159話 解決、ご褒美、そして……
「ぅはは~いっ!」
ぎっしぎっしと、軋みを上げつつも力強く、水車は水しぶきをあげて回転する。
「代わってー! はーやーくーっ!」
「もーちょっとー! ぅははーいっ!」
「代わってー!」
「はーやーくーっ!」
ガキどもが水車の周りに群がっている。
順番待ちなのか跳ねる水と戯れているのか、もはや分からない状況だ。
「こらーお前ら! あんま覗き込むんじゃねぇよ! 川に落ちたらどーすんだよ!?」
「「「およぐー!」」」
「むぅ…………ならよし!」
デリアが漁の傍ら、ガキどものお目付け役もこなす。
……って、「よし」じゃねぇよ。お目を付けとけよ、お目付け役。
「落ちるなよー!」
「「「はーい!」」」
最初はどうなることかと思ったが、デリアもガキどもと上手くやっているようで一安心だ。
足漕ぎ水車が完成してから、この場所はガキどもの新しい遊び場になっていた。
デリアが漁を始める早朝から夕方まで、ひっきりなしに水が水路へと汲み上げられていく。お驚きの稼働率だ。
一応、大人の目がある時しか使用しないというルールがあり、ガキどもはそれを守っている。
河原で手巻き寿司をした日から、物の数日で足漕ぎ水車は完成し、その日からガキどもはこの新しい遊びに夢中になり、水路は復活を遂げた。
溜め池の水位も順調に増している。
今のところ、川の水がなくなるような兆候も見られない。
改めて、この川は水量の多い大きな川なんだと感心する。
「お~! ヤシロ~!」
あの日から、デリアは以前のような快活さを取り戻し、オメロは日々の安寧を取り戻した。
ホント……死にそうな顔してたもんな、オメロ。
「どうだ、水車! 大人気だろ!」
と、なぜか自慢げに胸を張るデリア。……別にお前の手柄でもないだろうに。むしろ俺じゃん。
「ガキどもと上手くやってるか?」
「あぁ! ちゃんと言うこと聞かせてるぞ」
「わー!」
「落ちたー!」
「「「きゃっきゃっきゃっきゃっ!」」」
「おい、落ちてるぞ、ガキ」
「んなあぁ、もう! しっかりしろよなぁ、お前らぁ!」
水位が下がったとはいえ、現在でも水深は1メートルを超える。
大人がしっかり見張っててやらないと、どんな事故が起こるか分からない。……って、あのガキどもを見てるとそんな心配いらないような気がしてしまうが……予測出来ないから事故は怖いのだ。あんなんでも、ちゃんと見ててやらないとな。
「「「「きゃっきゃっきゃっきゃっきゃっ!」」」」
……めっちゃ楽しそうだけどな。
一応、川の水位が1メートルを下回ると、水車が水面に届かないようになっている。
川の水も無限ではないので、そこまで水位が下がってしまった場合は、川の存続を最優先とすることになっている。
「あれ、楽しいんだぞ。ヤシロもやってみるか?」
「いや、俺はメンドイからやらない。……っていうか、デリア、やったのか?」
「おう! 凄く速く回せたぞ!」
速さを競うものでもないんだが……壊すなよ?
足漕ぎ水車は、ある種のアスレチックのような感覚でガキどもに浸透しているようだ。
アスレチックか……、作ってやれば夢中になって遊びそうだな。
まぁ、そこまでしてやる義理はないけどな。
「てんとうむしさ~ん、でりあさ~ん」
遠くからミリィの声が聞こえる。
見ると、小さな体を精一杯大きく見せようとぴょんぴょん飛び跳ねているミリィがいた。
「わぁ、可愛い。持って帰りたい」
「あ、じゃあ、あたいも付いていく!」
いやいや……そうじゃないだろう。
「こんにちはぁ~」
ひらひらと手を振りながら、ミリィが河原へと下りてくる。
手には大きなバスケットが持たれている。
「ぁのね、ギルド長さんと大きなお姉さんたちがね、でりあさんと、てんとうむしさんにって」
バスケットの中には淡い橙色をした雫形の果実が詰まっていた。
「ビワかぁ。こんなんまで採れるんだな、あの森」
「すごぉい、ょく知ってるね、てんとうむしさん。これ、ぁんまり有名じゃないのに」
「俺の故郷にもあったんだよ」
「どうやって食うんだ? 丸かじりか?」
「まぁ、待て。手本を見せてやる」
ビワは、ガキの頃近所に住んでた婆さんが育てていて、たまに女将さんがもらってきたりしていた。
ヘタを摘まんで皮を剥ぐ。力を入れなくてもするりと剥ける薄い皮。皮が剥けるそばから、瑞々しい果汁が溢れ出して指へと垂れてくる。
皮が剥けたら果実を横向けて一気にかぶりつく。
うん! 甘い!
「おぉ、美味そうだな! あたいも!」
デリアが見よう見まねでヘタを摘まみ、丸かじりした。
「見てた、俺のお手本!?」
「ばりぼりばりぼりっ!」
「種っ! 種は出して!」
「…………甘いけど……渋い」
「えぇい! ちゃんと食わねぇからだよ! ほら、剥いてやるからちゃんと食え! 種は噛まないように、優しくだぞ!」
ささっと剥いたビワをデリアに渡す。
「……優しく…………はむっ」
小熊の甘噛みのような優しさで、デリアがビワを食み……全身の毛を逆立てた。
「あ…………あまぁ~いっ!」
「だろ? ちゃんと食えば美味いんだ、ビワは」
「ミ、ミリィっ! こ、これ全部もらっていいのか!?」
「おい! 半分は俺んだよ!」
「また持ってきてあげるから、今日は、てんとうむしさんと半分こ、ね?」
「ホントか!? ミリィはいいヤツだなぁ!」
「ぅにゃっ!?」
デリアがミリィに抱きつき、そのまま小さなミリィを持ち上げる。
「で、でりあさんっ、こ、怖いょぅ! ちょっと、怖いよぉう!」
ぶんぶんと振り回され、ミリィが目を白黒させている。
そして、羨ましそうな目でガキどもが新しい『アトラクション』を見つめている。……デリア、お前、あとで絶対ねだられるからな。覚悟しとけよ。
「んじゃあ、俺ももらって帰って、マグダたちに食わせてやろう」
「ぅ、ぅん……じねっとさんと、ろれったさんにも……ね」
地上に生還したミリィは、足元がふらふらと覚束ない様子だった。
そんなに怖かったのか。
「ど、どうしたミリィ!? ふらふらじゃねぇか!? まさか、また無理してんじゃないだろうな!?」
「いやいやいやいや!」
無自覚!?
今さっき自分がミリィに何したのか、記憶にすら残ってないのか!?
「ダメだぞ、ミリィは小っこいんだから無理しちゃ!」
「はぅっ!? ち、小っちゃくないもんっ!」
「なんかあったらあたいに言え! 絶対助けに行ってやるから!」
「ぇ…………ぅん。頼りにしてるね、でりあさん」
「おう! 任せとけ!」
水をめぐる口論から一転、この二人の仲は急速に近くなった。
というか、デリアがミリィを甚く気に入ったといったところか。
……もっとも、今しがたミリィの身に襲いかかった身の危険は、デリアが原因なんだけどな。
「ちょうどマグダに何かご褒美をやりたかったところだし、使わせてもらうよ」
「ぅん。まぐだちゃん、頑張ってくれたもんね」
「ん? マグダがなんかしたのか? あたい知らないぞ?」
マグダは先日、外の森の中にある湖まで出向いて水を持ち帰ってきたのだ。
水筒に少しだけだが、おかげでレジーナに依頼して水質調査をすることが出来た。
結果は、生活用水のほぼすべてに使用出来るくらいに綺麗な水だということだった。
飲料水にも出来るし、大量に取っても悪影響を及ぼすような微生物も検出されなかった。
まぁ、木こりや猟師が普段から使用しているらしいし、問題はないだろうと思ったのだが……ほら、あいつら『普通』の人間と体の造りが違うからなぁ……
だが、これでお墨付きを得たわけだ。
最悪の場合、エステラたち領主が連名で狩猟ギルドに依頼をかけて水を運んでもらうことになった。四十区も四十一区も、同じように水不足に喘いでいるからな。
そのための第一歩を、マグダが自発的に踏み込んでくれたのだ。
「……狩りのついでに取ってきた」とか言っていたが、アレは水の方がメインの目的だったんだろうな。
ジネットたちが心を砕き、多くの者が頭を悩ませていたから、自分に出来そうなことをしてくれたのだろう。
マグダらしい気遣いだ。
なので、ご褒美を何かやらないとなぁと思っていたところなのだ。
このビワなら文句なしだろう。
「ぁ、そうだ。でりあさん。まーしゃさんにぉ礼、言っておいて。海獣の皮、すごく役立ってるって」
溜め池を覆うシートは、マーシャが提供してくれた巨大海獣の皮を使用している。
コレが、防水性に優れ、軽く柔らかく、しかも頑丈で、まさに打ってつけの皮だったのだ。
クジラか何かだと思ったのだが、魔獣らしい。俺の知らない生き物だった。
「あ~、あたいもマーシャにちゃんと礼言っとかなきゃなぁ」
「ん?」
目を向けると、デリアは少し照れくさそうにはにかみながら、かりこりと頬を掻いた。
「あたいが悩んでる時にさ、『ヤシロに相談しろ』って、何度も言ってくれたんだよな」
あの日。マーシャは、デリアを心配して四十二区に来ていた。
「けどあたい、ヤシロに会ったら怒られるかもって思ってたからさ、言うこと聞けなくて」
「まぁ、それが分かってたから、わざわざ陽だまり亭に顔を出したんだと思うぞ」
俺たちがデリアを訪ねた日の朝、マーシャは陽だまり亭を訪れ、海魚を差し入れてくれた。
それで手巻き寿司を作ろうと思ったわけで。
わざわざ海魚を持ってきて、「デリアちゃんが心配だから様子見に来たの~☆」なんてことを俺に言い、そのくせその後ノーマのところにイカリの発注に向かった。
考えてみればちぐはぐな行動だ。
今思えば、あれはマーシャからのサインだったんだろうな。
『気付いてあげてほしい』っていう。
悪かったな、その時に気付けなくて。まぁ、その日のうちに解決して、マーシャ的には満足していた様子だったけれど。
海獣の皮も、礼のつもりだったのかもしれないな。
「それじゃあ、この袋を使って、ビワ、半分こしてね」
と、少し大きめの袋を差し出すミリィ。
用意周到だな。
俺はそれを受け取り、ビワを袋に入れていく。
マグダには少し多くやるとして、四人で分けるとあっという間に食いつくしてしまいそうだな。
「ビワって流通してないのか?」
「ぅん。あんまり食べる人がいないの」
「美味いのにな」
「そうだね。これは生花ギルドのみんなが好きなんだけど、知名度が低いから、隠れたオヤツなの」
鮭といい、ビワといい、知る人ぞ知るって扱いの美味い物が多過ぎる気がするな。
探せばなんだってあるんじゃないだろうか、この街は。
リンゴもサクランボもビワも、みんな生花ギルドが森で採ってきてるってことは、果樹園のような場所はないのかもしれないな。
レモンを作ってるところはあったみたいだけど……
「もう少し量があれば、タルトにでもするんだが……これだけじゃちょっと寂しいか」
タルトなら、やっぱりフルーツがたっぷりないと寂しい。
今回は諦めるか。
……と、思ったのだが。
「……タルト?」
デリアの瞳が、ギラリと輝いた。
「ビワで、タルトを作るのか?」
「お、おぉ。でも、今回は数が少ないから、次の機会にでも……」
「美味いのか!?」
すげぇ食いつきだ。…………噛みつかれたりはしないと思うんだが……
「ビワをコンポートにしてタルトにすれば、かなり美味いぞ」
「これを譲ったら食わせてくれるか!?」
要するに、食べたいということらしい。
「あたいさぁ、ここ最近川を離れられなくて、そういう手の込んだ甘い物食べてないんだよなぁ。ポップコーンとネクター飴は美味しいから好きなんだけど、やっぱ、ケーキは別格だろ?」
熱弁が始まった。
いや、ちょっと時間作って食いに来ればいいじゃねぇか。
「オメロは泳げないから、子供らが川に落ちた時助けられないし、他のヤツらは役職もない連中だし、こう、頼りないっていうか、任せられないっていうか、保護者とか責任者って感じじゃないんだよなぁ……オメロの方が溺れそうだし」
へぇ。
デリアのヤツ、適当にしてるのかと思いきや、きちんとガキどもを預かる責任を感じてるんだな。それも、結構過保護なくらいに。
言動が突き抜けているから忘れがちだが、こいつは一つのギルドを束ねるギルド長なんだよな。
責任感の強さはさすがってわけか。
「けど、もう子供らも慣れたろうし、タルト作ってくれるなら食べに行くぞっ!」
「おい、責任感!」
見直した瞬間に手のひら返されるとはなっ!?
「あたいこれ、いっぱい食べたいけど、……けど、全部ヤシロにやる! だから、タルト食べさせてくれ!」
両手で持ったバスケットをこちらに差し出してくるデリア。
けどな……そんな、捨てられる直前の子イヌみたいな半泣きの顔されてちゃ、受け取れねぇっての。
「食べ……食べたい……けどっ! タルトはもっと食べたい…………!」
「ぁ、あの、でりあさん。ビワなら、また持ってきてあげるから、ね? そんな泣きそうな顔しないで……ね?」
「ホントか!? いいのか!?」
「ぅん。森のお世話頑張ったから、今年は豊作なの」
「やったぁ! じゃあ、ヤシロ。はい、これ! よろしくな!」
……もらえると分かった途端、あっさりとバスケットを押しつけてきた。
お前のその逞しさ、ちょっと分けてほしいよ……
しかし、この水不足の中、よくもちゃんと世話が出来たもんだな。
豊作って、凄いことなんじゃないか。普通よりも厳しい状況なのにな。
「それじゃあ、作ってくるから、あと二時間くらいしたら陽だまり亭に来てくれ」
「分かった! それまでに子供らを疲れさせて帰らせるな!」
いや、他の誰かを監視役に置いてくれればそれでいいんだが。
「オメロと、誰か泳ぎの上手いヤツをセットで置いておけば問題ないだろう?」
「そうか! 二人掛かりでやらせればいいのか! ははっ、やっぱりヤシロは頭がいいなぁ!」
思いつきそうなもんだがなぁ、それくらい。
まぁ、デリアはどんなことに対しても「自分が全力で!」ってタイプだしな。
「ぅはーい! ケーキだケーキ! 全力で食ってやるっ!」
……そこでは「自分が全力で!」を発揮するなよ。ケンカになるから。
「ミリィも一緒にどうだ?」
「ぇ、いいの?」
「当たり前だろ。ミリィもいろいろ頑張ったもんな」
「ぅん! じゃあ、でりあさんと一緒に行くね」
「おう」
今から陽だまり亭に戻って作り始めれば、昼過ぎには焼き上がるだろう。
厨房の隅っこを使わせてもらおう。
デリアとミリィ、あとガキどもに声をかけてから、俺は陽だまり亭へと戻った。
「美味しいですねぇ」
「……美味」
「あたし、初めて食べたです!」
陽だまり亭の面々が幸せ満開の表情で、生のビワを堪能している。
ケーキの前に素材の味を知ってもらおうと、一つずつ渡したのだ。
気に入ったのなら、今後定期的にミリィからもらってもいいかもしれない。
アッスントを間に入れれば、購入することも可能だろう。
「これをタルトにするんですか?」
「あぁ。ビワをコンポートにして、載せようと思う」
生で食うのも美味いのだが、コンポートにすると甘さに説得力というか、迫力が生まれる。
「それじゃあ、今から準備するから……、ジネット、手伝ってくれ」
「はい」
「それから、マグダとロレッタ」
「……なに」
「なんでも言ってです!」
意気込む二人に、重要な任務を申しつける。
客席を指さして――
「ヤシロ! もう出来たか、ケーキ!? まだか!? もう出来るか!?」
「うふふ。楽しみですねぇ、新しいタルト。うふふふ…………じゅるり」
「気の早いデリアとベルティーナを押さえておいてくれ」
デリアはあの後すぐにやって来るし、なんでかその後ろからベルティーナが付いてくるし……こいつらにビワを渡したら、一瞬で食い尽くされちまうだろうな。なんとしても押さえ込まねば!
「んじゃ、よろしくな」
「むむむ……なんとも難易度の高い任務です。下手をすると命の危険まであるです」
「……最悪の場合、拳で分からせる」
物騒だな、おい。
俺は、ロレッタに出来立てのポップコーンを渡し、トンッと背中を押して……飢えた獣(デリア&ベルティーナ)の前へと差し出した。
「にょはぁぁああっ!? お兄ちゃん、なんてことを…………にゃはぁああっ!? 獣がっ、飢えた獣が、襲いかかってくるですぅぅう!」
「「甘い物っ! がるるるぅ!」」
飢えた獣にもみくちゃにされるロレッタを見ながら、俺はマグダにそっとビワを渡す。
「……これは?」
「頑張ったから、一個おまけだ」
「…………特別扱い」
「おう。頑張ったからな」
「……なら、また頑張る」
マグダの尻尾が俺の足にまとわりつき、そっと離れていく。
喜んでくれたようで何よりだ。
「じゃ、急いで作るか」
「はい。わたしも楽しみです」
ビワを持って厨房へ入る。
ジネットはすでにタルトをマスターしているから、タルト生地とカスタードクリームを任せる。
その間に俺はビワのコンポートを作る。
ビワを半分に切り、膨らんだ方から皮を剥くと一気につるんと剥ける。あとは種を周りの渋皮ごと取り除く。スプーンを使えば渋皮も簡単に剥ける。
「楽しそうですね」
「やってみるか?」
「はいっ!」
やり方とちょっとしたコツを教えて、ジネットにビワを渡す。
ビワはすぐに酸化して変色するから、剥いた物から順にレモン水へと投入していく。
ジネットはすぐにコツを掴み、あっという間にすべてのビワが剥けた。
ここからは分業だ。
急がないと、外には獣がいるからな。
水と砂糖、それからちょっとだけ白ワインを入れてビワのコンポートを作る。
「水。なんとかなりそうでよかったですね」
作業をしながら、ジネットがそんなことを呟く。
「水がなければ、コンポートも作れませんからね」
「確かに、水がない時にコンポートなんか作ってる場合じゃないよな」
飲み水も危うい状況でコンポートとか作り始めたら暴動が起こるな。
いや、デリアとベルティーナがいればコンポート派が勝つかもしれないか?
そんな、くだらない想像をしながらも作業は進み……タルトは焼き上がる。
つやつやと美しく輝くビワが整然と並べられた、目にも楽しいビワのタルトだ。
切り分けて持っていくと――
「はぁ……はぁ……なかなかやるな、ロレッタ……」
「デ……デリアさんこそ……さすがに手強かったです……」
フロアでデリアとロレッタがぐったりとしていた。
……何やってたんだよ、お前らは。
「こんにちはぁ~」
「いらっしゃいませ、ミリィさん」
タイミングよくミリィがやって来て、ビワのタルトの試食会――という名のお茶会が開かれる。
ビワのタルトは、ここ数日の苦労や苦悩を労うかのような甘さで、あっという間に食べ尽くされてしまった。こりゃあ、陽だまり亭に並ぶのも時間の問題だな。
「ヤシロ、おかわり!」
「ねぇよ」
「そこをなんとか!」
「無茶言うな!」
「ヤシロさん……人間には、不可能なんてないんですよ」
「もっともらしいこと言ってもねぇもんはねぇの!」
「ぁの、でりあさん、しすたー……またビワ、持ってくるから、また今度、ね?」
ミリィがデリアとベルティーナを宥め、マグダとロレッタが空いた皿を片付け始め、ジネットがお茶のおかわりを持ってきた頃……ふと、窓を叩く音がした。
ぽつぽつと、小さな音が。
「あ……」
ティーポットを手に持ったまま、ジネットが窓際へと歩いていく。
「雨が降ってきました」
その声は少し嬉しそうで。
そして、こちらを振り向いた笑顔は楽しそうで。
なんとなく、俺は事態の収束を感じていた。
まとまった雨さえ降れば、また四十二区は元の平穏を取り戻すだろう。
徐々に雨脚を強めていく雨の音を聞きながら、そんなことを考えていた。
あれから二日間、雨は降り続いた。
雨量もかなりのもので、陽だまり亭は久しぶりに暇を持て余していた。
横殴りの雨が降りしきり、世界がびしょ濡れになっていく。
これまでの分を取り戻すかのように荒れ狂う空模様に、それでも笑顔になってしまうのは、あの水不足が解消されるだろうという思いからだろう。
この程度ではまだ足りない。けれど、降らないよりは全然いい。
叩きつけるような雨音は騒がしくも、世界を静かに包み込んでいる。そんな気にさせてくれる。
人の少ない陽だまり亭で、俺たちはのんびりとした時間を過ごしていた。
翌日舞い込んでくる騒動のことなど、知りもしないで。
豪雨が去り、久しぶりに太陽が空に顔を出したその日の早朝、デリアが陽だまり亭に飛び込んできた。
「大変だ、ヤシロ! 川が……」
「どうした? 大雨のせいで今度は氾濫でもしたのか?」
「違う! そうじゃないんだ!」
その後もたらされた言葉を、俺はすぐに理解することが出来なかった。
「川の水が、全然流れてこないんだ!」
…………は?
いつもありがとうございます。
引きです!
めっちゃ引きで終わってみました。
……四十二区の災難は、まだ終わらない。
そんな感じで次回へ続きます!
レビューをいただきました! 2つも!
そして、39件です! 39!
これはもう、アレを言わざるを得ないでしょう!
皆様、
サンキュー!
はい。予想された方、大正解です。
ありがとうございます。
それでは、お返事おば!
2016/08/04 23:19の方。
どうも、プロおっぱいです。
こういうノリが本作っぽいですね。軽妙でユニーク。ちょっとエッチで、かなりおっぱい。
論理的なレビューもいいけれど、こういうノリのいいレビューも必要ですよね!
「詐欺師」というマイナス要素の強いタイトルだけに、こうやって楽しい雰囲気を広めていただけるのはとてもありがたいです。
おふざけの中にも、ちゃんとキャラ性を活かした作品紹介が織り込まれている小技の利いた通好みのレビューでした。
ありがとうございました!!
2016/08/05 16:08の方。
またしても、初レビューに本作を選んでくださった方がっ!
その理由は……おっぱいは、人を動かす! さすがですね、おっぱい! そして、日本にまた新しい記念日が誕生いたしました。8月5日、パイ突つきの日。
ネタを交えつつ、キャラ名が出てくると、このキャラが好きなのかなってにんまりしてしまったりして、にやにやと読ませていただきました。
書き手の楽しさが伝わって一緒に楽しくなれるような、ホームメイドな温かいレビューでした。
ありがとうございます!!
というわけで!
レビューへの感謝でした!!
現在Twitterでは、全プレ企画を実施中です。
8月10日までです。もし「まだ参加してないよ~」という方は是非!
おっぱいにスポットが当たり気味ではありますが、
ジネット、エステラ、マグダが可愛いSS付きです! というか、SSがメインです!
実は、書籍はWEBに比べるとおっぱい率がかなり下がっています。
しかし、それでも、おっぱい関連の感想をたくさん頂戴します。
WEB版をご存じない方からも!
これはつまり……
抑え目でも、十二分におっぱいだ! ――と、いうことなのでしょうか。
じゃあ、WEB版はどんだけおっぱいなんだ!?
えっへん!
あれ? なんだか、ちょっと誇らしい気持ちに……なんでだろう。
ともあれ、
就職活動などで、履歴書の【趣味】の欄に『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』と書いた方が不当に不採用を喰らわないことを切に祈ります。
最近では、おっぱいの話をしないだけで、体調の心配をされるくらいに、
おっぱいの人として認められつつありますが(イェイッ!)、
実は、あんまり「エロい」とか「スケベ」とか「ヘンタイ」とかって言われたことはないんですよね。
みなさん、口を揃えて、「しょうがない」と。
「しょうがない人だなぁ」と、おっしゃいます。(イェイッ!)
私的には、クラスの女子に「もう、エッチ!」とか言われたいんですけどねぇ。
言われたことなかったなぁ……
大体が、「…………キモッ」でしたからねぇ……
女子「……キモッ」
私「ありがとうっ!」
女子「…………キモッ」
私「ありがとうっ!!」
女子「………………キ」
私「ありがとうーーっ!!!」
女子「……………………ぅえ~ん、こぁいよぅ~」
私「なぜっ!?」
だいたいこんな感じです。
うなぎ屋「肝っ!」
私「ありがとう!(肝吸い『ずずー!』)」
フォアグラ屋「肝っ!」
私「ありがとう!(ワイン『くぴー!』)」
呉服屋「きもーの!」
私「ありがとう!(帯『くるくるー!』女中さん『あ~れぇ~』)」
だいたいこんな感じです!
ほぅら、
皆様の視線が生温かくなってまいりました。
心地いいです!
そういえば、
『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』一巻の発売に合わせてTwitterを活用するようになったのですが、(これまで、アカウントだけあって、読専(?)だったんですが)
そのおかげか、会話のテンポが少しだけ早くなりました。
もともと、じっくり考えてから、頭の中で「あーでもない、こーでもない」と言葉を選んで発言するような子だったんです。
ですので、編集様との電話ミーティングも。
編集様「一巻のプロットなんですが、いつ頃出来そうですか?」
私「…………(一巻のプロット……えっと、考えて、書いて、修正して、だから……)」
編集様「とりあえず、出来次第お送りください。それからもう一件、別のお話があるのですが」
私「…………(だいたい、三週間くらいかなぁ……?)」
編集様「特典用にサインのデータをいただきたいのですが、送っていただけますか?」
私「はい。三週間くらいで書けます!」
編集様「サインに三週間!?」
――みたいなことに。
それが、
Twitterという、次々に言葉が流れ込んでくる世界に身を置いたおかげで、
随分と会話のテンポが早くなりました。
編集様「二巻のプロットなんですが、いつ頃……」
私「おそらく三週間くらいあれば大丈夫です」
編集様「出来れば二週間以内に……」
私「ふふん! そう言うと思って、実はすでに完成させてあります!」
編集様「もう出来てるんですか!? でしたら早速……」
私「だと思って、すでに送ってあります!」
編集様「迅速な対応ありがとうございます。では、拝読させていただき折り返し連絡を……」
私「大丈夫です! 代わりに読んで、気になった点と変更すべき点を私のメール宛てに送っておきました!」
編集様「いや、変更するべき点を自分で探せるなら、最初から……」
私「さらに言うなら! もうすでに著者稿も印刷も終わらせてありますっ!」
編集様「勝手に!?」
私「発売もしておきましたっ!」
編集様「早いわっ!」
これくらいスピーディーになりました!
Twitter凄いなぁ。
そんなわけで、まだまだ全プレ企画実施中です!
ふるってご参加ください!
……あ、間違えた。
「ぷるんっ!」って、ご参加ください!
……はっ!? 間違ってなかった!
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




