無添加24話 KJI in NTA
「第一回、区民運動会実行委員会を開催します」
議長のナタリアが、会場に集まった者たちに向かって宣言する。
会場は、木こりギルドそばの多目的会館。……通称、『なんかやる時にとりあえず集まる場所』だ。
『NTA』とでも言えばカッコがつくだろうか。
「まず、実行委員長のエステラ様より、開会のご挨拶を賜ります」
「えっと、まぁ、このメンバーなんであまり堅苦しいことは抜きにして」
立ち上がり、見慣れた顔を見渡してエステラが砕けた表情で言う。
ここにいるのは、見知ったメンバーだ。
俺とエステラをはじめ、設営関連でウーマロとイメルダとノーマ。衣装関連でウクリネス。生産者代表としてネフェリー。事業主代表として飲食関係者のパウラ。四十二区に支部を置く大ギルドより、ウッセとアッスント。そして、教会からベルティーナ。そんなメンバーが狭い部屋でテーブルを囲んでいる。
今はこのメンバーだが、追々入れ替えもあるだろう。
とりあえず、言い出しっぺのネフェリーとパウラには噛ませて、不満が出ないようにしている。「いつも同じメンバーばっかり!」ってな。
というか、今は設営に関する話がメインとなるだろうからこういうメンバーを選出したのだ。
ウーマロたちが設営の準備に掛かれば、また違ったメンバーで競技内容を詰める予定だ。
まぁ、区民運動会自体は、それだけで利益を生み出すようなイベントではないので、『楽しむ』ことに重点を置いて進めていいだろう。
『宴』の時のように、いろんなヤツを巻き込んで、関わらせて、みんなで作っていく感じで。
来年以降恒例化するなら、俺がいなくても回るように。
……だって、毎年実行委員とか面倒くさ過ぎるだろ?
最初だけやって、あとは丸投げってのが理想だ。
「ボクとしては、楽しい雰囲気で区民運動会を行い、四十二区の発展に繋がってくれることを願っているんだ。対決だからってギスギスしたり禍根を残したりしないようにね。だから、――あ、ヤシロ。危険かもしれないから耳を塞いだ方がいいよ――『正々堂々』と真剣にスポーツで競い合いたい」
「うわぁー、せーせーどーどー、苦しいー!」
「……乗らなくていいさよ、ヤシロ」
「こっちも暇じゃねぇんだから、余計な茶々入れんじゃねぇよ、ヤシロ」
ノーマとウッセが渋い顔をこちらに向ける。
いや、エステラがしょーもないことを言ってきたからな。フリにはきちんと応えないと。
その後、「事故のないように」だとか「みんなで力を合わせて」だとか、そんなよくある言葉がいくつか述べられ、開会の挨拶は終了した。
緩やかではありつつも、一応相応の体裁は保たないと、ということだ。運営がなぁなぁでやってると、予測の出来ない事故や不祥事を招きかねないからな。
「俺が、つぅか狩猟ギルドが呼ばれたから、もっと荒っぽいことをするのかと思ったんだが……意外と大人しそうな雰囲気でやるってことだよな?」
「まぁ、羽目を外すヤツは出るだろうが、殴り合うようなことはないと思ってくれていい」
狩猟ギルドとケンカしてもメリットなんかなんもないしな。
「ということは、今回の区民運動会なる催しものは純然なるスポーツの祭典と、そういうわけですね」
「いいや、アッスント。そこまで大層な話じゃねぇよ。誰にでも出来るような競技ばかりで、どっちかっていうと好プレーより珍プレーに期待したい催しだ」
オリンピックやワールドカップのような、スペシャリストが技術を競い合うのではなく、ご近所の顔なじみが集まってわいわいと楽しむのが目的だ。
普段走らないヤツがもたもた走る様を笑って応援する。その程度がちょうどいい。
アッスントあたりが盛大に転んで足でも攣ってくれることを期待しよう。
だというのに……
「『中央』の底力、見せてあげるから!」
「甘いわね、パウラ! 今回は『東側』が脚光を浴びる番だから!」
……なんでこんなに熱くなってんだかなぁ、こいつらは。
「ねぇねぇ、ヤシロちゃん。型紙、早く見たいです、私。もうずっと楽しみでねぇ」
と、周りの熱気とは関係なくマイペースなヤツもいる。
ウクリネスはとにかく新しい服が作りたいようだ。運動会の内容がどうなるかとか、さほど興味はないらしい。
こいつには型紙を渡してさっさと制作にかかってもらってもいいかもな。
「じゃあ、これ。先に渡しとくよ。生地の指定とか、寸法とか、いろいろ書いておいたから」
「拝見しますね。わぁ、楽しみだわぁ~」
体操服の資料を受け取ると、ウクリネスは自身の周りにバリアーかというような「今からしばらくしゃべりかけないでください」オーラを展開し、熟読し始めた。
そんなウクリネスに触発されたのか、ウーマロが騒ぐネフェリーたちを他所に声をかけてくる。
「設営に関する話を聞きたいッス。『素敵やんアベニュー』の建設もあるッスから、予定を組んで取りかからないと……」
「そんな大層な物は、今回作るつもりないぞ」
精々入場門と得点パネルくらいのもんだ。
あとは、レジーナんとこから石灰をもらってきて地面に白線を引いて終わりかな。
念のために運営用と救護室代わりにテントをいくつか作っておいて、まぁそれくらいだろう。
「あとは小道具がメインだから、そこらはハムっ子とかトルベックの下っ端にやらせりゃいいよ。グーズーヤとか」
「あの、ヤシロさん……グーズーヤは、そろそろ中堅どころなんッスけど……」
なに言ってんだよ。
陽だまり亭で食い逃げしてた頃は見習いだったろうが。
「ウチは年功序列ではなく、実力重視ッスからね。真面目に技術を磨き上げれば出世に時間は必要ないんッスよ」
「じゃあ、十年後の役員はハムっ子が独占だな」
「…………そうならないよう、他の連中も厳しめに指導してるッス……そうなりそうな未来がありありと見えてるッスから」
若い棟梁のウーマロは、まさにその腕一つで大工どもの信頼を勝ち得ているのだろう。人柄と相俟って、こいつへの支持は高い。
「『はぁあんマジ天使ッス症候群』の末期患者のくせに」
「前触れもなく悪態吐かないでほしいッス! あと、それは病ではなくもっと純粋な想い――そう、ピュアハートッスよ!」
「とにかく、お前は『素敵やんアベニュー』の方に力入れとけよ。こっちはそこまで大掛かりな話じゃないからよ」
「…………それはそれで、なんか寂しいんッスよね」
どんだけ混ざりたいんだ。
どう考えても『素敵やんアベニュー』を優先すべきだろうが。街の区画を変える大事業だぞ?
街のオッサンたちが走って転ぶ運動会なんかとは比べものにならない一大プロジェクトだろうが。
「名前と責任者のせいで『適当でいいかも』って思っちまう節はあるが、内容でいえばかなり重要な仕事だろ!」
「いや、名前はともかく……オイラ、リカルド様だからって軽んじたりしないッスよ」
えっ!?
リカルドなのに!?
ウーマロ、真面目だなぁ~。
「ねぇ、エステラ。ヤシロはあぁ言ってるけどさ、大食い大会の時みたいな大きな会場を作ったりしないの?」
「いや、さすがにそこまでの予算は出せないよ」
パウラの純粋な問いに、エステラが顔を歪める。
さらっと「もっと金かけろよ」と言われたようなものだからな。パウラにはそんなつもりないのかもしれないけれど。
「ボクとしては、領民みんなで作り上げる、そういうイベントにしたいんだ」
その方が安上がりだしな。
そもそも、運動会なんてのは手作り感満載なものなのだ。
年少、年中のガキどもに絵を描かせるのもいいな。
俺の通っていた小学校では、児童が図工の時間に運動会のポスターを描いて、それを町中に貼り出していた。優秀な作品は役場に。それ以外の作品は各地域のご家庭の塀や掲示板に。
工場なんかをやっていると、何枚かポスターを貼ってくれって依頼が毎年来るのだ。
親方と女将さんは喜んで引き受けていたっけな。子供が好きだったから。で……俺のポスターを一番目立つところに貼っていたっけな。正直、毎度毎度恥ずかしくて仕方なかった。
そのポスターの前で家族写真とか撮るんだよ、あの人たちは。俺を真ん中に立たせて!
……そうだな。うん。ポスターはやめよう。古傷が疼く。
「ねぇ。領民みんなで作り上げるっていうんなら、街の子供たちに運動会のポスターを描いてもらったらどうかな?」
「あっ、それいいね! さすがネフェリー!」
「えへへ」
ネフェリーが俺の心を読んだかのようなタイミングでそんな提案を持ち出し、パウラが俺を追い詰めたいかの如く賛同する。ほぅら、ベルティーナが嬉しそうな顔をし始めた。
くっそ。ネフェリーのヤツ、精神が80年代なもんだから、そういう昔よく見かけた風習には敏感なんだろうな。『けんけんぱ』とか、教えなくても知ってそうだもんな、ネフェリーなら。
「ヤシロ。カンタルチカも協力するからさ、子供たちがポスター描いたら、陽だまり亭にも貼り出してよね!」
「ジネットに言え」
きっと壁が埋め尽くされるくらい貼りまくってくれるだろうよ。
「ですが、運動会というものがどういったものなのか、それを知らないと子供たちは何を描けばいいのか悩んでしまいそうですね」
「その点は大丈夫ですよ。いくつかの競技を実際に試してみるつもりですので。その際は、子供たちにも協力をお願いするつもりです」
「ボクたちも、詳しい内容はまだ分かっていないので」と、エステラは笑い、そして俺に視線を向けてくる。
領主のこの丸投げ感はいかがなものかと思うが、まぁ、俺が言い出したことだからな、ちゃんと分かりやすい説明はする。
どんな競技をするのか、その競技がどういったものなのか、それを領民たちに知らせるためのデモンストレーションを近日中に行う予定だ。ぶっつけ本番で未知の競技とか、成立しないだろうからな。
「なんだか楽しみ!」
「わくわくするね!」
「それで、あの……設営の話をッスね……」
きゃっきゃと騒ぐパウラとネフェリーの隣で、ウーマロがやきもきしている。
イメルダとノーマも、どちらかというと競技より設営に興味があるようだ。
「美しさを競う競技があるのでしたら、ワタクシが優勝ですわね!」
「うん、大丈夫。そんなのないから」
「本番では完膚なきまでに叩きのめして差し上げますわよ、エステラさん。美しさで!」
「だからないって言ってるだろう」
……イメルダは競技にも興味があるのか。……いや、あいつが興味あるのは『如何に自分が活躍するか』だな。
「小道具ってのは、競技に使うものさろ? 競技が決まらないことには、アタシらは動きようがないさねぇ」
と、ノーマは言うが。
金物で補強するような大掛かりなものは作る予定にはない。
ではなぜノーマを呼んだのかというと……
「おぉーい! 運動会の内容決まったか!? あたい、早く練習したくてさぁ!」
「呼ばれてないのに顔出すんじゃないさよ、デリア!」
「なんだよ、ノーマ! 隠し事はいけないんだぞ!」
「何も決まってないうちからあんたが口を出すと、決まるもんも決まらないんさよ! いいから、競技が決まるまでは大人しく待ってるさね!」
「でもね、ノーマ! デリアの気持ちも分かるよ! あたしも早く練習したいし!」
「そうよ、ノーマ! 私も養鶏場の代表として、この運動会にかけてるの!」
「ならさっさと話がまとまるように、会議の邪魔すんじゃないさよ!」
……と、このように、進行を妨げる要注意人物たちを抑えつける係として重宝しているのだ。
こいつら以外に、ハムっ子とかガキどもも覗きに来るからな。
子供にも女子にもオッサンにも、全方位対応のノーマは必要不可欠というわけだ。
で、女子たちが向こうで押し問答している隙にウーマロに会場の設営案を見せる。
俺が思いつきで描いた簡易的な図面だが、ここから大きく変更することは、まぁないだろう。
図面を覗き込むウーマロ。――の、後ろからイメルダが覗き込み、そそっとベルティーナも寄ってくる。興味があるようだ。
好きに見ればいいさ。
「入場門と退場門ッスか……これ、四十二区の街門をオマージュすると面白くなりそうじゃないッスか?」
「そこら辺は好きにしてくれ。ただし、拘り過ぎて他の仕事を疎かにするなよ」
「分かったッス! オイラが徹夜で作り上げてみせるッス!」
「そこまで入れ込むなっつってんだよ!」
「それで、『イメルダ様オンステージ』の舞台はどの辺りに作りますの?」
「そんなプログラムはねぇよ!?」
「あの、ヤシロさん。食堂は……」
「ない! 教会のガキどもと一緒に弁当でも食ってろ!」
「『お弁当と一緒に子供たちを食べる』!?」
「逆っ! なに、お腹空いてんの、ベルティーナ!?」
くそ……人数を絞り込んでも暴走しまくりで話がまとまらない。
「もうさ、ヤシロが叩き台を作って、実際やりながら改良していく方が早いんじゃないかな?」
「そうみたいだな……」
どいつもこいつも、「運動会って何するの!? どんなのなの!?」って興味が先走り過ぎて、とにかく落ち着きがない。
ぼんやりとでも実体を見せてやった方が真剣に取り組めるかもしれない。
「じゃあ、さっさとプレ大会をやっちまうか。エステラ、いつなら出来そうだ?」
「あたい、今ヒマだぞ! 今からやらないか!?」
「あたしもヒマ!」
「私も大丈夫だよ!」
「だから、あんたら気が早いんさよ! まず何をやるのか聞いてからにするさよ!」
エステラに開催可能日を聞いたのだが別のが釣れた。
こりゃ、近日中に開催することになるな、絶対。
そんな騒がしい連中の前に、ナタリアがそっと進み出る。
「ノーマさんのおっしゃるとおりですよ、みなさん。参加表明は競技内容を把握してからにする方が賢明でしょう。ヤシロ様の提案される競技ですから…………『おっぱい綱引き』とか、そういう類いのものだと思われますし」
「…………ヤシロ、お前」
「……ヤシロ、あんたって人は……」
「もう、ヤシロは……エッチなんだから」
「おいこら、ちょっと待て。謂われのないことで非難してんじゃねぇぞ」
デリアにパウラにネフェリーが大人しくなった。
さすがナタリア! 相手の動きを封じる方法をよくご存じで! 護身術に組み込めば!? けっ!
「それじゃあヤシロ。競技候補をリストアップしてくれるかい? 競技に必要なものはナタリアに集めさせるよ」
「おう。作る必要がある物は、ノーマに任せたい。ハムっ子を連れてグーズーヤのところへ行ってくれるか? 裁縫が必要なものもあるし」
「任せておくさね」
子守り兼裁縫。おまけに、巨乳美女がいればグーズーヤや他の大工も俄然やる気を出すだろう。
「あんたらも、裁縫手伝っておくれな」
「「「えっ!?」」」
ノーマの要請に、デリア、パウラ、ネフェリーが固まる。
パウラは裁縫とかちまちました物は苦手だし、デリアは言わずもがな。
「ネフェリーも裁縫は苦手なのか?」
「ぬ、ぬいぐるみは作ったことあるんだよっ! ……あんまり上手じゃないけど」
苦手意識があるっぽいな。
「今、練習中なの! その内服とか作れるようになるから!」
「うん、あたしも練習はしようと思ってる。けど、それは今じゃないの!」
「あたいは、運動会に向けて修行しなきゃいけないから!」
「なるほど、練習する気はないようだな」
「…………もうあんたらには期待なんかしないさよ……」
重いため息と共に煙管を取り出すノーマ。
ここは喫煙可だから止めはしない。煙と一緒に吐き出したいモヤモヤもあるんだろう。吐き出しなさい、吐き出しなさい。
「俺らは何すりゃいいんだ?」
「狩人の力が必要になるような荒事は、とりあえず想定していないから、運営の協力を頼むよ」
手持ち無沙汰になったのか、ウッセがそわそわし始める。
実際、狩猟ギルドの出番はないだろう。狩猟ギルドは全区に影響力を持つ大ギルドなので、トラブルを避けるために引き込んだというのが大きい。
こいつらなら平気なのかもしれないが、しょーもないイザコザは勘弁だ。
あとはスポンサー枠だな。
行商ギルドと狩猟ギルドには、運営費の方で助けになってもらうつもりだ。
……とりあえず、運動後のベルティーナの胃袋を鎮められるくらいの肉を頼みたい。マジで。切実に。いや、マジで。
なんてことをやっている間に、俺は紙にペンを走らせていた。
「ほいよ。ざっと思いつくままに書いてみたぞ」
「早いね。どれ……」
俺のまとめた競技案一覧に目を通すエステラ。
陽だまり亭でも競技について軽く話したが、一覧には競技名の横に簡単なルールを記してある。
それを見つめ、何が面白いのか、エステラの口角が緩む。
「わざわざ不利になるような状況下で速度を競うものが多いんだね」
「不利に?」
「だってほら、二人の足を縛って走るとか、コースに障害物があるとか」
二人三脚に障害物競走。確かに、普通に走る徒競走と比べれば、走りの邪魔になることをあえてやらせる競技ではあるか。そんな視点で見たことはないけれど、わざわざ不利な状況下で競わせるってのはそうかもしれないな。
「この騎馬戦なんていうのも、一人で戦った方が動きやすいのに四人一組だしさ。この中で分かりやすいのは綱引きだね。逆に借り物競走っていうのは、一切理解が及ばないよ。どういうことなの、これ?」
借り物競走の説明には、『コースの途中で指令書を拾い、指示された物を借りてきてゴールする』と書いておいた。簡潔に分かりやすく書けたと思ったのだが、エステラには伝わらなかったようだ。
「とにかくやってみようか。準備の期間を設けるとして……明後日でどうかな?」
運動会の準備に、そこまで時間をかけるつもりはない。
遅くとも、十日以内には開催するつもりだ。……街中がそわそわして落ち着かないからな。さっさと終わらせて日常に戻さなければ。
……領民全員、小学生か。行事直前にわくわくしやがって。
「よし! じゃあ明日だな!」
「話聞いてたかいね、デリア!? 明後日さよ!」
「ノーマが準備を急げば、明日までに間に合うだろ?」
「なら、あんたらも手伝いなね!」
「よし! あたいが陽だまり亭の手伝いをするから、ヤシロ、ノーマを手伝ってやってくれ!」
「あらあら。見事な適材適所ですね」
ベルティーナがデリアの無茶ぶりをくすくす笑って見ている。
何気に、デリアに甘くないか、ベルティーナ? ガキの面倒をよく見ているからか? 言葉遣いとか、あんまり注意しないんだよなぁ、デリアには。
そんな疑問を簡潔にぶつけてみると――
「デリアさんの言葉には、悪意は感じられませんので。敬語は、何よりも相手を敬う心が言葉に表れているか、それが重要なのだと私は思います」
――だそうだ。
ま、俺も注意されなくなったしな。心が重要ねぇ。気構えとか心づもりって、無料でなんとでも言えるから便利なもんだ。
で、ここ最近一番注意を受けているバルバラは……まぁ、相手を敬う気持ちなんか持ち合わせちゃいないんだろうな。あいつの考えていることは、如何に自分の意見を押し通すかってことくらいだしな。
教育に時間がかかりそうだ。
「ちなみにノーマ。こういう構造の――ライン引きっつぅんだけど――こういうのって、金物ギルドの連中に頼んだらどれくらいで作れると思う?」
石灰で白線を引くライン引きの構造を紙に描いてノーマに見せる。
途端にノーマの瞳がきらりと輝く。
「アタシが本気を出せば徹夜で終わるさよ!」
「お前じゃなくて、他の連中が作ったら、だよ!」
「他の連中には任せておけないさね! こういうのはアタシが……!」
「お前は今から俺と小道具作りに行くんだよ!」
「略したら『こづくり』やなぁ~!」
「おい、誰か! 今ここの前を通過していった薬剤師を捕まえて深ぁ~い穴の底に埋めてきてくれ!」
あいつのエロへの嗅覚は一体どうなってるんだ。
最早超能力だろ、あれ。
「アタシがやりゃあ朝までに出来るさけど……他の連中に任せると明日の夜くらいまではかかりそうさね。アタシがやりゃあ朝までには出来るさけどね!」
「んじゃあ、男衆に依頼しておいてくれ」
プレ大会は別に石灰を引くほどのことではない。
地面に枝か石で線を引いておけばいい。
「じゃあ、アッスント。長いロープとU字の鉄杭を用意してくれるか? あと巻き尺があればそれを」
「承りました」
「巻き尺なら、オイラがいいヤツを持ってるッスよ」
「んじゃ、貸してくれ」
「ウーマロさん。商売の邪魔をされては困ります」
「いや、アッスント。ボクとしては、予算はなるべく抑えたいんだよ。協力してよ」
不満そうなアッスントの後ろで不満そうにエステラがむくれる。
確かに、巻き尺なんかそうそう使わないからな、俺は。必要があればウーマロを呼ぶし。
「それじゃ、準備にかかるか」
結局、会議らしい会議は出来ずに解散となった。
とはいえ、エステラやナタリア、ノーマたちは俺と一緒に東側に行くことになるのだが。
「会場は、東側にある空き地を利用するよ。あそこなら、数日間占拠しても問題ないし、道具を置きっ放しにしても大丈夫だから」
立地的に活用しにくい空き地があるというので、そこを競技場として借り受けた。
通る路地こそ異なるが、場所でいうと監獄のそばだ。
監獄や領主の館が比較的近くにある関係で、あまり一般領民には開放しにくい場所という理由があり、現在まで店も住宅も建っていないのだそうだ。
あんな、囚人もいないような監獄、そばにあろうが問題なんか起きないだろうに。
多目的会館を出て、教会へ向かう道すがら、設営案の図面をもとにウーマロとざっくり打ち合わせをして、設営に必要なものを口頭で告げておく。
あとはウーマロのセンスでどうとでも料理してくれればいい。
「観客席が欲しいッスね」
「何人来るかも分からんから、地べたに敷物で十分だよ」
自由参加ではあるが、四十二区民全員が選手なのだ。
『選手=観客』なので、わざわざ観客席など必要ない。自軍の陣地に座って、そこを応援席にすればいい。
「でも、シスターやお年を召した方たちもいるッスし」
「なに? 『シスターがお年を召している』って?」
「……ウーマロさん?」
「ち、ちちち、違うッス! シスター『や』お年を召した方たちッス! ムムお婆さんやゼルマル先輩たちのことッス!」
ベルティーナに睨まれ、ウーマロが命がけの弁明を行う。
……つか、なんだよ、『ゼルマル先輩』って。
「ゼルマル先輩はその昔、腕のいい職人だったんッスよ」
「大工だったのか?」
「家具を作っていたらしいッス。けど、領主の館の建築には参加してたみたいッスから、大工仕事もこなせるんッスよねぇ、きっと」
などと、敬うようなことを言う。
「お前の方が上だろう、技術も、知名度も」
「いやいや! 何言ってるッスか、ヤシロさん! 経験は、何物にも代えがたい財産ッス! 職人として過ごした時間は、ゼルマル先輩が生きている間は何があろうと追い抜けないッスから、それだけで十分尊敬に値するッス」
「でも、もうすぐぽっくりいくだろ、あの爺さん」
「ヤシロさん!? 怒られるッスよ!?」
聞けば、陽だまり亭で顔を合わせるうちに意気投合して、技術の継承とかしてもらっているらしい。
ジジイの昔話なんて、聞くだけでも苦痛だろうに。
ウーマロって、どんなに名声を得ても、貪欲に新しい技術を欲しているんだなぁ。
「んじゃあ、いくつか観客席も設けておくか」
「そうッスね。ヤシロさんのやることッスし、いきなりとんでもないVIPが見に来るとか、普通にありそうッスからね」
呼びもしないのに勝手にやって来るようなヤツをVIP扱いしてやる必要はねぇよ。
……つか、そういうことを言うなよなぁ。マジで来そうなヤツが何人かいるんだから。フラグになるだろうが。
その後、ほどなくして俺たちは各々の持ち場へと散らばっていった。
ウーマロはニュータウンへ戻り入場門等大道具の手配と小道具作りの人員派遣を、イメルダは木こりギルド四十二区支部へ戻り木材の選出を行う。
ノーマも一度金物ギルドに戻り、ライン引きの作成を男衆に伝えてくることになった。……自分で作りたいと渋っていたけれども。用事が終わり次第、会場となる広場へ来て小道具作りに参加してもらう。
トルベック工務店の工房を借りようかとも思ったのだが、玉入れの籠とか、そこそこ大きな物もあるし、会場で作っちまった方が移動の手間が省けるだろうと判断したのだ。
先祖代々の天気予報術を継承しているナタリア曰く、しばらく雨は降らないそうだからな。
ウクリネスとアッスントは、各々「自分なりに必要だろうな」と思うものがあるようで、さっさと帰っていった。あいつらのやることなら、こっちから口を出さなくてもうまくやってくれるだろう。丸投げでOKだ。
で、ウッセは「一応運営委員だからな。今晩から会場近辺を若い連中に見回らせるぜ。道具とか、壊されると困るんだろ?」なんてことを言って、その手配へと向かった。
なんだかんだで、混ぜてもらえて嬉しかったようだ。
デリアとパウラとネフェリーは……省略する。
張り切り過ぎだ、あいつらは。
そして、教会の前まで戻ってきた俺たち。
ベルティーナと別れる前に伝えるべきことを伝えておく。
「ベルティーナ。ハムっ子を何人か使いに出してくれ。手の空いている弟妹は広場に集合。あと、何人かはミリィのところへ行って細工用の竹をもらってきてくれって」
「はい。そのように伝えておきますね」
「あと――」
運動会の運営よりも重要な役割が、ベルティーナにはある。
「新しいパンの審査を頼む。なるべく早めにな」
「はい! そちらはもう全力で準備を進めていますよ」
昨日。ソフィーと共に教会へ行った俺は、新しいパンの技術を教えてやるとベルティーナに告げた。
ただし、いくつかの条件をつけて。
一つは、新しいパンが貴族専用にならないこと。貴族が独占するためのパンなら、俺は極刑を食らってもその技術を教えないと、強く訴えておいた。貴族連中のためにタダ働きをしてやるつもりは毛頭ない。
その点はベルティーナも賛同してくれて、「利権のための道具にはさせません」とはっきり言ってくれた。どんな身分の人間でも、きちんと食べることが出来るようにと。
二つ目に、使用する小麦を限定しないこと。
これも利権を生まないための手段だ。貴族砂糖みたいに、どこかが出し渋って流通を操作されたのではパンの価格が暴騰してしまう。それをさせないよう、様々な区の小麦を使用することを条件に盛り込んだ。
そして三つ目に、パンにランクをつけてもらうよう要請した。
つまり、貴族様専用の超高級な、オシャレでラグジュアリ~なパンと、貧乏人用の安ぅ~いド低級なパンを作り、階級を明確に分けるのだ。
貧乏人の多い外周区で超高級パンを売ったところで、誰もそれを買えない。その結果売れ残りパンが無駄になる。おまけにパン職人の利益が減る。
そんなことにならないように、パンにランクを付けるのだ。
外周区にはランクの低いパンを、中央区にはランクの高いパンを置いてもらう。
こうすることで、貴族によるパンの独占を防ぐことが出来る。
なにせ連中は、安価で味も一級品であるサトウダイコン由来の甜菜砂糖を『貧民砂糖』などと呼んで忌避しているのだから。
わざわざランクの低いパンを貧乏人から巻き上げて独占しようなどとは考えないだろう。
つまり俺は、新しいパンの技術を教えてやる代わりに、『そのパンが平等に行き渡ること』を条件に挙げたのだ。
四十二区のガキどもが毎日でも柔らかいパンを食えるように、な。
「ランクが低い」と、「B級C級」と、「高貴な自分の口には合わない」と、好きなだけ見下せばいい。味は変わらん。
むしろ、名目上ランクを下げることで貴族が寄ってこなくなるなら万々歳だ。
そして、最後に。
情報提供者の個人情報を徹底的に秘匿してもらう。
それが俺であることはもちろん、陽だまり亭の関係者であることも、四十二区の人間であることも、すべて隠してもらう。
理由は簡単。厄介ごとを呼び込まないためだ。
革新的な技術は、トラブルを巻き起こす要因になるからな。
その点は、ベルティーナもよく分かっていて、最初から情報提供者に関する情報は秘匿するつもりだったようだ。そもそも教会がそういった方針であるらしい。
ま、四十二区発のパンを貴族様がありがたがって貪り食うなんて、教会としても隠しておきたいだろうしな。
逆に、売名行為に教会を利用されたくないとすら思っているかもしれない。
なんにせよ、俺にとっては好都合だ。
……俺の名が轟いてしまったら、ゆくゆく、俺がこの街一番の詐欺師になる際、足枷になるからな。
というわけで、パンの試作は四十二区の教会にて秘密裏に行われることになる。
試作に立ち会うのも審査するのもベルティーナになるとのことで、俺はパン職人にも教会の偉いさんにも会うことはないらしい。
下手に顔を合わせてコネを作らせないためなのだろう。主食たるパンを作るパン職人も、そして当然教会の関係者も、このオールブルームではかなりの力を持つ組織だ。悪用しようなんてヤツは五万といるだろうからな。
俺の作り方を見て、レシピをもとにベルティーナが教会関係者に作り方を伝え、そして、教会の人間がパン職人にレシピを伝えるのだそうだ。……うわぁ、すげぇ不安。
分かりやすいレシピを作ってやらなきゃな。
パンは美味いものだと広まってくれないと…………俺が儲けられなくなるからな。
ふふふ……
俺が技術を無償提供すると思った?
当然稼がせてもらうに決まってるじゃないか。
パンの権利は教会へ譲渡されるので、パンで稼ぐことは出来ない。そればかりか、ロイヤリティももらえない。
だったら――
『パンがあるからこそ儲けが出る方法』で稼ぐしかないじゃないか。なぁ?
俺の提唱するパンが認証され、世に流通するようになれば……陽だまり亭はまた一儲け出来る。
認証までに時間はかかるそうだが、それでも十日後くらいには認証が下りるだろうとベルティーナは言っていた。(俺の作るパンに問題がなければ、という条件付きだが、その点は心配していないそうだ)
と、なれば。
その十日間のうちに運動会を開催しなければいけない。
なんとしても、だ。
この運動会が、パンの知名度を爆上げするきっかけとなり、ひいては、『パンがあるからこそ儲けが出る方法』の布石となるのだ!
「ベルティーナ」
「はい」
「美味し~いパンを作るから、教会への働きかけ、よろしくな」
「はい♪ そこは任せてください」
以前食べた柔らかくて美味しいパンがまた食べられるということで、ベルティーナはずっと嬉しそうだ。
美味しいパンを食わせてやれば……俺のお願いも聞いてくれるだろう。
なぁに、ささやかなお願いさ。
『パン職人ギルドを、運動会のスポンサーにつけて』っていう、ささやかな、な。
あとがき
今夜、あなたの夢におじゃマンボウ☆
どうも、宮地です。
いえ、ヒデちゃんではありません。宮地っちゃんです。(おじゃマンボウって皆さん知ってますよね? コ○ン君にも登場してましたし!)
いやぁ、最近寝つきが悪くて、
朝起きても疲れが取れていなくて、
な~んかずっと肩が重くて、頭が痛くて、
ウチに住み着いている自縛霊さんに「なんでかなぁ~?」って相談してみたところ、
自縛霊さん「ん~、枕が合ってないんじゃね?」
と、アドバイスをもらいまして、
枕を買ってきました。
一緒に、切らしていたお塩を買って帰ったら、自縛霊さんがなぜか激おこで、
自縛霊さん「は? なに? 拙者のこと嫌いなわけ? ちょーありえないんですけど!? 激おこぷんぷん丸でござるぞ! めっちゃ鳴いてるホトトギスを殺しちゃうレベルなんですけどー!」
……最近の自縛霊さんって、気難しいですよね。
それはさておき、枕です。
さすが新しい枕。
これまで漂っていた謎の嫌なにおいが一切しません。
今までの枕って、安物だったんですかねぇ……
自縛霊さん「いや、それは加齢臭……いや、なんでもござらぬ(視線『そらし~』)」
しかも、低反発枕です!
押すとモチッとしていて、かるく反発してくるんです!
低反発枕さん「ちょっ!? 気軽に頭載せないでくれる!? ……まぁ、どーしても載せたいって言うんなら……しょ、しょーがないから、特別に載せさせてあげてもいいわよ!」
軽ぅ~い反発が心地いいです♪
あ~、気持ちいい~。
低反発枕さん「ふにゅっ……べっ、別に嬉しくなんか…………ぅうう! 頭ぐりぐりするなぁ~!////」
なんだか眠るのが楽しくなりそうですっ☆
あぁ、そうそう。
ツンデレといえば、先日――こんなラノベチックな体験をしたのですが、
聞いていただけますか?
実話です。
先日、駅でツンデレ女子(推定60歳前後)に絡まれました。
まるでラノベのように。それはもう、ラノベのように。
脳内でずっと『ラノベか!?』ってツッコミ続けてしまうくらいにラノベ展開でした。……ヒロインの年齢にさえ、目を瞑れば!
事の発端は、仕事帰り。
最寄り駅に降りた私は、いつものように疲れきって、ホームから人がいなくなるまでベンチに座っていました。……混雑するホームとか歩く気力残ってませんので。
で、そろそろ人もはけたなぁ、帰ろうかなぁと立ち上がり、とぼとぼ歩き始めたところ、
「ちょっと、あんた! 聞いてんの!?」
という女性の声が。
行ってみると、次の電車を待っているOL風の女性に向かって、小粋なステッキをぶんぶん振り回しているツンデレヒロイン(推定60歳前後)が。
――傷害事件五秒前!?
OL風の女性、疲れてたのか、元からそういう性格なのか、はたまたやかましいヒロイン(60)がうざったかったのか、
ずぅぅぅぅぅぅうううううううっとスマホいじって完全無視してました。
こんなに無視出来るものなの!? ってくらいに、我関せず。
表情一つ変えないで完無視。
一瞬、そのヒロイン(60)は、見えちゃいけないモノなんじゃないかと疑ったくらいに……
で、無視されたヒロイン(60)はどんどん怒りのボルテージを上げていって、
「こっち向きなさいって、言ってんのよっ!」
と、掴みかかる……というか、突き落としそうな勢いでOL風女性に突っかかっていきました。
――マジで致死する五秒前!?
思わず止めに入りましたとも!
えぇそれはもう全力で止めましたとも!
最寄り駅で人身事故とか、事件とか、冗談じゃないですから。
何より、私、幼少の頃左利きだったのを右利きに直したんですが、お箸だけは直せなくて今も左で食べているんです。そんな『隠れ左利き』なんて……真っ先に疑われるじゃないですか! 「あれれ~、おかし~ぞ~?」の蝶ネクタイ少年に! 事件なんて起こせないんですよ、ご近所さんで!
というわけで、私はそのヒロイン(60)と出会ってしまったわけです。
すれ違うだけの他人ではなく、自ら進んで接触してしまったわけです……やれやれ。(おっ、なんかラノベっぽい!?)
まぁ、ずっとヒロイン(60)と書くのも失礼なので、仮に『六十子』さんとしましょうか。(うむ! 微塵も失礼じゃない!)
私「あのっ!(過失傷害一歩手前にビビりつつ)何かお困りですか?」
六十子「え? ……あんた、誰? 駅員?」
私「いえ……(私、めっちゃ私服でしょうに)地元民です」
六十子「ならちょうどいいわ! この電車がどこに行くか教えなさい」
私「それは……○○行きですね」
六十子「はぁ!? おかしいじゃない。私は駅員に△△行きの電車が来るホームを聞いてここに来たのよ?」
私「あ、それは隣のホームですよ」
六十子「そんなはずないわ!」
私「(なぜ迷子なのにそんな自信満々に……)とりあえず、△△行きは、階段上って隣のホームへ……」
六十子「私に階段を上れって言うの!?」(忘れてるかもしれませんが、推定年齢60歳前後)
私「えっと……エレベーターも、ありますけど……?」
六十子「ここのエレベーター、臭いのよね。それに狭いし揺れる。好きじゃないわ」
私「(あ、一回使ったんだ……降りてくる時かなぁ、納得納得。使うよねぇ~、そりゃ)……この先にエスカレーターもありますよ。ちょっと歩きますけど」
六十子「……歩くの?」
私「えぇ、50メートルほど……」
六十子「……(イライラ)」
私「で、でもっ、ホームは平坦ですし!」
六十子「ならそれでいいわ。ついてきなさい」
私「(ついていくの!? え、なんで!?)」
六十子「何してんの!? 早く来なさいっ!」
私「……やれやれ」
その後、乗り換え案内アプリを駆使して六十子の目的地へ一番早く着く電車を調べ、乗換駅を教え、「この次の次の電車ですからね? 次のに乗ったら途中の駅で特急の待ち合わせして遅くなりますからね!」と念を押し、六十子の案内の任を終えたのでした。
去り際、立ち去る私の背中に六十子が――
六十子「あなた、なかなか見込みがあるわ。今後も精進なさい!」
なんて言葉をかけてくれて、六十子との旅(ホーム移動という名の大冒険)は幕を閉じた。
……の、ですが。
おっかしいなぁ……
こういう展開だと、翌日会社に本社の会長なり理事長が視察にやって来て――
六十子「業績が落ちているわよ! 上層部は何をやっているの! ……あら、あなたは?」
私「推定年齢60歳前後さん!?(椅子「がたっ!」六十子「私はまだ58よっ!」みぞおち「ぼっこぉ!」私「ごふぅ……やれやれ」)」
――みたいな展開があって、私がぐんぐん昇進するはずなんですが……来ませんねぇ、理事長。(チラッチラッ)
六十子さん、身なりが『ザ・ゴージャス』だったので、たぶんどこかのお金持ちさんなんだと思うんですが……
というか、そうでなければあの唯我独尊な性格には仕上がらないと思うんですが……ラノベじゃないんだから。
よく、「漫画みたい」とかいいますが、ここまでラノベみたいな出会いは初めてでしたね。
いやぁ、ラノベでよかった。
だって、もしこれがマンガだったら……
曲がり角でぶつかって、パンチラ目撃かおっぱいに顔押しつけって展開になっていたでしょうから……ヒロイン(推定60歳前後)の……
私、ラノベ畑の人でよかったなぁ……うんうん。
というわけで、程よく疲れたので、
モチッとした低反発枕さんに癒されながら眠りたいと思います。
低反発枕さん「しょ、しょうがないから、い、癒してあげるわよ……もう////」
低反発枕って、使っていくうちに反発していかなくなりますよねぇ……にやにや。
低反発枕さん「お、おやすみっ、いい夢……見なさいよねっ!」
私「すやすや……」
自縛霊さん「うむうむ。これで、寝苦しさとはおさらばでござるな」
私「……うぅ~ん……胸が苦しい……重たぁ~い……うぅ~ん…………」
次回も(私が健在であれば)よろしくお願いいたします!
宮地拓海




