戦闘前
なんでここまで来たんだろうか
リーリャは、持ち場である、二枚ある城壁の内側にある壁へと、垂直な壁を上り、たん、と着地した。
遠くに王都が見え、話にあったように、その付近にはまばらな人影がある、冒険者、リーリャが見たことのある人々や、鎧を纏った兵士たちだ。
見まわしながら、景色を楽しんでいると、こちらへと列をなして、向かってくるものがあった、それは馬車を真ん中にして、護っているようだ。
第三騎士団だろうか、そう思っていると、さらに後方に、別の鎧を纏った人々が同じくこちらへと向かってきていた。
「……?」
「第五騎士団ですね」
「第五騎士団、ですか」
門の上へと登り、リーリャの隣へと来たスキピオが、疑問を読み取ったらしく、答えを教えてくれた。
「あぁ、詳しくは教えてもらいませんでした?まぁそれも仕方がないことですよ」
「何がしかたないのでしょうか?」
「16年前ぐらいに終結しした、現王と王弟の跡目争いですよ、といっても王弟は神輿みたいなもので、当時の宰相が権力を欲したために起こったようです、それで王弟は学院のほうに送られ、軟禁状態になります、その当時から、第一騎士団は第五騎士団ににらみを利かせています、まぁ当然と言えば、当然ですか」
権力争いによる、関係の悪化、そこまで学のないリーリャでも、すぐに吸収できる事柄だ。
「では、アーグリード王と似た境遇ですね」
アーグリードも、跡目争いをやった王だ。ライバルは兄だが。
「えぇ、だからアーローンの英雄の再来、なんて言われています、しかし、元々跡目争いはよくあったものですからね、歴史的に見てしまうと、どれだけ大量生産されるのでしょう?」
おどけた様子で、スキピオは言った。
リーリャは思わず笑いそうになってしまったが、すぐに飲み込んで、変わりに微笑んだ。
「では、ベネヴィア様は誰でしょうね」
「リンドウッド公爵とか、アーニールド伯爵とか、……華がないですね」
リーリャは、二人とも聞いたことがある名前であることに、驚いた。
「まぁ、貴族の間では、まことしやかにささやかれている噂はありますが――」
「噂?」
「おう、副団長殿、美少女との会話を楽しんでいること悪いが、こちらへと向かっている騎士団の出迎えをしてこようと思うんだが」
問いを投げかけようとすると、突然空から小さな龍にのった騎士が、リーリャの横へと降り立った。
「アーレス、そんなんじゃないさ、彼女はこのたび呼ばれた、冒険者というやつでね、……おっと、言い訳はここまでにしよう、よろしく頼むよ」
「了解!せいっはっ!」
アーレスは、左手で龍につなげられた手綱を握り締め、右手で敬礼をした後に、すぐに両手で持って思い切り引いた、龍の小さな鳴き声が聞こえ、翼をはばたかせて、飛び立った。
「後でご飯でもいかがですか!」
そして口説きながら飛んでいく、リーリャは苦笑いしか起きなかった。
飛び立ったアーレスを追うように、他の龍騎士たちが空を飛んでいった。
「あぁ、アーレスは龍騎士隊の隊長をやっている、女性のモテるが、口説きが上手くないのが有名でね、団長も同じタイプで、第四騎士団は顔は良いがモテない騎士団、なんて言われていますよ」
「では、副団長はどうなんでしょうか?」
「い、痛いところをつきますね」
苦い顔をして、スキピオはリーリャの言葉に、ばつが悪そうに頬を掻いた。
「まぁ懇意にしている女性はいますよ。まぁ例にもれず、良く「女性の心を理解していない」と怒られます」
「ふふふ……、あぁごめんなさい、話を切りますが、噂とは?」
「あぁ、噂ですね、根も葉もないとは言え、火の無いところに煙は立たずといいますか、まぁ一言で言ってしまえば、国王を支えた女性がいるそうです、いつのまにか、居なくなっていたようですが」
――リーリャの顔からサッと血の気が失せた。
スキピオは、それを見て、心配そうにリーリャを見た。
「どうかしましたか?えぇと、診療所があるので、そこに行きますか?」
「いえ、なんでもないです」
(誰も言わなければ、なんて思っていたけれど、事態はそんなに単純ではないのかもしれない……)
16年前、支えた女性――思い当たるのは、母しかいないと気づいた。
現王妃がいることは、知っているが、名前がでないということは、その人ではないのだろう、ぐるぐると回転してく頭で、少しずつ現実というものが見えていった。
そんな思考にとらわれ始めたリーリャを、我に返らせたのは、スキピオの言葉だった。
「おや、もうすぐ第三騎士団の到着のようですね、門の外へと行きましょう」
「あぁ、はい」
「王子と三人の大貴族の子供たちが来ますからね、少しでも失礼なことをしてはいけません、首なんて軽々と吹っ飛んでしまいます」
「え、えぇそうですか(……思い切り失礼なことをしたんですが)」
最初の出会いを思い出して、今更のことを考えた。
考えて――すぐにポイと投げ捨てた。
「そういえば、ここまで馬車でこれるのですね」
「王家がいる場合のみ、馬車での侵入が許されていますから」
「そうなんですか」と言って、リーリャは門から飛び降り、くるりと回って降り立った。
騎士たちは既に二つの列に並んでおり、出迎える準備をしていた。そこへスキピオが到着し、列の一番奥へと並び、リーリャは少し離れた場所で立っていた。
ほどなくして、馬車が到着した。列に並ぶ騎士は、第三騎士も合わさり、さらに増えていた。
最初に出てきたのは、知らない男性だった、髪色は金色で、理知的な雰囲気をしていた。その男性に手をひかれて、クリセッド王子が降り立った。
騎士の礼をして、片膝をついて出迎えをするスキピオ、そして続いて、ベールクリフ、アイリス、レイドの順で降り立ち、きょろきょろと周囲を見回していた、そして、ふと視線が合った。
(!?)
ベールクリフの顔が、パァッと明るくなった。そして小さくではあるが、こちらへと手を振った。その様子をみて、アイリスとレイドが気が付き、同じく小さく手を振った。
返していいのだろうか、と不安になりつつも、それを返すと、小さくうなずき、城へと向かった王子の後を追うように歩き去って行った。
御者がパチンと手綱を振り、馬車を動かし、別の門から外へと出て行ったのを見て、すぐさま次の馬車が到着した。第三騎士団はすでに解散しており、残った第四騎士団に、第五騎士団が合わさり、同じ数ほどの列が出来上がった。
そして、馬車は止まり、中から――
「あ――」
白い髪、最初に学院へと来た時に出会った青年、アルフレッド。
つまりは、彼は王弟ということだ。
その彼の後ろに、ステラが降り立った。
リーリャはエリーの姿を探していると、すぐに見つけた、馬車の近くに居た。
話を聞きたいが、この場で聞くわけにもいかない、そう考えて、逸る気持ちを抑えながら、この時間が過ぎ去るのを待った。
ちらりと、リーリャをアルフレッドは見た、にこりと笑みを浮かべた。
その後、ステラとエリーも気が付き、ステラは軽く手を挙げて、エリーは一礼をして去って行った。
そして、第五騎士団は去っていき、第四騎士団の面々は、持ち場へと戻って行った。
「お知り合いですか?」
「えぇ、まぁ……話すのは、ダメでしょうか」
「失礼がないのならば良いでしょう、少しぐらいという制約はつきますが、ね」
「それでは!」
そう言ってリーリャは走り出した、後ろでスキピオが何かを言おうとしていたが、それに気付かずに走って行く、廊下を抜けて、近くの騎士に、護衛対象の居場所を問いかける、少し不審なものを見る顔をされ、理由を考えていると
「この方は、保護対象の貴族様の知り合いですよ」
「えっ――副団長様!」
ビシッと騎士は敬礼をする、振り向けばスキピオが額に汗をかいて立っていた。
「さすがに知り合いだといっても、はいそうですかと通すわけにはいかないですよ」
「も、申し訳ないです」
「それはもういいので、さっさと行きましょう」
そういってスキピオはリーリャの前を歩き始めた、ついてこい、ということだろうと理解して、リーリャは背を追った。
少し歩いて行くと、すぐさま大きな扉へと到着した。
「ひとつの場所にまとめられています――まぁ、王族、貴族、平民といますから、分けられてはいますが、そしてここはパーティ会場などに使われる場所です、王の間の次に強固に作られた場所なので、龍の息吹くらいなら護れるようになっています、……二発が限度でしょうが」
そういって、スキピオは扉の前に警護している騎士に話をして、すぐに扉を開けてもらうと、リーリャを中に入れた。
「内部には第一騎士団の上位が警護を、先ほどの扉の警護は第三騎士団ですね、外を第二騎士団が、先ほどの第五騎士団ですが、今回はかなり遠くの配置となっています」
――危険分子と見られている、ということはすぐにわかる。
「リーリャ!」
声のするほうに視線を向けると、ベールクリフがいた。
こちらへと、早歩きで近づいてくる、後ろには3人がこちらへと向かっている、エリーの姿はいなかった。
「さっきぶりね、リーリャ」
「ここにきたということな、何か理由が?」
「おそらくリーリャさんは俺に会いに」
「違うわね」
「違うでしょうね」
「まぁ、そうだろうね」
「……まぁ、俺もそうだとは思ってはいるが」
まるでコントのような会話をして、四人はそこにいた。
「王弟、さっきまでエスコートしてくれた方だったわね」
ステラが下唇をつまみながら、思い出したようにそう言った。
「えぇ、かなりの美形だったわ、知り合いだったの?」
「えぇ、意味深なことを言われまして」
アイリスの問いかけに、リーリャは答えると、ベールクリフはその言葉に反応した。
「意味深?なんて言われたんだ!?セクハラか!?」
「侮辱罪で死ぬわよ、アンタ」
勢いよくそういったベールクリフに、冷静なツッコミを入れるアイリス、いつもの光景だ。
「とりあえず王弟とは会えるかはわからないよ、今は王家……つまり、陛下、王妃様、王子様がいる場所に居るので、距離的にはかなり近いけど、隣の部屋だからね」
レイドの言葉を聞いて、少しがっかりとした。会えないようだ、もう帰るべきだろうか、そう考えて、気がついた。
「お母さん……あの平民の女性はいなかったですか?」
「リーリャの母上か!ぜひご挨拶を……」
「ベールクリフはいいとして、平民の女性は見当たらないわね、名前は?」
「マリアです」
「ごめん、聞いたことないわね」
「……先ほどごあいさつに伺ったけど、王家の方がいる部屋に、おそらくだけど、居たわね」
ステラの言葉を聞いた瞬間、リーリャが混乱した。
「え?何故……?」
「それはなんとも、この国の国王様が、死んだ目をして、王妃様が嬉しそうに寄り添っていたわ」
話を聞いて、さらに混乱する、意味不明だ。
「とりあえず、雰囲気は国王様以外は明るかったわ、平民の女性がかなりそわそわしていたけど」
「そ、そうですか」
ステラの言葉ではあるが、大丈夫のようだ、ホッと息をつく。
「少し聞いていましたが、何やら話をしているということで、無理らしいです」
スキピオがこちらへと近づいてくるやら話を聞きに言ってくれたようだ。
それを聞いて、諦めることにした、突入するほどでもない、この場を混乱させるわけにもいかない。
「それでは、私は持ち場に帰ります」
「もう帰るの?」
「一時間ぐらいいいだろう?」
「さすがに長すぎですよ、ベールクリフ、事態はどうなるのかわからない状況です、できるだけ早く持ち場に戻るほうがいいでしょう」
「そうだね、それじゃあ、暇になったらいつでも来てください」
「……そうだな、いつでも来てほしい」
「えぇ、かなりここ暇なのよね、だからできればでいいわ」
「それじゃあ護り、期待してるわよ」
頷いて、扉へと向かう、すると、扉が自動的に空いたかと思うと、先からエリーが現れた。
「あ、こんにちは」
「そうですね、何かしていたんですか?」
「剣の訓練を、第二騎士団の方が一緒になってやってくれました」
「それはよかった、実戦経験はたくさん積むべきですからね」
「はい!」と元気よく頷いて、こちらへと一礼をして、通り過ぎていく、目を発動する――
レベル:27
「……強くなりましたね」
小さくそういって、会場の外へと出た。
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「ベリサリウスが本気でイラついていた」
ハンニバルは、持ち場であり、中心部である中庭で、手作りの椅子に座り、考えを巡らせていると、ふと、声をかけられて振り向いた。
「カエサル、か」
かなり歳を食った男がそこにいた。
王家近衛第三騎士団騎士団長カエサル、弓の名手だ。
ハンニバルは、顎に手を当てて、少し考えるそぶりをして言った。
「まぁ、相手が前の宰相、前国王の宰相様だ、そして王弟を見越しにして、この国の権限を手に入れようとした男だ、今も探索し、発見しようとしているが――見つかっていない、ベリサリウスは護りに入ってしまった現実が嫌なんだろうな」
「ハニカブルス――落ちた天才、か」
「俺が騎士見習いのときは、すごかったもんだ、見るだけでふたまわり以上大きく見えた、まるで城壁を見ているようなものだったんだが、最近じゃあ、その影すら見えん」
時は残酷だな、とハンニバルはひらひらと顔の横で手を振った。
「まぁ今日戦いになるかどうかはわからないな、聞いた話では、ルーカスとかいう、恐ろしい力を持った亜人が手ひどい怪我を負わされた、回復速度はわからないが、少なくとも本調子ではない、確実を考えるなら、明日か」
「今日来るとしたら?」
「誰かが暴走したとかか?ははは、それこそない……とはいえない」
「そのこころは?」
「……少なくとも、報告じゃ、仲間の亜人はルーカスにつき従っている、そうなると、ハニカブルスの行動による、欲を出して前に出すぎた場合、今日」
「……戦争では最も嫌な存在だな」
カエサルは、小さくため息をついた。
ハニカブルスの持つ、隠れ別荘が、ルーカスの本拠地だ。
地下には研究施設が広がり、地上には、森の中にあるために、目立たないようにではあるが、それでも豪華な邸宅がある。
その一室にて、ルーカスは体を休めるために、本を開き、椅子に座っていた、開けられた窓から、冷たい風がまれに吹いてくる。
そんな静寂は、勢いよく開けられた扉の音に、一瞬で吹き飛ばされた。
そして扉からメルロスが登場した。
「ルーカス!ものすごくヤバイ!!」
「……少しくらい、中身を伝えようとしろ」
ルーカスは顔を顰めて、メルロスを叱責した。
「あぁ、龍の心臓がどこかいったんだ!」
「……なんだと?」
本を閉じて、椅子から下りて、歩き出す、メルロスの横をすり抜けて、廊下へと出て、すぐに階段へと近づき、下りていく、地下へと降りて、さらに歩き続けると、とある扉を開けた。
そしてルーカスは無言で、一角を見詰めた。龍の心臓が入った箱が置かれているはずの場所だ。
――誰がやったのか、それはすぐにわかった。
ルーカスは思い切り頭上に腕を振り上げ、
「過去の栄光にすがるゴミクズがッ!!」
振りおろした、机は一撃に粉砕、どころか地面がたたき割れる、ピクピクとこめかみが動き、血管が浮き出していた。
「無かっただろう?」
振り向くと、壁に背中を預けて、メルロスがそういった。何故ドヤ顔なんだこいつは、と苛立つが、もうそんなことはどうでもよかった。
「確保しに行くぞ、エーリカとミストレーナを呼べ!」
「わかった」
そういってメルロスは外に出て行った、それを追いかける形で、ルーカスも外へと出て、一階へと出た。
そこへ、パタパタと小走りで三人が近づいてきた。
「ミストレーナ、こちらへと呼び出すことは」
「元宰相さんが、既に王城に持って行ってますよ☆もってくると、元宰相さん無抵抗に捕まります♪足を引っ張るときは迅速な行動しやがってェェェ!ファァァァァックッ!!」
ミストレーナの言葉を聞いて、ルーカスは決心をきめたように、力のこもった瞳で顔をあげた。
「いくぞ……今から行っても既に作り出している状態だろうが、あれがなければ達成できない……!」
「ルーカス、貴方は本調子じゃないでしょう?」
「本調子か否か、あれがあるか否か、それを比べれば、今行くべきかということはわかる!」
そういってルーカスは飛び出していく、エーリカは心配そうな顔をしながらも飛び立ち、それを追って二人が走り出した。
「騎士団長!」
「なんだ?」
ハンニバルが、こちらへと走り近づく騎士へ、視線を向けた。
「……対象が現れました」
「距離は」
「馬に乗って、到着まで20といったところです」
「そうか、では対処しよう」
「はっ!」
敬礼をして、去っていく騎士を見送り、ハンニバルは立ち上がり、カエサルを見た。
「ふむ、相手がこちらの動きを予想し、柱であろうルーカスの完治を待つであろうと予測していることを予測し、そして奇襲する形で来たと考えれば、それはそれは、すばらしいが――」
「対処する時間を持たせている時点で違うだろう、わかっているだろうカエサル、というかお前はさっさと持ち場へ行け」
「そうだな、では、死ぬなよ、ハンニバル」
「当然だ」
ハンニバルは、ニヒルな笑みを浮かべた。
最初に考えた設定
リーリャの能力(うん、なんでこの能力持ったかは後々考えるだろ)
お姫様(なんで生まれがそうなったのかはまぁいいや)
冒険者制度がある(中身なんて投げ捨てろ)
あとは後付け
出てきたときに、前の話思い出して、必死に矛盾がないように願って書いています。これは……書き直したら、まだまともな話になるかもしれない。




