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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
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無添加92話 ピニャータ

 アップルボビングが終了して、次のゲームの準備をしている時、そいつは現れた。


「ヤシぴっぴ、来ちゃった☆」

「もう二~三十年前に言ってほしかったな、そのセリフ」


 マーゥルが陽だまり亭のドアの前に立ち、にこにことこちらを見ている。

 周りを見てもお供が誰もいない。

 いつもは給仕長のシンディを連れているのに……


「そうか、シンディ、ついに……」

「まだまだ元気よ、彼女」


「縁起でもないこと言わないの」と、ぺこっと額を押される。


「今、シンディとモコカには仮装の準備をしてもらっているのよ」

「仮装するつもりかよ……」


 年齢を考えろ、年齢を。

 そんなもん見て喜ぶのはドニスくらいだぞ。


「今日、シンディも誘ったんだけどね、『私は見るより見られる方が好きなんです』って」

「うわぁ、なんだろう、胃のあたりがずーんと重くなる情報だな、それ。聞きたくなかったよ」


 シンディなら、すっぴんで十分ハロウィンに参加出来るだろうに。

 ジャック・オ・ランタンの被り物でもしてくれりゃ、多少は見られるようになるかもな。顔が隠れる分。


「それで、今は何をしているのかしら? 私、街を見せてもらいたかったのだけれど」

「あ、でしたらボクが案内を――」

「いや、待て、エステラ」


 まだ早い。

 どうせ行くなら、もっと後の方がいい。


 なにせ、まだ日が高いからな。


「少しゲームで遊んでから、『みんなで一緒に』見に行こうぜ」


 折角サプライズを仕掛けたんだ。驚く顔は一つでも多く見たいだろう。


「そうッスね! たくさんの反応が見たい……じゃなくて、大勢の方が楽しいッス!」

「そうさね! きっとみんなびっくり……ではなくて、一緒の方が楽しいさよ!」

「大広場が一番見物ですわよ!」

「ちょっ、イメルダさん! まだ内緒ッスよ!?」

「任せるさね! アタシが黙らせてくるさね!」


 俺の思惑を悟った仕掛け人たちが銘々自爆していく。

 ……あいつら、秘密を黙っていられないタイプなんだろうな。特にイメルダが。


「なにか、思惑があるのね? いいわ。それじゃあそのゲーム? っていうのに参加させてもらおうかしら」


 サプライズがあるなら甘んじて乗っかるわよと、そんな顏でマーゥルが微笑む。

 こういう気遣いは非常にありがたい。

 こっちも驚かせ甲斐があるってもんだ。


 そんなわけで、もう少しの間陽だまり亭でゲームをして過ごすことにした。


「それじゃあ、ピニャータを始めるぞ」

「ピニャータって、どんなゲームなんですか?」


 ジネットもくす玉制作を手伝ってくれていたから大体は察しが付くだろうが、改めて説明しておく。


「ピニャータってのは、平たく言えばスイカ割りと同じルールだ」


 簡単明快に説明した俺を、ジネットがきょとんとした顔で見つめてきた。


「……すいか、わり?」


 くそっ!

 こっちではスイカ割りもしないのか!?

 そういやビーチで遊ぶようなイメージないもんな!

 門を出たら帰るだけでくっそ高い入門料取られるし、外壁の外には恐《お》っそろしい魔獣がうようよいるし。目隠ししてスイカ割ってる場合じゃないよな。


「え~っと、じゃあ、ハム摩呂にやってもらうか」

「思いがけない大抜擢やー! シンデレラストーリーやー!」


 シンデレラストーリーではないだろう。


「けど、荷が重いのでお断りやー!」

「大人しくやるですよ! こういう時に頼れるヒューイット家を存分にアピールするですよ! 打倒トルベック一味です!」

「なんか目の敵にされてるッスか、オイラたち!?」


 そんな野望を抱いていたのか、ロレッタめ。


「じゃあ、ハム摩呂。この『聖剣・セクシーカリバー』を持つんだ」

「惜しいなぁ、エクスカリバーなら聞いたことがあるんだけどなぁ、ボク!」

「見てください、エステラ様。あの剣、S字のシルエットが微妙に巨乳美女に見えます。セクシーカリバーで間違いないでしょう」

「ナタリア、没収してきて。後に要焼却」

「畏まりました」


 わぁ、こら!

 割と時間がかかった力作なのに!?

 みんながくす玉作ってる隙にこっそり作った傑作なのに!


「ではハム摩呂さん。この『聖剣・わるいこ退治棒』を使ってください」


 あぁー!?

 俺のセクシーカリバーを見つけて「そんな剣は子供たちに使わせられません!」ってジネットが後から作った棒をしれっと渡されてしまった!

『聖剣』っつってんのに、名前が『棒』っていう矛盾の吹きだまりみたいな微妙な武器を!


 まぁ、『聖剣』だなんだと言っているが、実際はただの棒だ。棒に飾りを付けただけの物だ。

 こいつでくす玉を叩けば、紙で出来たくす玉は割れて、中に仕込んだお菓子やら紙吹雪が落ちてくると、そういうわけだ。


 お化け退治をする武器なので『聖剣』とか言っているだけだ。


「わるいこ退治棒ー! かっこいいー! こういうの欲しかったー!」


 なんか、ハム摩呂が凄く気に入っている。

 そして弟たちがわらわらと群がっている。まるで、聖剣を抜いた伝説の勇者にひれ伏す群衆のように。


「選ばれし、弟やー!」

「我が家から勇者様が誕生するとはー!」

「精霊神様のお導きやー!」


 妹たちもなんか『勇者誕生ストーリー』に乗っかっている。


「オイラなら、もっとイカした聖剣を作れるッスけどね!」

「アタシなら、もっと実用的なものをさね……!」


 張り合うな、職人キツネ。

 ジネットも適当に飾り付けしただけだから。


「で、武器を持ったら目隠しをするんだ」

「ゆーかい?」

「違うわ!」


 誘拐するなら、武器なんぞ持たせるか。

 スイカ割りと同じルールだから目隠しをさせるんだが……何か設定を載っけてやった方が盛り上がりそうだな、こいつらなら。

 ……よし。


「お化けは相手の心を惑わせ、仲間に引きずり込もうとしてくるんだ。マインドコントロールってヤツだな。そうならないように、お化け退治する者は目隠しをしなければいけない」

「けど、見えないよ?」

「「「見えないよ?」」」

「お兄ちゃん、目隠し初心者?」

「「「初心者?」」」


 ハムっ子総出で首を傾げられた。

 知ってるわい。

 つか、目隠し初心者ってなんだ。お前らはベテランなのか。


「だから、周りにいるヤツらがお化けの場所を教えてやるんだ。『もっと右』とか、『もっと上』とか、『そこだ、叩け!』とかな」

「「「「なるほどー! ヘソからお茶やー!」」」」

「目から鱗だよ! ヘソと茶なら沸かせ!」


 パン食い競走の時に作った木枠を使って、くす玉を一つぶら下げる。最初なのでハム摩呂の身長に合わせた高さで一つだけだ。

 フランケンみたいな顔のお化けがハム摩呂を睨みつけながらぶら下がっている。


「よし、ハム摩呂。準備はいいか?」

「はむまろ?」

「準備は?」

「Don’t 来いやー!」

「どっち!? ドンと来いでいいのか? 来ちゃダメなのか!?」

「いーよー!」


 ハム摩呂に目隠しをして、くるくると三回ほど回転させる。


「はわわ、目が回る~」


 棒を片手にふらふらするハム摩呂。

 その姿にほんわかした空気が流れる。マーゥルがことさら楽しそうに見つめている。


「んじゃ、弟妹たち、ハム摩呂にお化けの居場所を教えてやれ」

「「「は~い!」」」

「じゃあ、スタート!」

「ハム摩呂、まずはまっすぐ突き進むですよ!」

「お前が一番張り切るのかよ!?」


 号令と共にロレッタがデカイ声を出す。

 お前は、ここぞとばかりに……


「ロレッタは後で選手で出してやるから、ちっこい弟妹に譲ってやれ」

「ホントですか!? あたしやっていいですか!? じゃあ、あんたたち、しっかりやるですよ!」

「「「お前もな~!」」」

「どこで覚えてきたですか、そーゆーの! いくないですよ!」


 仲のよい姉弟の戯れをよそに、妹たちが賢明に指示を出してハム摩呂を誘導する。


「みぎ~!」

「そっちひだり~!」

「まえ~!」

「いきすぎ~!」

「もうちょっとだけみぎ~!」

「そっちひだり~!」


 あいつら、自分たちが向かい合ってること忘れてるな。

 妹から見た右は、ハム摩呂にとって左だ。


「「「そこー!」」」

「悪霊、退散やー!」


 振り上げた『聖剣・わるいこ退治棒』を勢いよく振り下ろす。

 振り抜かれた聖剣が、見事にお化けの顔面を捉え、突き破る。


「わぁ~!」

「お菓子の滝ー!」

「空からお菓子ふってきたー!」


 間近で見ていたハムっ子たちの上に、小分けにラッピングされた飴やマシュマロが降り注ぐ。


「みえないー!」

「ハム摩呂、目隠し取っていいぞ」

「ん~…………、ん? ん? 降ってないよ?」


 目隠しを取って天井を見上げるハム摩呂。

 もう降り終わったんだよ。


 と、思ったら、ジネットが床に落ちたマシュマロをハム摩呂の上からばらばらと撒き散らす。


「わぁ~! お菓子の国の、流れ星やー!」


 降ってくるお菓子をキャッチして大はしゃぎする。

 その姿を見て、ジネットが嬉しそうにニコニコしている。


「手に入れたお菓子は、みんなで仲良く分けるですよ!」

「「「「はーい!」」」」


 ロレッタがちゃんとお姉ちゃんしている。

 分けるとはいっても、ハムっ子の数に対してお菓子がちょっと少ないか。


「あと何回かやらせてやるか」

「そうですね。きちんとみなさんに行き渡るように」

「マーゥル。もうちょっと待っててくれるか?」

「えぇ、もちろんよ。ホント、みんな可愛いわぁ。見ているだけで楽しい気持ちになるもの」


 特等席に座って、紅茶片手にハムっ子たちの戯れを見ているマーゥル。

 いつの間にかしっかり接待されてやがるな。

 なら、スポンサーになれっつの。


「マーゥル。本番でも多くのガキどもにお菓子を配ってやりたいんだが……」

「うふふ。分かったわ。少しだけれど、協力するわね、エステラさん」

「本当ですか!? 助かります、マーゥルさん」


 マーゥルに感謝を述べた後で「ヤシロ、でかした!」と親指を突きつけてくる。

 俺に言われなくてもそれくらいはやれっつの。

 ただで接待とか、もったいないだろうが。



 その後、2チームに分かれてどちらが先にくす玉を割れるかを競ったり、当たり外れの入り交じった複数のくす玉を設置してみたりと、いろいろなバリエーションで試してみた。

 チーム対抗が反応よかったかな。

 小さいガキには普通に割らせてやって、それなりの年齢になったらチーム対抗で競わせるのがいいだろう。


 で、大人の部だ。


「よし、ロレッタとベッコとマーゥルで競走しよう」

「ちょっと待って、ヤシロ!」


 参加したげだったマーゥルを指名したら、エステラから待ったがかかった。

 なんだよ、折角いいテンポ出来てたのに。


「……メンバーを見て、言い知れない不安が湧き上がってきているんだけれど?」

「気のせいじゃないか?」

「そんなわけないだろう! マーゥルさん以外『何かあっても大丈夫』な人選じゃないか!」

「ちょっ!? その認識は酷いですよ、エステラさん!?」

「拙者、ここ最近は四十二区で重宝される人材になれたと自負しているでござるぞ!」


 ははは、ベッコ~。

 自負するのは勝手だけど、周りがそれを認めるかは別問題だぞ~?


「とりあえず一回様子を見させてもらうよ。ウーマロ、変わってくれるかい?」

「オイラをこのメンバーに入れないでほしいッス!?」

「待ってです、ウーマロさん! この並びなら、あたしこそがそのセリフ言いたいですよ!?」

「いやいや、拙者、実は四十二区で人気急上昇中だという『風』を感じているでござる故、願い下げるのは拙者ではないかと思うでござるよ」


 何を感じてるのか知らねぇけど、吹いてねぇよそんな『風』。


「まぁいいや。じゃあ、よごれ~ずの三人でやるか」

「「「よごれ~ずって!?」」」

「いやでも、待ってです! 『汚れず』だと解釈すれば……」

「なるほど、さすがはロレッタ氏! そういう解釈も出来るでござるな」

「だとしたら、汚れ仕事はオイラたちには回ってこないってことッスね!」


 思うのは自由だよ。

 思うのはな。


「じゃあ、あたしがバシーッと決めてみせるです!」

「拙者の腕前、とくとご覧に入れるでござる」

「オイラ、こういうの割と得意なんッスよね」


 やったこともないのに自信満々な三人。

 さすがだなぁ。ちゃんと『フリ』をしておくと、あとで笑いに繋がるって分かってんだろうなぁ、本能で。


「じゃあ、三人とも目隠ししろ」

「はいです!」

「心得たでござる」

「これでいいッスか?」


 で、武器を持たせるわけだが、今あるのはジネットの作った『聖剣・わるいこ退治棒』と、予備の装飾無しの棒だけだ。

 一本足りない。

 ……と、エステラを見ると、面白がるようなあくどい顔でこくりと一度首肯し、俺のセクシーカリバーを返却してくれた。


 当然、セクシーカリバーはウーマロに渡しておく。


 くす玉は全部で六個ぶら下がっている。

 誰がどれを狙うか、それは応援する者にかかっている。

 適当に応援したい人に指示を出すように言ってある。


「それじゃ、開始!」


 手を叩いて開始の合図を送ると、一斉に声が飛ぶ。


「ロレッタ、ベッコは右だ!」

「お兄ちゃん、標的が違うですよ!?」

「ヤシロ氏、視界がふさがれて本気で怖い故、笑えない冗談はやめてくだされ!」

「……ロレッタ。ベッコが逃げた。追って」

「マグダっちょ、話聞いてたです!? 狙いが違うですよ! ベッコさん叩いても景品出ないですから!」

「景品云々の前に、拙者を叩くのはやめてほしいでござるよ!?」


 ベッコがわるいこ退治棒を構えて防御に徹する。

 まったく、ノリの悪い……


「……ウーマロ、上に四歩」

「人智を超えた要求してくるマグダたんも憎めないッス~!」


 向こうは楽しそうだなぁ。


「お兄ちゃん、あたしにもヒントちょうだいです!」

「ロレッタ、普通に前進! そして普通にチョイ右だ!」

「『普通』必要ないですよね!? むしろ『普通にチョイ右』が難しく感じるですよ!」


 とかなんとか、ただの悪ふざけのように見えて、実はちょこちょこと参加者三人の動きを操って、三人同時に『俺の狙い通りのくす玉』の前へと誘導していく。

 六つぶら下がっているくす玉の中の、罠のところに、うまい具合に。


 そして、三人がほぼ同時に、狙い通りのポジションにつく。


「ロレッタさん、目の前です!」

「……ウーマロ、攻撃するなら、今っ」

「ベッコさん、一度で決めてみせなさいまし!」


 各々に声援が飛んで、目隠しした三人がそれぞれの武器を振り上げる。

 そして、一斉に、一気に、振り下ろす。


「「「手応えありです!」ッス!」でござる!」


 それぞれの武器がそれぞれのくす玉を破壊する。

 と、同時にくす玉の中から罠が降り注ぐ。


「ぶはっ!? なんですかこれ!? 何が起こったです!?」

「けふっけふっ! なんッスか、一体!?」

「臭っ!? なんか臭いでござるよ!? おまけにねばねばするでござる!?」


 おのれの身に降りかかった事態を把握しようと、一斉に目隠しを取る三人。


「ほにゃー!? なんですか、これは!?」


 ロレッタは、頭から藻を滴らせている。

 これは、海藻を採取する際に大量に取れる食べられない海藻だ。

 どうにかすれば食えるのかもしれんが、ゴミが付着していることも多く、日本では見たことがない海藻なので手が出せないでいる。手間とコストを考えて捨てているヤツなので、罠に使っても問題ない。食べてもたぶん大丈夫だ。美味しくはないけど。


「これ、ウチにい~っぱいあるヤツじゃないですか!?」


 海藻採取は今でもハムっ子の内職だからな。

 ロレッタには馴染みがある感触とにおいだろう。


「ヤシロさん……これ、小麦粉ッスか?」


 真っ白に染まったウーマロが粉で咽せながら聞いてくる。

 惜しい。


「それはトウモロシ粉だ」

「トルティーヤの原料ッスね。……そんな物をこんなことに使っていいんッスか?」


 ちらりと、ジネットの方へと視線を向けるウーマロ。

 もちろん、食べ物を無駄にするようなことはしてはいけない。

 けどな、食べられなくなった物なら有効活用してもいいと思うんだ、俺。


「これは、とある悲しい事故によって廃棄処分になる予定だった粉なんだ」

「まさか……っ、か、カビが生えたんッスか!? ぺっ! ぺっ! 口に入っちゃったッスよ!」

「大丈夫だ。基本的に口に入っても問題ない物しか罠には選んでない」

「そうなんッスか……よかったッス」

「こいつはな、バルバラが袋の口を閉じずに外に放置したせいで鳥の糞が三つほど入っちまったヤツなんだ」

「べぶぅっふ! ぺっ! ぺっ! ぺっ! く、口に入ったら問題あるじゃないッスか!?」

「腹を壊したりはしねぇよ。ばっちぃだけで」

「そのばっちぃのが致命的なんッスよ!」


 そうなんだよなぁ。

 レジーナに調べてもらったら、その糞の中には食中毒を引き起こすような菌はいなかったようで安全なんだそうだが……やっぱ気分的にはノーサンキューだよなぁ。

 で、粉って微妙なもんで、どこまで廃棄すれば安心なのかが分からないんだよなぁ。

 触れてなければOKって言いたいところだが……粉だけにさらさら落ちていくし、本当に触れてないのかって疑い始めると止まらなくなって……っていうか、触れてなくてもなんとなくイヤだろ?

 ってことで、一袋全廃棄になってしまった粉なのだ。


「それで、ヤシロ氏……拙者にかかっている、このねばねばした臭い物はなんでござるか?」

「レジーナのところにあった臭くてねばねばした液体だ」

「正体が一切見えないでござる!?」


 俺も知らん。

 レジーナに「なんか顔にかかるとイヤ~な気持ちになるやつない?」って聞いたら真っ先に出てきたのがこれだ。

 レジーナのやることなんで、たぶん精神的にダメージが大きくても肉体に悪影響はない。……はず!


「ベッコ、体に異変とか、ない?」

「今調べてるでござるか!? 事前に確認とかなかったでござるか!?」

「何かあったら、レジーナを恨めな」

「何もないって確証が欲しいでござるー!」


 さすがレジーナが用意しただけあって、クサネバ液はなかなか顔から取れなかった。

 えげつない物体を生み出したもんだ、あの薬剤師。……あいつ、なにやってんだろうな、普段。何を思ってこんななんの役にも立たない物を…………考えるだけ無駄なので考えないけれど。


「む~……お兄ちゃん。中身がみんな酷いとか、さすがに酷いです」

「言いがかりだぞ、ロレッタ」


 顔のねばねばと格闘するベッコが放り出した『聖剣・わるいこ退治棒』を拾い上げ、コウモリのような形をしたくす玉を叩き割る。

 すると中から色とりどりの包装紙に包まれたお菓子が降り注ぐ。


「お前らが『たまたま』ハズレを引いただけだ」

「絶対たまたまじゃないです! お兄ちゃんに誘導されたです!」

「どっ、どどど、どこに、そそ、そんな、しょしょしょ、証拠があるんだよよう!?」

「そのわざとらしい慌てっぷりは自白したと同じですよ!」


 バレたか。ふふん。


「じゃあ、武器を回収するぞ。ロレッタ、その普通の棒を返してくれ」

「むわぁ!? よく見たらあたしのだけ普通の棒です!? なんの変哲もない、どっからどう見ても、紛れもない普通の棒です!?」

「……ロレッタに一番似合うチョイス」

「そんなことないですよ!? あたしも可愛い聖剣が持ちたかったです! 本番ではもっと可愛いのを持つです!」


 ロレッタはハロウィン当日にもピニャータをやるつもりなのか。

 よく懲りないな、こんな目に遭わされて。


「で、ウーマロ。セクシーカリバー返して」

「ぬはぁあ!? オイラ、こんな武器持たされてたッスか!?」


 人の力作を放り投げるウーマロ。

 物を大切にしろよ、物を! セクシーな付喪神になって化けて出られるぞ。

 …………え、ウェルカムなんだけど? どうやったら化けて出てくれるのかな? ……う~む。


「ルールは分かったわ。エステラさん、武器を貸してくださる?」

「やるつもりですか、マーゥルさん!?」

「あら? だって、とっても楽しそうよ?」

「いやいやいや! あの惨状を見てましたよね!?」


 と、ベッコを指差すエステラ。

 しかし、マーゥルは意に介さない様子でおっとりと微笑んでいる。


「平気よ。ヤシぴっぴ、女の子には優しいもの。ねぇ?」

「まさか、自分をそのカテゴリーに入れてないだろうな、マーゥル?」


 誰が女の『子』だ?

 戸籍謄本を取り寄せて出生年月日を百回書き取りしてこい。


「ヤシロ! …………分かってるね?」

「任せろ! …………まだまだあるぞ、クサネバ液」

「ナタリア! 今すぐこの危険人物を縛り上げて!」


 縛られたらセクシーな声でも上げてやろうかと思っていたのだが、ナタリアの提案でマーゥルの対戦相手がジネットとミリィに決まってしまった。

 ……ちぃ。エグい罠が仕掛け難い。

 ジネットは鈍くさいのレベルが違うからなぁ……罠を回避するように誘導しても罠にきっちり掛かりそうなんだよな。

「わざとか!?」ってくらい的確に罠にはまりそうな気しかしない。


 仕方ないので、粉系の軽~い罠だけにしてやったのだが、それすらもエステラに撤去された。

 ハズレ無しの超接待ゲームになってしまった。

 ……こんな接待、むしろマーゥルがつまんないんじゃねぇの?

 と、思わなくもないが、体験版だと思えばこんなもんでいいか。


 けどまぁ、みんなアタリじゃさすがにつまらないので、中に一つだけ大当たりを作っておいた。こっそりと。

 さて、誰が引き当てるかなぁ~。


「マーゥルさん、キツくないですか?」

「えぇ、平気よ。けど、本当に何も見えないのねぇ」


 参加者三人の目隠しが完了する。

 三人ともきょろきょろしている。


「本当は、目隠しして三回回ってもらうんだが……これが意外とキツイんだ。な、ウーマロ、ロレッタ?」

「そうッスね。三回くらい余裕って思ったッスけど、結構目が回って方向感覚なくなったッスよ」

「あたしも、足下ふらふらして怖かったです」

「というわけで、ジネットにそんなことをさせると非常に危険だ」

「そんなことは、ない……と、思うんですけれど?」

「自分を過信するな、ジネット! お前ならその場で倒れたり、下手したら足の骨を折るかもしれない。『えっ!? なんでそんな転び方を!?』ってすっ転び方をして!」

「そこまで運動音痴じゃありません!」

「……店長。自分を過信しちゃ、ダメ」

「はぅ……っ、マグダさんまで……」


 俺の言いたいことが伝わったようで、フロア内に「ジネットちゃんには危険だなぁ」みたいな空気が流れた。


「そこで、どうだろう? ハンデじゃないが、ジネットは回るのをやめてその場で十回ジャンプにしてみては」

「それくらいなら出来そうです。ありがとうございます、ヤシロさん」


 回るより危険が少ないと確信して、ジネットがその場でぴょんぴょん飛び始める。




 わはぁ~、ぽぃんぽぃんしてる~!




「ジネットちゃん、止まって! まんまと策略にハマってるよ!」

「へ? …………はっ!? も、もう! ヤシロさん! 懺悔してください!」


 胸を押さえて蹲るジネット。

 ちっ! 気付かれたか。


「ヤシロ……いい加減にしないと『わるいこ惨殺棒』でトドメを刺すよ?」

「『退治棒』だったはずだろう、そいつは」


 物騒な進化を遂げてんじゃねぇよ。


 で、各々の準備が整ったところでゲームが始まる。


「じゃあ、ヤシロをテーブルに縛りつけたから、安心してゲームに集中してね」


 爽やかに言うエステラ。

 俺はというと、本当にテーブルに縛りつけられてしまった。

 ジネットをすっごいそばで応援していただけなのに!

 顔が埋まりそうなくらい近くで!


 マーゥルにはナタリアが、ミリィにはノーマが、ジネットにはエステラがヒントを出し、誰が一番にくす玉を割れるかの競走が始まった。

 ……ナビがナタリアって、接待が過ぎるだろう、おい。


「ミリィ、前方15度右、1.6メートルの高さにくす玉がいるさね!」

「このへん? ぇ~い! ……ゎっ! ぁたった~!」


 接待なのだが、性能のいい二人があっさりとくす玉を割ってしまった。

 地味に負けず嫌いなんだよなぁ、ノーマ。

 しかし、15度右を的確に修正してみせたミリィも凄いな。


「マーゥル様。シンディさんのお尻一個分左です」

「じゃあ、この辺ね。えい! あら、手応えがあったわ」


 何基準だ!?

 で、よく的確に捉えられたね、そのヒントで!

 あと、割と大きいね、シンディのお尻!


「ジネットちゃん、もう少し前!」

「……そして、その場で一回転」

「こ、こうでしょうか?」

「違うよ、ジネットちゃん! 今のはマグダの声だから、惑わされないで!」


 案の定、ジネット・エステラチームが苦戦している。

 マグダは意外と、ジネットがわたわたしている様を見るのが好きなんだよなぁ。ちょっかいをかけて、楽しそうにしている。

 不思議なもので、目隠しをすると誰の声なのか一瞬迷うことがある。だから惑わされてしまうんだろうな。うんうん。


「ジネット、ジャンプ!」

「懺悔してください、ヤシロさん」


 ちっ! バレたか。


「ジネットちゃん、そこだよ!」

「え~いっ!」

「……うん。まさか横薙ぎに振るとは……」


 ジネットの振るスウィングは、くす玉のぎりぎり下を通過していった。

 逆に器用に見えるぞ、ジネット。


「えっと、頭の上に構えてまっすぐ振り下ろして」

「は、はい。こう、ですか? あ、何かに当たりました!」

「まだ割れてないよ! 同じところを、もっと強く叩いて!」

「はい! えーい!」


 同じ軌道でと言ったのに、振りかぶった拍子に思い切りブレるジネットの体の軸。

 勢いよく振り下ろした棒は床に激突し、ジネットの指をしびれさせた。


「……痛いです」

「……ヤシロ、どうやら店長には難し過ぎる模様」

「そうだな。対象年齢四歳以上だからな、これ」


 この娘はよく今まで大きな怪我もせずに生きてこられたものだ。


「店長さん、ここで~す! この辺ですよ~!」


 くす玉の向こうでロレッタが騒ぎ、音を頼りにジネットが恐る恐るくす玉を叩く。

 薄い紙製の、ガキでも一刀両断出来るもろさのくす玉を、ジネットは六回の攻撃でようやく破壊した。

 攻撃力、低っ!


「はぁ……やっと割れました」


 ほっとして目隠しを取るジネット。

 そして、くす玉の下に落ちている景品のお菓子を拾い上げる。

 それはそれは、見事なDカップサイズのおっぱいマシュマロを。


「ヤシロさん!?」

「営業時間外に作ったからセーフだ!」

「もう!」


 よかったなジネット。そのくす玉が大当たりだったようだぞ。おめでとう。




 そんな感じで、デモンストレーションだってのに全力で楽しむヤツ続出のピニャータも終わり、本番の作戦会議をもう始めている気の早い連中を尻目に、俺たちはハロウィン飾りを見て回ることにした。

 参加は自由。

 陽だまり亭は一時的に店を閉め、『御用の方は屋台まで』という張り紙をドアに張っておく。

 ま、今日売れるのはお菓子くらいだろう。


「……ロレッタ。オヤツは30Rbまで」

「ふぉお! 悩むですね!」


 マグダとロレッタも遠足気分で楽しそうだ。


「モリーも来るだろ?」

「あ、はい! ……ただ、30Rbとなると…………悩みますね」

「……もうすぐ本番だけど、間食するの?」

「いや、でも、30Rbまではセーフって!」


 セーフとかないから。

 1Rb分だろうと、食ったらその分カロリー摂取しちゃうから。


「……綿菓子なら、すごく軽いからそんなに太らないような気が…………」


 モリー。

 気付いて。

 一歩一歩確実に近付いてるぞ、残念な娘に。




 そうして繰り出した、大通り。


「あ、お兄ちゃん見てです! あの飾り! あたし、七号店のお手伝い行く時見つけたです! 可愛いです!」

「……ヤシロ。この向こうの家の飾りは、……エロい」

「どこだ、マグダ?」

「ちょーっと、お兄ちゃん! 迷いなくそっち行かないでです!」


 可愛い飾りを見て「かわうぃ~い!」って言うのは女子に任せておけばいいんだよ。

 男子なら、エロスに全力だろうが! それが、思春期ってやつさ!


「俺たちの思春期は終わらない……っ!」

「いいことを言ったつもりかい? 全然カッコよくないからね?」


 まったく、エステラったら、なんにも分かってないんだからっ。カンカラコン!(←蹴られた空き缶)


「あ、ロレッタ。そこ触らない方がいいよ」

「なんです、エステラさん? うわっ! なんかあからさまに怪しいレンガがあるです! こんなん『触れ』って言ってるようなもんです。えい!」

「がじがじがじっ!」

「うひゃぁあ!? 懐かしの噛みつき草です!?」

「ぷっ……くく」


 エステラ、お前……割と底意地悪いよな。相手によって。


「あ、そうだ。ロレッタ」

「なんですお兄ちゃん?」

「そこの、ネズミに噛みついているチーズの飾りに触ってみろ(にやにや)」

「こ、今度はどんな仕掛けがあるです?」

「まぁまぁ、いいから。ちょ~っとだけ触ってみろって(にやにや)」

「う……触りたく、ない……です、けど…………ここで触らないと女が廃るです! 触ってやるです!」

「(にやにや)」

「い、いくですよぉ…………つんつん…………………………なんも起こらないですけど!?」


 ただの飾りを、物凄ぉ~~~~くビビってちょい触りしたロレッタ。

 やーいやーい、必死な顔してやんのー!


「ヤシロって、ホンンンンット、底意地が悪いよね」

「妙な仲間意識を持つんじゃねぇよ」

「仲間だなんて思ってないよ、これっぽっちも」


 自分の底意地が悪くないとでも言いたいのか、この領主は?

 自己分析能力皆無だな、こいつ。


「ほんと、仲良しよねぇ~、ヤシぴっぴとエステラさん」

「人の目がある時ほどイチャイチャするんです、あのお二人は」

「妙な言いがかりはやめてくれるかな、ナタリア!?」

「自己分析能力皆無なんですよねぇ、エステラ様は」


 同じ意見にたどり着いたというのに、一切共感出来ないぞナタリア。

 俺を巻き込むな。エステラが勝手にわちゃわちゃしているだけだ。


「ヤシロ様。たまには私ともデート紛いなことをしてみませんか?」

「なんだよ、デート紛いって?」


 ナタリアがそそそっと寄ってきて、女の子らしい仕草でゴブリンのような顔の飾りを指差す。


「みてみて~、あの飾り、と~っても変~」

「今のお前もなかなかに変な仕上がりになってるぞ」

「でもね、も~っと変なものがあるんだよ。それはね、君さ☆」

「ケンカ売ってんのか、こら」

「デートでありがちなイチャイチャシチュじゃないですか。不勉強が過ぎますよ、ヤシロ様」

「なるほど。経験に基づかない独学が如何に危険かの証左だな、これは」


 ナタリアもたまには休暇をもらって誰かと遊びに出かけるといい。

 仕事ばっかりしているからそんな仕上がりになってしまうんだ。


「あっ! ヤシロさん、ヤシロさん! 見てください! カンタルチカさんが!」


 ここまでにこにこと飾り付けを眺めていたジネットが、目をくりくりさせてぶんぶん腕を振る。

 指差す先には巨大な狼の顔が大きな口を開けて客を待ち構えていた。


「お店に入ると食べられちゃいそうですね! 凄いです! 面白い趣向ですね」

「ウーマロ、頑張り過ぎだろ」

「やはは……、久しぶりに頼られたって感じがしたもんッスから」


 パウラから名指しで依頼を受け、それも大通りで一番目立つハロウィン飾りの制作依頼――いや、建築依頼だったもんだから、ウーマロは舞い上がってしまったのだろう。

 グーズーヤが指摘していた『技術の無駄遣い』がそこかしこに見え隠れしている。


「どう? すごいでしょ~! やっぱり、カンタルチカは他とは違うって感じでしょ?」

「はい。すごく可愛いですね、パウラさん」

「……これは、称賛に値する。さすが、かつてマグダが数日手伝いをした店だけのことはある」

「ですね! やっぱり、頭一つ抜けているです! かつてあたしが働いていたお店だけあって!」

「あんたらが働いてたのってほんの数日でしょ!? なに我が物顔してんのよ!」


 素直な称賛……ではあるのだが、関係者顔が鼻について素直に喜べない様子のパウラ。

 でも、尻尾はわっさわっさ揺れている。

 ……捲れろ、裾!


「ヤシロさん。食べられちゃいますよっ」


 ぺこっと、額を押された。

 ……だから、鼻の付け根付近に指を近付けるなっつうのに、どいつもこいつも。


「ほんと、不思議な雰囲気ねぇ」


 街を埋め尽くす奇っ怪で不可思議な飾りを見渡し、マーゥルが囁くように言う。


「不気味で怖い異形の者たちが街を埋め尽くしているのに、全然嫌な感じじゃなくて、むしろわくわくしちゃうなんて……ヤシぴっぴのすることって、どうしていつもこう不思議なのかしら?」

「俺が考えたイベントじゃねぇよ。俺の国でやってたことを、単に紹介しただけだ。なんでこんな風になったのかは、考えついたヤツにでも聞いてくれ」

「それでも、この街に馴染むように手を加えたのはヤシぴっぴでしょ?」


 ん。まぁ……多少はアレンジしてるけど。

 けど、そんなもんは微々たるもんだ。

 この街の人間のノリがいいんだろう。


「今でも十分楽しいけれど、本番が待ち遠しいわね」

「そうですね。ボクも、本番がどんな風になるのか、今の段階ではまったく想像出来ないんです」

「想像するだけ無駄だ。きっと、それを軽く上回るバカ騒ぎになるからな」


 そんなもんは目に見えている。

 きっとそうなる。

 そんな様が容易に想像出来るのだろう。ジネットもふわりと微笑んでゆっくりと頷いた。


「きっと、すごく楽しい一日になりますよね」


 その意見に反対する者は一人もいなかった。


「ヤシロさん! そろそろいい時間ッスよ!」

「そうさね! 大広場へ向かうさよ!」

「さぁ、皆様! お急ぎなさいまし!」


 職人キツネ二人と、ブロンドお嬢様がわくわく顔を抑えきれずにみんなを煽り始める。

 放し飼いの鶏を追い立てるように、俺たちを大広場へと誘導する。


 こいつら、ホンッッット、サプライズに向いてないよなぁ。





 追い立てられてやって来た大広場。

 空の下の方が赤く染まり始める時間帯。


 うっすらと暗くなり始めて、隣を歩くヤツの顔も影が濃くなっていく。


「あれ? 大広場にあんな柱、ありましたか?」


 大広場の中央で存在感を発揮している巨大な柱。

 八本の柱が密集して一本の太い柱のようになっている。

 柱の上には芸術的と表現するのにふさわしい造形美あふれる飾りが取り付けられており、円を描くように密接する柱の中央には球状に削り出された光るレンガが輝いている。


 光る球体を取り囲むオブジェたち。それは、背後から光を浴びて斜め下の地面に長い影を落とす。


「え………………へっ? …………えぇっ!?」


 空の色が赤く染まり、街に暗闇が広がるにつれ、光るレンガに照らされたオブジェが生み出す影は色を濃くしていく。


 大広場の中心に設けられた光の柱から八つの影が伸びる。

 八体の黒いオバケの形となって。


「地面に、オバケさんが!?」


 ジネットの声に、オブジェを見上げていた連中が一斉に足元を見る。


「一体、どこから? えっ、あのオブジェの影なの?」

「なにこれ、すご~い! かわいい~!」

「おねーしゃ、みて! ぉばけ!」

「うぎゃあああ! 影のオバケだぁああ! 姐さん、逃げましょう!」

「あはは! 騒ぎ過ぎだぞ、バルバラ。ただの影じゃねぇか。これ、ヤシロが作ったのか?」

「立案は俺だが、張り切ったのはあの三人だ」


 驚く面々を見て力強くガッツポーズしている三人を指さしておく。

 凄まじい達成感に酔いしれてやがてる。


 ウーマロとノーマに相談された大広場のオブジェ。

 当初の計画だと、夕方に傾く太陽の光を利用して徐々にオバケの影が道に伸びていくようにしようという話だった。

 だが、それだと太陽の角度の都合で一方向からしか影が作れない。

 こういう広場になると片側だけにしかオバケが生み出せないのだ。

 おまけに、日が傾いてから沈むまでのわずかな時間しか影は出来ない。それでは、多くの者がオバケの影を見られない可能性が高かった。


 そこで、俺は光るレンガを利用することを思いついた。

 オブジェの背後に光るレンガを置いておけば、一日中オブジェを照らし続け、周りが暗くなるにつれ影がはっきりと地面に映し出されることになる。

 夕方だけではなく、夜の間中オバケの影が地面に現れるのだ。


 明るいうちは太陽の光がレンガの光を上回るためオバケの影は見えない。太陽の下で、懐中電灯を使った影を出そうとしてもはっきりと像を結ばないように。

 しかし、日が傾き街に夕闇が迫ると、光るレンガが照らし出す影が姿を現し始める。

 さながら、夜を待ち詫びていたオバケがこの世に顔を覗かせるかの如く。


 当日が快晴とは限らないし、夕方に曇られたらアウトだったからな。

 この改良は功を奏するだろう。

 すべてのオブジェに光るレンガを組み込んだせいで費用はぐぐんっと上がったが、マーゥルの援助と、リカルドが購入したブーブークッションの代金を合わせれば賄える。


 いや~、吹っかけたなぁ、エステラ。ブーブークッションがあんな値段で売れるとは……言い値で買う方もどうかと思うけどな。


「あれ? じゃあ、もしかして……ウチのお店のオブジェも!?」


 何かに思い至ったパウラが叫び、大通りへと向かって駆け出す。


「え、なに? ちょっと、パウラ!」

「なんか分かんねぇけど、行ってみようぜみんな!」


 ネフェリーとデリアがパウラを追いかける。

 その後ろ姿を見て、ウーマロとノーマとイメルダがにやりとほくそ笑む。


 広場から大通りへ出ると、薄暗くなった大通りに無数のオバケが出現していて、大通りを歩く多くの者たちを驚かせていた。


「なんだこれ!?」

「急にオバケの影が!?」

「でも、どこから……?」


 ちょっとした騒ぎになっていた。

 しかし、害がないのは一目瞭然。

 それがハロウィンの仕掛けだと分ると、道行く者たちの顔に笑みが広がっていった。


「わぁ!? なにこれー!」


 一足早くカンタルチカへ到着したパウラが、地面に映し出された影を見て声を上げる。


 カンタルチカの前には、今まさに少女に襲いかかろうとする擬人化されたコミカルな狼の影が浮かんでいた。

 赤ずきんちゃんのワンシーンをイメージして、俺がデザインしたものだ。

 カンタルチカの店が狼っぽい魔獣の顔になっているので、それと合わせて一つのストーリーになるように演出されている。


 ただし、そんな少女には一つ演出が。


「あれ? でも、この女の子の影…………」


 ロレッタがそれに気付く。


 今まさに狼に食われそうになっている少女は、狼を見上げて立ち尽くし……ているように見えて、後ろ手に大きなマサカリを隠し持っていた。


「これマグダっちょですね!? 狼、返り討ちです!?」

「……余裕」


 人間を舐めてかかると痛い目に遭うぞという、オバケサイドへ向けてのメッセージだ。

 街中がオバケにジャックされても、人間は決して屈しない。そんな象徴になるような、ちょっとした遊び心というヤツだ。


「なんだか、人間の持つ生命の力強さを感じますね」

「そこまで大層なテーマじゃねぇよ」

「では、もっと単純に。とっても可愛いです」


 マグダに似た影絵の少女を見て、ジネットが笑う。

 これから本番まで、この影を見て歩き回る領民が大勢現れることだろう。



 昼とは違う雰囲気をまとい、夜の四十二区も大いに盛り上がりを見せた。

 そうこうしているうちに、ついに、ハロウィンがやって来た。







あとがき




というわけで、

二週に亘ってハロウィンゲームで遊んでみました。

どちらも、日本ではあまり見かけませんね。

(どっちも子供向きですからねぇ。日本のハロウィンって大きなお友達が一番はしゃぐから……

( ゜∀゜)o彡°ミニスカナース! ( ゜∀゜)o彡°ミニスカナース!)



もしどこかで見かけた際は、是非チャレンジしてみてください。

直前の幼女の口からミネラルが豊富に抽出されているかもしれませんよ♪



そして、

日本も徐々にハロウィン真っ盛りになってきましたね!



実はですね、

運動会が終わって、

もう少し続けようかって話になった時に、

指折り数えたわけですよ、

1(薬指、曲げ)

2(人差し指、曲げ)

3(小指、曲げ)

4(薬指、伸ばし)

5(中指、曲げ)

6(小指、伸ばし)

7(親指、曲げ)

8(人差し指、伸ばし)

9(親指、伸ばし)

10(小指、曲げ)


……って。



指の動きが分かりにくいっ!?Σ(゜□゜;



でね、

運動会が終わった60話から、

あと20話くらい書いたら……、



作中で言ってたハロウィンイベントが、

リアルタイムで書けるかも!?



ってことに気が付きまして。

で、じゃあ、キリよく100話まで延長しちゃいましょ~!

ということで、こんなことになったのでした。



ただ、ちょこ~っとキャラたちが遊び過ぎて(私じゃなく、キャラたちがね!)

もうちょっと書きたかったトムソン厨房のお話がばっさりカットになってしまいましたが……


あと5話くらい書きたかったなぁ、ハロウィンまでに。



……そう考えると、

もっと省略出来たお話があったような…………



やっぱり、プロットって大切ですね!



プロのやり方って理にかなってる!

うん!

勉強になりました!



ただ、反省するかといわれれば…………ぷくす。



というわけで、次回は10月30日!

ハロウィン・イヴです!


イヴといえば何を思い浮かべますか?

頭痛薬ですか?

皆様、苦労性ですね☆

お・そ・ろ・い♪



え~では、

ここで私が知っているトリビア……というか、

私の周りで何度となく繰り返された事象から導き出された統計学的な豆知識を一つ。

(ハロウィンにちょこ~っとだけかすっているような内容のものを)



世界的ミュージシャンであるマイコージャクソー!(←著作権への配慮)

知らないって人は、まぁ、そんなにいないでしょう。


で、そのマイコーの代表曲と言えば?

と尋ねると、まぁ、多くの方が『スリ○ー』と答えます。

私の周りでも、八割くらいの方が『ス○ラー』と答えましたよ。


で、「あ、知ってるんだ」と思って、MV(ミュージックビデオ)を流すと



「きょと~ん」(´・ω・`)



って顔をされます。

イントロ、Aメロ、Bメロを過ぎて、

サビに入って「こずでぃっずぃスィーラー!」(←著作権への配慮)のところで



「あっ! 知ってる!」(*゜∀゜*)



って顔になります。

MVのイントロ、あの印象的なメロディじゃないんですよねぇ。



で、その人たちに

「『Be○t it』知ってる?」と聞くと



「知らないぽー」(=´▽`=)ノ



と答えます。

で、MV流すと、

イントロから



「これ、知っとーばい!」(っ≧▽≦)ノシ



って言います。


※マイコーあんま詳しくないの~ん

という方、是非検索してみてください。

たぶん、『○リラー』より『Bea○ it』の方が馴染みがあるはず!(感じ方には個人差がございます)


結構勘違いしている方は多いようですよ、『○リラー』と『Bea○ it』

ごっちゃになっていると言いますか。


最近の人にとっては昔の歌、なんでしょうね。




かくゆう私も、

シンディー□ーパー(←伏字ですよ)の『Girls Just Want T○ Have Fun』と『グーニ○ズ』がごっちゃになってましたけどもね。


「はぁ!? 全然違うじゃん!?」って、オジサマに呆れられた子供の日の記憶。


昔の人もきっと、それより昔の人の歌とか知らなくて「えっ!? マジで!?」とか思われてたんでしょうねぇ。



昔の大人「えっ!? 式部知らないの!?」

昔の若者「紫式部くらい知ってますよ」

昔の大人「ばっか、和泉の方だよ! 『あらざらむ この世のほかの 思ひ出に』……だよ!」

昔の若者「いや、……ちょっと、知らないっすね」

昔の大人「はぁ……いい歌なのになぁ、メロディが」

昔の若者「メロディみんな一緒っしょ!?」

昔の大人「じゃあ、納言は?」

昔の若者「そこ切るとこちがうでしょ!? 清・少納言っしょ!?」

昔の大人「いい歌だったなぁ~、『人はいさ 心も知らず ふるさとは』」

昔の若者「それ紀貫之!?」

昔の大人「メロディラインがさぁ」

昔の若者「みんな一緒!」



的な、ね?



私の作品も、

あと何年かしたらごっちゃになるかもしれませんね。



未来の若者「あのタイトルなんだっけ? ほら、宮地拓海の書いた、おっぱいがいっぱいの話」

未来の宮地通「判別出来ない! みんなそう!」



そんな日が、来るかも、ね☆


ともあれ、

いよいよハロウィンです!


皆様に素晴らしい★ほら~ないと★が訪れますように☆彡


次回もよろしくお願いいたします。

宮地拓海


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