↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
後日譚

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

206/854

後日譚34 打ち上げ練習

「おう、兄ちゃん! 来たぜ!」

「俺、四十二区初めてですよ」


 カブトムシ人族のカブリエルとクワガタ人族のマルクスが揃ってやって来る。

 ここはレジーナの店の前。

 二人には、花火を放り投げる練習をするために来てもらったのだ。

 本番はもっと大人数の引っ越し屋従業員に手伝ってもらうのだが、最初からわらわら来られても対処に困る。

 まずは、リーダー格の二人に仕事を覚えてもらい、それから伝聞してもらうつもりだ。


「なんや……客ってあの二人やったんかいな」


 三十五区から来客があると聞き、朝からずっと怯えていたレジーナ。……いや、つかお前客商売だろ、一応……

 しかし、やって来たのがカブリエルたちだと知ると、少しだけホッとした表情を見せた。

 最初に三十五区へ行った際、レジーナはこの二人に会ったことがある。まったく面識のないヤツよりかはマシだということだろう。


「男同士で恋人のメッカに入り浸ってるワケありコンビやね」


 そういう目で見んじゃねぇよ。


「『お前の蜜の味、俺に教えてくれよ……』やねっ!」


 よし、黙ろうか。腐りかけ薬剤師。


「お、おい、兄ちゃんよぉ……なんか、あの黒い女が変な目でこっち見てやがるんだが……亜種が嫌いな人間なのか?」

「いやいや。むしろお前らのことが大好物な人種だ。あとな……」


 俺はデコピンの要領でカブリエルの角を弾く。


「亜種じゃねぇだろ」

「あ、あぁ。そうか。そうだったな。虫人族だ」


 これからその偏見をなくしていこうって時に、自分で自分を亜種なんて呼んでんじゃねぇよ。

 今後は亜種も亜系統も使用せず、虫人族と名乗るのだ。三十五区では現在、ルシアがそうなるように働きかけている。


 しかし、俺が適当に考えた『獣人族』『虫人族』ってのが随分と広まってしまったものだ。

 まぁ、それで喜ぶヤツがいるなら使ってもらうことにやぶさかではないけどな。


「『お前の虫人族を見せてみろよ』『やめてください、そんなことされたら僕の虫人族が……』……」

「おい、こら。そこの腐敗薬剤師」


 そういう使い方は許容出来ねぇよ。

 何が『僕の虫人族』だ……

 変なイメージつけないでくれるかな!?


「まぁ、とにかく。ここには人種だなんだを気にするヤツなんかいねぇよ」

「まぁ、そうみたいだな」


 カブリエルが、集まった面々を見渡して言う。

 今日はマグダにデリア、それからミリィが参加してくれている。

 人種混合編成だ。


「おぉ、そこのテントウムシの子」

「ぇっ!? み……みりぃ……?」

「おぉ、おぉ! そうだそうだ! あんただ」

「ぴぃ…………」


 デカいカブトムシに手招きされてミリィがレジーナの背後に隠れる。

 自ずと視線がレジーナに集まり、レジーナはすすすと俺の背後に隠れた。

 RPGか。なんで縦に並んでんだよ。


「ナンパはやめてもらおうか」

「違ぇよ! そういうんじゃねぇ! 俺はもっと大人な女性が好きなんだ!」


 そういや、カブリエルのストライクゾーンは四十八歳から上だったな。

 ……『大人な女性』? いや、大人は大人なんだけどさ……


「ルシア様から預かってきた荷物があるんだよ」

「なんだ、お前ら宅配便もやってるのか?」

「おうよ! 荷物を運ぶのは俺たちの仕事だぜ!」


 握り拳をこれでもかと見せつけながら、カブリエルが背中に背負った荷物を降ろす。

 リュックのような形状の布袋から、ミカン箱サイズの木箱が出てくる。

 箱には、ルシアの家のエンブレムが焼き印されていた。


「ぇ…………るしあ様、から? ……なんだろう?」

「さぁ……なんやろなぁ?」

「え、なに? 伝言ゲーム?」


 背後から順繰りに疑問が投げかけられてくる。

 これはアレか? 俺に開けろって言ってるのか?


「このサイズやったら、さすがに本人が入ってるってこともないやろう」

「はは、やめろよ、レジーナ……あいつならやりかねないんだからさ」


 大きな箱から本人が出てきて、「プレゼントは私だ!」とか……うわぁ、やりそう……


 しかし、幸いなことに、今回の箱はマグダでも入るのが難しいサイズだ。

 いくらなんでも、圧縮パックとかで小さくなってるなんてことはないだろう。

 安心して蓋を開ける。


「おっ」

「なんや?」

「わぁっ!」


 俺の肩越しに荷物を覗き込むレジーナと、その肩越しに覗き込むミリィ。

 中身を見るや、ミリィは俺の背後のレジーナの背後から飛び出して木箱に飛びついた。


「これ、花園の蜜……」

「そうなのか?」


 木箱の中には、無数の瓶がぎっしりと並べられていた。


「よく分かったな」

「ぅん。ここに名前書いてあるし、それにこの香り……すんすん……ぅん、覚えてる」


 ミリィの言う通り、蓋に花の名前が書かれてある。

 おそらく、蜜だけを集めて瓶詰めしてくれたものなのだろう。

 しかし、香り……?

 すんすんと鼻を鳴らしてみるが、全然分からない。確かに甘い香りはしているけど……判別は出来ない。

 ミリィのこれは虫人族の特性なのか。それとも、生花ギルドの特技なのか……


「これだけあれば、たくさん飴玉作れそう」


 宝物を見つめるようなキラキラした目で瓶詰の蜜を見つめるミリィ。

 飴玉作りが趣味になっているようだ。楽しくて仕方ないのだろう。


「じねっとさんとねふぇりーさんに相談してね、包み紙も可愛くするの」

「ネフェリー?」


 ジネットはともかく、ネフェリーとは意外な…………いや、でもないか。

 可愛いものとかすげぇ好きそうだもんな、ネフェリーは。

 そうか。ミリィから見れば、ネフェリーはオシャレな年上のお姉さんなのか。

 ウクリネスが絶賛するモデル向きのすらっとしたスタイルで、センスまでいいとなると…………いよいよ、ニワトリフェイスが残念に思えてくるな。


「なんなら、あとで家まで運んでやるぜ」

「ぇ……ホント……です、か?」


 カブリエルに話しかけられて、少し怯えるミリィ。

 すすっと俺の背後に隠れる。

 なんか懐かしいな。俺も最初はこうやって避けられてたっけな……


「ぁの……でも…………わるい、し……」

「んじゃ、あたいが持ってってやるよ」

「ほんと? ぁりがとう、でりあさん!」

「……俺、そんなに怖いかな?」


 あからさまな差に、カブリエルが肩を落とす。

 まぁ、気にするな。ミリィは人見知りなだけだ。お前が嫌いなわけじゃねぇよ。


「それで、これから何するんだ?」


 花の蜜の運搬はとりあえず置いておいて、デリアがこちらへ顔を向ける。

 昨晩から陽だまり亭に泊まり込んでいたデリア。朝一で手伝いをしてほしい旨を伝えたら二つ返事で付いてきてくれた。


「……マグダも、今日はやる気十分」


 ここ最近留守番ばかりだったマグダも気合いが入っているようだ。

 今日の店番はジネットとロレッタだけだ。さすがにノーマやウーマロをそう何日も拘束は出来ない。もっとも、お願いすればやってくれそうではあるがな。

 まぁ、ジネットさえいれば店は回るだろう。ロレッタもいるし、俺たちも丸一日店を空けるわけではない。


「ほなら、段取り通り開始してかまへんのやね?」

「おう。そっちは任せたぞ」

「ほいな。ミリィちゃん。自分はこっちを手伝ってんか」

「ぁ。ぅん。……なにすればぃいの?」


 レジーナが手招きをして、ミリィと共に店へと向かう。

 花火の練習をするということで、念のため、レジーナの店からは少し離れた場所に陣取っていた。

 この付近は民家もないし、万が一のことがあっても被害は最小に抑えられるだろう。

 ……万が一のことがないようにはするけどな。


「なぁ、ヤシロ。ミリィはレジーナの手伝い要員なのか?」

「まぁ。それもあるんだが……」

「……虫人族を迎えるには、虫人族がいた方がいい」


 マグダの言う通りで、ミリィは、カブリエルたちを迎えるにあたってマスコット的な枠割を担ってもらうつもりだ。接待、ってほどではないんだけどな。

 ついでに極度の人見知りであるレジーナが心を砕ける話し相手になってくれるだろうとも思っている。

 こっちはこっちでやることが多くてレジーナには構ってやれないかもしれないしな。

 四十二区の虫人族で、且つレジーナと二人きりで間が持つ人物はミリィ以外にいない。


「すげぇっすねぇ。四十二区では亜種……おっと、虫人族でしたっけ……と、人間が普通に仲良さそうにしてんですね」

「四十二区じゃ、これが普通なんだよ」

「はぁ……そうなんですねぇ……」


 レジーナとミリィの関係に、マルクスは驚きを隠せないようだ。

 まぁ、最初は仕方ないだろう。

 だが、今日が終わる頃にはそんなもん考えなくなってると思うぞ。


「何言ってんだ、マルクス」


 カブリエルが漢くさい笑みを浮かべ、俺の肩に腕を回してくる。

 うわっ、ごつごつしてる。


「俺らももう仲良しじゃねぇか。なぁ、兄ちゃん?」

「……密着した分心の距離は離れたけどな」


 人種はともかく、俺は男とベタベタするつもりはない。

 離れろ、筋肉。硬いんだよ。


「そうだぞ、クワガタ! あたいもヤシロと仲良しだ! それが普通だぞ!」


 カブリエルに対抗してか、反対側からデリアも肩を組んでくる。

 わぁ、やわらかぁ~い! 張りがあるのに、ぷにぷにだよぉ~!


「あぁっ!? 兄ちゃんがなんかすげぇ嬉しそうですよ!?」

「くっそ! やっぱり虫人族と獣人族じゃ、差があるのか!?」

「……違う。ヤシロの笑顔はおっぱいに起因するもの」

「「あぁ……」」

「おい、納得すんな!」


 その通りなんだけど、納得されるとちょっと恥ずかしいわ!


「まぁ、垂れ始めてからが本当の魅力なんだけどな」

「一理ありますね、カブさん! けど、膨らみかけもいいですよ!」

「……あぁ。ヤシロがまたおっぱい繋がりの変態を呼び寄せてしまった……」

「待てマグダ。お前発信だからな、このおっぱいトーク!」


 熟女マニアとなんでもありのマニアックコンビと俺を一緒にしないでくれ。

 重力に抗う姿勢こそが美しいということも分からんような連中とはな!


「でだ。話を戻していいか」

「……マグダが狩猟ギルドから持ってきたのは替えの下着がいくつかだけ…………いる?」

「どこまで戻った!? それ、初めて会った時の会話だよな!?」


 戻し過ぎだぞ、マグダ!?


「兄ちゃん……こんな小さな娘に……それも出会ってすぐそんな話を…………」

「ドン引きしてんじゃねぇよ、熟女マニア!」


 確かにそういう会話はしたが、俺のせいじゃないんだっつの。


「今日は花火を打ち上げる練習をする。それで、マグダとデリアにも手伝ってもらいたいんだ」

「……打ち上げ?」

「正確に言えば『放り投げ』だ」

「花火ってのを、放り投げればいいのか?」


 マグダは右に、デリアは左にこてんと首を傾ける。

 なんだよ、二人してケモ耳揺らして。可愛いじゃねぇか。


 本番はカブリエルたちに任せるつもりだが、こいつらが実際どの程度『デキる』連中なのかは未知数だ。

 呼んだはいいが目も当てられないような惨状、ってのは困る。

 そこで、ウチの『デキる』人員を二人ほど用意したわけだ。保険だな、要するに。


「ほ~い、おまっとさ~ん」


 奇妙な言葉と共に、レジーナが木箱を持って戻ってくる。

 箱の中には砲丸くらいの大きさをした玉が入っていた。


「これが花火の素や。もっとも、今回は練習用っちゅうことで、爆発は最小限に抑えたぁるけどな」

「爆発はどんなもんなんだ?」

「広がっても10メートル程度や。本物の十分の一っちゅうところやな」


 150メートルも上空に投げるのだ。ある程度は広がってくれないと目視は出来ない。


「爆発までの時間は?」

「十秒や。導火線に仕込んだ火の粉を発火させてからキッカリ十秒で『どーん!』や」


 着火して、構えて、勢いよく放り投げ、花火が上空150メートルに達するまでで十秒。結構カツカツだな。


「な……なんか、怖いですね…………」

「お、おぅ……爆発ってのがどんなもんか分からねぇからな……」


 マルクスがビビリ、カブリエルも頬から汗の粒を垂らす。


「んだよ、だらしねぇなぁ。ヤシロが作ったものなら危険なわけないだろう?」


 ビビる大男を呆れ顔で見つめるデリア。

 いや、俺が作ったわけじゃないし、俺が作ったとしても花火は結構危ないものだぞ。


「んじゃ、あたいが最初に投げてやるよ」


 意気揚々と、デリアが花火を一つ木箱から取り出す。

 ぽんぽんと手のひらで弄び、花火の重さを確認する。

 ……怖い怖い。火の粉って、結構すぐ着火するんだからな? 扱いには気を付けてくれよ。


「けど、真上に思いっきり物を投げるなんてやったことないからなぁ……感覚が上手く掴めないんだよなぁ」

「なら、火をつけずに一回投げてみるか?」

「お、いいのか? んじゃ……」


 デリアは、どう投げるのが最適かを確認するように何度となくフォームを変える。

 砲丸投げスタイルや、上投げ下投げ、様々なフォームを試してみた結果、体を傾けて上から腕を振り下ろす最もスタンダードなフォームに落ち着いた。


「ぅう~………………りゃっ!」


 着火されていない花火が空へと放り投げられる。


 唸りを上げて真っ直ぐ上に飛んでいく花火の玉は、あっという間に目視出来る限界を超えていった。

 爆発しないから静かなもんだ。

 どうなったのか、どれくらい飛んだのか、まったく分からない。


 首が痛くなるほどジッと空を見上げ続け…………しばらくして花火が落下してきた。


「うおっ、危ねっ!? なんか落ちてきた!」

「ぅぉおおいっ! 拾え拾え!」


 真上に飛んだ花火は、そのままデリア目掛けて落下してきたのだが……デリアが避けたために俺がスライディングキャッチする羽目になった。

 地面に激突した拍子に爆発したらどうする!?

 ……っぶなかったぁ。よく取れたよ、マジで。


「なんか、思ってたより簡単だな」

「いやいやいや……」


 今のはただ投げただけだから。

 これから、投げる速度とか角度とか、爆発までの時間とか、連続して同じ高度に投げ続けるための工夫とか、そういう調整をしていかなきゃいけないんだよ。

 だがまぁ、まず何より……取り扱いに気を付けるよう徹底的に教え込まなきゃな。


「……デリア。今の球速ではおそらくダメ。爆発までに150メートルに達しない」

「そうか?」

「……それから、モーションに入るのが遅い。十秒は、思っている以上にすぐ過ぎてしまう」

「ん~……そっか。そうかもなぁ」


 デリアの一投を見て、マグダが細かな分析をしてくれたようだ。

 さすがと言うか、こちらが求めているものを瞬時に理解してくれる頭のいいヤツだ。


「よし! 今の感覚を忘れないうちに、もう一回投げるぞ! 今度はちゃんと爆発させる!」

「ほなら、これをみんなに渡しとくわ」


 レジーナがカードのようなものを全員に配る。

 中央に穴があいているだけのカード。……なんだ?


「爆発した花火の直径が、この穴と同じやったら、ちょうど150メートルで爆発したっちゅう証や」


 花火の直径と、150メートルの距離を元に、どれくらいの大きさで見えるかを計算したのか。便利なもんだな。


「小っちゃぇな。こんなもんなのか?」

「本物は、この十倍広がるんや。迫力満点やで」

「そうかなぁ……」


 花火をぽんぽんとお手玉して、デリアが退屈そうに口をへの字に曲げる。

 だから、扱い方っ!

 こいつは、ちょっとばかり危機感がなさ過ぎる。火の粉と鱗粉と光の粉は混ぜると本当に危険なんだぞ?

 そこんところをよく言い聞かせる必要がありそうだ。


「よし、じゃあ投げるぞ! どうやって火をつけるんだ?」

「導火線を指で摘まんでこすったら火ぃつくわ」

「ははっ、簡単だな。んじゃ、まずは着火してっと……」


 導火線に火がつけられる。

 燃え上がるようなことはなく、導火線がじんわりと赤く染まってじりじりと燃えていく。


「……なんか、地味だな」

「バカッ、デリア! 早く投げろ!」

「ん? あ、そっか。よぉし、いっくぞぉ!」


 導火線に火がついた花火を構え、デリアが大きく振りかぶる。

 ……さっきとフォームが違うけど大丈夫か!?


「ぅう~………………りゃっ!」


 威勢のいい声と共に、デリアの腕が大きく振り抜かれ、勢いよく花火が放り投げられた。


 …………真横に。


 勢いよく放たれた花火は、数十メートル離れたレジーナの店の壁に激突し、跳ね返る。

 角度をやや斜め上方へと変え、直進してきた方向へと引き返していく。

 つまり、花火は俺たちがいる方向へ向かって、放物線を描くように「ぽ~ん」と戻ってきたのだ。


「全員逃げろぉ!」


 俺の合図で、密集していた面々が散り散りに逃げ出す。

 ドーナツ状に人が拡散され、中心部にぽっかりとスペースが出来る。

 狙いすましたように、そのスペースへと花火が落下して…………爆発。


「のゎぁあああっ!?」


 凄まじい破裂音と共に、鱗粉と火の粉が炎を撒き散らし、光の粉が広範囲に亘ってスパークを起こす。

 直径10メートルにも及ぶ危険な火花が目もくらむような光の奔流となり辺り一帯を包み込んだ。


 その後、一瞬の静寂――


 跡形もなく吹き飛んだ花火の代わりに、地面に黒い焦げが広がっていた。

 立ち上がり、俺は開口一番、全力で叫ぶ。


「危うく死ぬとこだ!」


 力み過ぎたデリアは、花火を手放すタイミングを誤ってしまったようだ。

 それにしてもよく弾んだな、花火……まぁ、レジーナの店のそばで破裂しなくてよかったけども。


「みんな……無事か?」

「無事なんが不思議なくらいやけどなぁ……」

「ぅん……みりぃも、へいき、だよ…………怖かったけど」


 ミリィとレジーナの隣にマグダが立っている。

 一瞬で判断して二人を抱えて逃げてくれたようだ。お前を連れてきてよかったよ、マジで。


「……こ、こんなもん、放り投げるのか、俺たちは……」

「ヤ、ヤバいっすね! こいつぁ、マジヤバですねっ!?」


 カブリエルとマルクスが頭上の角から汗をダラダラ流している。そんなとこからも汗って出るんだな……奇妙な連中め。


 ぐるっと見渡した結果、怪我人は出ていないようだ。

 肉体派の連中を集めておいてよかったぜ。


 ……で。

 この大惨事の、まさに火付け役となったデリアはといえば……


「…………こ、怖い……花火怖い…………」


 頭を押さえて地面に蹲っていた。

 いやいや。怖いの、お前だから。


「……デリアには加減や計算といったものはちょっと難しいだけ。最初から分かっていた。気にすることはない」


 蹲るデリアの頭を撫でて、マグダが慰めている。

 ……いや、それ慰めになってないからな?


「……ここはマグダの出番」


 ふんすと腕捲りをするマグダ。

 うつろな瞳がこちらを向く。


「……二の腕は、おっぱいと同じ柔らかさ」

「どこで聞いてきたのか知らんが、今関係ないから」

「……ガン見推奨」

「早く投げてくれるかな?」


 店のこともあるし、なるべく早く終わらせたいんだよな。


 少々不満げながらも、マグダは木箱から花火を取り出す。

 指先を咥え、湿った人差し指を頭上に掲げる。風向きを見ているのか。


「……風向きよし……いける」


 言うや、マグダは導火線を摘まんで摩擦した。

 火の粉が着火し、導火線の先端が赤く光る。


「……十……九…………」


 落ち着いてカウントを取り、ゆっくりと大きなモーションで振りかぶる。


「……七…………六っ」


『六』で勢いよく花火を放り投げたマグダ。

 急速は速く、風との摩擦で「ひゅるる……」と甲高い音が鳴る。おぉ、なんか花火っぽい。


「……三…………二……」


 投げ終わった後もカウントを続けるマグダ。

 そして――


「……一…………ゼロ」


『ゼロ』と同時に花火が破裂した。

 カウントばっちりだ。

 やっぱり、マグダの体内時計はかなり正確なようだ。すげぇな。


「うん。オーケーや。今の高さがベストやな」


 自作のカードで花火が開いた高さを計測していたレジーナ。

 文句なしの高度だったらしい。


「……デリアの初球を見て、花火が飛んでいく速度を、二投目で爆発までの時間を計算していた」


 いや、ホント凄過ぎるな、マグダ……


「……デリアの失敗も、無駄ではなかった。おかげで、微調整がやりやすかった」

「マグダ……あたい、役に立ったか?」

「……無論」

「お前、いいヤツだなっ!」


 デリアがマグダに飛びつき抱きつく。

 デリアの大きな体がマグダの小さな体に覆い被さり、大方の予想通りに二人揃って地面へと倒れ込む。

 それでも飽き足らずデリアはマグダの懐に顔をグリグリ押しつけている。

 懐き過ぎてるゴールデンレトリバーにじゃれつかれるとあんな感じになるよな。


「……デリアは、マグダが寂しい時にずっといてくれたから」


 ジネット不在の二日間、そして俺とジネットが三十五区へ行っている間、陽だまり亭にはデリアがいてくれた。それがマグダにとっては嬉しいことだったのだろう。

 そういえば、ロレッタにも優しくしてたっけな、マグダのヤツ。


 マグダは、少し大人になったのかもしれない。

 甘えることと、それに対する恩返しを素直に出来るようになっていた。


「よっし! あたいももう一回やるぞ!」


 失敗を乗り越え、誤爆の恐怖を打ち破り、デリアが再び立ち上がる。


「大丈夫か?」

「あぁ! マグダのを見て出来る気がしてきた!」


 また力み過ぎて明後日の方向へ飛ばさなければいいが……

 とはいえ、一度成功例を見るとすんなりと出来るようになったりすることは割と多い。

 お手本ってのはバカに出来ないのだ。


「よし! レジーナ、花火をくれ!」

「ちょい待ちぃや。クマの人ばっかり練習したかて意味ないんやで? 本番はそっちの上下の角で突きつ突かれつしとる『カブ×クワ』コンビがやるんやさかいな」


 言っていることはまっとうなのだが、言い方が最低極まりないな、こいつは。

 なんだ上下の角って……下に角はねぇよ。あと、勝手に男同士を『×』で結ぶな。


「おい、カブトムシとクワガッタン!」

「クワガッタンって、俺ですか!?」


 マルクスに変なあだ名が付いた。まぁ、気にするほどのことではないだろう。


「あたいが今からお手本を見せてやる!」

「いや、お手本なら、そっちのトラ人族の娘がさっき……」

「これからあたいが見せるんだよ! あたいのお手本を見るまでお前たちは待機だ! 分かったか!?」

「でもよぉ、俺らも一回投げてみてぇしよ……」

「ゴチャゴチャ言ってっと洗うぞ!?」

「「…………洗う?」」


 うん、デリア。

 それでビビるのはお前んとこのアライグマだけだから。

 見ろよ、カブリエルとマルクスがきょとんとして、俺の方に「どういうことだ?」みたいな視線送ってきてんじゃねぇかよ。


「アカンな。こら、さっさと投げさした方が早いわ」

「ぅん……でりあさん、負けず嫌いだもん、ね」


 観念して花火を渡すレジーナ。

 あれを一個作るのにも手間暇がかかっているのだ。無駄撃ちはされたくないだろうな。

 ……っていうか、地上で爆発させるのだけはやめてもらいたいよな。そっちのが気がかりだ。


「うっし! いっくぞぉ!」


 ただ一人、満足げな顔をしているデリア。

 腕を大きく回して、花火を構える。

 俺を含む、その場にいたメンバーが一斉にデリアから遠ざかっていく。


「おい、なんだよ!? なんで逃げるんだよ!?」


 怖いからだよ!

 今さっき起こった惨劇を忘れるほど、俺の海馬は摩耗してないんでな。


「んだよぉ…………今度は上手くやるって」

「きちんと上に飛んだらそばに行くから! とにかく投げろー!」


 十分な距離を取って、デリアにGOサインを出す。

 不服そうな顔ながら、デリアが導火線に火をつける。

 そして、マグダと似たモーションで花火を構える。


「十、九、八、七……」


 そして、マグダの真似をしてカウントを取り始めたのだが……早い早い! 明らかに早い!

 日頃から前のめりで生きてきたデリアの生き方が如実に表れているようなカウントだ。


「三、二、一、ゼロッ!」


『ゼロ』と同時に花火を放り投げるデリア。

 ……それ、カウントが正確だったら手元で大爆発してるからな? よかったなせかせかした人生送ってきてて。おかげで命拾いしたぞ。


 デリアが放った花火は、真っ直ぐ空に向かって上っていく。

 ぐんぐん遠ざかり、あっという間に見えなくなる。

 そして……


 ………………ぽん。


 遠ぉぉぉおぉぉおおおおおおおく、空の彼方で小さぁぁあぁぁあああ~い音が鳴った。


「飛ばし過ぎだよ!」

「なんだよ、根性のない花火だなぁ!? ちょっとは踏ん張れよ!」

「無茶言うなよ……」


 やはり、デリアには手加減や微調整ってのは無理なのかもしれないな。


「よし! 今度こそ!」

「もうアカン! これ以上無駄撃ちされたらかなわんわ!」

「なんだよぉ! いいだろぉ、減るもんでもねぇし」

「減っとるっ! ものごっつぅ減っとるやないか!」

「あたいはあいつらに手本を見せてやらなきゃいけないんだよ!」

「もう十分や! 自分は十二分に『悪い見本』になったぁるわ!」

「なんだよなんだよ!? ミリィからも言ってやってくれよ!」

「ぇ……っと…………ぁきらめよ、ね? でりあさん」

「ヤシロォ!」


 頼みのミリィにまで拒否されて、デリアは俺に助けを求めてきた。

 ……あぁ。まさかこんなところで詰まるとはな…………


「……ヤシロ。デリアを上手く黙らせて本番に向けた練習を始めるべき」

「分かってるよ……」


 マグダにしても、店が気になるのだろう。

 早く切り上げて早く帰ろうというような意味合いの発言だ。


 やれやれ……


「レジーナ。さっきのデリアの花火、どれくらい上がってた?」

「せやなぁ……まぁ、目測でザックリした感じやけど…………600メートルくらいは上がっとったかいな」


 600メートル…………純粋に、お前の強肩に感心するよ。

 600……600か………………よし。


「ってことは、三尺玉の打ち上げ高度だったってわけだな」

「さんしゃくだま?」


 クマ耳がふわっと揺れる。

 そうだ、デリアよく聞いておけよ。


「三尺玉は、俺の故郷で行われていた打ち上げ花火の親玉みたいなもんだ」

「お、親玉かっ!? 強そうだな!」

「あぁ、強いぞ! なにせ、今回俺たちが上げようとしている花火の十倍のデカさだからな」

「じゅっ、十倍っ!? そりゃすげぇな!?」

「つまり、アレだな。デリアは…………親玉クラスの花火を上げたってことになるな」

「えっ、それって、凄い…………のか?」

「もちろんだ。なんたって、親玉だからな!」

「おぉ………………そっか………………ははっ! そっかぁ! あたい、親玉上げちまったのかぁ!」

「まぁ、今回は一般人の規格を飛び越えちまったからこんな感じになっちまったけどな」

「なぁに、しょうがねぇよ! なにせ、あたい、親玉レベルだからな!」


 豪快に笑うデリア。どうやら上手く食いついてくれたようだ。

 要するに、デリアは負けず嫌いなだけで、深いこだわりはないのだ。

 マグダが成功して自分が失敗したという状況が悔しかっただけなのだ。

 なら、マグダの成功よりも、もっと凄い成功だったということにしてしまえばいい。そもそも、今回の花火は高さと球速を測るための練習なのだ。

 真っ直ぐ上に飛ばして、空の上で爆発すればそれでいい。


 ……もっとも、本番を任せるカブリエルたちはそれでは困るのでしっかり感覚を掴んでもらうつもりだが。

 だが、デリアはそうではない。気分よく帰ってもらえばそれでいいのだ。


 こういう、こだわらない単純で素直なところがデリアの長所でもある。

 嬉しそうにころころ笑っていれば、周りが明るくなる。デリアはそういうポジションにこそいるべきなのだ。

 こいつは、割り切るとかそういうのが苦手なのだ。

 責任感から、大の苦手な激辛チキンを泣きながら頬張っちまうくらいにな。


「よぉし! カブトムシとクワガッタン! あたいみたいに上手に放り投げてみろ!」

「あ、あぁ…………まぁ、適度にやるぜ」

「なんか俺、サクッと出来ちゃう気がしてきましたよ。あそこまで不器用じゃないんで……」


 単純過ぎるきらいもあるけどな。

 デリアも上機嫌で、カブリエルとマルクスは早く練習にかかれて、レジーナも無駄撃ちがなくなって安心。いいこと尽くめだ。

 言葉って使いようだよな、やっぱ。


 さて、これで丸く収まった…………と、思ったのだが。


「……マグダなら、デリアよりもっと高く遠くへ飛ばすことも可能」

「いや、マグダ……?」

「……さっきのは、ちょうどいい高さで爆発するように『わざと』力を抑えた結果。飛距離なら負けない……」


 うっかりしていた……

 ここにも一人、極度の負けず嫌いがいたんだった……

 デリアが一番凄い……みたいなニュアンスの褒め方はマズかった。


「……レジーナ。花火をありったけ持ってきて」

「自分……責任、とりや?」


 レジーナの視線が俺に刺さる。

 なんでか『俺に』刺さってる。


 いやぁ、難しいよなぁ、言葉って。

 つくづくそう思うわ…………やれやれだ。







いつもありがとうございます。



三月が終わりますね。


なんだかんだで、

後日譚開始から一ヶ月が経ちました。

そして、あと一ヶ月後には書籍が発売されます。



なので、あらかじめ申し上げておきます。



後日譚、あと一ヶ月です!


発売日まで更新して、書籍が出たら、

『書籍を読む期間』を設けたいと思います。


いや、書籍が出たのに毎日1万文字更新してたら「多いわっ!」とか「更新されてるし、書籍は今度でいいや~」ってなるじゃないですか?


やっぱりこう、

書籍が出るからには、売り上げとかも、ちょっとでもよくなってほしいですからね。


なので、5月1日までですっ!



というわけで、みなさん、

書籍をよろしくお願いいたします。


ご近所のお婆ちゃんに、

「これ読んだら膝の痛み治るかもしれないよ~」とか、

通販見ている奥様に、

「このラノベ、キュウリが引っつかないらしいよ」とか、

スポーツインストラクターのスポブラがとってもセクシーなお姉さんに、

「一分間で3000回振動するかも!」とか、

そんな感じで広めていただけると、とても嬉しいです。


アマゾンで予約とか始まったので、ずっとそわそわしています。

今からそわそわしても仕方ないんですが。



今後、次々と情報が解禁になると思いますので、逐一お伝えしますねっ!

(巧妙なステマを交えつつ!)





はい。ここまでお仕事。

ここから趣味です。



「いや~、今年のおっぱいは豊作らしいですよ~」


……ダメですね。

ブドウとかだと「あ、ワイン通だ!」みたいでカッコいいのに、

おっぱいだと通報されそうな雰囲気が拭いきれませんね。

「ミルク通だ!」とはならないんですかねぇ。

「搾乳マニアだ!」…………は、アウトですね。


「ん~……この香り、そしてこの感触(ぷにぷに)…………愛媛生まれの二十代。Cカップですね」


……ダメだ。

ソムリエみたいにカッコよくならない…………

なぜだ……

おっぱいとブドウ。

ただそれだけの違いなのに……



お見合いの席で……


男「いや~、僕はワインが趣味なんですよ。今度一緒にどうですか? いいお店、知ってるんです」

女「まぁ、素敵ですね。では、今度ご一緒に」


うんうん。ありあり。

で……


男「いや~、僕はおっぱいが趣味なんですよ。今度一緒にどうですか? いいお店、知ってるんです」

女「まぁ、素敵ですね。では、今度ご一緒に」



ないなぁ……いや、でも可能性はゼロでは…………いや、ゼロか。


う~む……

いつか、世のワイン通をも超えるカッコいいパイニストになってみせますよっ!




さてさて、

ちょっと順番は前後しますが、思いついた順で申し訳ないです。


SSです!


2016年 03月 30日 14時 42分E様と

2016年 03月 29日 21時 14分U様を合わせた感じで、


今回は、ヤシロが幼くなったら……というお話です!




――陽だまり亭

――入り口に幼い子供(六歳)


ジネット「あら? 一体どこのお子さんでしょうか?」

エステラ「ホントだ。見かけない顔だね」

ノーマ「ん~? けど、どっかで見たことあるような顔さねぇ……」


――子供、ジネット、エステラ、ノーマと順に指を差す


やしろ「ボンッ、キュッ、ボンッ!」

エステラ・ノーマ・ジネット「「ヤシロだっ!?」」さん、ですっ!?」

エステラ「で、誰が『キュッ』だ!?」

やしろ「ねぇねぇ、おっぱいの大きいお姉ちゃん」

ジネット「えっ!? わ、わたし、でしょうか?」

やしろ「そこそこおっぱいの大きいお姉ちゃんがね、これ渡せって」

ジネット「えっと……あ、レジーナさんからの手紙ですね」

エステラ「っていうか、ヤシロはおっぱいでしか人を認識していないのかい?」

ジネット「えっと、なんでも、『なんや新しい薬を飲ませたら体と精神が幼少期に戻ってしもぅたから、あとはよろしゅうたのんます、ウチ、子供あかへんさかいに……』だ、そうです」

ノーマ「ホント……ろくなことをしないさね、あの薬剤師は」

エステラ「ってことは、これは正真正銘、六歳のヤシロってことなんだね?」

ジネット「なんだか、かわいいですねぇ。よしよし」

やしろ「ふおぉおっ!? おっぱいかと思った!」

ジネット「手ですよ!? そんなに伸びませんから」

エステラ「……ヤシロって、子供の頃からこんなだったのか……」

ノーマ「それで、どうやれば元に戻るんさね?」

ジネット「えっと、『子供はわがままなもんやさかい、やりたいようにやらしてやったらそのうち戻るはずや』……だ、そうです」

エステラ「丸投げじゃないか!?」

ノーマ「しかし、子供のわがままなんか可愛いもんさね。アタシは割と好きだよ、やんちゃな子供はねぇ」

やしろ「おばちゃ~ん!」

ノーマ「…………(ビキッ!)」

エステラ「ノーマ! 落ち着いて! 子供! 子供の言うことだから!」

ノーマ「わ、分かってるさね。こ、子供は、そういうこと、言、言うもんだからねぇ。ちゃんと躾けてやれば、な~んも問題ないんさよ」

エステラ「……とりあえず、凄く引き攣ってるからね、顔……」

ノーマ「さぁ、やしろ~。ちゃんと言い直そうねぇ~。『お・ね・え・さ・ん』」

やしろ「…………」

ノーマ「『お・ね・え・さ・ん』っ」

やしろ「…………」

ノーマ「『お・ね・え・さ・ん』っ!」

やしろ「…………」

ノーマ「…………」

やしろ「…………」

ノーマ「…………おっぱい」

やしろ「おっぱい~!」

エステラ「諦めないで!? 自分を捨てないで、ノーマ!」

ノーマ「……ふ、ふふ……小さくなろうとも、しょせんはヤシロさね。おっぱいって言っとけば簡単に懐くんさ」

エステラ「それはきっとその通りなんだろうけど、それでいいのかい!?」

やしろ「おっぱ~い!」


――ヤシロ、ノーマの胸に抱きつく


ノーマ「ちょっ!? ヤ、ヤシロッ!?」

やしろ「ふかふか~(ぽぃんぽぃん)」

ノーマ「ちょちょちょっ、き、気安く触んじゃないよ!?」

やしろ「…………ふぇっ(泣きそう)」

ノーマ「わぁぁあ!? ちょいとお待ちな!? な、泣くんじゃないよ!」

やしろ「お……っぱぃ……」

ノーマ「いや、でも、アタシも嫁入り前だし……その……」

やしろ「お…………っぱ…………ぃ……ぐじゅっ!」

ノーマ「あぁ、もう! 分かったさね! 揉むなり吸うなり好きにするさねっ!」

やしろ「いただきますっ!」

ノーマ「ちょい待ちっ!(飛び込んできたやしろの顔面をキャッチ!)……なんか今、物凄くオッサン臭かった気がするさね!」

やしろ「…………うるうる」

ノーマ「う…………っ」

ジネット「ヤシロさん(やしろの目線に合わせて屈む)」

やしろ「…………?」

ジネット「人が嫌がることをしてはいけませんよ。甘えるにも、きちんとお互いが信頼し合わなければいけません。嫌われたくは、ないでしょう?」

やしろ「…………ぅん」

ジネット「いい子ですね、ヤシロさんは。いいこいいこ」

やしろ「……へへへ」

エステラ「さすがジネットちゃんだね。ヤシロが大人しくなったよ」

ノーマ「なんだかんだ、ただ甘えたい年頃なんさね」

エステラ「大人しい顔を見ていると、可愛く見えてくるよね」

ノーマ「そうさねぇ」

エステラ「ねぇ、ヤシロ。ボクが抱っこしてあげようか?」

やしろ「……おねーちゃんが?」

エステラ「くふっ、ヤシロが『お姉ちゃん』だって……っ! なんか素直で可愛いなぁ!」

やしろ「だっこ…………」

エステラ「さぁ、遠慮しないで、おいで」

やしろ「おっぱいないから、ヤッ!」

エステラ「素直過ぎるな、君は!? ちょっと拳で語り合わないかい!?」

ノーマ「エステラ、落ち着くさね! 相手は子供なんだよ!?」

エステラ「子供でも、ヤシロはヤシロだぁ!」

ジネット「ですが、ヤシロさんのわがままを聞いてあげないと、元のヤシロさんには戻らないそうですよ?」

エステラ「……じゃあ、ヤシロは何がしたいのさ?」

やしろ「おっぱい!」

ノーマ「……まぁ、想像通りさね」

ジネット「あの、ヤシロさん。それ以外では、何かありませんか?」

やしろ「………………んとね……あっ!」

ジネット「何か思いつきましたか?」

やしろ「おしり枕!」

エステラ「踏ん縛ってレジーナの店に叩き返しに行こう!」

ノーマ「同意さねっ!」

ジネット「あ、あのっ! 出来るだけ穏便に! お手柔らかにぃ!」



――結局ジネットでも止められず、ヤシロはレジーナの店へ叩き返されましたとさ。

めでたしめでたし。


レジーナ「めでたないわぁ!」




……う~ん。

もはや、パラレルですね。

本編ではあり得ない設定ですが……大丈夫でしょうか?

世界観壊れるのがお嫌いな方とか………………あ、世界観とかありませんかね、このお話。


楽しんでいただけていれば幸いです。



次回もよろしくお願いいたします。


宮地拓海

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。