86話 イメルダ~だってだってなんだもん~
夜。
陽だまり亭の店内はガランとして、静けさに包まれている。
一日の終わりがすぐそこまで迫っている。この時間はいつも静かだ。
マグダはロレッタを送るためにニュータウンへ向かっている。夜道は危険だからな。
……ん? マグダ?
あいつに襲いかかる勇気のあるヤツはこの四十二区にはいねぇよ。
俺が送っていくよりはるかに安全で安心だからな。
そんな、毎日のよくある風景を眺め、俺は思う。
あぁ、今日も一日よく働いたな……と。
ラストオーダーも終わり、食器も片付けて、陽だまり亭は閉店作業を…………始められないでいた。
「店長さん、お紅茶をもう一杯いただきますわ」
「はい。ただいま」
「って、こら!」
「何か?」
イメルダが、優雅に紅茶を啜ってやがる。
「何か?」じゃねぇよ!
「ラストオーダーはもう終わったんだよ。さっさと帰れ」
「それがお客様たる、このワタクシに向かって言う言葉ですの!?」
「さっさと帰りやがれください!」
「嘆かわしいですわ……こんな目つきの悪い人が接客業をやっているなんて」
「目つきは言葉遣いと関係ねぇだろ!?」
なんなんだ。
こいつは俺にケンカでも売ってるのか?
「ジネットはあの爆乳を維持するために、毎晩早寝をしてるんだぞ!?」
「胸の維持のためではありませんよっ!?」
「まぁ……エネルギー効率悪そうですものね、あの胸」
「そんなことないですよっ!?」
いや、しかし、あんな大きい物をぶら下げていたら体力の減り方も半端ないだろう。
早く眠らせてやりたいもんだ。
「というわけで帰れ」
「どうして、レディをそう邪険に扱うんですの!? ヤシロさんには思いやりという言葉が不足していますわ!」
「重い乳ならそこにあるだろう」
「思いやりですよ、ヤシロさん!? あと、そんなに重いというほどのものでもありませんから!」
ジネットがよく分からないことを吠えている間、俺はイメルダの行動を観察し、あることに気が付いた。
イメルダはティーカップに口をつけ、ちびりちびりと唇を濡らす程度の速度で紅茶を飲んでいる……いや、飲んですらいない。
……こいつ、時間を稼いで何かを企んでやがるな?
なんだ?
ここに留まることで得られるメリット…………
「もしかして、お前。今日泊めてほしいのか?」
「そ、そんなわけありませんわ!」
「それでしたら、一部屋空きがありますので構いませんよ?」
「……………………」
揺らいでる!
イメルダの心が揺らいでやがる!
やっぱりだ。
こいつは何かしらの理由があって家に帰りたくないのだ。
「……ベッドは、どんなものですの?」
「そんな上等なものではないのですが、ワラを敷き詰めた……」
「ワラっ!?」
イメルダが、劇画タッチな表情で固まる。
……まぁ、俺も最初は驚いたよ。でも慣れると気持ちいぞ、ワラベッド。
ちゃんと毎月新しいワラに交換してるし。天日で干した直後のワラって、いい香りするんだよな。
「あり得ませんわ! このワタクシがワラに包まって眠るだなんて!」
「いや、お前……泊めてもらう立場だろ?」
「泊まりませんわ、このような場所になんて」
「じゃあ帰れ」
「……………………」
「なんなんだよ、お前は!?」
本当に、何がしたいのか、訳が分からない。
「…………」
「なんだよ、ジッと見て」
「…………みゅう」
「なんで鳴いた!?」
もう……なんなの、マジで?
「あの……何か事情がおありなのでしたら、話していただけませんか? お力になれることでしたら協力いたしますよ」
「……本当ですの?」
「もちろんです」
また、こういう場面で安請け合いをして……
イメルダが言い難そうにしていることだぞ? どうせ面倒くさいことに違いないのだ。
だいたい、こいつの家には数十人に及ぶ給仕集団がいるのだ。
そいつらにやらせればいいんだよ。どんな事情があるのかは知らんがな。
数十人の給仕がいりゃあ、大抵問題は解決するだろう。
「実は今日……給仕が一人もいないのです」
「いないのかよっ!?」
俺の解決策が全否定された瞬間だった。
つうか、それが問題だったのかよ!?
「何がどうしてそうなったんだよ?」
俺はイメルダの前の席に座り、じっくりと話を聞くことにした。
聞かなきゃ、こいつは帰りそうにないからな。
「実は、今日引っ越しの予定だったのですが……」
「へぇ、今日だったんだ」
なんか、最近よく陽だまり亭に顔を出しているからいつ引っ越してきたのか分からなかった。
まぁ、木こりギルド四十二区支部、通称『イメルダ館』は、すでに生活が出来る状態になっているし、別荘感覚で行き来していたのだろう。当然、十数人の給仕を連れてだ。
「それが、なんで本格的な引っ越しの日に給仕が一人もいないなんてことになったんだよ?」
「それが…………給仕たちが、全員……揃いも揃って、『え、引っ越しは明日ですよね?』って!」
「お前がフライングしたんじゃねぇか!?」
「みんなして日にちを間違えるなんて、言語道断ですわっ!」
「お前だ、日にちを間違えたのはっ!」
「早くこっちに来たかったんですのっ!」
「認めたな!?」
あぁ、こいつ……バカだ。
「で、何人か連れてこられなかったのかよ?」
「それが……『いえ、こちらも今の家を引き払ったり、引っ越しの準備がありますから! いきなり言われても無理ですよっ!』と、訳の分からないことを……」
「すげぇ正論じゃねぇか」
訳が分からんのはお前の方だ。
「たった一人、ワタクシに付いてきていた給仕長も、『では、私も明日の引っ越しに備えて準備がありますので……』と、四十区へ帰ってしまい……」
「お前も帰れよ……」
「ワタクシは、こうと決めたら梃子でも動かない女なのです!」
うわぁ……めんどくせぇ女……
「……で、実際問題、どうすんだよ、この後?」
給仕がいなくても、あとは帰って寝るだけだ。なんとでもなるような気がしなくもないが…………こいつを一人にすると何が起こっても不思議じゃないような……夜眠れないからとか言って変な召喚魔法の本とか読んで異世界の魔獣とか召喚したりして、その犯人がイメルダなら――「あぁ、あの人はいつかそういうことしそうだなって思ってました」――って街頭インタビューで答えそうなほど納得出来るぜ。
「大丈夫ですわ。ワタクシには、心強い味方がおりますもの!」
「味方?」
誰だ?
エステラか?
「うふふ、うふ、うふふふふふ……」
……うわぁ……なんか、めっちゃ見られてるんですけど…………
「……俺に何を求めてるんだよ?」
「夜間、女性が一人でいては危険だと思いませんこと?」
「じゃあ、ここに泊めてもらえよ」
「ワラは嫌ですわっ! どうしても泊まってほしければウーマロさんを呼び出して高級ベッドを作ってもらってくださいまし!」
「……お前なぁ」
どうする?
叩き出すか?
「今、『叩き出すか』みたいな顔をしましたわねっ!?」
くわっ!?
と、イメルダが俺を威嚇する。
……こいつ、今かなりナーバスになってやがるな。神経が過敏になっているのだろう。読心術をマスターしやがった。
「あの、ヤシロさん。なんとかなりませんか?」
「あのな……なんでもかんでも俺に言えばなんとかなると思うなよ?」
「すみません……そうですね。最近ヤシロさんに頼りっぱなしですよね。こんなことじゃ、私はヤシロさんに嫌われてしまいますっ!」
いや、そんなことはねぇけども……
「では、ヤシロさんはワタクシがもらい受けて差し上げますわ。給仕を束ねる給仕長としてその手腕を振るってくださいまし」
「あぅっ! あの、ヤ、ヤシロさんは、陽だまり亭にとってとても重要な方ですので……その、そういうことは……ぁう……でもヤシロさんご本人が希望されるのでしたら……でも、でも……」
「落ち着けジネット。俺はイメルダのとこには行かないから」
「本当ですか? ……よかったぁ」
イメルダのとこなんか行ったら、毎日どんな面倒くさい目に遭わされるか……ストレスでハゲかねん。
「ですが、ウチの給仕は寮生活ですのよ?」
「俺もその寮に住めってのかよ?」
「えぇ、そうですわ。女子寮に、特別に一室作らせますわ」
「…………………………。何をバカなことを言ってるんだ」
「今、間がありましたよね、ヤシロさん!? 一瞬心が揺らぎましたよね!?」
「あははは、なにいってんだよ、ジネット、ほんと、おまえは、おもしろいやつ、だなぁ、あははは」
「言葉が乾き過ぎですよ!? カラッカラじゃないですか!?」
いかん……『女子寮』って言葉に釣られかけた。
だって、お前。『女子寮に俺だけ男子』だぜ? そんな本とかあったらつい買っちゃうだろう?
だってあれだろ? 女子寮って、寮生みんなで大浴場に入っておっぱいの揉みっこするんだろ? 浴場で欲情しちゃうじゃん、そんなの!
だが、こらえた!
そんな魅惑的な餌を目の前に突きつけられたにもかかわらず、俺は見事にこらえてみせた!
まだ、理性の方が一枚上手なようだな、リビドー。そうそう暴走はさせねぇぜ。
…………『異世界女子寮のなんじゃこりゃ混浴譚』
はっ!? いかんいかん。意識が浴場付近をフラフラしてやがる。しっかりしろ、俺!
「んで、ジネット。具体的にどうするつもりだ?」
「そうですね……ワラのベッドが嫌なのでしたら…………ウチでご用意出来る、高級感があってふわふわしたもの………………ポ…………ポップコーン……」
「すまん、イメルダ。俺がなんとかする」
「お願いしますわ」
「ふぇ~ん……申し訳ありません…………何も思い浮かばなかったんです……っ!」
ジネット、もう半分以上頭が寝てんじゃねぇのか?
片付けはそこそこでいいから早く寝ろ、な?
「今から四十区に送っていってやろうか?」
「ワタクシ、四十二区から四十区までなんて歩けませんわ」
「……運動しろよ、太るぞ?」
「しっ!? 失敬な! 運動くらいしてますわっ!」
「何やってんだよ?」
「………………早口言葉」
こいつも半分寝てんじゃねぇのか?
「このっ、このあたりの筋肉がとっても痛くなりますわ! それはもう、物凄いカロリー消費ですわ!」
と、頬骨の下あたりをむにむにと押さえる。
そんなもんで痩せるんなら、日本の女子は全員超早口でしゃべりまくるわ。
「こっちが提案しても埒が明かんな。お前の要望を言え。それで対策を考える」
「要望……と、いうのはそんなにありませんわね」
すでにワラのベッドと実家を拒否しているヤツが言うセリフじゃねぇよ。
「ふかふかのベッドで眠りたいですわ」
「……オメロか」
「誰ですの、オメロ!?」
「川漁ギルドの副ギルド長で、こんなデカい体で、こんな小さいビキニパンツを穿いたヤツだ」
「変態ですわっ!? 紛うことなきド変態ですわっ!」
うん、そこは否定出来ないっ。
でも、ふかふかだぞ?
「ワタクシはベッドで眠りたいのです!」
「つまり自分の家で寝たいわけだな」
「そういう風にあなたが捉えたのでしたら、そういう側面があるのかもしれませんわね」
なんでぼやかすんだよ!?
素直に認めるとペナルティでもあるのかよ?
「じゃあ送ってってやるから支度しろよ」
「おくっ、送って、ど、どうするつもりですのっ!?」
……こいつ。
俺が送り狼になるとでも思ってんのか?
さすがに失礼だ。
「なんもしねぇよ」
「何かしてくださいましっ!」
「「えぇっ!?」」
俺はもちろん、ジネットまでもが声を上げていた。
なに言ってんの、このお嬢様!?
「送って、それで一人、屋敷に……あの、暗くだだっ広い屋敷に、ワタクシをひっ、一人っ、ほ、放り出して…………あなたはそれでも人間ですか!?」
つまり、こいつは……
「屋敷で一人ぼっちが怖いと?」
「怖くなどありませんわ」
だから……素直になるとペナルティでもあるのかって。
「ただ……」
イメルダの顔色がどんどん悪くなっていく。
もはや真っ白だ。
「…………もし、オバケが出たら………………」
ガタガタと震え始めるイメルダ。
テーブルの上でティーカップとソーサーがカチャカチャと音を鳴らす。
……うん、揺れ過ぎだ。
「イメルダさんも、オバケが怖いんですね」
「なぁ、ジネット。その『も』って、他に誰にかかってるんだ?」
「あ、いえ。わたしも、少し苦手ですので」
そう言って微笑むジネットは、やはりちょっと眠そうだった。
「でも、帰ってすぐに寝てしまえば、オバケさんもやって来ませんよ。ウチの祖父が言っていましたが、オバケさんは夜更かしする子供のところに現れるのだそうです。ですので、眠ってしまえば怖くないですよ」
「こ、こ、怖いわけではありませんわ! ワタッ、ワタクシはただ……そう! うら若い女子として、オバケと言えど部外者に寝姿をさらすわけにはいきませんの! そのための護衛が必要なのですわ!」
……護衛…………嫌なワードだなぁ。
「ですので、ヤシロさん! 今宵一晩、ワタクシの屋敷にお泊まりなさいな!」
「断る!」
「うら若い乙女がオバケを見てオネショをしてもいいと言うんですの!?」
漏らすなよ……
「男性の方がいてくだされば、ワタクシも安心して眠れるはずですわ!」
「うら若い女子は部外者に寝姿をさらさないんじゃなかったか?」
「ヤシロさんはもはや身内ですわ」
「……やめて、割とマジで」
あんな筋肉ダルマたちが集う家に、身内認定されて堪るか。
「そもそも、オバケが怖いなんて時にだな…………俺が役に立つわけないだろう」
もう認める。
俺はオバケが嫌いだ。
幽霊? いようがいまいがそんなもんどっちでもいい。
どっちにしても怖いのだ。
無理です、無理! 業界用語にするなら、リームーすーで、リームー。
もし、深夜にイメルダが『キャー』とか言おうものなら……光の速さで逃げ出す自信がある。もちろん、イメルダを見捨ててな!
「それでも、いないよりは心強いですわ!」
「はっはっはっ! 分かってないなイメルダ! 隣で自分以上に怖がるヤツがいる時、恐怖は倍増するんだぞ!」
「ぎゃー!」って悲鳴に驚かされることがどれだけ多いか。
夜道でコンビニの袋がカサカサ動いているだけで悲鳴を上げられるこの俺が、頼りになるわけないだろうが!
なにせ俺は、真夜中、子猫に「にゃー」って言われて悲鳴を上げた男だぞ!?
期待する方がどうかしている!
「では、わたしも一緒に伺いましょうか?」
見かねたジネットがそう提案するも……ジネットの目はもうそろそろ限界だと言わんばかりにとろんとしていた。
おねむなのだ。
「いや、お前もう眠いだろ?」
「ふにぇ。しょんなことありゅまちぇんよ…………」
呂律が回ってないじゃねぇか。
瞼をシパシパさせ、油断すると「ぽぉ~……」っと意識が飛びそうになりながらも、ジネットは懸命に眠気と戦っている。
……こんな状態のヤツを外に連れ出すのは危険だ。色々と。
「イメルダは俺が送っていくから、お前はもう寝ろ」
この状況では仕方ない。
本来なら、マグダでも付いてきてくれれば心強いのだが……ジネットを一人で残していくわけにもいかない。
この世界の夜は物騒だからな。
その点、どんな状況であれ、マグダがいれば安心出来る。
眠気を覚まそうと顔をこしこしするジネット。
お子様ランチがメニューに初登場したこともあり、今日はそれなりに忙しかった。慣れないメニューに四苦八苦したりもしたし……ジネットは相当疲れているはずだ。
「ふにゃ…………でも、わたしは全然、まだ食べられますよ?」
もはや意識が半分夢の世界へ旅立ってしまっている。
ジネットがここまで眠そうにしていることはそうそうない。祭りの日に耐え切れずバタンキューした時くらいじゃないだろうか? あの日はその後起きてきたが……
「ジネット。今日はもう寝ろ。明日の朝には、俺も戻ってくるから。な?」
「…………むぅ」
ジネットが頬を膨らませる。
こんな顔を見せるのは初めてかもしれない。
「…………早く、帰ってきてくださいね」
そして、こんなことを言われたのも……
「あ、あぁ。善処する」
眠気のせいで、普段は見せない本音がぽろりしているのだろうか。
ほんの少しだけ、ジネットは拗ねているように見えた。
「では、イメルダさんをよろしくお願いしまふ……」
とろ~んとした瞳で、緩慢に頭を下げる。
そして、フラフラとした足取りで厨房へと向かう。部屋に戻るのだろう。
おそらくジネット自身も、自分の体力の限界を感じているのだろう。ルンバも、自分のバッテリーがなくなりそうな時は充電しに戻るからな。
ジネットがいなくなった陽だまり亭は、また一段と静けさを増した。
……この状況だけで、すでにちょっと怖い。
まぁ、イメルダがいるから、多少はマシだけどな。
「もうすぐマグダが帰ってくる。ちゃんと事情を話さないと心配させちまうから、それまでは待っててくれよ」
「分かっていますわ」
そう言って、またチビリと紅茶を啜る。
「……さすがに、今回のことは…………ワタクシもわがままを言っていると自覚していますのよ…………その、……申し訳ないと」
「まぁ、そう思っててくれるなら十分だよ」
わがままに振り回されるのは御免だが、心底困り果てているなら頼られることを嫌がったりはしないさ。
「…………ぅう」
突然イメルダがもじもじし始める。
静かな食堂に衣擦れの音が響く。
「どうした?」
「その……紅茶を飲み過ぎて…………」
「トイレなら行ってこいよ。ここの方が怖くないだろ?」
「ですが…………あの狭い空間に一人きりになるのかと思うと…………」
「……まさか、トイレの中まで付いてこいとは言わないよな?」
「い、言うわけありませんわっ! そこまで分別のない人間ではありませんのよ!?」
そりゃよかった。
「そんなお願いをするくらいでしたら、この場で漏らしますわっ!」
「おい、分別弁えろ」
こいつは、なんか色々間違っている。
まぁ、父親があの親バカだからな。親を選べないってのは、不幸なものだ。
「……うぅ…………」
もじもじが速くなっている。……限界が近いんじゃないか?
「いいから行ってこいって」
「ですが……」
「ドアのすぐ前にいてやるから」
「い、いやらしいですわっ!?」
「じゃあどうしろっつうんだよ!?」
「……マグダが付いていく」
「「うわぁぁあああっ!?」」
突然、音もなく背後に現れたマグダに、俺とイメルダは揃って悲鳴を上げた。絶叫だ。
……イメルダ、漏らしたんじゃないか?
「……アイム、ホーム」
「お、おかえり、マグダ。……すげぇ怖かったぞ」
「……ただいまのタイミングを、ちょっと失した」
……ワザとだろう、絶対。
「………………ぁ、無理ですわ。先にごめんなさいしておきます」
「マグダ、大至急イメルダをトイレへ連行しろ!」
「……あいあいさー」
マグダの迅速な強制連行によって、陽だまり亭は一大事を乗り切った。事なきを得てホッと一安心だ。
「……一晩…………普通に寝て『はい終了』……ってわけには、行かないんだろうなぁ」
そんな、漠然としたイヤな予感が胸の奥に渦巻いていた。
戻ってきたマグダに事情を説明し俺は出かける準備をササッと済ませる。
もちろん、トイレも済ませておく。
ここのトイレ以外使いたくないのだ。
イメルダの屋敷は、水洗らしいけどな。慣れてるところがベストだからな。
「……ヤシロが心配」
見送りに出て来てくれたマグダが、そんなことを言う。
自分も付いていければいいのにと、そう漏らしていた。
だが、ジネットのこともあるし、マグダには陽だまり亭を守っていてもらいたい。
「今日だけだ。心配するな」
「……今日だけ、イメルダのおっぱいがしぼめばいいのに……」
「なんの心配をしてるんだ、お前は?」
大丈夫、間違いは、絶っっっ対起こらないから。
俺にだって分別くらいあるし、イメルダにしたってそういうのに慣れているわけじゃない。
何も起こりはしないさ。
「……イメルダのことだから、自分が寝るまでヤシロを離さない」
「まぁ、そうだろうな」
「……その後、馴染みのない広い屋敷で、ヤシロはただ一人きり…………」
「……え?」
「…………怖くて眠れないかもしれない…………心配」
背中に嫌な汗が浮かんだ。
…………そうか。そういうことになるのか…………
「だ、だだだ、大丈夫だよ。お、俺、疲れてるし。うん。すぐに眠れると思うし」
「……ヤシロ………………がんば」
まったく励みにならない応援をもらった。
……今更嘆いても状況は変わらない。
「それじゃ、行ってくる。店とジネットを頼むな」
「……任せて」
ここからイメルダの家までの道が明るいってことだけが救いだな。
そうでなければたどり着くことすら出来なかっただろう。
「じゃ、行くか」
「えぇ。まいりましょう」
肩に重いものを感じながら、俺は歩き出した。
このズーンと重いものは、一日の疲れから来るものなのか、精神的なストレスなのか…………ま、両方だな。
きっと今日はぐっすり眠れる。
そう自分に言い聞かせて、俺はイメルダの家を目指した。
===
追加SS 『異世界詐欺師π』
【41/81π】『匂い』を求めて
https://ncode.syosetu.com/n3381lz/41
===
あとがき
いつもありがとうございます。
「よ~っし! 挿話が終わったから感想返し頑張るぞ~! ……感想返しで挿話くらい長いお話があったら、みんな笑うかなぁ~『長いわぁ!』って……ぷぷぷー」
とか、やっていたら……本編のストックがなくなりました…… orz
なんのために挿話を挟んだのか……(って、挿話も全力投球し過ぎて全然休憩になってなかったし……)
挿話って、1話2000文字~3000文字の短くてサクッと読めるお話で、
そういうのを書いて時間を稼ぎ、忙しい時でも「更新ないです、すみません!」ってやらなくていいようにって、自分で作ったルールなのに……
なぜに挿話が8000文字オーバー……アホなのかと。休めよと。やっぱり病気なのかと。仕事中うつらうつらして怒られてる場合かと。
(……と、コレくらい言い訳しておけばきっとみんな騙されてくれるだろう……くっくっくっ。まぁ、そんなこと思ってるとは、死んでも口に出来ませんけどねぇ、くるっくー……あ、いっけね、笑い方間違えちった)
というわけで、感想返しにて、
「アレ? 俺への返しちょっと短くね?」とか、
「私だけ少ないぷぅ!」とか、
「……そう、それがあなたの気持ちなのね……よぉく分かったわよっ!」とか、
「…………そうか、たくさん返信もらってる『アノ人』さえいなくなれば…………ふひっ……ふひひひひひぃ……」とか、
そういうことは思わないでくださいね。
文字数の長さで愛が決まるわけじゃないんDAZE☆
なんか感想返し短いなぁ~と思われた際は、
「あ、またペース配分間違えてカツカツなんだな……アホだなぁ」と解釈していただけるとほぼ間違いないです。
そんな感じでどうぞよろしくお願いします。
ご新規さんや一見さんにとっても利用しやすく、また常連さんにも変わらず愛し続けてもらえるような、そんな居心地のよい憩いの感想場を目指していきたいです!
場を守るのも作者の務めですので(`・ω・´)>キリッ
まったく関係ないんですが、
プールや海で使える、完全防水のポシェットみたいなのないですかね?
ほら、財布とか手元にあると便利じゃないですか?
なので、完全防水のポシェットに入れて、
あと水遊びしたいから両手使えるように長い肩かけの紐付けてですね、
たぶんそこまで「全力で泳ぐぞ!」って人もそうそういないと思いますんで、
かる~く遊びに来た人なんかが肩にかけておけるような、そういう完全防水ポシェット。
ないですかね?
どこか作ってくれませんかね?
ほら、財布とか、手元にあった方が……ね? 財布とか。便利かなって。
いや、べ、別に、そういう肩かけのポシェットがあれば『水着でパイスラ!』が楽しめるのになとか、全然、もうホント、全っ然思ってませんよ!?
男用なんかいらねぇから『ポシェット』って言ってたとか、そういうことではなくて!
スク水とパイスラ、夢のコラボが、今、ここにっ!
とか、思ってないですってば! これっぽっちしか!
学生さんは、もう夏休みですね。
思う存分青春して、こういう鬱屈した大人にならないルートを歩んでください。
次回もよろしくお願いします。
宮地拓海
追伸
昨日の100部&1,000,000文字達成報告に、感想欄や活動報告の記事の方へお祝いコメントくださった皆様、ありがとうございました。
一括で恐縮ですが、この場にてお礼申し上げます!




