虚しい
眠い!2時かよ!予約するよ!読み直すべきかな!
無理に一日に二度更新するんじゃなかった!
創られたアーグリードに乗っ取られている状態であるリーリャの意識は、無いわけではない、むしろハッキリとしていた。
体が動かされると、その感触が、まるで自分が行っているかのように感じられていた。
(……何をやるの?)
心の中で問いかけた、問いかけつつも、何をやるのかはわかりきっていた。
あれを、倒すのだ。
空に舞い、何度も体をひしゃげては治る、それを繰り返す黒い龍を見た。
ハロルドと、ルーカスが戦闘を行っているが、致命的な傷は負わせられないようで、何度も回復されていた。
寧ろ、疲労が蓄積し、動きが悪くなっているのが見て取れた。
(助けなきゃ)
「あぁ、リーリャが動こうとしているな、俺もいかないと」
リーリャの考えたことが通じたのか、そう言い放った。
そして一歩一歩と歩き出すと、後ろからマリアが近付いた。
「リーリャは、戻るんですか?」
「戻るな、俺はその場の凌ぎに作られたにすぎない、すぐに崩れて、消え去るだけさ」
そういって、振り向いたリーリャの視界に、心配そうに見つめるマリアが見えた。
ニコッと笑顔を向けて、すぐに足に力を入れて飛び出した、矢のように飛び出すと、リーリャの周囲に、金色のベールが展開され、それが翼へと変わっていった。
それは羽ばたくと、リーリャは落下を止めて、まるで本当の翼があるように空を翔けた。
そのまま、真っすぐに黒い龍へと接近していく。
「リーリャ?」
近付いてきたリーリャに気づき、ハロルドは振り向き、問いかけた。
リーリャはニコリと笑いかけた。
黒い龍は、現れたリーリャを視界に納めた途端に、二人への攻撃を止めて、リーリャへと攻撃せんと、黒い光線を溜め、即座に放った。
「温い」
リーリャはその一撃を、黄色のオーラを纏った剣の一撃で相殺――いや、蒸発させた。
軽々しく消し飛ばした一撃を放ったリーリャに、ハロルドは呆然とするしかなかった。
「これが敵の場合、俺は負けないからな」
その様子に得意げにリーリャは笑う、ハロルドはそれをみて、目の前にいる少女が、彼のよく知る少女ではないとすぐに理解した。
「お前、誰だ……?」
そう問いかけると、リーリャは笑った。
「――アーグリードの記憶、さ」
そういってリーリャは、こちらを見るルーカスへと微笑みを向けた。
「な、な……その力は」
目を丸くして、口を半開きにして固まるルーカス、リーリャはそんな彼を見て、ケタケタと笑い始めた。
「成長したな、お前も、すごいな、一番強い時の俺に迫っている」
「……お前、お前、本当にアーグリードなのか!?」
「いや、何度も言うように、俺は」
「何故だ、何故死んだ!もう少し遅ければ、遅ければお前の願いは……!」
言い終わる前に、ルーカスが叫んだ、涙が流れ始めていた。
その様子に、ハロルドも、リーリャも、何も言わずに口を噤んだ。
その間に黒い光線を龍は放ってくる、それをリーリャが薙ぎ払い、彼らを見まわした。
「話は後だ、……俺は、そこまで長くいられない、後は記憶を受け継いだリーリャに聞くといい」
(……いや、そこまで詳細に知らないという問題が……)
リーリャはそう考えたが、返答はなかった。
(あれ、もしかして投げるつもりですか……?)
「リーリャは了承した」
問いかけると、何故か了承したことになっていた。リーリャは無言で不満を表すが、それについての返答は帰ってこなかった。
これが終われば、記憶が詳細になるのだろう、そう予測して、リーリャは無理やり感情を押しこめることとなった。
「……ッ、わかった……さっさと終わらせよう、何をすればいい」
ルーカスは、少し悲しくなったが、すぐに思考を切り替えて問いかけた。
彼は、アーグリードの死を一度体験していた、二度目となると、割り切りも早かった。
「すまない、ハロルドさん、ルーカス、時間を稼いでくれるか?」
「……わかった、俺も何が起こっているのかわからねぇし、聞くからな」
「わかった」
もう一度いうが、リーリャには詳細はそこまでわからない。
ルーカスは、その言葉を聞いた瞬間に頷き、周囲へと叫んだ。
「エーリカ、メルロス、ミストレーナ!時間を稼ぐぞ!」
その言葉を聞いて、三人はこちらへと振り向いて、一つ頷いて、すぐに黒い龍を見た。
そしてエーリカは、血の刃を周辺に数千と展開し、メルロスは球状になった風の塊を展開、ミストレーナは周囲に武器を展開し、巨大な斧を握り締めて突撃した。
「……ルーカスがモテモテで何より」
その様子を見て、リーリャはニヤニヤと笑いながら、そう言った。
「アーグリード、お前はいつも変なところで空気を読まず、茶々を入れるんだな、千年経っても変わらない」
「大丈夫だ、俺の信頼できるやつにしかしない」
その言葉に、ルーカスは複雑な気持ちだった、どこか嬉しくて、どこか悲しかった。
「……あぁ」
「信頼してるぞ、ルーカス。そしてリーリャは信頼しているぞ、ハロルドさん」
「そうかよ!」
ハロルドはそう言って、黒い龍へと走って行った。
ルーカスは、名残惜しかったが、すぐに龍へと立ち向かっていった。
それをみて、リーリャは目をすっと細めた。
(……アーグリードさん、さびしいの?)
リーリャが問いかけると、
「あぁ、そうだな」
そう、ボソリと言って、城へと手のひらを向けた。
すると、城にある王の間から、黄金の光が吹きこぼれ、それはまるで花弁のように舞い散り、そこから壁を突き破って、一本の剣が、光を纏ってリーリャの手元へとおさまった。
(――これは?)
「俺の夢、世界が平和になる鍵さ」
そう、笑って剣を黒い龍へと向けた。
そう言って、リーリャはすぅっと息を吸うと、歌い始めた。
「『――♪』」
そして舞う、リーリャは思い出していた、少女が歌い、舞う、夢の光景を。
(あれは、アンノウンだったんだ)
リーリャは、アンノウンを祓うものだと、理解した。
それを証明するように、黒い龍の動きは鈍くなっていった。
――オオオオオオォォッ!
黒い龍が吠え、黒い光線を放とうと口内に溜める、
「できると思ってか!」
しかし、ルーカスの一撃によって、顔をつぶされた。
すぐさま顔を元に戻し、さらなる一撃を加えるべく、溜めようとする、
「やらせるか!」
ハロルドの一撃が、再び邪魔をした。
リーリャは、起こっているそれに意識は傾けていない、完全に、歌と踊りに思考を向けていた。
(『――♪』)
リーリャは、自然と心の中で歌い始めた――。
「ハァッ!」
ハンニバルは遅い来るアンノウンを一瞬で分割し、黒い液体へと戻るのを見届けて、周囲を見回す、周辺すべてに戦闘が行われ、安全地帯は見当たらなかった。
思わず心の中で舌打ちをして、死んでいないけが人や、倒れそうなやつらなどが多くいる場所へと駆け込み、遅い来るアンノウンの一撃を受け止め、弾き飛ばした。
そのまま懐へと入り、一閃にて首を飛ばす。
「あ、ありがとうございます、騎士団長……」
「礼は後でいい、けが人を退避させろ」
「は、はい!」
けが人たちを引きずるように持っていく光景を見て、ハンニバルはキュッと口を固く結んだ。
(策は、成功している、しかし……やはりけが人は多い)
己の未熟さを一瞬恥じて、すぐに現状に思考を戻した。
そんなもの、ぐだぐだとやっている時間などない、後悔して手を止めて、被害を多くしている余裕なんてものはなかった。
「ハンニバル様!」
声をかけられたハンニバルが振り向くと、こちらへとナルセスが近付いてくるのが見えた。
「あぁ……第二騎士団の団長殿か」
「お、覚えてらしたのですね!」
パァッと顔を輝かせるナルセスだが、ハンニバルは背後のアンノウンへと対峙しており、見てはいなかった。
「『風よ……弾き飛ばせ』」
ナルセスはハンニバルに迫るアンノウンへと魔法を繰り出し、直撃させ、後退させることに成功した。
背を付け合い、周辺の敵へと対峙した。
「……スキピオのほうは」
「第一と第三、そして第五が向かっています」
「――そうか」
スキピオ付近も、ハンニバルと変わらずに戦場に呑まれていた。
彼はリーリャを探すことを中断せざるを得ず、即座に防御の体勢をとり、落とし穴などのトラップを使用し、足止めをしながら、確実に倒していく方法を選択していた。
しかし、不利なのは変わらず、一歩間違えれば防衛が崩壊し、城へと迫るであろうほどに、消耗していた。
その時だ、上空からどしゃりと巨大な鳥のアンノウンが落下した。
振り向くと、弓を構えたベリサリウスが立っていた。
「ベリサリウス様!」
「なるほど、ハンニバルが自慢するわけだ」
そう言って笑みを浮かべると、その後ろからカエサルも飛び出してきた。
そこから大量の騎士が現れ、前線を押し上げ始めていく、スキピオは状況が打破されはじめていることを確認して、ホッとした。
「……まだ終わってはいない、落ち着くのはまだだ……第五騎士団が、門の前からこちらへとアンノウンに攻撃を与える」
ベリサリウスの言葉に、スキピオは頷いた。
そこからこちら側の戦略を考え始めて行く、その時だった。
「――歌?」
ふと空を見ると、黄色がかっているのが見えた。
スキピオは、歌とその光景に不思議に思いながらも、戦場へと視線を移すと、異様な光景を見た。
「アンノウンたちが、動きを止めた……?」
一方的に攻撃を食らい始めていた。スキピオはその光景に混乱しつつも、この時を逃してはならないと、周囲に畳みかけることを命令した、その瞬間、アンノウンたちは踵を返して、走って行った。
第五騎士団がそれを捕え、攻撃していく、複数が倒れ行くが、それを気にせずして走っていく、全員は倒せてはおらず、複数がその包囲を抜けて、走って行った。
この場にいる騎士団長は、全員門の前へと走った。
そして、金色に輝く翼をもって、舞い踊るリーリャの姿を見た。
リーリャは、いつの間にか体が、自分のものとして動くようになっていることに気がついた。
しかし、踊りと歌は辞めなかった。
(なんだろうか、ものすごく心地よい……)
目をつぶると、母に抱きかかえられているような、心地よさが広がり、温かくなるような感覚が、自分の内から広がって行った。
リーリャの頭に、ふと、翼の生えた少女の笑顔がよぎった。
その時、目をうっすらと開けると、黒い龍が既にぐったりとして動かないのが見えた。
そして、アンノウンを切り裂いた時のように、どろりと液体になるのではなく、まるで気化するように消えていくのが、はっきりと見て取れた。
周囲に黄色いベールが展開され、それが天高く打ち上げられ、世界へと広がっていく
――あぁ、何故かはわからない、だけど、すごくうれしい。
笑みを浮かべながら、踊りを続け、そしてそれは間もなく終わりを告げた。
悲しさを感じながらも、リーリャはその場にとどまり、いつの間にか黄金へと変わった翼を解除した。
浮遊する力を失い、重力に沿って落ちていき、地面へとタンッと降り立った。
「……疲れた……」
ものすごい脱力感が遅い、その場へと座りこんだ。
「リーリャァァァァ!」
その時だった、ハロルドがリーリャの名前を呼んだ。
それを聞いて、リーリャはハロルドを見た、その時だった。
視界の周囲に、黒い何かが現れた。
「……え?」
黒い何かが視界を覆っていき、いつのまにか太陽の光を、完全にシャットダウンしてしまった。
しかし、力を使い、疲れ切ったリーリャには抵抗する力はなかった。
ハロルドはリーリャを包み込んだ黒い球体が、地面へと消えていくのを見た。
それを見た瞬間に、ナイフを地面へと一閃した。
一閃は、大地を切り裂き、城壁の端から端までをえぐりとり、ハロルドは地面へと両手をかけて、力一杯開いた。
抉られた地面が、開かれていく、しかしそこにはリーリャの姿はなかった。
「ルーカス!なんだ、これはなんだ!」
叫びながら、近くへと迫るルーカスを見た。
困惑する姿を見て、ハロルドは、ルーカスも予測できない事態であったことを理解した。
「なんだというんだ!これは!」
「……死んではない、はずだ、あの力は、黒い霧は干渉できない、包み込み、攫うくらいしかできないだろう」
「……母親に、絶対にそうだと証明できるのか?」
「……」
ハロルドの問いに、ルーカスは答えなかった。
無力感が、心の中で渦巻いて行った。
「何がSランカーだよ……畜生……」




