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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
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355/821

無添加10話 パジャマでおじゃま

 外はもう真っ暗だった。


 真っ先にエステラの元へ行き、事情を説明してから各方面への手配を頼んだ。

 今からいろいろと準備をして、バルバラが納得するような結果を導き出してから四十一区に向かっていたのではあまりにも遅過ぎる。

 今でさえ、無駄な時間を使ったと焦っているくらいだ。


 なので、リカルドに言って先にテレサを確保してもらう。

 テレサが怖がるかもしれないが、放置して取り返しの付かないことになるよりかは百倍増しだ。

 それに、怖がられても嫌われるのはリカルドだし。うん。問題ない。


 最悪、そこら付近のゴロツキを牽制するだけでも随分と状況は変わるだろう。


「小さい子が絡むと真剣みを増すよね、『お兄ちゃん』」


 なんて、エステラのアホなイヤミをさらりと無視して、陽だまり亭へと急ぐ。

 あそこには今、頼れるヤツが二人もいる。


 全速力で街道を駆け抜け、スピードを緩めることなく陽だまり亭へと飛び込んでいく。


「ジネット! デリアとノーマはいるか!?」


 陽だまり亭のドアを開け放ち、店内へ向かって呼びかける。

 ……と。


「へ………………へにゃぁぁああああ!?」


 ロレッタとパウラが、なんかフロアで着替えていた。

 あぁ、そうか。今日は営業を休んでフロアで合宿してるんだっけ?

 それで確か、女が多くて風呂に時間がかかるから遅く帰ってきてくれって言われてたんだっけな。あはっ、忘れてた☆


「ごめんなさい!」


 慌ててドアを閉める。

 いや、しかし、大丈夫だ! ほとんど服着てたし、なんか、ボタンとか留めている途中だったし、ほんのちょっと裾の隙間からお腹とか見えただけで、薄ピンクのパンツとか、白と水色のストライプパンツとか見えてないし……チラッとしか。


「お兄ちゃん! わざとですか!?」


 物凄い形相でロレッタが飛び出してきた。

 着替えは完全に終わっている。もこもこした長袖と、同じ生地で作った短パンだ。


「ロレッタ、可愛い寝間着だな」

「誤魔化してもダメですよ!?」

「いやぁ、悪い悪い。ちょっと急ぎの用があってな、悪気はなかったんだ」


 見たこともないくらいに顔を真っ赤に染めるロレッタ。

 髪が濡れていて、いつもと違う雰囲気を纏っている。


「もう、ヤシロ! こういうことが起こらないようにって、ジネットが釘を刺しに行ったはずでしょう!?」


 ロレッタに続いて、しっとり濡れ髪のパウラが出てくる。

 こっちは上下共に七分丈のすっきりとしたパジャマのような寝間着だ。


「悪い。すっかり忘れてて……」

「わざとじゃないでしょうね?」

「精霊神に誓って、悪意はない」


 な、信じてくれよ。

 この俺様ともあろう御方が精霊神ごときに誓いを立ててやっているんだからさ。な?


「もぅ……ヤシロのエッチ」


 そして、パウラの後ろからネフェリーが胸元を押さえるようにして出てきた。

 ……あれ? ネフェリーいたっけ?


「わざとじゃないのは分かったけど……その…………み、見てない、よね?」

「うん。まったく視界に入ってなかった」


 おかしいなぁ……ロレッタの薄ピンクとパウラのストライプはチラッと見えた気がしたんだが…………いたかなぁ、ネフェリー。

 どうやら、俺の脳みそが自動的にネフェリーを視界からシャットアウトしたようだ。

 きっと、首の付け根辺りを目撃しないように配慮したんだろうな、俺の無意識が。


 ちょっと大きめのぶか袖パジャマを着たネフェリー。

 うん。着衣の方がいいよ、お前は。その方が不安な気持ちにならずに済むし。


「けど、お前ら。ちゃんと立てるようになったんだな」


 今日一日、ジネットやノーマ監視の下で食事を行った三人。

 一日といえど、きちんと食事を取れば貧血は軽減される。

 三人とも、心なしか肌の色が鮮やかになった気がする。……湯上がりだからか?


「えへへ……心配かけてごめんです」

「うん……あの、いっぱい怒られちゃった」

「けど、嬉しかった。みんなが、私たちのこと、真剣に叱ってくれて」


 三人は揃って照れ笑いを浮かべ、そして、揃って頭を下げた。


「「「ごめんなさい」」」

「あぁ、いや……」


 そう改まれると、なんというか、こそばゆいのだが。


 痩せたいという女子の悩みは分からんではない。

 この街よりももっと苛烈にダイエットに挑んでいる女子が大勢いた国の生まれだからな。理解は示せる。

 ただ、それが過度になるようなら止めに入る。

 それでも、根本の部分は理解出来ちまうんだよな。だから、まぁ、俺なりにこいつらの考え方が極端な方向にぶっ飛んでいかないように楔を打ち込んでおこうと思う。


「痩せているより、健康的な方が可愛いと思うぞ。まぁ、食い過ぎてぶくぶく太るのは困るけどな」


 男なんてのは、多少むちっとしている方が好きだったりするもんだ。

 だから、我慢せずに食って、その分働く。それでいいんじゃないか――と、そんなことを伝えたかったのだが。


「あ、あたしっ、急激に夜食が食べたくなってきたです!」

「き、奇遇ね! あたしも!」

「お腹が空くのって、体が『元気になるぞ!』って訴えかけてる証拠だって、ジネット言ってたもんね!」

「「「何か食べて健康になろう!」」です!」

「いや、太るぞ……」


 食い過ぎはダメだっつの。


 あ、そうそう。

 あの時も急を要していたから、より効果が高くなるような手法を取った。そのせいでこいつらを責めるような雰囲気を作っちまったわけだが……


「俺はともかく、ジネットや他のヤツらのことは悪く思わないでやれよ」


 ジネットなんか、ガラにもなく怒ってみせたのだ。

 結局、あのジネットの本気を受けてこいつらは目を覚まして真剣に取り組んでいるわけで、アレで責められたらジネットが可哀想というか……


「大丈夫です。あたしたち、ちゃんと分かってるですから」

「うん。悪くなんて思わないよ」

「感謝してるんだよ、私たち」


 うん。

 お前らがそういう認識でいるなら安心だ。

 とりあえず、ちょっと早いがアホっ娘トリオの汚名は返上だな。


「本当は、お兄ちゃんが帰ってくるのに合わせて、あたしたちでごめんなさいとありがとうを言うつもりだったですよ」

「そうそう。みんなで出迎えて、今日一日感じたことを素直に話そうって」

「なのにヤシロ、早く帰ってきちゃうんだもん……」

「悪かったって……」

「まぁ、悪気がないのはよく分かるですから、いいですけどね」


 そうそう。

 今は急を要するんだ。和んでいる場合ではない。


「それで、デリアとノーマは?」

「今、中庭で湯浴みをしてるです」

「あー、いっけねー、俺、ちょっと部屋に行かなきゃいけないんだったー」

「パウラさん、ネフェリーさん! ここに悪気の塊がいるです!」

「取り押さえるわよ、ネフェリー!」

「まったくもう、ヤシロのエッチ!」


 三人娘にがっちりと体を拘束される。

 ……くっ、武闘派ではないとはいえ、こいつらも獣人族……振り解けない。あと、めっちゃいい匂いする! で、湯上がりって体温高いんだよね! どきどきしちゃうゼ☆


「ヤシロさん……」


 そっとドアが開き、中からジネットが顔を出す。

 物凄く困り顔だ。……ごめんって。忘れてたんだって、マジで。


「お前はまだ風呂に入ってないのか?」

「はい」


 と言って、後ろ手でしっかりと、それはもうしっかりとドアを閉めるジネット。

 ちょこっとくらい隙間空けとけばいいのに。

 っていうか、こんなにきっちり閉まってたっけ、陽だまり亭のドア? 昔は結構な隙間が開いてたのになぁ……誰だよ、こんな綺麗に作り直したの……あぁ、そうか、あいつか…………


「ウーマロのアホー!」

「トルベック工務店の技術の高さに、改めて感謝したです、今、この瞬間に!」


 隙間のないドアに、ロレッタが称賛を贈る。

 ちっ……株を上げやがって、ウーマロめ。


「で、ふざけている場合ではなくて、緊急の用事があるんだ」

「ふざけてたのは、主にお兄ちゃんです……」

「デリアとノーマを呼んできてくれないか?」

「えっと、今すぐ……ですか?」

「あぁ、急いでいるんでな」

「今、デリアさんとノーマさんは、レジーナさんと一緒にお風呂に入られてまして」

「じゃあ、ジネットはあとで俺と一緒に入ろうな☆」

「話ズレてるですよ、お兄ちゃん!?」


 いちいち絡んでくるロレッタを無視して、ジネットに事の成り行きを説明する。

 場合によっては伝言してもらって、湯浴みを途中でやめてもらわなければ。


「――というわけで、そのサル人族に対抗出来る戦力が欲しいんだ」

「決闘……ですか?」

「まぁ、ちょっと乱暴な響きではあるが、テレサを救出するためには必要なんだ」

「そうね……そんな短絡的な人だと、一人で行かせるのは不安、よね?」


 と、決闘に難色を示すジネットを宥めるように、ネフェリーがジネットに語りかける。

 ジネットも、テレサの救出は急務だと感じているらしく、「そう、ですね……」と、小さく頷いた。


「話は聞かせてもろぅたで」


 ドアの向こうから声がして、レジーナが店から出てくる。

 黒猫の着ぐるみパジャマを着て。


「……どこで手に入れた、それ?」

「店長はんのお手製や」

「あの、ヤシロさんが以前、こういう物があるとおっしゃっていたので……作ってみたいなと……」


 確かに、日本にはそういうパジャマもあるんだぞと、どこかで言ったかもしれんが……作るかね。

 というか、いつも魔女みたいな服ばかり着ているレジーナが物凄く可愛らしいネコの着ぐるみパジャマを着ていて妙に可愛らしい。似合うな、お前。


「あんまじっと見んといてんか……この下が全裸やってバレるやん」

「いや、自分でバラしてんじゃねぇか!? つか、つけてこいよ、下着!」

「急いでたんや」

「はしょるとこ、他にもあったろ……」


 なぜそこを省略したのか……


「で、その妹はんの症状やけど……」

「あぁ。予測でしかないが、ビタミン欠乏症じゃないかと思うんだ」

「四十一区いぅたら、確か立地的に魚の流通はあんまあらへんのやったなぁ」

「それに、内臓系も食わないらしいしな」

「……内臓? え、自分、内臓なんか食べるん?」


 そうか。

 この街では内臓って食わないんだ……美味いのにな、ハラミとか。

 レバーにはビタミンAが豊富に含まれているのだが、食べる習慣がないのであれば知られていなくても仕方ないか。


「食生活の改善は難しいんかもしれへんけど……早ぅ手ぇ打たな、手遅れになってしまうかもしれへんね」


 回復する見込みのあるうちに処置を施さなければ、失った光が戻ることはなくなってしまう。


「そのためには、視野の狭いバカ姉を力でねじ伏せる必要があるんだが……」

「なら、あたいが相手してやるよ」


 どばたーん! と、ドアを開け放ち、デリアが庭に出てくる。

 濡れた髪がぎざぎざに立っている。乱暴に髪の毛を拭いたんだろうな。……梳かせよ、少しは。


 ちょっと裾の長いタンクトップシャツに短パンという出で立ちのデリア。デリアらしい寝間着だ。

 普段はチューブトップみたいな服を着ているので布地は増えているのだが……隠れた部分が増えた分、なんかチラ見え感が増してちょっとドキッとする。

 シャツの裾から見え隠れする短パンとか。


「力押しが通用する相手じゃないなら、アタシが出ても構わないさよ」


 デリアの後ろから、長い髪をタオルで押さえ拭きながらノーマが姿を現す。


 薄手の浴衣のような寝間着を羽織り、歩く度に波打つ谷間と、ちらりと覗く眩しい内ももが視界に飛び込んでくる。


「あぁっ、俺はどこを見ればいいんだ!?」

「どこも見ないでくださいっ」


 ジネットの両手が俺の頬を挟み込んで強制的に首の角度を変える。

 待て待て待て! この体勢は無理がある! 攣る! 首の筋攣るから!


 ジネットの手から逃れ、首の筋を揉む。

 くそ……こんなにたくさん湯上がり寝間着姿の美女美少女がいるってのに、揉めるのは自分の首の筋だけとか……何か間違ってんじゃないのか、この世界。


「単純に聞きたいんだけど、デリアとノーマってどっちが強いんだ?」

「戦闘ってことならデリアさね。アタシじゃ到底太刀打ち出来ないさよ」

「いや、でもよぉ。ノーマはズルい技使うんだよなぁ。こう、あたいが力を入れられない方向に腕を曲げたりしてきてさぁ」


 それはズルいんじゃなくて、そういう技なんだよ。

 合気道とか護身術によくあるヤツだ。


「速さはノーマの方が上だよな。あたいが本気で殴ろうとしても大抵かわされちまうもんなぁ」

「けど、アタシが締め落とそうとしても、デリアのパワーには負けちまうからねぇ」

「……つか、お前ら、え、仲悪いの?」


 何回か真剣にバトってるって感じがするんだけど?


「デリアが決闘を挑んでくるんさよ」

「ノーマだってたまに挑んでくるだろう!?」


 戦闘マニアかよ、お前らは。


「あたし、知ってるですよ!」


 武闘派二人の間に立ち、ロレッタが訳知り顔を「どやぁ」っとさらす。


「前にゴロツキギルドの人たちを追っ払う時に頼られて以降、いつお兄ちゃんに頼られても応えられるように、二人とも鍛錬してるです」

「ちょっ!? バラすなよ、ロレッタ!」

「ア、アタシは、別に…………適度な運動は健康と美容のためさね」


 そっか。

 こいつら、そうやっていつも気にかけてくれているんだ……

 で、まんまとこうやって頼っちまってるわけか。


「ありがとうな、二人とも」

「い、いやさね、ヤシロ。なに改まってんだい、らしくもないさね」

「そうだぞ、ヤシロ! あたいは頼れる女だからな! これくらい当然だぞ!」


 俺の何気ない言動が、こいつらに影響を与えてるんだな。

 ありがたいような……ちょっと怖いような。


「いつかまとめて礼をするよ。借りを作りっぱなしは落ち着かないからな」

「ホントか!?」

「なんでもいいさね?」


 物凄く食いついてきた二人。

 さて、何を要求されるのか……と身構えていると。


「「あれが欲しい!」さね!」


 と、同時にレジーナを指差した。


「あんな変態が欲しいのか?」

「さらっと酷いなぁ、自分」

「違ぇよ! あの変態じゃなくて、ガワだよ、ガワ!」

「クマの美人はんも酷いわぁ」

「あの寝間着が欲しいんさね! 中の変態じゃなく!」

「キツネの美人はんに言われると、なんや、そーゆープレイみたいでむらむらするなぁ」

「なんでアタシん時だけ反応が違うんさね!?」


 きゃいきゃいと戯れるノーマとレジーナ。

 けど、寝間着って……


「俺じゃなくて、ジネット案件だな」

「では、みなさんの分も作っておきますね」

「ほんとか!?」

「なら、頑張って役に立つさね!」


 そんなに欲しいかねぇ、着ぐるみパジャマ。

 まぁ、目新しい物好きだからなぁ、こいつら。


「では、ヤシロさんはいろんなバリエーションを考えておいてくださいね」

「デザインは俺がするのかよ……」

「ヤシロさんの方が、わたしよりも可愛いのを思いつきそうですから」


 普通逆じゃねぇか。お前の方が可愛いの好きそうなのに。

 まぁ、やるけども。


「でも、強さで言ったら、やっぱマグダが一番だよな」

「あれは別格さね」

「え、そうなのか?」


 俺はてっきり、お前ら三人は同じくらいなのかと。


「当たり前だろう? マグダはプロだぞ」

「『赤いモヤモヤしたなんか光るヤツ』を使われたら、到底太刀打ち出来ないさね」

「アレがない状態でも強いのになぁ」


 そうだったのか。

 マグダって、すげぇんだな。

 あと、ノーマは律儀だな。略さないんだ『赤モヤ』。


「ちなみにだけど、ナタリアは?」

「あいつは種類が違うよなぁ」

「そうさね。あれは戦闘というより暗殺向きさね」


 物騒なワードが出てきたな、おい。


「ルールがあって、開始のタイミングが決まっていて、移動範囲が制限されていれば、アタシらでも太刀打ち出来るさね。けど、ルールなしの殺し合いなら、たぶんアタシは負けるんじゃないかぃねぇ」

「あたいは……ん~…………どうかなぁ。やりにくいんだよなぁ、ナタリアとかノーマって」


 ナタリアって、やっぱすげぇんだな。

 四十二区トップクラスの獣人族にそこまで言わせるとは。


「じゃあ、エステラなら?」

「「あれには勝てる」さね」


 エステラは、まだまだっぽい。

 それでも、俺なんかよりずっと強いんだけどなぁ、エステラも。


 戦略を練ってくる切れ者タイプでない場合はデリアの方が有効そうか。

 ナタリアみたいに状況を利用して仕掛けてくるタイプだと、ノーマの方がいけるかもしれない。

 ……ナタリアに任せてみるってのも手ではあるのだが…………やっぱり圧倒的に打ち負かしてやる必要があるだろうし、デリアかな。


「マグダは、カンタルチカの仕事があるからなぁ」

「あの、でも……!」


 ロレッタが一歩、俺に詰め寄ってくる。

 そして、「あぅ……」と照れた顔で言葉を探す。


「一応、話だけはしに行ってあげたいです……マグダっちょ、除け者にされるの、寂しがる……ですから」


 飯を断った罪悪感が今さら芽生えてきたのか、はたまた単純にマグダのことを気にかけているだけか。

 とにかく、ロレッタは一度マグダに会いに行きたいらしい。


 ……決闘出来る場所の確保をエステラに頼んだら、「ちょっと時間がかかるかもしれないよ」とか言ってたし、まだ猶予はあるか。


「じゃあ、話だけしに行くか」

「はいです!」

「ではみなさん。寝間着で街をうろつくのはどうかと思いますので、外套をお持ちしますね」


 別に全員で行く必要はないのだが……ジネットもマグダに会いたいのだろう。昼に会ったってのに。寂しがり屋が多いんだから、この店。


「で、イメルダは?」

「もう寝とるで。起こしたるか?」


 ……小学生かよ、イメルダ。


 ジネットとイメルダが揃って陽だまり亭から出てきて、俺たちは揃ってカンタルチカへと向かった。

 結構な大所帯だ。

 なんだかんだと決闘ってのが心配なようで、全員付いてきたいと言っていた。


 エステラの呆れ顔が今から目に浮かぶようだ。






「マグダっちょ!」


 カンタルチカに着くなり、ロレッタが店へと飛び込んだ。

 自分の足で歩いて迎えに来いと言われていたロレッタ。

 まだ迎えに来たわけではないが、回復した自分を見せたかったのだろう。


「……ロレッタ」


 カンタルチカは営業中で、客でごった返していた。


 よかった、外套を羽織っていて。

 酔っ払いのオッサンどもにこいつらの寝間着姿なんてもったいなさ過ぎる。拝観料を取るにしても、1万Rbでも足りないくらいだ。


 外套を羽織ってマグダに駆け寄るロレッタ。

 そんなロレッタを、マグダはじっと見つめている。


「あの、マグダっちょ……あたし…………」

「…………」


 目の前に来たロレッタを見つめて……マグダは呟く。


「……薄ピンク」

「なんで下着分かるですか!? お兄ちゃんパワー付き過ぎてちょっと怖いですよ!?」


 バカめ、ロレッタ。

 お前の下着の色くらい、日頃のローテーションと今のお前の気分や状況を鑑みれば容易に予測が付くのだ。

 ……で、何がお兄ちゃんパワーだ、このやろう。


「あの、マグダっちょ……実は、まだ迎えに来れる状態ではないんですけど……それでも、あの……あたし、元気になったですから! もう、心配かけないですからね!」


 ロレッタの言葉をじっと聞き、マグダはこくりと頷いた。


「……待っている。焦らなくていいから、きちんと迎えに来て」

「マグダっちょ…………うんです! 迎えに来るです!」


 マグダに飛びつき、抱きしめるロレッタ。

 その頭を、マグダの小さな手がよしよしと撫でる。


「……でも、早くしないと、マグダがカンタルチカで人気者になり過ぎてお客が放さなくなる可能性も」

「それは困るです! マグダっちょは陽だまり亭の大切なメンバーです!」


 気合いも新たに、ロレッタが立ち上がる。


「店長さん! あたし、頑張って元気になるです!」

「はい。一緒に頑張りましょうね」


 ジネットが二人に歩み寄り、そして楽しそうに雑談を始める。


 和解出来てよかったな。

 お前らみんな。


 向こうでは、デリアとノーマがミリィと話をしている。

 パウラはカウンターの奥へ入り父親に会いに行ったようだ。


 ……で。


「なんでまだいるんだ?」

「アラアラ~? ダーリンちゃんは、オシナがここにいるとご不満なのネェ?」


 カウンターに肘を掛けて、気怠そうにはんなりとした笑みを浮かべているオシナ。

 どうやら、ずっと店を手伝っているようだ。


「マグダちゃんもミリィちゃんも、お酒のことよく分かんないから、オシナがいるとと~ってもお役立ちなのネェ」


 まぁ、そりゃそうなんだろうが。


「オシナ的にも、お手伝い楽しいネェ。……ちょ~っとうるさ過ぎるけれどネェ」


 ガハハと騒ぐ飲んだくれを一瞥して、でも不快感は見せない笑みで言う。

 こいつの本心はどこにあるんだろうな。


「ちょっと、マグダたちに話があるから、少しだけ頼めるか?」

「ハイハ~イ、ま~かせてネェ~」


 オシナに頼んで、少しの間だけ時間をもらう。

 俺たちが今やろうとしていることを掻い摘まんで説明をする。


「……なるほど。確かにマグダが行けば勝利は確実。けれど、マグダは一度引き受けた仕事を途中で投げ出したり出来ない真面目でキュートな人間」

「まぐだちゃん、いっしょけんめい働いてるもん、ね」

「ミリィ、『キュートいらなかっただろ』って突っ込むところさよ、今のは」


 ノーマの指摘も、ミリィは「ぁはは……」と笑って誤魔化すだけだった。

 ミリィもずっと手伝ってくれている。こりゃ、ミリィの分の着ぐるみパジャマも必要になるな。


「……デリアなら、ゴロツキごときに後れを取ることはない。託す」

「おう! 任せとけ!」


 そんな会話を交わし、客足がどんどん増えていくカンタルチカを、俺たちは後にした。

 手伝いたそうにしていたパウラとロレッタを引き摺って。

 お前らは、まだ復帰させられない。

 その「働きたい」って気持ちを、これから先も忘れるなよ。

 ジネットだって、本当は今すぐにでも陽だまり亭を開店させたいだろうさ。


 でも、今は我慢の時期だ。

 その我慢が、今後誤った道へ踏み出しそうな時のブレーキになる。


「あたし、絶対元気になって、カンタルチカの看板娘に復帰する!」


 パウラが吠える。


「私も、早く元気になってニワトリたちのお世話するんだから!」


 ネフェリーも、今は両親に迷惑をかけている状態だ。

 早く帰って親孝行してやるといい。


「あたしだって、元気になって陽だまり亭一の人気ウェイトレスになるです!」

「いや、それは無理だろう」

「普通はんは普通やさかいなぁ」

「まぁ、いいとこ三番手さね」

「一番手はワタクシですわね!?」

「いや……イメルダは陽だまり亭の一員ですらないじゃない……」

「ダメよ、ネフェリー。イメルダに正論言っても通じないって。あとロレッタが一番とか片腹痛い」

「みんな酷いです!? 特にパウラさんが酷いです!」


 酔っ払いが行き交い、昼間とは違う賑わいを見せる大通りを、一層賑やかに俺たちは領主の館へ向かって進んでいった。







あとがき




<問題>

『お』から始まって『い』で終わる

とっても柔らかくて、

大きくても小さくても尊くて

見ているだけで元気になれるもの、な~んだ?



正解は……




おっぱい!!




「いや、引っかけは!? 普通こういうのって引っかけ問題であるべきだよね、JK!?」

――と、思ったあなたはラッキーデー!

運命の相手に出会えるヨ・カ・ン☆


ラッキープレイスは二つ並んだ自動販売機の隙間!

そこに運命の出会いが待っているかも!?




「いや、どこで出会っとんねん!?」

――と、思ったあなたはプレミアムデー!

うんめぇ~果物は愛媛のイ・ヨ・カ・ン☆


ラッキーファッションはサランラップ!

これまで経験した事もない体験が出来ちゃうかも!?




「それ、確実に逮捕だよね!? サランラップ透明だからね!? 衣服にチョイスしちゃダメなヤツだから!」

――と、思った皆様!


レビューをいただきましたよ~!。*:゜☆\(*゜▽゜*)/☆゜:。*。


書いていただいたレビューが消えない限り……

記念すべき100個目のレビューです!

そのタイトルが、もう、ダイレクトに、おっぱい!

さすが! 本作にぴったり!


というわけで、 [2018年 08月 01日 02時 06分]の方!


きっと誰もが声を大にして言いたかったであろうことを声を大にして言ってくれた、そんな内容に思わずにやにやしました。潔し、あな潔きなり!

おっぱい押しかと思いきや、きちんとあらすじも語られ、見所も、そしてご本人様が感じられた素直な気持ちも表現されていて、面白さに惹かれて読み進めていくと最後にはきっちり作品に興味が湧いている、そんな知らない街を探検しているかのような不思議さが散りばめられた構成でした。

おっぱいを前面に出しつつ「18禁にならない雰囲気」という部分を明確に伝えてくださっているので、「おっぱいかぁ」と忌避されていた方のハードルも下がってくれるという親切設計。

まずご本人様が楽しんで書いて、そしてその楽しさを多くの人にお裾分けしたい、そんな心配りの感じられるレビューでした! どうもありがとうございました!!




というわけで、

宮地拓海流『今日の運勢』からのレビュー報告でした。

あ、『宮地拓 海流』ではないです。

日本近海にそんないかがわしい海流は存在しませんのでご安心ください。

きっと、ちょっと見栄を張ってサイズ大きめを買ったばっかりに波に流されてしまったビキニの上とかが、ばんばん流れてくる海流なのでしょう。

あと、未確認生物のパイゴンとかが潜んでいるかもしれません。

あぁ、パイゴンはネッシーみたいな首長竜ではなく、乳長竜です。

海ってロマンに溢れてますよね。


おっぱいとあとがき。

レビューで触れていただいた通り、

その二つがこの作品――を書いている作者の特異性を表していますねぇ。


いやぁ~。

これだけたくさんあとがきを書いていると不思議な現象が起こるもので――


もし、他作品の優秀な、健全な、または普通の作者様方が、

本編の後におっぱいの話をひたすら3000文字くらい書いていたとしたら、

「この作者どうした!? 大丈夫か!?」と思われるのでしょうが、


私の場合、

「あとがきにおっぱいが出てこないだと!? どうした作者!? 大丈夫か!?」と思われるようで……



んもぅ、皆様、大しゅき(*´▽`*)



同じ内容を書いて、

同じ文面のことを思われても、

意味が違うんですよね、不思議と。

たとえば、こんな場合です。


他作品の作者様「幼女が~、幼女で~、幼女だから~!」

他作品の読者様「この作者大丈夫か!?」


『異世界詐欺師』の作者「幼女が~、幼女で~、幼女だから~!」

『異世界詐欺師』の読者様「(おっぱいの話じゃない、だと!?)この作者大丈夫か!?」


と、このような感じです。


こんなにも理解者がいてくださるなんて……シアワセ(´▽`*)ぞくぞく……



じゃ、おっぱいの話しま~す。


夏の名残が残るうちに、

首元の大胆にあいたタンクトップを着ている巨乳美女の横乳を、

左右からモップの柄でぎゅむぅぅうううっと突っつくアルバイトとかご存知の方がいらっしゃいましたら至急ご連絡くださ……おっと、運営様と国家権力がアップを始めましたので違う話題に移ります!





とある暑い日、

駅のホームにサラリーマン風の男性(落ち着いた雰囲気の優しそうな男性)と、

OLさん(お胸が残念なことになっている、清楚系の小柄美女)が並んで立っていたんですね。

(『OL』は『オシャレレディ』の略です)

その二人の会話が……


OL「私、高校の頃のあだ名が『痴漢泣かせ』だったんだよね……」

サラリーマン「痴漢をよく撃退してた、とか?」

OL「ううん……リスクを冒して痴漢しても、メリットが少ないって……(胸を押さえる)」

サラリーマン「…………俺の場合、すごくメリットあるけど、それ」

OL「こんなのでいいの……?」

サラリーマン「それでなきゃ、ダメ……まである」

OL「…………えっち」

サラリーマン「……すんません」

後ろに並んでいたオッサン「熱っついなぁ、もう!」(列を離れて別の列へ)


斜め後ろで萌え死にそうでしたけども!?

え、なに?

付き合い始め!?

箸が転げても愛おしいお年頃!?

それはそうとオッサン、ダメージ受け過ぎじゃね!?


いや、確かに物凄いクリティカル喰らいましたけども!


宮地「ちなみに、私にとってもメリット大ですから、それぇー!」


って、割って入るべきだったのでしょうか?

悔やまれます!

その後、話を聞いていると(声、結構大きくてよく聞こえたんです)

OLさん、高校大学と女子校だったらしくて、

女子同士で結構酷いあだ名を付け合ってたらしいです。


曰く、


「大仏の嫁」

「フンコロガシ転がし(略して『ふんころころ』)」

「歩く心霊スポット」(写真写りがいつも心霊写真みたいだから、らしいです)

「オランウータンのメス(略して『らめす』)」

「ベビースター」(顔がベビースターラーメンだから、らしいです)


などなど。

女子のあだ名、容赦ないですね。


ただ、「大仏の嫁」さんの由来だけ聞けなくて……気になります!

あと、ベビースターラーメンみたいな顔って!?

あのキャラに似てるの? それとも砕けたラーメンみたいな顔なの!?

わたし気になります!


もし、彼女たちに出会えるのなら、

私は教えてあげたいと思います。


「君ら、付き合い始めの掴みネタに使われてたよ」って!


付き合い始めって、何話していいか分からないから、

とりあえず無難な笑いに走りますよね!

分かりますよ、そういうの!


え?

私の学生時代のあだ名ですか?


「宮地」ですけど?


…………あだ名ってね、仲のいい友人がいないと付けてもらえないんだよ……しくしくしく…………



あ、でも「どこかの有名人」って呼ばれてたことがありましたね、二週間くらいですけど。

そのきっかけが――


クラスメイトA「誰かは分かんないけど、宮地君って有名人に似てない?」

クラスメイトB「あ~、こんな感じの人いそうだよねぇ」

クラスメイトA「誰かは分かんないんだけど」

クラスメイトB「うんうん、誰かは分かんないけどねぇ」


で、「どこかの有名人」です。

……誰に似てるんでしょうね、私。

結局分からずじまいです。


中学の頃に「2~3回使った金ダワシに似てる」とは言われたことがありますけども。

あと、「電話で聞くと、カッパの声にそっくりだよね!」とか。

……あいつ、いつカッパと話たんだろう…………(遠い目)



というわけで、

私に「どこかの有名人」というあだ名を付けた方、

学生時代に「大仏の嫁」「ベビースター」と呼ばれていた女性の方、

こちらをご覧になっておられましたら「なんでそんなあだ名になったのか」をお聞かせくださ~い(^o^)ノシ



ヤシロはあだ名がいっぱいあっていいなぁ~。


英雄様

おっぱい大明神

おっぱい魔神

カタクチイワシ

てんとうむしさん

痛メン

穀潰し


……あればいいってものでも、ないですね。



次回もよろしくお願い致します。

宮地拓海


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