260話 来年のことを言うと嬉し涙する
一夜明けると、世界は白銀に埋まっていた。
……また、今年は一段と降ったな。
寒さで日が昇る前に目覚めたのは去年と一緒か。
「……さて。腹を決めるか」
布団に包まっていたいところだが……この布団じゃ結局まだ寒い。
昨晩はジネットが豪雪期用の分厚い布団を出してくれたのだが、寝る時はまだまだ猛暑の名残りが強く汗ばむほどに暑かった。
おまけに水泳後の倦怠感もあり爆睡した。
故に、寒くなったら布団を追加するなどという高等な技は不可能なのだ。
暑い時は無意識で布団を蹴り飛ばすくせに、寒くなっても無意識ってヤツは布団を引っ張ってきてはくれないのだ。融通の利かないヤツだ。
俺の体温で辛うじてほんのり温かい布団ではもはや寒さは凌げない。
ジネットなら、寒くなったら目を覚まして布団をかけ直してもう一眠りとか出来るのかもしれんが、常人にはムリだ。
おそらく、マグダも俺と同じタイプだろう。
俺は、自分用の分厚い布団を抱えて、部屋を出る。
身を刺すような冷気が廊下に広がっていた。
冷蔵庫の中かよ、ここは。
「うぅ……寒っ」
事前にマグダの了承は得てある。
というか、こういう気候の変化の折には見に行ってやらないとマズいことになる。
「入るぞ」
ドアを開けて、小さな声で告げる。
返事はない。分かりきっていることだ。
ベッドに近付くと、やはり分厚い布団はベッドの下に落ちていた。
おそらく、足下に置いてあった布団を蹴り落としたのだろう。
暑いし、邪魔だからな。
で、薄い猛暑期用の布団だけでは寒いので……はは、去年と同じだな。
マグダはベッドのワラの中に埋まって寝ていた。
「……さむっ……さむい…………埋めて」
まったく同じセリフを言われた。
懐かしさすら感じるな、まったく。
「……雪かき?」
「いや、まだ早い。もう少し眠ってろ」
「……今年は、甘い」
「中庭に屋根も出来たし、朝に急いでやる必要がないんだよ。教会への食料も、もう運んであるしな」
マグダが手伝ってくれて、昨日のうちにストーブの設置も終わっている。
「昨日頑張ってくれたから、今朝はゆっくり寝てていい。今は、布団を掛けに来ただけだ」
言いながら、俺の布団とマグダ用の温かい布団を掛けてやる。
「重くないか?」
「……温かい」
「そか」
マグダの頭をぽんっと叩いて、早々に部屋を退散する。
まだ眠たいだろうからな。
「じゃ、ストーブが温まったら呼びに来るよ」
「……ヤシロ」
部屋を出ようとしたところで、マグダに呼ばれる。
振り返れば、布団から顔の半分だけを出して、マグダがこちらを見ていた。
「……マグダは、もう平気だから」
去年のことを思って俺が優しくしていると思ったのだろう。そんな弁明を寄越してきた。
「あぁ。分かってるよ」
お前が大丈夫だというのなら信じるさ。
別にお前に気を遣って優しくしているわけじゃない。
これは、そうだな……
「寝起きのマグダは可愛いとジネットが言っていたからな。二度寝させれば、二回楽しめてお得だろ?」
「……ふむ。それは一理ある」
あるかっつの。
「……そういうことなら、……また、あとで起こしに来ても、いい……」
ワラの音をさせて、マグダが布団に潜る。
さて、さっさとストーブを点けに行くかね。寒くて仕方ない。
俺は布団には包まってないからな。
マグダの部屋を出て、足早に廊下を歩く。中庭に降りる階段の前まで来たところでジネットの部屋のドアが開いた。
「おはようございます」
挨拶をするジネットの口から漏れた息が一瞬で真っ白く染まる。
相当寒いんだな。視覚で確認すると身に沁みるようだ。
「今年も早いな」
「いえ、お寝坊さんですよ」
まだ寝間着だからな。
「今年の雪かきは飯の後にするんだろ? まだ寝ててもいいぞ」
「いいえ。寝ぼけヤシロさんを見る折角のチャンスですから」
なんだよ、そのなんの価値もないチャンスは。
「今は俺の方がシャキッとしてるだろうが」
「いいえ」
嬉しそうに笑って、肩に羽織ったストールの前をしっかりと握って腕を伸ばしてくる。
頬の横を通り過ぎ、耳の横を通過して、ジネットの指先が俺の髪を摘まむ。
「寝癖さんです」
「……寝癖にまで『さん』をつけるな」
「寝癖ちゃんです」
「そうじゃねぇよ……」
腕を伸ばして頭頂部の寝癖をつんつん突き倒すジネット。
そんなもん、いくら突いても直らねぇぞ?
えぇい、こしょばゆい。
「薪ストーブに火を入れてくるから、もうちょっとしたら降りてこいよ」
「いえ、一緒に行きます」
「お前、寝間着じゃん」
「ヤシロさんも寝間着ですよね?」
「俺は、他所行きの寝間着だから」
「寝間着でどちらへ行かれる予定なんですか?」
くすくすと笑うジネット。
俺は、朝のこのくそ寒い時間に服を着替えなくていいように、ちょっと柔らかめの普段着を着て寝たのだ。
これが効率的というものだよ。
「実はですね……」
寒そうにストールの前を合わせて、ジネットが頬を緩めて、白い息を吐きながら語る。
「幼い頃は、わたしはお寝坊さんで、豪雪期の雪かきもわたしが起きる頃にはすっかり終わっていたんです」
「パワフルな祖父さんだな……」
「はい。今思えばそうですね。ですが、幼い頃はそれが当たり前のことだと思っていまして、わたしは寝ぼけ眼のまま雪かきの終わった道を『わぁ~キレイだなぁ~』なんてのんきに考えながら歩いて、厨房へ向かうんです」
今からは考えられないような、朝寝坊するジネットの話。
すっげぇ寒いんだけど、不思議ともう少し聞いていたくなる。
「そうしたら、食堂では薪ストーブが焚かれていて、すごく温かくて、お祖父さんが『おはよう』って言いながら温かいミルクを差し出してくれたんです。それを思い出して、ちょっと懐かしい気分なんです、今」
今、俺がマグダのためにやろうとしているようなことを、ジネットの祖父さんはジネットのためにやっていたんだな。
気持ちは分かるよ。
「正式にここの子になる以前から、豪雪期には泊まりに来ていたんです。お手伝いをしようって。けど、……ふふ、結局お祖父さんがみんなやっちゃうんです」
それがなんだか嬉しくて、そんな祖父さんがジネットは好きだったのだろう。
「全然お手伝いできてませんでした」
「いや、手伝いになってたと思うぞ」
今の俺もそうなんだが。
「お前がいるから、早くストーブを点けてやろうって、朝から雪かきを頑張れたんだよ、きっと」
そうでなきゃ、こんな雪に埋もれたくそ寒い日は午後まで寝ているところだ。
「お前がいたから、祖父さん、雪かきですら楽しんでたと思うぞ」
「……わたしが、いるから」
驚いたような顔をして、少しだけ寂しそうに眼を細めて、そしてにっこりと笑う。
「なら、よかったです」
祖父さんの力になれていた。
それは、幼いジネットにとっては何よりも嬉しくて誇らしいことだろう。
「今年は久しぶりに、雪かきをせずに厨房まで行けますね。あの頃と同じです」
ウーマロが付けてくれた屋根のおかげで、厨房までの道は出来ている。
寝間着姿のまま、寝ぼけ眼で厨房へ行くことは可能だろう。
「じゃあ、もうちょっと寝てろよ。薪ストーブ焚いてきてやるから」
そうしたら、もっと近付くだろう、あの頃に。
今日くらい、甘えたっていいんじゃないか。と、そう思ったんだが。
「いいえ。わたしはもう大人ですから、お部屋を暖かくして待っている立場なんです」
これは、いくら言っても引き下がらないだろう。
バカだなぁ。今行っても寒いだけなのに。
「なんなら、ヤシロさんがもう一眠りしてきても構いませんよ?」
……あぁ、なるほどね。
こんな気持ちなわけか。
こっちがよかれと思って言ったことでも、そうか、こういう気持ちになるのか。
よく分かったよ。
「遠慮しとく。布団はマグダに貸してやったし、こう寒くちゃ眠れる気がしない。それに……ジネットの寝間着姿はレアだからもうちょっと見てたいしな」
「レ、レアだなんて……こんなもの、なんの価値もありませんよ?」
「ん? じゃあ、箔が付くように拝もうか?」
「やめてください。……もう」
ぺしりと、撫でるように二の腕を叩かれる。
どちらも譲る気がないなら、さっさと下に降りて薪ストーブを焚いてしまおう。
どっちが先でもいいから、とにかく早く温まりたい。
「俺が薪ストーブやるから、ジネットは温かい飲み物を頼めるか?」
「はい。任せてください」
役割分担をして、二人揃って階段に出る。
「ぅおうっ!」
「きゃっ!?」
氷で殴られたのかと思うような寒風が全身に襲いかかってきた。
この街の人間にどんな恨みがあるんだよ、精霊神……寒過ぎる。
『加減』とか『適度』って言葉を知らないのか?
「ヤシロさん。階段に雪が積もってませんよ」
俺に言わせれば「最低限それくらいは当たり前に対処しとけよ」って事案なんだが、つい先日まで野ざらし状態だった階段に雪が積もっていないという事実は、ちょっとした感動を俺たちに与えた。
足下に気を付ける必要もなく、滑る心配も、足を踏み外す心配もない階段を降りていく。
地面が見えている。
陽だまり亭の壁に沿うように、雪のない道が出来ている。
屋根、すげぇ!
「例年なら、一時間くらいかかってようやく中に入れるんですよ。去年はもう少し時間が短縮されていましたけどね」
「そうだっけ? 五時間くらいかかってなかったか?」
「そんなにはかかってませんよ。ロレッタさんたちも手伝いに来てくださいましたし」
あぁ、そうだったそうだった。
ハムっ子が来てくれたからあっという間に道が出来たんだ。
で、俺はその間にかんじきとか作ってたんだっけな。
「今年は楽々です」
「ってことは、教会にふわふわのパンを教えておいてよかったってことか?」
中庭の屋根は、ふわふわのアンパンと引き替えに得た権利によって作られたのだ。
「うふふ。そうかもしれませんね。では、パンの作り方を教えてくださったヤシロさんと、屋根を作ってくださったウーマロさんと、引き合わせてくださった精霊神様に感謝をしましょう」
「精霊神にはいらないだろう……」
教会は「知ってる者は教えろ!」的な上から目線で技術だけを『寄付』として強奪していっただけじゃねぇか。
それで、パンの売り上げが爆上がりして利益を上げてんだろ?
司祭や大司教がウハウハしてんじゃねぇのか、今頃。
「今年の豪雪期の保存食は豪華なんだぜ、きっと」
「教会の司祭様やシスターはそのような贅沢をされませんよ」
「どーだか」
信者に隠れて酒に肉に金銀財宝、なんでも手に入れて欲に溺れてるかもしれないぞ~。
「そういえば……」
厨房へ続く廊下に入るドアの手前で、ジネットがふと足を止める。
……いや、だからさ。考え事とか、思い出すのとか、中に入ってからにしないか? 風が寒いんだけど?
「ウーマロさん、今日、来られるでしょうか?」
「来るだろう。さぁ、入ろう」
「いえ、でも、昨日は結局戻ってこられませんでしたし。御夕飯、きちんと食べられたのか心配で……」
お前はウーマロの母親か。
あいつもいい大人なんだ。陽だまり亭で食えなかったからって飯を抜くようなことはしてねぇよ。
「きっと、保存食でも齧ってたと思うぞ。最低限の蓄えくらいはしているだろうし」
いくら豪雪期に陽だまり亭に泊まり込む予定だからといって、なんの準備もしていないとは考えにくい。
あれでも一つの組織をまとめ上げるリーダーだ。
それくらいの計画性は持ち合わせてるだろうよ。
そんなことを考えつつ、なんとな~く嫌な予感がして、薪ストーブに火を入れる前に念のために陽だまり亭の正面玄関を開けてみたら――
『マグダたん……』
雪の上にダイイングメッセージを残して、一人のキツネ顔の男が行き倒れていた。
それも去年見たわ!
つか、ジネットの予想が大当たりで、トラブルに見舞われてあれこれ奔走しているうちに夜になり、家の中を探したが食い物など蓄えてもいなかったウーマロはあまりの空腹に耐えかねて日も昇らないうちに陽だまり亭へと赴き、寒さと空腹によって意識を失い行き倒れていたらしい。
だから、無意識で『マグダたん……』って書くなっつぅのに。
ウーマロを中に引き摺り込んで、大至急薪ストーブに火を入れる。
温かいミルクを飲みながら薪ストーブが温まるのをのんびり眺めようとしていたジネットは「ウーマロさんの前でこんな格好は出来ませんね」と、さっさと着替えに戻ってしまった。
あ~ぁ。ウーマロ、あとで謝っとけよ。
というか……
ウーマロには見せられない寝間着姿、俺には見せられるんだな。
その線引きは……きっと、従業員か否かってところだろうな、きっと。うん。
「はぁぁぁ……生き返ったッスぅ~」
「じゃあ、さっきまで死んでたんだな?」
「マグダたんがいっぱいいる綺麗な河原が見えたッス」
増やすな増やすな。
どんだけびっくりな三途の川だよ。
普通は綺麗な花畑だろうに……え? 「君は、僕にとって美しい花のようだよ」って? やかましいわ。
「ウーマロさん。あり合わせの物ですが、朝食をお先にどうぞ」
「あぁ、ありがとうッス、店長さん」
薪ストーブに張りつかん勢いで引っ付いているウーマロが、若干の涙目で礼を述べる。
顔を背けたままで。
お前、一回ベルティーナに叱られてこい。
まったく。
「やっぱり、何か保存食くらいは置いておくべきッスよね」
「では、美味しい干し肉の作り方をお教えしましょうか?」
「えっと……出来れば、出来上がった物をいただければ、その方がありがたいッス……」
「でも、覚えておくといざという時に役に立ちますよ?」
「陽だまり亭に来られなくなる時、それがオイラの死ぬ時ッスから」
重いなぁ、お前の寄りかかり方。
マグダが陽だまり亭を辞めるかもしれないし、陽だまり亭が潰れる可能性だってゼロじゃないんだぞ?
その時に死ななかったら、お前カエルにされるぞ?
まぁ、この場には俺とジネットしかいないし油断してんだろうけど。
「で、トラブルはなんとかなったのか?」
「え? あぁ、まぁ……なかなか難しいッスね」
どうやら、解決には至らなかったらしいな。
「けど、今慌ててもしょうがないことッスから、豪雪期が終わったらまた初心を思い出して一から頑張っていくッス」
なんだ?
誰かが大ポカでもやらかしたのか?
それで、得意先を大激怒させたとか……まぁ、さもありなんだな。
どーせ、グーズーヤあたりが慣れから来る思い込み作業で見落としでもしたのだろう。
それで担ぎ出される棟梁も気の毒になぁ。
マグダの水着姿、もっと見ていたかったろうに。
「うふふ」
ウーマロと並んで薪ストーブに当たっていると、ジネットが声を漏らして笑い出した。
なんだ? 笑うポイントなんか、あったか?
「ヤシロさん。心配なら聞いてみたらどうですか?」
「ん?」
「『何があったんだろう?』『大丈夫なのかなぁ?』『何か手伝えることはないかなぁ』ってお顔をされていましたよ」
「照明が暗いのかな? 俺の顔がはっきりと見えていないと見える。ランタン点けるか?」
今は、室内にも光るレンガを使った照明器具が置かれている。
単純な構造で、ランタンのような入れ物に光るレンガを入れているだけだ。
日中は軒先にぶら下げて日の光を吸収させ、日暮れと共に室内へ持ってきて照明にする。
光が邪魔になれば、ランタンごと覆う黒いケースに入れてしまうのだ。
薄暗い中でも光を集める『集光レンガ』よりも、こっちの『蓄光レンガ』の方が光は強い。メインの照明と間接照明くらいの差がある。
おまけに昨日は猛暑日だったから、光るレンガはかなり光っているはずなんだが、どうにもジネットの目には薄暗く見えるようだ。
「もうすぐ日の出ですから、ランタンは必要ありませんよ」
嬉しそうな顔で首を振る。
ふん。
まぁ、豪雪期は日照時間が短いから、夜の照明はランタンに頼ることになるもんな。
油は可能な限り節約するに限る。
「あの、ホント、大したことない話ッスから、わざわざヤシロさんの手を煩わせるほどのこともないんッス」
ウーマロが困り眉毛のまま笑顔を見せ、手を振って明るい声で言う。
「こればっかりは、オイラたちの腕前を示すことでしか巻き返せないようなことッスから、地道に、誠心誠意、一つ一つの仕事に向かい合うだけッス」
単純で当たり前のように聞こえるが、それが一番難しいことだ。
持続させていくとなれば、尚更な。
「そうですね。わたしも、まだまだ失敗ばかりですけれど、お客さん一人一人、すべての方に美味しいと思っていただける料理を、一品一品作っていく。それを心がけています」
「ッスね。お客さん相手の技術職っていう意味では、オイラと店長さんは似た業種ッスから、共感できるッス」
「はい。お揃いですね」
ウーマロの表情が柔らかくなった。
薪ストーブのおかげで室内の温度が上がったからか。
先ほどまでの強張っていた表情が、今は随分と穏やかに見える。
本当に、ちょっとしたミスなのかもな。
まぁ、ウーマロが大丈夫だっつってんだから大丈夫なんだろう。
必要になれば、何かしら言ってくるだろうし。
わざわざ出しゃばってトルベック工務店の内情を引っかき回す必要はないよな。
うん、じゃあもう気にしない。
「くすくす」
俺が少しでも黙るとジネットが笑い出す。
何かを勘違いしてんだろうが、いちいち指摘してやるのもアホくさい。勝手に笑ってろ、ふん。
「じゃあ、ウーマロ」
「なんッスか?」
「その『開店前にもかかわらず提供された特別な朝食』の見返りに、何作ってくれる?」
「もう、ヤシロさん」
ジネットに肩を「さわり」と叩かれる。
叩かれるって表現が適当かは定かではないが。
で、いつものようにウーマロが「これ、そんなとんでもない価値があるんッスか!? っていうか、オイラ、大きな浴室作ったばっかりッスよね!?」みたいなツッコミをしてくるのだろう。
ワンパターンなヤツだ。
……と、思っていたのに、待てど暮らせどツッコミが来ない。
ん?
ウーマロ、寝た?
「そうッスね……じゃあ、いっそのこと、二階のリフォームとか、やっちゃうッスか?」
なんか、眩しいくらいに爽やかな笑顔がこっちを向いていた!?
いやいやいや!
違う違う!
これはボケだから!
ジネットの作った飯も、仮に味が最高でも、値段を付けたら50~60Rb程度だから。
お前、500~600円で二階をリフォームするとか、DIY系動画配信者でもやらねぇぞ、イマドキ。
「冗談を真に受けるな。ちょっと引く」
「そうですよ、ウーマロさん。中庭の屋根とお風呂で十分です。これからしばらくはお釣り分として、ウーマロさんにはサービスしないといけませんね」
「じゃあ、無料の水飲み放題の権利をやろう」
「権利になってませんよ、ヤシロさん」
そんなやり取りの中、ウーマロは俺をジッと見つめて――そりゃジネットの顔を見られないから俺しか見るところないんだろうけど、そんなにじっと見んな――少しだけ眉根を寄せた。
「オイラたちが躍進できたのは、陽だまり亭のリフォームがきっかけだったッスから、もしかしたら初心に返れるかと思ったんッス」
初心……
なんか、やっぱり慢心でもあったのかねぇ。
気にするようなことはないと思うんだが……
まぁ、そういうのは体を動かしていればいつの間にかスッキリと腑に落ちていたりするものだ。
「ウーマロ。お前には大仕事が待ち構えているだろう?」
「なんッスか?」
「大衆浴場だ。港の建設までに完璧に終わらせてくれよ」
「あ……そうッスね。オイラ、粉骨砕身頑張るッス!」
「ま、豪雪期明けからだけどな」
「でも、設計図を煮詰めることは可能ッスよね! ヤシロさんもいるし……あ、ベッコもいるじゃないッスか! むはぁ! そういえばエステラさんもイメルダさんもいるッスね! ……キツネ女もいるみたいッスし、これはもはや合宿ッスね! 大衆浴場合宿ッス!」
えぇ、なにその暑苦しそうな合宿。
つか、合宿って……
お前らはお泊まりかもしんないけど、俺はここ自宅だからな?
「そういえば、大衆浴場ってどこに作る予定なんですか?」
「俺は、街門のそばがいいと思ってるんだ」
「イメルダさんのお家のそばですか?」
そこに大衆浴場があれば、門の外で働いてきた者たちの需要が見込める。
全身汗と泥にまみれて働いてきた者たちが、門を越えてすぐ風呂に入れるってのは随分と魅力的だと思うのだ。
それに、あの辺りなら川も近いし、水汲みも比較的楽に行える。
水道をうまく使えれば経営的にも助かるだろう。
だが、エステラは東側の大通りに近しい場所に作りたいと言っていた。
川からは遠いが、東側には空いている土地があることと、風呂上がりの者たちによる酒の需要を見込んでのことらしい。
あと、街門を使用する者たちが宿泊しているのは四十一区だったりするわけで、風呂上がりで宿まで歩くことを考えると、少しでも近い方がいいのではないかと言っていた。
ただし、東側には川がないので水汲みが大変だ。
その辺は水道をなんとか引っ張ってくるか、水路を新たに設けるか、何か手を考えたいと言っていたが……果たして妙案は出てくるのだろうか。
「オイラ的には、どっちにも作っちゃえばいいと思うッスけどね」
「金と工期が足んねぇよ」
大衆浴場を作るなら、男湯と女湯を作らなければいけない。
俺としては、日本の銭湯や温泉のように同じ建物内で風呂場だけ分ければいいと思ったのだが、それにはエステラをはじめ、イメルダやベルティーナが反対した。
なんでも、風呂上がりの濡れた髪をした男女が同じ建物から出てくるのはあまりよろしくないとか、不特定多数の異性に風呂上がりの姿を見せるのは道徳的に問題があるとか……
じゃあ、陽だまり亭で湯上がり姿をさらしてた女子たちはふしだら娘たちなのか?
まぁ、『不特定多数の』ってところがみそなのだろうな。
帰り道で不特定多数に見られるんじゃね? と言ったら、『同じ建物から出てくること』が問題なのだとか。
中で何をやっているか分からないから、らしいのだが……中にも人はいるだろうが。
そうそう覗きや密会なんか出来ねぇっつの。
そんな簡単に覗きが出来るなら……俺は……俺はぁ…………っ!
と、そんなわけで、大衆浴場は男女別の建物を、ちょっと離れた場所に建てることになりそうだ。
あまりに場所を離すと、不公平だと不平不満が出るだろうと予想できるので、ちょっと離れた位置に作るらしい。
じゃあ、同じ建物でもいいだろうに。
「やっぱ両方はムリだな。三棟を2セットも作れねぇよ」
「ん? 二棟ッスよね?」
「何言ってんだよ。男湯、女湯、混浴の三棟――」
「二棟ですね。完成が楽しみです」
ジネットに遮られたー!
こういうスキルは大抵エステラ経由で覚えてくるのだ。
あのぺったん娘め、余計なことばっかり……がるるるぅ!
「ちなみに、ニュータウンに作るという案もある」
「でも、ニュータウンだと、人通りがそこまで多くないッスよね?」
あぁ。
だからこそ、あえてそこに作ってわざとそこに人が集まるようにするという戦略もあるのだ。
何より。
「新しくてオシャレな街で、大衆浴場まであるとなれば、ニュータウンの地価が上がる! 高級住宅地という認識が刷り込まれれば、……高値で売れる!」
土地は高く売ってナンボだからなぁ!
「確かに、滝があるから、大衆浴場の経営は楽そうッスね」
「そうしたら、ロレッタさんたちが喜びそうですね」
「なんでだ? ロレッタの家には風呂あるよな?」
「あるッスよ」
ロレッタの家は、ニュータウン開発の際に一新され、ウーマロたちが建ててくれた豪華な三棟1セットの豪邸だ。
そこの母屋には弟妹が仲良く入浴できる大きめの風呂が作られている。
さすがに全員一緒というわけにはいかないが、幼い連中を年長組が風呂に入れてやれるくらいの広さはある。
窯で沸かす古いタイプの物だけどな。
「でも、あいつら、ほとんど使ってないんッスよ」
「は? なんでだよ?」
「幼いご弟妹は、川に水浴びに行っちゃうそうですよ」
使ってねぇのかよ、もったいねぇな!?
「主に、ロレッタさんや年長の妹さんたちが利用しているそうです」
「年少の弟たちは、中庭で大きなたらいで丸洗いしてるらしいッス」
あぁ、そういえばそんな光景をチラッと見たような気がする。
……なんてこった。風呂を持っていても使いこなせていないヤツらがいるなんて。
「早く、豪雪期が終わんないッスかね」
薪ストーブの火を見つめながら、ウーマロがぽつりと呟いた。
それは、何気ない言葉のように思えて、俺は何も返事をしなかった。
そんなの、よくあることだしな。
ウーマロが朝飯を食い終わり、陽だまり亭のフロアが十分に温まったところで、ジネットがマグダを起こしに行った。
「……おはよう」
ジネットの腕に抱かれ、ストールに包まれたマグダ。
盛大に甘やかされてるな。そこまで耐えられないほど寒くもなかっただろうに、外。
「はぁぁ……寝起きのマグダたんは格別ッス……」
暑い日の寝起きはだらけ過ぎていてちょっとどうかと思う仕上がりだが、寒い日の寝起きは身を縮めて小さく震えていることもありなかなか可愛らしく見える。
保護欲が掻き立てられる。
野生の狼でも、無条件で庇護下に置いてしまうであろう可愛さだ。
ウーマロが一撃で轟沈するのも頷ける。
「……あったかい」
薪ストーブの前を譲ってやると、マグダは背を丸めて特等席で火に当たる。
両手を前に出して、ストーブに向けている。
「ヤシロさんは、大丈夫ですか?」
俺も確かに寒がりではあるが、マグダほどではない。
それに――
「マグダが隣にいれば、ウーマロの悩みも自然と解消するかもしれないだろ」
ウーマロはお気楽な男だ。
好きなものに触れていれば、嫌なことを忘れてしまうような、ポジティブさを持ち合わせている。
もともと技術は本物なんだし、些細な悩みなんかさっさと忘れてしまえばいいのだ。
悪評が付いたとしても、真面目に働いていればそんな汚名は返上できる。
時間が解決してくれることは、時間でなければ解決できないことでもあるのだ。
考えるだけ無駄だ。
自分の技術と、その技術を「いい」と言ってくれる者たちを信じて、自分に出来ることをやり続ける。それしか出来ないものなのだ、人間なんて。
「くすくす……」と、ジネットが俺の隣で笑う。
もう、何も言うまい。何も聞くまい。
ただ、ちょっとだけ抗議の意味を込めて脇腹を突いておく。
「ひゃぅっ……」
声を漏らし、軽く俺を睨んだ後、またおかしそうに笑みを浮かべる。
まったりとした朝の時間。
なんと穏やかなことか。
陽だまり亭の中に朝の光が入り込んでくる。
日が昇る。
窓の外を見れば、一切の遠慮もなくドカッと積もった雪に世界が覆い尽くされていた。
雪は止んでいたが、積もった雪から発せられる冷気なのか、霧や靄といった類いのものなのか、空気中に白い霞が充満していた。
光を浴びてキラキラと輝く粒が空気中に紛れ込んで世界を輝かせている。
ダイヤモンドダストというには小規模だが、十分に幻想的で、温かい部屋の中から眺める分には素晴らしいと称賛できるほどだった。
「ジネット、外を見てみろ」
「へ? ……わぁ」
白い霞の中できらきら輝く光の粒を見つめ、ジネットが感嘆の息を漏らす。
「綺麗、ですね……」
窓に張りつき、外を眺めるジネット。
寒さからか、頬が微かに赤く染まっている。
窓の外を夢中で眺めているジネットを眺めていると、不意にジネットの目がこちらを向いた。
「外に出たら、もっと綺麗かもしれませんね」
「温かい部屋の中から見ているから、そんな余裕な発言が出来るんだよ」
外に出たら、口から出てくるのは「寒いっ!」以外にない。間違っても「綺麗~」なんて言ってられない。
美しい景色というものは、自分の身の安全が確保された快適な環境においてこそ楽しめるものなのだ。
秘境の絶景や、大自然の神秘なんてものは、一部の奇特なカメラマンのたゆまぬ努力の結晶を、テレビやパソコンを介して美味しいとこ取りして楽しむのが一番なのだ。
過酷な環境に身を置くなんて、ムリムリ……
「ちょっと外に出てみませんか?」
うん……お前なら、そう言うだろうな。
「寒いぞ……」
「でも、綺麗ですよ」
反論になってないし、「でも」が生きてねぇよ。
行きたきゃ一人で行けよ……なんて、ジネットに言ったら本当に一人で行っちゃうんだろうな。それも、ちょっと寂しそうな顔をして。
あぁ、くそ。
また藪を突いてしまったか。
……まぁ、ホワイトアウトも怖いしな。
「庭まで、だぞ」
「前の道までお願いします」
ちょっと距離伸びたー!
「……外套、着て行こうぜ」
「はい。昨日のうちに用意してあります」
カウンターの中の外套掛けに俺たちの外套がかけられている。
今年は本当に準備万端だったんだな。……くそ。
「マグダたちは……」
「……ストーブを見張っている」
「じゃあオイラはマグダたんを見つめているッス」
「……だよな」
あいつらはこっちの都合とかどーでもいいもんな。
へいへい。俺らだけで行ってくるよ。
……すぐ戻ろう。秒で帰ろう。そうしよう。
外套を羽織り、嬉しそうな顔のジネットと一緒に外へ出る。
くぉお……ぅっ! 寒い……いや、痛い。
「俺の耳、千切れてないか?」
「大丈夫ですよ。ちゃんとついてます」
赤くなっているであろう俺の耳をそっと両手で挟み込むジネット。
毛糸の手袋が耳を覆って、少し温かい。
そういえば、ジネットが耳当てを作ってくれたんだっけな。
日本でお馴染みのイヤーマフとは違い、毛糸で編んだ、ヘッドドレスのような形状の耳当てだ。
右耳から、頭頂部を通って左耳までを覆い、アゴの下で紐を縛って固定する。
ゴスロリファッションを彷彿とさせる形状のため、俺はあまり使う気がしなかったのだが……これは、四の五の言っている場合ではないかもしれない。
今年は活用させてもらおう。
「あっ、ヤシロさん。見てください」
何かを発見したのか、ジネットがキラキラした目で俺を手招きする。
あぁ、毛糸の手袋が耳から離れる……寒い。冷たい。
「はぁ~」
俺の前で大きく息を吐いたジネット。
口から出た息は白く、雲のようにもこもこと寒い空気の中に広がっていく。
その中で、きらきらと光が反射する。
「息が輝いています」
息の中の水蒸気が一瞬で凍ったのだろうか。
そりゃ寒いわ。
寒風に吹かれて、ほっぺたを真っ赤に染めて、楽しそうに白い息を吐き出してはにこにことこちらを窺うジネット。
なにこの可愛い生き物。
冬、初体験なの?
連れて帰っちゃうぞ。
しかし……もう少し足りない。
そう、冬の美少女には欠かせないアイテムがいくつかあるのだ。
欠かせないというか、あると可愛さが加算されていくアイテムだ。
まふまふ手袋とか、マフラーとか、ニットの帽子とか。
そして、イヤーマフ。
ふわふわのファーで出来たイヤーマフは、美少女の可愛らしさを例外なく四割は上げてくれる。
しかし、ファーの調達が難しい。
アレはさすがに手作りできるもんじゃないし……
あれ?
そういえば、ここ最近『ファー』って聞いた記憶が……
あっ! ウクリネス!
パウラが買って、カンタルチカの手伝いと引き換えにネフェリーに譲った最新アイテムがファーコートだったはずだ。
ってことは、ウクリネスのところにはあるわけか、ファーが。
これは、ちょっと交渉してみる必要があるだろうな。
……とはいえ、豪雪期にわざわざ大通りまで行くのもなぁ。
まぁ、来年でいいか。
「今年は、内職でもするかな」
「何を作るんですか?」
空気中のキラキラを楽しんでいたジネットが、物作りの方に興味を惹かれる。
こいつは、料理だけじゃなくて裁縫や編み物も好きなんだよな。
客足が途絶える豪雪期は、そういうことに時間を使える貴重な時期だ。
「マフラーとか、ニット帽とか、手袋とか、セーター……まぁ、出来る頃には豪雪期が終わってるかもしれないけどな」
豪雪期は十日くらいだ。
フル装備を揃える頃には雪も溶けてなくなっているだろう。
そう考えると、今年も準備万端とはいかなかったな。
豪雪期には外に出られないって方向にばかり意識が向いていて、雪が降れば寒いってことを忘れていたかもしれない。
薪ストーブを出して、外套を用意しておけばいいだろうと油断していた。
単純に考えて、防寒具はあればあっただけ温かいってのに。
「にっとぼう、ってなんですか?」
ん?
あれ、知らないのか?
「そうか、豪雪期はあんまり長くないから、防寒具ってそこまで進化してないんだな」
肌寒い日に羽織るストールは普及していても、ずっと首に巻いているようなマフラーはあまり普及していない。
防寒具は、基本的に室内で身に着けるものがメインとなっている。
外に出る用の防寒具は外套と手袋くらいしかない。
常春のこの街では、それで事足りるし、豪雪期のような厳冬には、外に出て長時間過ごすようなことをしない。
つまり、マフラーやニット帽なんて外行きの防寒具はそこまで出番がないのだ。
出番がなければ進化はしない。
売り上げが見込めないから、研究開発費もそこまでかけられない。
それでもウクリネスがファーコートなんてものを作り出したのは、それだけ懐に余裕が出来たからだ。
ウクリネス自身も、そして顧客たるこの四十二区の住民たちにも。
「毛糸で編んだ温かい帽子だよ。あとで編んでみるか?」
「はい! 教えてください」
今から編んでも、使うのは豪雪期終盤ギリギリ。下手したら来年かもしれないが……
「まぁ、来年に向けて作っておくくらいの気持ちでやればいいだろう」
一年寝かせても毛糸は腐りゃしない。
無駄にはならないだろう。
そんな気持ちで発した一言に、ジネットがはっと息をのむ。
そして、にこりと微笑んで、どういうわけか瞳に涙を浮かべた。
「え? お、おいどうした、ジネット?」
突然のことに戸惑う俺に、ジネットは「いえ、なんでもないんです……」と、涙を拭って笑顔を向ける。
なんでもなくないだろうが。
なんなんだよ?
「すみません、ただ……あの」
手袋で口元を隠し、寒さで赤く染まった頬を緩めてこんなことを言う。
「ヤシロさんと、来年の豪雪期のお話が出来たことが、なんだか嬉しくて」
あ……
そうか。
去年の今頃くらいだったか。
俺が、ここにいることに違和感を持ち始めたのは。
未来の予定を立てることに躊躇い、この場所に留まることに戸惑い、そして未来の話を避け始めていたのは。
「ダメですね、わたし」
えへへと笑って、何度か目尻を拭う。
「ヤシロさんの言葉を信じると決めたのに、まだたまに不安になってしまって……こんな顏を、見せてしまって」
俺はここにいると決めた。
だから、「食い逃げの代金を払うまで」という縛りのある従業員をやめ、もう一度陽だまり亭に再就職したのだ。
今度は縛りも期限もない、普通の従業員として。
その言葉を、ジネットも信じてくれている。
だが、やはりふとした瞬間に不安になったりするのだろう。
マグダや他の連中も、たまにそんな素振りを見せる。
前科はそうそう消えない。
俺があいつらに与えてしまった不安は、ちょっとやそっとでは「なかったこと」にはなってくれないのだ。
これは、時間をかけて償っていくしかないんだろう。
そして、俺はそれを甘んじて受けようと思う。
「大丈夫だよ」
ただまぁ、俺は善人ではないので、素直に心を入れ替えるなんてことは出来ないのだが。
「来年の豪雪期に、ジネットが俺お手製の毛糸のパンツを穿いて見せてくれるまで、ここを離れるつもりはないから」
「そんな姿、見せられませんよ! もう、懺悔してください」
そう。
見せてはくれないだろう。
だから、その野望が完遂されるまでは――
俺はこの場所にいるつもりだよ。
あとがき
先日、小学校の前を通りかかった時――
通りかかっただけです。
何もしていません。
はい、みなさんケータイ置いて。手は頭の上に!
小学校の前を通りかかった時に、お子様たちが男女に分かれて口喧嘩していたんです。
こう、三人ずつくらいが固まって、向かい合って、腕組んで睨み合って。
令和になっても、昭和の頃と同じようなことしてんだなーって思いました。
なんか、ボールがぶつかったから謝れとか、投げた後に割り込んできたそっちが悪いとか、
そんな口喧嘩でした。
……ふと思ったのですが、
尻相撲って、お尻で行う相撲なので、お尻とお尻をぶつけ合うじゃないですか?
ダンディーな大人世代の私としましては、ケンカと言えばやはり拳と拳のぶつかり合いで
河原で寝そべって「なかなかやるな」「お前もな」なものだと思うんです。
ということは、上記二件の事実を元の文章に当てはめて考えるに――
口喧嘩って、口と口で…………ちょっと実証してみたいと思います!
どなたか、検証の補佐をお願いします!
( ゜_゜) じぃ~
(゜_゜ ) じぃ~
( 。_。) ……しょぼん
……立候補者がいませんでしたので、検証は延期となりました。
それで、話を戻しますと、
男の子と女の子が口喧嘩していまして、
止めてあげようかなぁとか思いつつも、
止めに入った瞬間――
宮地「やめたまえ、少年少女!」
少年少女「「きゃー! 先生―!」」
ってなりそうなのでぐっと我慢。
トラブルを自分たちで解決するのも勉強さと前を通り過ぎようとした時、
非常に懐かしい言葉が飛び出しました。
女の子「バカって言う方がバカなんですー!」
今でも言うんだ!?Σ(・ω・ノ)ノ!
誰が教えるのか、脈々と語り継がれていますね。
……ん?
バカという方がバカ……
ということは……
「おっぱい」って言う人は、もはやおっぱいなのでは!?
(* ̄▽ ̄)パァァ!
すごい発見をしてしまいました……
私、知らない間におっぱいでした。
いえ~ぃ、めっちゃおっぱい。
――というわけで、いえ~ぃ、めっちゃおっぱいな宮地です。どうもどうも。
さぁ、あとがき、はーじまーるよー!
……いやいや、まだごあいさつしただけですし。
………………お寿司!( ̄ー ̄☆)きらりん☆
言ってみたかったんですしお寿司。
お寿司と言えば、
この前健康診断で採血したんですね。
いえ、健康診断って前日の夜9時から食べちゃダメじゃないですか。
で、その日は仕事が長引いて夕飯食べられなかったんです。
だからもう、健康診断終わるまでお腹空いてお腹空いて……
健康診断終わったらお寿司食べるんだ!
って、ずっと思っていまして。
まぁ、無事終わったんでよかったんですが。
え? 終わった後ですか?
そっこーでコロッケパン食べました。
だって、美味しそうだったんだもの!
それはさておき、採血です。
私、血管が太くて、看護師さんに褒められたり喜ばれたりすることが多々ありまして。
学生の頃も、
婦長さん「新人の練習に使わせてもらっていいですか?」
とか言われちゃって。
……血管を「使わせてもらって」って……
「ふざけんな! 人の体をなんだと思ってるんだ!」って言ってやろうとしたら、
子犬系の可愛らしい新人看護婦さんが「きゅ~ん……」って目でこっちを見ていまして。
宮地「いいですよ☆」
って言っちゃいましたねぇ。
Eカップくらいありましたしねぇ。致し方ないですよねぇ。
そんな注射初心者向けの宮地さんなんですが……
今年の健康診断の採血係の方、なんだかお若い方で、
聞けば新人さんなのだとか。
新人さん「失敗したらごめんなさい!」
って。
私、38番だったんですが……
私の前の人、何割か失敗されてるの!?Σ( ̄□ ̄|||)
先輩看護師さん「すみません、この子、まだ不慣れなもので」
宮地「私の前に37人いたと思うんですが?」
新人さん「い、痛いのは最初だけだと思います!」
宮地「うん、ずっと痛かったら泣く」
新人さん「惜しいところまではいくんです!」
宮地「惜しくても外れてたらアウトだからね!?」
先輩さん「このお兄さん、優しそうだから、落ち着いて」
宮地「もしかして、誰かに怒鳴られました!?」
採血で怒る人ってそうそういないと思うんですが、
誰かを怒らせるくらいに失敗しちゃいましたか新人さん!?
落ち着いてもらおうと、血管太いのでやりやすいですよ~っと伝えたところ
新人さんがほっとした表情を見せてくれまして
これで安心かなぁ~とか思ったんですが……
新人さん「ぷるぷるぷるぷる……!」
宮地「めっちゃ震えてる!? 鉛筆を揺らして『ぐにゃんぐにゃ~ん』ってやってる時くらい注射器が揺れてる!?」
新人さん「あぁぁああっ、怖いぃぃいいいいい!」
宮地「こっちこそがだ!」
しかしながら、
案ずるより産むがやすしで、
実際注射してみたらすんなり成功。
新人さんも、「こんなに簡単に刺せたの初めてです!」って喜んでいて
「ありがとうございます!」ってお礼まで言われちゃって。
いやいや、お礼なんて結構ですから――
宮地「早く血ぃ抜いて!? ずっと刺しっぱだから! 刺しっぱ放置だから!」
最後の最後で詰めが甘い新人さんでした。
諸々の検査が終わった後、わざわざ私のところへやって来てくれて、
新人さん「ありがとうございました。宮地さんが簡単な人でよかったです」
と、お礼なんだか悪口なんだか分からないことを言われ……
次は、研修終わって「注射? ふっ、余裕だぜ」みたいな人を連れてきてほしいなと心底思ったのでした。
コロナ禍で、去年は中止になった訪問健康診断でしたが、
今年は厳重な対策の元実施されまして、
医療関係者の方には心から深くお礼と感謝を申し上げます。
何の力にもなれない私ですが、
お役に立てるのであれば私の血管くらいいくらでもお貸ししますとも!
新人さん「宮地、チョッロ!」
宮地「けど、敬意は払ってね!?」
そんな、思いがけない触れ合いを経験したある日の午前でした。
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




