大男は、耳と同じ色の白い眉毛とアゴヒゲを生やしており、彫りが深くてたくましそうに見える。

 そんなたくましい顔を不安げに歪ませて優しげな笑みをこちらに向けてきた。

 なんというか、クラスで恐れられてるヤンチャな男が、妹には弱い――みたいな雰囲気だな。

 デリアは『アンチャン』と呼んでいるが、本当の兄妹ではない。デリアは一人娘だしな。


「オレは、タイタ・オルソー。デリアの兄貴じゃなくて――」

「聞いてる。デリアの親父さんの弟子なんだって?」

「あぁ。親方には死ぬほど世話んなった。恩人なんて言葉じゃ足りない。オレの細胞のすべてが、親方の意志を引き継いでるんだ」


 すげぇ心酔ぶりだ。


「だからこそ悔やまれる。なんで親方があんな最底辺の区でくすぶって、あんな若さで――っ!」


 バチコーン! と、手のひらに拳を打ち付けて恐ろしい音を鳴らすタイタ。

 ……うん、悪気はないはずなんだ。はず、なんだが……最底辺って。


「ヤシロ。アンチャンは弟子じゃないぞ。一番弟子なんだ! あたいより強いんだぜ! な、アンチャン!」

「おぅ! 今でもデリアには負けねぇぞ!」

「じゃあ、手合わせするか!?」

「おう! 来い!」

「「やるならよそでやれ!」」


 デリア×2のパワーで暴れられたら、ここら辺一帯が更地になるわ!

 と、二人を止めようとした言葉は、俺とは違う女性の声と綺麗にかぶった。


 声を上げたのは、デリアに似た鮮やかなパープルの髪をした、美しい女性。

 年齢はそれなりに重ねているが、その時間の積み重ねが老化としてではなく熟成という感じで美しさに深みを出している――そんなことを思わせる美女だった。

 野性味溢れる力強い眼光と、ただ立っているだけで圧倒されるほどの気品を併せ持つ不思議な魅力を纏っている。


 この人が――ルピナス。


「あんた。デリア」


 張り上げた先ほどの声とは違い、静かな、それでいて鼓膜にはっきりと伝わる声でルピナスが二人の名を呼び――


「ふんぬっ!」


 ゴッ! ガッ! と、二人の脳天に拳骨を一発ずつ喰らわせた。




「周りの迷惑考えろって、なんべん言わせりゃ気が済むんじゃい!? 学習せぃ!」




 その怒号は、周りに居た関係ない者たちにまで『気をつけ』を強要するくらいに迫力満点で、かくいう俺も思わず「ぴしー!」っと気をつけしてしまった。


 っていうか、身長差をカバーするためなんだろうが……めっちゃ飛んだよな、今、あの貴婦人!?



 これが、ルピナス・オルソー――旧姓、ルピナス・ウィシャートとの出会いだった。







あとがき




どうも!

大食いに憧れる、宮地です!


大食い系ゆーちゅーばーさんって、すごいですね。

どこにあんなに食べ物が入るんでしょう?

胃の限界は越えているように思えるので……たぶん、お尻?

丸っこくてたぷたぷしてるので、たぶんあの中に詰め込めるんだと思います。


すげぇ……(;゜Д゜)



さて、

最近ネットでですね、

『結婚相談員が語る、こんな人は結婚できない』

みたいな記事? まとめ?

みたいなのを読みまして、


えぇ、実はネットの記事とまとめサイトの区別がいまいちついておりません。

なんとなく、記事があって、その下にコメントがば~っとだ~っと並んでるのが、まとめ?

記事があって、コメント欄にコメントがば~っとだ~っと並んでるのが、記事?

まぁ、似たようなものですね。


で、結婚相談所の相談員さんと言えば、

先日完結した


『縁結ぶ~なんだか長いサブタイ~』のヒロインが結婚相談所の相談員さんなので、

これは読まねばと思いまして

で、見てみたんですが、


ざっくり言うと、

すご~くご年配の男性が「成人したてのぴちぴちギャルじゃなきゃヤダ!」とか言ってると結婚できませんよ~とか、

女性の方、「年収1000万ない男はゴミ!」とか言ってないで現実見てくださいとか、

そんな内容でした。



……私、ゴミでした。



あと、身長も気にされる女性多いようですね。

私、小さいので相手にされないかもです。

え、身長ですか?

40cmです。

大体ピカチュウと同じくらいです。



女子「やだっ、可愛っ!」



身長と触り心地がほぼピカチュウです。



女子「やだっ、抱っこしたい!」

宮地「ぴかぁ!」

女子「いや、そーゆーんじゃない。冷めるわー」



……難しいですね、乙女心。


プロフィール用紙の職業欄に『ピカチュウ』って書いて提出すれば

すぐにでも結婚相手が見つかるという訳ではないようですね。

登録しようとしている男性はご注意ください!

ここでのお話は、一切役に立ちませんからね!



でも

あぁいう場所って、どれくらい自分の理想を語っていいものなんでしょうか?


ほら、男性にもいろいろいるじゃないですか。


「俺が稼ぐから家のことをお願いしたい!」って人とか

「一緒に働いてほしい!」って人とか

「他には何もいらないから、家にいる時は裸エプロンで!」って人とか!



最後のヤツいないだろうって?

いや、いるじゃないですか!

ほら、皆様の目の前に!



\( ̄▽ ̄)/ワタシデス




もし、相談員さんが知り合いにいたら、

私はどれくらい需要があるのかとか聞いてみたいですね。



相談員さん「では、職業と年収を」

宮地「人に言えない仕事で、年収2億です」

相談員さん「もしもし、警察ですか?」



……通報しないタイプの相談員さんがいいですね。


裸エプロンの相談員さんと、

通報しない相談員さんがいたら、迷わず裸エプロンを選びますけども。

……あれ? 通報覚悟の上で?



裸エプロン相談員さん(メンズ)「では、通報しますね」

宮地「連れて行かれるのは貴様だがな!」(゜Д゜ )クワッ



ちなみに、女性の立場から言って、

めっちゃ色気むんむんなナイスバディメンズ(細マッチョ)の裸エプロンって需要あるんでしょうか?

いえ、ちょっと奥まった本屋さんでフリルエプロンを着けた細マッチョメンズのイラストを見たもので。


まぁ、メンズを後ろから抱きしめるメンズも一緒に描かれておりましたが。



男女ともに需要があるのであれば、

裸エプロンお見合いとか導入してもいいのではないかと……



仲人(裸エプロン)「では、あとは若いお二人にお任せして」

お見合い男女「「いや、お前が裸エプロンなんかーい!?」」




面白いと思うんですけどねぇ……部外者の立場なら!

当事者だったら暴れますけどもね☆



女性誌の特集で、『こんな男はやめておけ、地雷男の特徴』とか『こんな男は逃がすな、いい男の見分け方』とかいうトピックを見かけまして

女性もそういうの気にして読むんだなぁって思いました。


内容は見ていないのですけどね。

だって、手に取りにくいオーラ出まくってるんですもの、女性誌。

立ち読みすらお断り的な?


non-noとかananとか手に取れませんね。

uhun-ahanとかiyan-bakanなら手に取りやすいんですけども!

真面目な雑誌と雑誌の間に挟んでレジへ持って行く所存ですけども!



私が中学生くらいの時にも似たような雑誌がありまして、

モテたくてそういうのを必死に読んでいたクラスメートがいましたっけねぇ。


ただ、今になって思うんですが……


男性記者が書いた『女とはこうだ!』とか『女心を理解する方法』みたいなのって

信憑性ひっくいなぁ……って。


「こんな台詞に、女子はぐっとくるんだぜ」っていうのは、女子の意見として聞かないと意味がないような……

結局、男の理想を語っているだけになりそうな。


女性誌も女性ライターさんが客観的に男を分析しているのでしょうから、

『そういう傾向があるよ~』くらいの軽い気持ちで、参考程度にしておくのがいいのではないかと、オジサンは思うのですよ。


男女ともにね。



ちなみに、昔のバイト先の男性で、

「女性はサプライズに弱い」という記事を真に受け過ぎて、

会う度にサプライズを仕掛けていたら


「もうしんどい!」ってこっぴどくフラれた人がいましたよ。


そのサプライズが、部屋に忍び込んで彼女が帰ってくるまで息を潜めて、帰ってくるなり飛び出して驚かせるとか、若干方向性間違っていたんですけども。


ですので、雑誌の記事は「ほどほどに」読むのがいいですよ(*´ω`*)



私もかつて、

『BANDやろうぜ』という雑誌に載っていた


「コレ吹けるとモテるぜ」という記事を鵜呑みにして、

ブルースハープを買ったことが……

まぁ、小さいハーモニカですよ、ようは。



ハーモニカ「ぷ~……ぴ~……ぴよろひぃ~♪」



モテるはずもありませんでしたね!

まぁ、モテませんでしたね!


ブルースハープを買えばモテるじゃなくて、

ブルースハープを使ってモテそうなことが出来るとモテるんです。

じゃあ、ブルースハープ関係ないじゃん!?


ということに気付けるのは、もっともっと大人になってからなんですよねぇ。



いい思い出です。



とはいえ、若人たちにはせいぜい迷走していただきたいですね。

大人になった時に「あの時さぁ~(笑)」って笑い話になりますから。

甘酸っぱい青春、過ごしてくださいね☆


で、機会があれば、甘酸っぱい失敗談を聞かせてください。

あ、成功談はけっこうです。

向こうに広いスペースがあるので、勝手に爆発しててください。



では、今回はこの辺で。

ちょっと裸エプロンお見合いを検索してこなければいけませんので。



次回もよろしくお願いいたします。

宮地拓海

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[良い点] 失敗談と聞いて、中学の頃ネガティブな男は女子に嫌われるという話を聞いてからポジティブを意識しまくって、面と向かってウザいと言われたことを思い出しました。元来の性格がネガティブ側なので無理は…
[一言] ※ただしイケメンに限る って奴ですかねww 理想は高く!現実は厳しいww
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