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進行

見通しイェーイ

ハロルドは、窓から差し込む光を感じてパチリと目を開けた。

即座に起き上がると、置いてある鎧を着込む。

筋肉を強調するかのように肌に密着する服と共に黒色の鎧を纏ったハロルドの雰囲気は、寝ぼけ眼から一変し、重厚なものとなった。

ドアを開けて、居間へと向かう。


「ちゃんと起きたのね」


「そりゃあな」


王城へと説明に来てくれという返答がきたのは、報告して直ぐだった。

面倒なことだとは思うが、支部長である限りその責は果たさねばならない。

椅子へと座ると同時に、朝食が出てくる。

それを書き込み、支度をして、外へと出る。


「いってらっしゃい」


「あぁ、いってきます」


王城へと歩を進める。


------------------------


王城へと入ると、豪華な一室へと通される。

といえども、王城なんてどこも豪華なものだろうが。

ソファに座って欠伸を一つ、いつもよりも早く起きたからだろう、かなり眠い。

そこへと三人の男達が入ってくる。


――敵意を向けられたか。


入ってきた数人を見る、どれも豪華な身なり、貴族だろうか。

敵意を向けた奴はわからなかったが、殺意とは違うものだ、何かに苛立っている、そんな感じだ。

冒険者に対する侮蔑とも違うし、どういう意味を持っていたのかはわからない。

そう考えていると、その中でもっとも豪華な身なりをした、腹の出た男がソファへと座り、最初に口を開いた。


「それで報告をお願いしたいのだがね」


「あぁ、そうだな」


まずは説明を開始する。

昨日の馬車が襲われていることを目撃したこと、クエスト中の出来事であったこと。

そして魔物は黒い液体と変わり、消えうせたこと。

ステラ・ド・クレンラッツが襲われたことは既に承知の事実だろう。

話をした瞬間に、座っている男の他二名が顔を真っ青にしている。

……尋常じゃないご様子で。


「ステラ・ド・クレンラッツとは何者で?」


「隣国の帝国については知っているな?」


「あぁ、ラーファリエイドとかいう帝国だったな」


「うむ、その王族の一人になるな」


「……なんで留学しに来たので?」


「皇帝が決めたらしい」


「ふむふむ、つまり、皇帝が決めた留学に来て、王国の領地に入ったら、突如として表れ、最近まで目撃すらされなかった黒い液体になる魔物に襲われたと」


「……滅多な事は言うな」


この男もそれを考えているというわけだな。

はぁ、面倒事が昨日今日と襲い掛かってくる。


「これで報告は終わりですが、退席しても?」


「あぁ、国王がお話があるようだ」


「……すいませんがもう一度」


「国王が、お前に話がある」


俺、何かやったかな、と泣き面に蜂状態である現状に心の中で頭を抱える。


「場所は、どこでしょう」


「謁見の間がある階の一番奥だな、さっさといけ」


「わかりましたよ」


高圧的にそう言い放つ男へと一礼をして去っていく。

もう直ぐ死ぬんじゃなかろうか。

そう考えながら、赤いじゅうたんの敷き詰められた廊下と歩き、階段を上って言われた部屋へと向かう。

これまた大きな木でできた扉を開け、中へと入る。


「はじめまして、セイク王国国王、グリフグレイだ」


「……はじめまして、Sランク冒険者、ハロルドだ」


反応が遅れたのは、部屋の光景が考えたものとかけ離れたものだったからだ。

Sランカーと対話をするというのだから、国王なんかは騎士とかがズラリと並べていつでも護れるようにしているであろう――そうハロルドは考えた。

しかし、目の前の光景は国王一人がポツンと部屋にある高級そうな茶色の皮のソファへと座っているだけだ。

危険であると、止められはずだ。

つまり俺に言いたいのは、危険であったとしても、一対一で聞きたいことというわけだ。

――報告以外に国王に離せることなんてないぞ、俺。

少し冷や汗が流れた。


「立っていないで座ってくれないか?」


「あぁ、すいません」


国王の言葉にハッとした、このままでは話すことができないではないか。

謝罪をしつつ、対面する形でソファへと座る。


「それで、私に何を聞きたいのでしょうか」


「ふむ、そんなに固くならないで欲しい」


無理だろう、それは。

そうツッコミを入れつつ、次の言葉を待つ。


「Sランク冒険者について聞きたい」


――は?


「は?」


声を出した後にヤバイと思い口を噤む。


「申し訳ない、驚いたもので――えぇと、具体的には何を聞きたいので?」


「うむ、僅か16歳でSランク冒険者となった少女のことだ、初めて聞いたときに気になってな」


――純粋な好奇心……ではない。

少し言葉に含んだものがあるな、リーリャに何かあるのだろうか。


「リーリャのことですね」


「う、うむ、親御さんは冒険者となった彼女をどう思っているのかね」


「さぁ、父親はいないですが、母親は手紙でよくやり取りをしているようですよ、恐らくは複雑な気持ちでしょうが、彼女の行動を否定してはいないのではないでしょうか」


「そうか、父親が居ないの、やはり……」


「……やはり?」


「いや、なんでもない」


父親が居ないに対してやはりと続くということは。

……リーリャの父親について知っている、ということだろうか。

話を聞きたいのは、確実にリーリャについて聞きたいということ。


「それで他に何か聞きたいことは」


「ふむ、若い女性のことだ、危険ではないのか?」


「危険?あぁ、冒険者は当然危険ですよ、強い敵に合うと、気が付いたら二つに切断されていた、なんてこともよくある話です、決して驚くほどのことではありません」


――顔を真っ青にしている。

この反応、あれれ、まさか――いや違う違う、そんなわけないだろ。


「しかしアイツはかなり強いですよ、自然災害なんざ敵にもならないでしょう」


「ふむ、とてつもなく強いのはわかったが――」


「――アイツは人の力量を数値化することができるそうです」


こいつが、リーリャの父親だというのなら。

母親にはない能力は、父親からの遺伝だ、しかし王族にこんな能力を持っているという話を聞いたことはない。

つまりは秘匿されている力か、昔はあった力だろう。

少なくとも、これで変化があった場合、リーリャの父親であることは確実だ。


「……なッ!?」


――ビンゴ、どういうことだこれは。

背中から冷や汗が噴出してくる、俺はリーリャがSランクになることにより、自然災害によりおきる面倒事が二分されると思い、喜んだ。

だけど、リーリャから面倒事が噴出しやがったじゃねぇか、ゲンコだ、帰ったらゲンコしてやる!

目を丸くして、ありえないと言わんばかりの表情で、額から汗を流してこちらを真っ直ぐと見る。


「――どうかしましたか?」


「い、嫌、なんでもない」


ここで知ってしまった感を出すと、さらに面倒だろう。

そう考えて、知らないフリをする。

この王様、腹芸は苦手なようだ。


「それで、他に聞きたいことは何も無いのでしょうか」


「う、うむ、下がってよい」


声が震え、素人目にでもわかるであろうほどに動揺している。

そんな王様を横目に退出し、無表情を貫き通しギルドへと向かう。


「あら、早かったわね」


「ギルド本部に情報収集を依頼、ステラ・ド・クレンラッツ」


「え?あぁ、わかったわ」


「さらに幹部連中に話をさせろ、リーリャの姫騎士の二つ名を推したのはどいつかわかるか?」


「うん?たしか前にきたギルド幹部の人がシェイミさんって」


「そいつは何者だ」


「この国の元騎士から冒険者になった人ね」


「現王との関わりは!?」


「それは今は分からないわ、本人か、他のギルド幹部に問い合わせてみないと」


「……アポをとってくれ、後で話すことにする」


焦った様子の俺に、少し怪訝な表情をしながらもアーリーは頷き、ギルド本部へと複数の用紙を書いて送りつける。

それが終わった後に俺にガラスのコップに水を注いだものを差し出す。


「落ち着きなさい」


そう言われて、落ち着かなければと思考を切り替えてコップを受け取り、煽るように水を一気飲みをする。

……少しは落ち着いたか。


「どうかしたのよ、ハロルド?何をこんなに焦ってるの」


「ステラ・ド・クレンラッツ」


「あぁ、さっきいってた娘ね」


「そいつについての情報がくればお前も分かると思う、ギルド内部で話す内容ではない、情報が来なかった場合は夜に話す」


「……わかったわ、今は聞かない」


いい女――だということは昔からわかっている。

妻が彼女でよかった。


「リーリャは訓練か?」


「そうよ、初訓練だから昨日から緊張していたわ、でも楽しそうだった」


「そうだな、メイドになれればいいな」


「そうねぇ、あんなに努力しているのだから、認められればいいわね」


――アイツの選択肢は二つしかない。

本当に姫騎士になるか

それとも、メイドを貫き通すか。

今までの状況から考えよう。

帝国の王族の遠縁の姫が皇帝により留学、その途中で今まで目撃されていない存在が現れて、殺されかかる。

正直言って、この時点で違和感がありすぎる。

人為的なものを感じる、推測でしかないが、大きなことに発展する可能性を秘めている。

それによりリーリャがどうなるかは考えるまでも無い。

まだ、王様はリーリャを娘だとバラす気はなさそうだ。


「――あぁ、もう面倒だ」


リーリャは妹のように思っている。

アイツへと知らぬ間に激流が襲い掛かっているこの現状。

考えろ、考えろ俺。

とにかく――最悪の事態にしなければいい、そうだ、そうすればいい。

しかしやるべきことは二つだ、あの異常な魔物を探すこと、そして帝国の皇帝の遠縁の少女を護ること。

――リーリャは学院で訓練だよな。

ステラは、留学。

この国となると学院にいるであろうことはほぼ確実。


「……ふぅー、エリーの依頼書、まだあるか」


「えぇ、あるけど……やるの?」


「いや」


首を左右に振って否定する。

これをやるのは――



「リーリャにやらせる、紹介といった形で条件をつける」




リーリャだ、これしかない。



--------------------




ふぁぁ……と大きな欠伸をしながら朝靄の残る時間にリーリャは寝巻きで外へと出る。

向かう先はポストだ。

開いて、一つ手紙が入っているのを見つけて、パァッと笑顔を輝かせる、ポストから取り出して、あて先を見てがっくりと肩を落とす。


「お母さんからじゃないか……」


朝早くに起きる理由は、郵便が配られるのは朝早い時間からだ、つまりマリアからの手紙も朝早くポストへと届けられる、それを早く読みたい。


「鍛冶屋、ダンさんからか、どうかしたのかなぁ?」


そう疑問に思いながら、手紙を家へと持っていき、居間においてある椅子へと腰掛ける。

ビリビリと封筒を破き、中にある手紙を取り出し、開く。

そこには

『Sランク昇格祝いに姫騎士装備を作成しました

             ダン&ハゼル』

と書いてあった。

中々に複雑な思いだ、メイドメイドといっていたのを知っているのに、姫騎士装備と名づける装備を作られるとは。

しかし、かなりちょうど良いタイミングだった。

メイド服ではダメだろう、そう考えていたためだ。

訓練の始まる時刻より二時間前に鍛冶屋は開店する。

取りに行き、それを着て訓練をすることにしよう。

もとよりリーリャはメイド服と、冒険者の最初の頃に使っていた服しか持っていない。

成長したために冒険者の服のほうは既に切れないために、現在訓練のときに着ていく服が無い。

まぁ適当に見繕うつもりだったが、ファッションセンスなんて知らないために少し不安だったのだ。

用意してくれるというのなら、それに越したことは無い。


「うん、運が向いてきてるね!」


そうリーリャは嬉しそうに笑った。

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