後日譚38 巡業する陽だまり亭
「お~いしぃ~!」
カナヘビみたいな顔をした少年がポップコーンを頬張っている。
隣では、ロップイヤーの耳を顔の両サイドに垂らした幼女がもきゅもきゅと頬張ったクレープを咀嚼している。
現在、俺たちは三十八区にいる。
そろそろ太陽が真上に昇ろうかというような時間だ。
「この区の方たちにも気に入っていただけたようで、嬉しいですね」
お好み焼き用の鉄板で薄いクレープの生地を焼きながら、ジネットが嬉しそうに言う。
この前に立ち寄った三十九区でも、客の感触は上々だった。
見たこともない食い物に興味を引かれ、美味そうな匂いに胃袋を掴まれ、みんなで集まって外で頬張る。そんな、普段と違う雰囲気のおかげで、客足は上々、売り上げ好調、陽だまり亭の屋台は大人気を博した。
立ち食い故に、多少行儀悪く見えたりもするのだが、そこが逆にいい。
顔見知りで集まって、おしゃべりしながら頬張る飯は、さぞ美味いことだろう。
「……ヤシロ。そろそろお好み焼きのスペースをあけてほしい」
「大人たちが飢えた獣みたいな顔してるです!」
屋台は二つ。
片方はポップコーンとタコスを扱い、もう片方はお好み焼きとたこ焼きの販売用だ。鉄板を付け替えて作る料理を調整することで、品目を増やしている。
現在は全体をフラットな鉄板にして、クレープとタコス用のトルティーヤを焼いている。
「……子供のお腹は満たされた……ここからは、オトナの時間っ」
「要するに、甘い物ばかりじゃなくて、ガッツリ食えるものも売れってことだろ」
お好み焼きのどこが『オトナ』だ。
しかしまぁ、マグダの言うことももっともだ。
こういう物珍しいものにはまず子供が飛びつく。子供が群がり、大人はそれを遠巻きに観察して、たっぷり吟味してから近付いてくる。
だから、始める時は盛大に甘い香りを漂わせてガキどもを一気に集めるのがいい。
そして、ガキの好奇心とお腹が満たされたら、次は大人どもの空腹を満たす番だ。
うむ。マグダ、よく見ているな。
四十区を出るまでは屋台の上で丸まって眠りこけていたのだが、三十九区に入った途端、『お目々、パチー!』『背筋、シャキー!』『やる気、ドーン!』となったのだ。
そういや、四十区までは一緒に行ったことあるもんな。マグダにとって、三十九区からが本番だったってわけだ。
まぁ、四十区付近までは朝の時間だったってのも、要因の一つだろうけどな。
「この後、領主の関係者が来るから、そいつらにまざまざと見せつけてやるといい」
たった二つの屋台で、大人から子供まで、これだけ多くの人間が浮かれて、賑わっている様をな。
こんな屋台が大通りに並べば、どれだけの利益が見込めるか……よほどのアホでもない限りその肌で感じられることだろうよ。
「……なるほど……いよいよ見せる時が来たもよう…………」
おもむろに、マグダが腕につけていたリストバンドを取り外し、地面へと落とす。
――ズシーン……ッ!
「なっ、なにっ!? あいつ、今まであんな重たい装備で接客をしていたのか!?」
「……本気を、出す」
「「「おぉー……」」」
観衆から感嘆の声が漏れる。
って、どこの少年マンガだよ。負荷をかけて接客する意味が分からねぇよ。
まぁ、もっとも。あの程度の重さなら、マグダにとってはあってもなくても変わらないんだろうけどな。
要するに、『演出』だ。
目論見は見事成功したようで、子供たちの瞳がキラッキラッ輝きを放っている。
「…………ウクリネス製、子供たちのヒーローになれるリストバンド(600Rb)」
「なんでも作ってくれるんだな、ウクリネス……」
そして、地味に高い。
……いや、俺もトレーニングのために一つ買っておこうかな?
中学の時は、足につけて自転車とか漕いでたしな。……いや、ほら。そういうのにモロ影響される時期じゃん、中学生って。
「……店長、交代。……ここからは、マグダが…………焼くっ」
キラリと白い牙を覗かせるマグダ。
獲物を仕留める直前の獣のような目だ。
こいつ……本気だ!?
「……ロレッタ、準備を」
「任せるですっ! あたしがお好み焼きで、マグダっちょがたこ焼きっ! 二人の力が合わされば、ここにいる全員の空腹を満たすなんて朝飯前ですっ! 昼ごはん時ですけどもっ!」
鉄板を付け替え、最大火力で熱する。
ジネットがポップコーン売場へと移動し、鉄板を装備した七号店に、二人の敏腕ウェイトレスが並び立つ。
マグダの背後には猛々しい虎が、ロレッタの背後には高速で回し車を回すハムスターが幻視出来そうなオーラが立ち昇っている。……うん、とりあえず、ハムスター逃げて。食われちゃいそうだから。
鉄板が十分温かくなったところで、たこ焼きとお好み焼き、双方の鉄板に油が引かれる。豪快な音を鳴らして油が弾け跳び、同時に独特の香りを辺りへ漂わせる。
「……生地を一気に、流し込むっ」
「あたしは、混ぜるですっ!」
マグダがたこ焼きの生地を流し込み、隣でロレッタがお好み焼きの生地と具材を手際よくかき混ぜる。
ジュジャー! カッシャカッシャカッシャ! と、楽しげな音が響き始める。
集まっていたガキどもは辛抱堪らんといった顔で、屋台の周りに集まり、マグダとロレッタの手元を覗き込んでいる。
「危ないですので、あまり近付き過ぎないでくださいね」
全員が七号店へ注目しているため、ポップコーンを売る二号店は手空きになっている。
ジネットがかぶりつくように屋台を覗き込む子供たちを優しく注意して回る。
保護者にも、油飛びや鉄板への接触を十分に注意するよう呼びかけている。
出来る娘だ。
たこ焼き、お好み焼きの生地が焼かれ始めて数分……そろそろ、あの時間がやってくる。
そう、粉物のメインイベント――ひっくり返しだ。
「さぁさっ、お立ち合いですっ!
「……職人の技、とくと見るがいい」
視線を交わし、マグダとロレッタがコテと千枚通しをカッコよく構える。
「……いざ」
「いざです!」
「「刮目せよっ」」
気合い一発。
叫ぶと同時に二人は各々の『武器』を繰り出す。
「ほいっ、です!」
「「「わぁあっ!」」」
ロレッタがお好み焼きを空中でくるりとひっくり返すと、歓声と共に拍手が起こった。
「……う~、りゃりゃりゃりゃりゃりゃっ」
「「「ぅおおおおっ!?」」」
マグダが手際よくたこ焼きをくるくる反転させる度に、観衆のボルテージがどんどん上昇していく。
「ふふふ……まだ、感動するには早いですよ…………お好み焼きの醍醐味は……この香りですっ!」
お好み焼きの両面をしっかりと焼いた後、ロレッタが刷毛で甘辛いお好み焼きのソースを塗りたくる。ソースが鉄板に落ちて弾ける。
そして、辺り一面に濃厚なソースの香りが立ち込めていく。
「ぬわぁ、こりゃ堪らんっ!」
「おい! それ、どっちもくれ!」
「こっちには二つずつだ!」
「ちょっ、並べよ! 順番だぞ!」
「ままー、食べたぁーい!」
入れ食いだ。
その場にいた全員が見事に釣れた。
そりゃそうだろう。
こいつらにしてみたら、今を逃したら二度と食えないかもしれない珍しい料理なのだ。
このチャンスを逃す手はないっ!
「ハム摩呂っ、皿の用意だ!」
「ここ一番の、特命やー!」
猛烈なスピードで焼き続けるマグダとロレッタの手元から、器用にお好み焼きとたこ焼きをかっさらって皿に盛りつけていく。
ハム摩呂も、いつの間にか陽だまり亭に順応していたようで、盛りつけは文句のつけようがないレベルだった。
おまけに無駄がなく、速い。
「最初のお客さんへの、ご提供やー!」
俺とジネットが手を貸さなくても、群がった客たちを上手くさばいていく。
こいつら……成長したなぁ。
「おねーさんかっこいいねー!」
「あたち、お好み焼きのおねーちゃんみたいになるー!」
「むはぁ! 可愛いこと言うお子様たちですね!? 特別に海老を大盛りにしてあげるですっ!」
「そういう依怙贔屓はやめろっ!」
うむ。まだ目を光らせておかなければいけないようだな。
ロレッタ……まだまだだな。
「店長の悪癖が従業員に感染してるな」
「ふぇっ!? わ、わたし、そんなことしてますか?」
「あからさまに腹ペコのヤツが来店した際は、な~んとなくおかずの量が増えてる気がするんだがなぁ、毎回」
「そ、そそそ、そうでしょうか? 気のせいという可能性も……あの、その……」
まぁ。不利益が出るほどの増量でもないし、他の客もジネットのそういう性格を理解してくれているから、今のところ問題にはしていないが……
「悪癖がなぁ……」
「は、はぅ……あ、あの、わたしっ、お手伝いをしてきますっ!」
逃げ場を求めて、ジネットがハム摩呂の手伝いに向かう。
焼くのは二人に任せたようだ。
「んじゃ、俺は……」
人ゴミの向こうで、この光景に目を丸くしている妙に設えのいい服を来た連中に視線を向ける。
「……お仕事の時間だな」
三十八区の領主が派遣した視察団は四人組だった。
俺がそちらへ向かうと、驚いていた顔を引き締め、威圧でもするように厳めしい顔つきを作る。
格下に舐められたくないという思惑が透けて見える。……小物め。
視察団のジジイ共は、あれやこれやと難癖をつけ、なんとかこちらの粗を探そうと躍起になっていた。
他所の区の、名も知らぬ二人の結婚式如きで、区の大通りを通行止めにはしたくないのだろう。
仮に許可を出すにしても、少しでも有利な条件を引き出せるようにと、こちらの落ち度を血眼になって探しているようだ。
……だが。
相手が悪かったな。
お前らがあがけばあがくほど、俺は自分に都合のいい条件を上乗せしていくぞ。
いつ気が付くかなぁ……「あ、こいつとの交渉は早めに切り上げた方が得策だ」と。ゴネればゴネるほど、お前たちの立場は悪くなっていく。
言ってなかったけどな、俺、『ゴネ得』狙いのヤツ、大っキライなんだよな。
「いやぁ、しかし、大通りの通行を制限するとなると、その間の売り上げが……」
「いかにも。そして、店の売り上げが落ちれば、それはすなわち区の税収にも響くということであり……」
「おぉ、それは大変だ。そんなことはあってはならない。そうは思わんか?」
「あぁ、思うとも。思うさ、誰だってね」
……と、こんな有り様で「こっちも色々困るんだから便宜を図ってくれないと困るんだよなぁ~」みたいなことを集まったオッサンどもが共謀して捲し立てるのだ。
だもんで――
「なら、三十八区だけはパレードも出店も無しということで」
あまりにゴネまくる視察団の連中に、ちょっと大きめの声でそう言ってやる。
すると、お好み焼きを手に幸せそうな空気を醸し出していた領民たちが一斉に不満げな声を上げた。
殺気立っているヤツすらいる。
どうだ?
こたえるだろう?
領民の、ここまであからさまな反感を買うってのは。
しかも、その反感が向かうのはお前たちにではなく、お前たちを派遣した領主にだ。
『いい条件を引き出してこい』とでも言われていたのであろう視察団が、領民からのおびただしい不評を引っ提げて帰ってくれば……お前らの首、簡単に飛んじゃうぜ?
それに、もしこの怒れる領民たちが、「じゃあ他の区の出店に行くぜ」となったらどうよ?
その日一日、大通りは閑散とし、区内の資産が近隣の区へと吐き出されまくるのだ。
大きな痛手だろう、それは?
だからよ。もうここいらで首を縦に振っとけよ。
思考を切り替えて、「このチャンスに如何にして儲けるか」を考えた方が利口ってもんだよ。
さらに言うなら、四十二区の食い物がここでこれだけ人気になったってところに着目して、『お互いの区の名物料理を、それぞれの区で販売しあえば新規顧客の獲得に繋がり、後々まで順当に利益が得られるかもしれない』ってところにまで意識を向けてもらいたいものだな。
なんなら、お互いがまだ持ち得ていない「その手があったか!?」ってアイデアをパクリあったっていいじゃねぇか。派生品が出回れば、本場物の価値が上がる。「やっぱ本場はいいな」って思考の食通が足しげく他区まで通うかもしれない。
今考えるべきは、自分たちがどれだけの不利益を被るかではなく、自分たちがどれだけの利益を上げられるかだ。
そこら辺のところを分かりやすくサクッと伝え、領主にもう一度意見を仰いでくるように言い含める。
おそらくこれで、大通りの使用許可は下りるだろう。むしろ下りないわけがない。
これでもまだ渋るようなら、ガキどもを焚きつけて領主の館の前でギャン泣きさせてやる。
イメルダに一夫多妻に対する市民の捉え方を聞いた時にも思ったのだが、この街の連中はやたらと世間体を気にする傾向にある。
なら、『子供に嫌われている領主』ってのは、結構なマイナス要因になるはずだ。お子様ランチの旗の一件では、エステラも凄くへこんでたしな。「子供に好かれる領主でありたい」ってな。
ある程度、こちらに有利な世論を形成しておけば、口説き落とすのは造作もないことだ。
大通りを封鎖するっつっても、馬車が通過するほんの十数分のことなのだ。
それ以外の時間帯は、お祭り騒ぎで売上げ上々、利益ががっぽりなのだ。
おまけに、「こんな楽しいことをやってくれる領主様、素敵っ!」というイメージまでついてくるかもしれん。
やらない手はない。
――と、そのようなことを耳元で囁いてやれば、割と簡単に落ちてくれるだろう。
「よし。そろそろ時間だな」
視察団との交渉も終わり、商品もそこそこ売れた。
この後、三十七区と三十六区にも行かなければいけないのだ。ここで時間を食うわけにはいかない。
「じゃあみんな、片付けを始めてくれ」
俺のそんな言葉を聞いて、声を上げたのはガキどもだった。
大人たちも名残惜しそうな表情を隠すことなくあらわにしている。
「ねぇ、また来てくれる?」
純粋で無垢な、いまだどんな汚れにも触れていなさそうな瞳がこちらを見上げている。
大きな瞳に涙の膜が張られ、ちょっとしたきっかけで決壊してしまいそうだ。
そして、そんな少女の目を見て、ジネットの瞳までもが潤み始める。
なんとなく、「今日一日、こちらで屋台をさせてもらってはどうでしょうか?」とか、トチ狂ったことを言い出しそうな表情だ。
「あ、あの、ヤシロさん! みなさんもこうおっしゃってくれていることですし、今日一日、こちらで屋台を……」
「想像通りかっ!?」
なんて分かりやすいんだ、お前の思考回路は。
目的を見失うな。
こいつは領主を口説き落とすための手段だ。
手段が目的になっちまうとろくなことにならない。
「ウェンディたちの結婚式を成功させるためだ。やらなきゃいけないことを確実に遂行するぞ」
「はっ!? そ、そうでした。すみません」
間一髪のところで正気を取り戻したジネットだったが、名残惜しそうな顔をしている客たちを見るとなんともやるせない表情を見せる。
ここら辺まで来ると、「じゃあ今度四十二区へ来てください」とも言いにくくなってくる。単純に遠いのだ。
乗合馬車を使えば済む話なのだが、安くて美味い物ってのは、出来得る限り『お手軽に』食べたい物なのだ。
わざわざ馬車に乗ってまで食いに行くような物ではないし、ここいらのヤツがそんな散財をしたりもしないだろう。
それが分かっているから、双方共に名残惜しんでいるのだ。
だから。こいつらには、俺からこういう言葉を贈っておいてやろう。
「この区の領主様が許可を出してくれたら、もっとたくさんの出店がこの大通りに並ぶことになる。きっと、楽しいぞ」
「パパぁ! 領主様にお願いしに行こうよぉ!」
「おねがいしよーよー!」
ガキの目線に合わせて言ってやると、使命感に燃えたガキどもが口々に「領主様にお願いしよう」と言い始めた。大合唱だ。いい音色だな。……金の匂いがする音だ。
「よし。これでこの区は大丈夫だろう」
「ここの領主様が、子供たちに優しい素晴らしい方だから、ですか?」
「いや……」
そんな、見たこともないようなヤツを手放しで褒めるなよ。
貴族なんか、多かれ少なかれ見栄と欲にまみれてるもんなんだからよ。
「単純に、開催するメリットが開催しないデメリットを上回るに決まってるからな」
領民の不興を買うのは得策ではない。
まして、意地でも拒否しなければいけないようなイベントでもない。
俺たちを目の敵にしている、とかなら話は別だが、三十八区にとって四十二区など眼中にもないのだ。
上位者の余裕を見せて、胸を貸してやるという態度を取っても格好はつく。
断る理由は、もはやないだろう。
「それじゃ、また会えることを願ってるぜ!」
片付けを済ませて、そんな言葉を残して俺たちは三十八区の大通りを後にする。
ガキどもが大通りの端まで付いてきて、「またきてねー」「やくそくねー」とおねだりをしてきた。
こいつが、ジネットの心にぐさぐさ刺さったようで……
「わたし、絶対にまたこの街に来ますっ!」
なんて、鼻息荒く決意表明をしていた。
……こいつ、この先の区全部で同じこと言うんじゃないだろうな?
「でもやっぱり凄いです、三十八区」
ハム摩呂と交代して屋台を曳くロレッタが足元を見ながらそんなことを言う。
道が綺麗だって話かと思ったのだが。
「上り坂になってないです」
「あぁ。そういうことか」
四十二区は、三十区の崖の下にある。
それはつまり、四十二区から四十区にかけて高低差が激しいということでもある。
四十二区の中だけでも、ベッコの家がある丘があったりして、起伏の激しい地形をしている。
そこから四十一区へ向かう道は細く、うねり、緩やかに上り坂になっていて、まさに山道なのだ。
この緩やかな登り坂は三十九区まで続き、三十八区に入ると高低差はほとんどなくなる。
屋台のような重たいものを曳いていると、それがよく分かる。
緩やかとはいえ、ずっと続く坂道は地味にきついからな。
「あっ! ヤシロさん、見てくださいっ!」
道がフラットになった証拠に――ジネットがある物を発見して声を上げた。
そうか。三十五区にいる時は気にして見ていなかったからな。
「綺麗ですね……」
「あぁ。そうだな」
ジネットが見つめる先には、天を突くような尖塔が聳え立っていた。
中央区の、王族が住むというオールブルーム城だ。
別に、王族の名前が『オールブルーム』なのではなく、オールブルームにある城だからそう呼ばれているらしい。
王族の名前は…………えっと、なんだっけな? ……ま、いっか。
「おっきぃですねぇ……こんな遠くからでも見えるですね」
「……こうして見るのは初めて」
「区と区の間は建物がほとんどありませんからね。ここからだと、本当に綺麗に見えるんですね」
そこは、三十八区と三十七区の境目で、周りには建物がなく、遠くに見える他区の建物がまるで巨大な一枚の絵画のように美しく見えた。
四十二区からでは見ることが出来ないオールブルーム城の尖塔。
この街を象徴する荘厳な建造物。
思わず見惚れてしまうのも頷ける。
俺も、この街に来た当初、三十区のドデカイ大通りから見て以来だ。
ここら辺を通る時はいつも馬車に乗っていたからな。
屋根に阻まれて見えなかったのだ。
というか、そんなものを意識したことすらなかったか。
俺たちは、しばらくの間遠く聳える尖塔を眺めていた。
携帯もカメラもないこの世界では、美しい風景は心に刻むのだ。
こういうのも、割といいもんだ。
「ようやく旅行らしいことが出来たな」
「ふふ。そうですね」
遠出とはいえ、結局ずっと働き詰めなのだ。
こいつらはきちんと楽しんでいるのだろうか?
「今度は屋台を置いて、仕事抜きで来てみるか?」
完全に遊びモードで。
その方が、もっと堪能出来るだろう。そう思って口にしたのだが。
「……不許可」
「そうですよ、お兄ちゃん! 屋台があった方が絶対楽しいです!」
「お客様は、天使やー!」
こいつらは……
もうすっかり社畜の仲間入りだな。
まぁ、ウチの場合。店長が率先して社畜っぷりを発揮してるからな。影響されるんだろうな、どうしても。
……まったく、貧乏性どもめ。
「んじゃ、次の区でも、売って売って、売りまくるぞー!」
「「「「おぉー!」」」」
花より団子という言葉があるが。花よりも団子よりも仕事が好きだってヤツは、かなり稀有な存在だと思うぞ、俺は。
まぁ、俺も人のことは言えないかもしれないけどな……
いつもありがとうございます。
各店舗様でもぼちぼちと予約が開始され始めました。
アニメイト様のサイトをみると、
『この商品を買った人はこんな商品も買っています』
・おそ松さん関連グッズ
・TIGER & BUNNY Blu-ray BOX
・あんさんぶるスターズ! 関連グッズ
……女子かっ!?
女子なのかっ!?
これは、女子が予約してくれてるということか!?
それはつまり、
ここに、女子が立ち寄っているということかっ!?
わぁ、どうしよう!?
今、全裸であとがき書いてるのに!?
……とりあえず、ズボン穿きます。
…………あぁっ、パンツ穿き忘れた!?
いいや。ズボンの上からで。
しかし、女子がいるとなると……
おっぱいおっぱい言ってないで、女子の読者様も取り込むべきなのかっ!?
よし!
実は、『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』の登場キャラは、みんな6つ子ですっ!
そして、フリーしか泳ぎません!
ふふふ……これで売り上げも倍増することでしょう……にやり( ̄ー ̄)
では折角ですので、女子の皆様に耳寄りな情報を。
『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』一巻のヤシロなんですが……
『悪カッコいい』です!
今の『パイデレ(おっぱい&デレ)』ヤシロになる前の、ちょい悪なヤシロが活躍しますよっ!
以前も言いましたように、
本作はそのまま書籍化するわけにはいかないため、大幅に加筆修正しております。
(前半、事件が起こらないんですもの)
そして、新たに加えられたエピソードで…………ヤシロがやってくれますっ!
そして、そのシーンの口絵がもう…………
カッコいいんっす!
基本、目つきが悪くて猫背でやる気のないような顔してるんですが、
ここ一番で「バシッ!」っと決めてくれます。
本編を読み終えて、もう一度その口絵イラストを見ると、グッとくると思います!
ハイエンド乙女の皆様にもご納得いただけるシーンになっているのではないかと、
ワタクシ、そう思う次第ですっ!
そして男性諸君っ!
ヽ( ´∀`)/ < おっぱ~い!
よし。
これで男女平等に本作の魅力は伝わったはずっ!
というわけで、ここまでお仕事でした!
最近、水割りに嵌っています。
水ではなく、炭酸水で割るんですが。(水割りじゃない、だとっ!?)
あ、私お酒一滴も飲めなので、フレーバーティーを炭酸水で割って飲んでいるんです。
(節子、それ水割りやない! ティーソーダーやっ!?)
それでですね、
コンビニとか自販機で売ってる紅茶を飲むと、こう…………濃っ!?
って、なるんですよね。
原液かっ!? ってくらいに。
どんどん薄味思考になっています。
なんだかんだで初老ですからね。
職場で「日の当たる縁側でボーッとしているのが似合いそうな男性社員ナンバーワン」に選ばれました。
……お爺ちゃん扱いです。
とはいえ、私、十の位を四捨五入するとゼロ歳ですよ?
まだまだおっぱいを公衆の面前で吸っても捕まらない年齢だと言えます。
ですので、誰か、プリーズッ!(←結局、これが言いたかった!)
……本当に、こんなところに女子が立ち寄っているのだろうか……?
そしてSSです。
2016年 03月 27日 18時 55分のE様より
ちょっときゃぴきゃぴした女子トークを……
――陽だまり亭・ヒミツの花園
ジネット「どこですかっ!? ここ、マグダさんのお部屋ですよね!?」
マグダ「……ようこそ、男子禁制ヒミツの花園へ。ちなみに、お花はミリィに用意してもらった」
ミリィ「ぁ、ぅん。お花……たくさんもってきた、よ?」
エステラ「すご~く綺麗で、この花をただ眺めるための会なら非常に満足しているところなんだけどね」
ノーマ「マグダが招集をかけた会がそんな大人しいもんのはずないさね」
デリア「じゃあ、なんの話をするんだ?」
マグダ「……ここに、ドMのフリをしたドSがいる」
エステラ「ストップ! なんの話だい!?」
ナタリア「ドS……Sとは『スモール』の『S』……あ、エステラ様のことですね」
エステラ「ここにいるよ、ドS! ナタリアこそ、心の底からのドSだよ!」
マグダ「……否定。ナタリアは、たまに弄られると凄く恍惚とした表情を見せる」
ナタリア「覚えがありませんが?」
マグダ「……ヤシロに甘やかされて、それを誰かに見られるかもしれない状況で、ちょっと嬉し恥ずかしいなぁ~みたいなふやけた顔をさらしていたという情報が多数寄せられている」
ナタリア「多数ですかっ!? いえ、確かに、そういう状況もかつてあったかもしれませんが!?」
エステラ「へぇ……ナタリアって甘えたいタイプなんだぁ……にやにや」
ナタリア「なんですか、エステラ様。性格も胸もドSになりたいんですか?」
エステラ「マグダ、やっぱりナタリアはドSだと思うよ!?」
マグダ「……ナタリアはM。これは揺るぎない事実」
ロレッタ「じゃあ、この中でSというと……デリアさんですかね?」
デリア「あたいか? そ~かなぁ? 自分じゃよく分かんねぇなぁ」
ロレッタ「ちょっと想像してみるといいです。もしオメロさんに『このメスブタ!』って言われたらどうするです?」
デリア「……洗う。骨の髄まで洗い尽くす」
ロレッタ「怖いです!? 殺気が! 夥しい量の殺気ですっ!?」
デリア「あたい……ちょっとオメロと話をしてくる」
ロレッタ「想像ですよ!? 実在のオメロさんはそんなこと言ってないですっ!」
マグダ「……では、もしヤシロに『このメスブタ』と言われたら?」
デリア「なんだよぉ、ヤシロ~。酷いこと言うなよなぁ~、もう! あたいクマだぞぉ~!」
ミリィ「でりあさん、かわいい……」
エステラ「でれんでれんだね……」
ナタリア「これはMの素質が大有りですね」
ノーマ「そういうんだったら、アタシはSさね。いじめられて喜ぶようなことはないさね」
マグダ・ロレッタ・エステラ・ナタリア・デリア「「「「「はっはっはっ、ご冗談を。ノーマはこの中でも随一のドMだって。いや~もう、冗談が上手いんだからぁ。あははは」」」」」
ノーマ「あんたら、よくその長いセリフをピッタリ揃えられたもんさね!? アタシのどこがMだってのさ!?」
マグダ「……では検証を。……ここに、店長のけしからんブラジャーがある(特大サイズのブラを取り出す)」
ジネット「なんであるんですか、そんなものが、ここに!?」
マグダ「……これをヤシロだと思ってほしい」
ジネット「思えませんよ!?」
エステラ・ナタリア・デリア・ノーマ・ロレッタ「「「「ヤシロ(様)だ……」」」」「お兄ちゃんです……」
ジネット「みなさんの想像力凄いですねっ!?」
マグダ「(ブラジャーで顔を隠しつつ)……ノーマ~、尻尾モフらせてくれよ~」
ノーマ「なっ!? ダ、ダメに決まってるさねっ!」
マグダ「(ブラジャーで顔を隠しつつ)……んだよ~、俺の言うことが聞けねぇってのかぁ? イジメちまうぞ~」
ノーマ「う…………うぅ……ちょっとだけ、さよ?(尻尾『ふさぁ』)」
エステラ「弱っ!?」
デリア「チョロっ!?」
ナタリア「そして、虐められるならそれはそれで的なその顔!」
ロレッタ「ドMです! まさにドMの鑑です!」
ノーマ「そ、そんなことないさね!?(顔『真っ赤』)もう! アタシのことはいいさね! 次はミリィさよ!」
ミリィ「ぅう……み、みりぃは……?」
マグダ・ロレッタ・エステラ・ナタリア・デリア・ノーマ「「「「「「イジメたい」」」」」」
ミリィ「ぴぃ!? そ、それ、もう話変わっちゃってる、よね?」
ロレッタ「じゃあじゃあ、あたしはどうです!?」
マグダ・エステラ・ナタリア・デリア・ノーマ「「「「「普通」」」」」
ロレッタ「みなさん、仲良しですか!? 一糸乱れずじゃないですか!?」
ジネット「あの……では、結局のところマグダさんの言っていたドMのフリをしたドSって、誰なんですか?」
マグダ「…………ヘイ、ユー」
ジネット「わたしですかっ!?」
エステラ「いや、マグダ。いくらなんでも、それは……」
マグダ「……夏。足つぼ。満面の笑み」
全「「「「「「…………」」」」」」
ジネット「ど、どうしてみなさん黙るんですか!? そ、そんなことないですよね?」
デリア「……仕事終わりの店長の足つぼ…………痛かったよなぁ……」
ノーマ「それが怖くて、店長さんの『疲れていませんか?』が軽くトラウマになっちまってるさね……」
ロレッタ「笑顔……なんですよね。常に、そう、常に笑顔なんです……(がくぶる)」
ジネット「あの、あのっ……エ、エステラさん……」
エステラ「…………うん。納得」
ジネット「エステラさんまでっ!?」
ナタリア「私には、店長さんの背後に魔王が見えました」
ジネット「そんなことないですよね!?」
ナタリア「『精霊の審判』を使用していただいても構いませんが?」
ジネット「そんなにですかっ!? 揺るぎない自信があるんですか!?」
マグダ「……みんな、店長のドSには気を付けるように」
全「「「「「「了解っ!」」」」」」
ジネット「はぅ……酷いです、みなさん」
エステラ「それで。マグダはどうなんだ?」
マグダ「……ん?」
エステラ「君自身はSかM、どっちだと思っているんだい?」
マグダ「……マグダは………………そういうちょっとエッチはお話とか、よく分かんない」
エステラ「どの口が言うんだい!?」
――マグダは『S』か『M』かと聞かれたら、『かわいい』と答えます。
可愛いは正義なのです。
……本当に女子がいるのかなぁ……こんな場所に。
今後ともよろしくお願いいたします。
宮地拓海




