14. 胎動
セラは書棚に綴じた報告書をしまうと、はめていた革の指ぬきを外した。ユリシーズの補佐をしていた事務方が置いていったものらしいが、ほどよく摩擦が残る様に鞣されていて、紙を捲るのが非常に楽だった。これは是非、書類仕事が多い女官の皆に勧めたい逸品だ。北方大陸では蜜蝋と植物から抽出した油脂を練り合わせた、お肌にも優しい紙をめくりを使っていたが、これだと指が汚れない。しげしげと見ているとユリシーズがおかしそうに笑う声がした。
「そんなに気に入ったなら持ってけよ。俺は使わないからさ」
「いいの? ありがとう。こういうの便利よね。お手紙に書いてみんなに教えてあげようっと」
「手紙といえば……セラが船便で出した手紙が着いてたな。束で」
「あ」
「後で音読してあげるよ」
「やだやだやだ、恥ずかしいからやめて!」
笑いながら前を歩く背中を、拳でポカポカと打った。ユリシーズはすぐ隣にあるアルノーの部屋の前で立ち止まると、開け放った扉越しに声をかけた。
「おいアルノー、昼飯にしようぜ」
「あともうちょっと。ユーリと違って、俺は書類仕事苦手なんだから」
「仕方ないな。手伝うよ」
「ユーリ、私、クレヴァ様をお呼びしてくるわね」
「頼む。お二人を連れて先に食堂に行っててくれ。殿下を押し込めてる部屋は、階段上って右側二番目の部屋だ」
「わかったわ」
セラが三階に向かうと、アルノーはため息まじりに笑った。主君は終わらない宿題を手伝うように書類を選り分けている。団長の決裁が必要な書類だけを抜き取り、他の提出先の分も手早く分けて目を通し始めた。
「いいねぇ、かわいくてよく気の付く補佐がついて」
「正直驚いた。ガルデニアの女官ってすごいな。今日初めて見た書類が全部きっちり分けられてるし、俺が言った通りに本棚とか書棚が綺麗になってくんだぞ」
「だろうねぇ。セラちゃん、女官学校でかなり優秀だったみたいだし。久しぶりに仕事らしい仕事して、すっごい嬉しそうだったね」
「あんな退屈な仕事を楽しそうにするなんて、こいつどうかしてるって思うぐらいにな……」
ふう、と息を吐く姿にアルノーは苦笑した。ユリシーズを選んだことが答えなのに、セラが女官になる夢を叶えられなかったことを、いまだに気にしている。自尊心が高くて口の悪い面が主張しがちだが、それは表の顔。素のユリシーズは結構繊細で、まわりに気を遣う性質なのだ。
「凹まない凹まない。はいこれ。午後の会議で使う資料だから、目を通しておいて」
「うん。わかった」
セラはユリシーズに言われた通りの部屋まで来ると、軽く三度扉をノックした。中から「どうぞ」という穏やかなクレヴァの声が応えて、セラは静かに客室の扉を開けた。
「失礼いたします」
「終わられましたか? 殿下、チェスはもうおしまいにしましょう」
応接をのぞき込むと、クレヴァとセブラン王子はチェス・プロブレムという詰チェスを指していた。小さいくせに難しい問題に取り込んでいる。
「えー、あと一局だけ!」
「セブラン様、すごいですね。こんな難しい問題、セラには解けません」
「そうであろう。手強い相手だぞ、クレヴァは」
「まぁ、それは大変。ユーリのチェスの先生だもの、それはそれはお強いのでしょうね」
「おや。その口ぶり、ユリシーズとチェスをされたのですか?」
「はい。強敵でした」
「なんと! ぜひ私と対戦してくれ、セラフィナ姫!」
「もちろんです。長くて言いづらいでしょう、セブラン様。どうぞセラとお呼びくださいませ。私、姫と呼ばれるよりそちらのほうが好きなのです」
「わかった、セラ! では昼食をとることにしよう」
エスコートするように出されたえくぼの浮く小さな手を取ると、セラはにっこり笑って「かしこまりました」とお辞儀をした。尊大な物言いなのにちまっとした見た目が、何ともかわいらしかった。
「私を皇女として利用するには、ですか」
セラが先だって食堂へとやってくると、音もなく綺麗な歩き方でやってきた給仕担当の侍従に、食堂の奥にあるサンルームに案内された。見た目が美しいだけでなく、独自の方法で材質を強化したガラスを使用した温室なら、中で話す声は通りにくい。よく考えてみれば重鎮のクレヴァを領館勤めが皆で使う食堂につかせるわけがなかった。
「そうです。象徴にしたいのなら私の前に跪きなさい、と逆にこちらが利用するのですよ」
「う、上手くいくでしょうか? 私、威厳とか品の良さとか全然ないのに」
「そんなことはありませんよ。女官として淑女教育を受けているから、そこらの貴族令嬢より所作が美しいですからね。私の知り合いに礼儀作法を教える教師がいますから、彼女に心身ともに再特訓してもらって、会合に臨みましょう」
クレヴァがそこまで話すと、後ろからよく通る低い声が響いた。
「セラの友達のマルギットやイーダは高位貴族の姫だろ。彼女たちの話し方とか思い出せよ」
昼食を乗せたカートを押してやってくる侍女と一緒にユリシーズとアルノーが姿を見せた。セラはぷくっと頬を膨らませて、不満げに言い返した。無茶ぶりにもほどがある。
「そんなぁ。二人ともだいぶ砕けた話し方だったのに」
「いやー楽しみだなぁ。セラの姫様ぶりを俺達にも見せてくれよ」
「一度でいいから姫に仕える騎士、ってのをやってみたかったんだよね」
ユリシーズとアルノーがニヤニヤ笑いながら食卓につく。今日の昼食は鶏肉と細切れにした野菜をトマトゥルで煮込んだもの、胡桃入りの黒パン、オイルにつけた魚をほぐしたものが乗せられた葉野菜のサラダだ。
セラの隣に陣取ったセブラン王子は、煮込みに入っている少し苦みのあるセロリアックをよけている。
クレヴァが綺麗な所作でお茶のカップを置いて苦言を呈した。
「殿下、きちんとお野菜も召し上がらなくてはいけませんよ?」
「にがい」
「苦い食べ物が苦手なのですね。セラも子どもの頃から苦いお野菜は得意じゃありませんけれど、頑張って頂いておりますよ? 一口だけでもお召し上がりになってみては?」
「……う。一口だけ、なら」
「はい!」
「殿下、俺のようになりたいのなら気合で食え」
「そうですよ殿下。気合で食えばユーリのようになれます」
真面目くさったユリシーズとアルノーの顔を見て、穏やかに笑いながら無言の圧力をかけているクレヴァを見て、最後にニコニコ笑っているセラを見て、セブランはフォークで大嫌いなセロリアックを刺すと口に運んだ。この舌が縮こまりそうなほのかな苦みが大嫌いだったのだが、セラにいいところが見せたいセブランは頑張って咀嚼して、気合で飲み込んだ。
「すごいです、セブラン様。私がセブラン様ぐらいの時はセロリアックは食べられなかったのですよ」
「ユーリもポワブロンが食べられなくて泣いてましたよ。俺とカローナを交換することを思いついたのはいいものの、結局見つかって二人揃ってアキムに苦手なものを口に詰め込まれて、大変な目にあいましたっけ」
「あのスパルタ教育のおかげで、何でも食えるようになれたけどな」
「き、厳しいのだな、アキムは。私はそんなズルはしないと誓おう」
「もちろんです、殿下。王族たるものズルはいけません」
クレヴァの言葉にセブランは鷹揚に頷いて食事を続けた。セラは向かいに座るユリシーズと目が合ったので、片目を瞑って援護に感謝した。賑やかな昼食が済むと、午後からの予定について話し合った。
何よりセブラン王子を早く送り帰さなければいけない。本当なら王宮から出せない第一王位継承者だ。いつ戦場になってもおかしくないトラウゼンに滞在させることは憚られた。
「いまフレデリクが護衛官と連絡とっているから素直に帰れよ、殿下。男同士の約束だからな」
「あいわかった。セラも一緒に連れて行っていいか?」
「俺と決闘して勝てたら考えてやってもいい」
「剣が重くて持てぬ私にひどい仕打ちだ! 鍵盤楽器で勝負せよ」
「あ、殿下、それやめたほうが。ユーリ、楽器もそこそこできるんですよ」
アルノーの追い討ちで、どう転んでも勝てない状況にあると知ったセブラン王子は地団太を踏んで悔しがった。そのかわいらしいジレンマにその場にいた全員が笑った。何とか笑いをおさめると、セラはしゃがんで、がっくりとうなだれる小さな王子と目線を合わせた。
「殿下、最初は持てる重さから始めたらいいと、セラは思いますよ?」
「そんなのいやだ」
「あら。私がいた精霊騎士団領の子ども達は、最初に習う時みーんな軽い木の剣でしたよ?」
「え、そうなのか? ユリシーズ、セラの言っていることは本当か?」
「本当。俺だって最初は軽い木剣から始めたんですよ。いきなり真剣でやるのが間違ってる」
「俺もユーリも、三歳から八歳まで木剣でしたよ。真剣は刃物の怖さがわかるまで握らせてもらえなかったし」
「そうなのか。黒騎士達は皆強いから、子どもの頃から剣を握っていたのかと思っていた」
「どんなことも一朝一夕では身に着かない。自分ができることを少しずつやればいいんですよ、殿下」
「……わかった。私は私のできることから始めるとしよう」
ユリシーズの言葉に何やら思うところがあったのか、やってきたアキムに素直に従ってセブラン王子は客室へと戻っていった。アキムに「苦手なものを口に詰め込むと、好き嫌いが治るのか?」と尋ねて「お望みでございますか?」と優しく応じられて慌てている。
「墓穴掘り選手権でマルセルと張れるな」
ぼそっとユリシーズがそうつぶやくと、セラとアルノーは顔を見合わせてため息をついた。
「そんな不毛な試合、私絶対見たくない……」
「俺も」
「私も同感ですよ。さて、我々も会議室へ移動しましょうか。遅刻しては団員に示しがつきませんからね」
「あ、あのクレヴァ様。私も大事な会議に参加しても本当によろしいのでしょうか?」
「勿論です。今日は生きた教材が何をしているのか見て、実地で学んでください」
「生きた教材??」
「俺のことだよ」
「ぶふっ」
笑いを堪え切れなかったアルノーの背中を小突いて、ユリシーズは階段を上がっていった。クレヴァはああ言っているけれど、解放軍の重要な報告会は機密事項が多いはずだ。できるだけ静かにして拝聴させてもらうことにした。それにユリシーズが遠征で実際に何をしているのか知れば、心構えの仕方がわかる。皆にわからないよう、両手の拳をぐっと握りしめた。
「始めよう」
ユリシーズの落ち着いた声が会議室に響く。集まったのは黒き有翼獅子の騎士団の師団長三名と副団長三名。各隊の隊長格。事務方の責任者。総勢三十名が参加していた。上座のユリシーズの横に座る軍主クレヴァの姿に、全員が顔を引き締めて座っている。セラはクレヴァの隣に座ることにした。あくまでも「立会人」という立場を守るためだ。
「では、今回の遠征結果から。討伐対象の……」
副長兼第二師団長のフレデリクから淡々と発表が始まった。もともと亜生物の討伐対象は決まっているらしく、周囲の居住区域を荒らしまわる大型の猿、群れを成す狼型を中心に行っているらしい。帝国軍が進軍してくる前に姿を見せるそうで、まずそちらを掃討して陣を張り、帝国軍を迎え撃つ。黒き有翼獅子の騎士団単体で十分対処できても、必ず同じ解放軍の他陣営と連携を取る。その組織的な戦い方は、多様な軍事力を保持していたガルデニアとまったく違っていて、セラは感心しきりだった。
西方諸侯達はそれぞれ違う性質の軍を組織している。ここトラウゼンでは騎兵を中心とした高い機動力の騎士団で、戦場で敵陣に真っ先に切り込む突撃部隊だ。今回の遠征で友軍だったダズリング侯爵の機甲兵団は、重装歩兵や強火力の砲台を何台も有する。拠点の防衛や敵陣拠点制圧を得意とする兵団だ。それぞれが互いに協力し合うことで何倍もの戦力になる。それが解放軍の戦い方だった。
「では最後に。西部方面軍が捜索していた竜のことについて。セラフィナ様?」
「……え、は、はい!」
突然フレデリクに話を振られて、セラはびっくりして思わず立ち上がった。セラの慌てっぷりとその勢いに会議室に集まった面々の視線が集中する。ユリシーズが下を向いてしきりに咳払いをしているのは、笑いを誤魔化しているに違いない。顔にどんどん熱が集まってくるのを感じる。居眠りしそうになって立たされた時と同じ心地がした。
「セラフィナ様の仰る通り、近隣の警備兵には手出しをしないよう通達をしましたが、やはりそれらしき影を上空に見かけると皆緊張するようです。本当に、あの竜は我々を襲わないのですか?」
「あの竜に戦う意思はありません。自分の姿を見ると皆が怖がるからと、人里に近づかない思慮までするのです。こちら側から手を出さない限り何もしないでしょう。それに本当に襲うつもりなら、私は最初に会った時にブレスで丸焦げになっていました」
アルノーの「丸焦げ……」という呟きが、静まり返った会議室に響く。泣く子も黙る黒騎士達が、ほんのちょっぴり引いている。もうちょっと言い様があったかもしれない、とセラは思った。ブレスを吐くと一般的な伝承等に書かれているが、正確には高い霊力を持つ竜が使う『強大無比な無音の精霊魔術』だ。人と違い、理に関係なくあらゆる属性を行使するのも特徴らしいが、めったに姿を見せないので確証はなかった。
「……竜と話せるのなら四英雄の『竜使い』のようですね。あれは一代限りのもの。血ではなく竜の意志により選ばれる」
腕を組んだクレヴァが口にした『四英雄』という言葉に、黒騎士達は一様に顔を見合わせた。実在する四英雄の末裔はガルデニア王家のみ。他の四英雄の末裔は存在しているのかすら不明なのだ。西方大陸には『剣聖』の出身地があるとされているが、それがどこなのか明確にされていない。理由あってわざと濁されているとしか思えなかった。
「他の四英雄と違って『竜使い』だけは謎が多いままだよな。諸説あるけど最愛の友だった竜を喪って、表舞台から姿を消したんだっけ?」
「そうなの? 北方大陸だと、親愛なる竜は果てない壁のどこかで眠りについている、っていうのが主流だけど。ま、まあそれはともかく。北方の辺境でも滅多に見ない大型の竜でしたから、刃物のたぐいは一切通じません。手出しは無用です」
「よし。セラの言う通り、竜については監視のみだ。これで全部終わったな? それじゃ解散」
ユリシーズの言葉に全員が席を立つ。良い意味で緊張感に満たされていた室内が解けたその瞬間、地響きがして、室内が大きく一度ドスンと縦に揺れた。セラはよろけて転びそうになったが、すぐ隣りにいたクレヴァが支えてくれた。
「なんだ!」
「地震!?」
縦揺れが収まるや否や、続けて小刻みに横揺れが始まった。天井につられた照明が大きく揺れる。その場にいた者達は机にしがみつき、慌てて扉や窓を開け放った。セラはクレヴァに庇われたまま、安全なところまで下がった。ユリシーズとアルノーは自分達に倒れかかってきた書棚を支えながら揺れに耐える。時間にしたらほんの一、二分だったのだろうが、体感的には数分にも感じた。
「驚きましたね、こんなに大きな地震は数年ぶりだ」
「そ、そうなのですか? 西方大陸には地震があまりないと、聞いておりました」
「そうですね、東方大陸に比べれば少ないはずですが……私は殿下の様子を見てきます」
セラの肩を安心させるようにポンポンと叩いて、クレヴァは足早に会議室から出て行った。セブランには腕の立つ女騎士や侍女がついているはずだが、王子と言ってもまだ七歳だし、何よりもフィア・シリス王家の大切な子どもなのだ。怪我でもしていたら大ごとになる。
「ゲオルク、第一師団の警邏に伝えて、近隣住民の安全を確認しろ。フランツも領内すべての責任者に伝令を飛ばして、被害状況を確認してくれ。各隊長は手分けしてトラウゼン全域に散って行って現状報告を。全師団に通達だ。急げ」
ユリシーズの冷静な声に落ち着きを取り戻した黒騎士達は、その命令に応えるべく飛び出していった。事務方の長フランツも眼鏡を直しながら慌ただしく彼らに続く。領館の中は右往左往する侍女達の慌てる声や、使用人達がバタバタと外に避難していく騒がしさに包まれた。セラが驚きに震え続ける手を握りしめていると、ユリシーズが傍に来てぎゅっと抱きしめてくれた。その暖かさでだんだんと震えがおさまっていく。
「大丈夫か? どこも何ともない?」
耳元で優しく響く声が、暖かい手がセラの気持ちを宥めてくれる。そっと瞳を閉じて、肩の力を抜いた。
「どうしたアキム、びびって具合でも、って……どうした、その目!」
リオンの軽口が突然焦ったようなものになり、セラとユリシーズは振り返った。床に膝をついて目を抑えていたアキムの顔を覗き込んでいたリオンが、動揺を隠せない様子で廊下に飛び出していった。
「どうしたアキム、どこかぶつけたのか?」
「!」
ひどく億劫そうに手を下ろしたアキムの顔を見て、セラもユリシーズも絶句した。アキムの朝焼け色の瞳が、深い紫色に変化していた。それは守護精霊の守護がある精霊使いと同じ色だった。
「目が熱い……。色んな所から声がして、頭が変になりそうです……」
「いけない、アキム、耳を貸してはダメ。いつも聞こえる自分の守護精霊の声にだけ耳を傾けて」
セラはアキムのそばに膝をつくと必死に落ち着かせるように言葉をかけた。幸い、といっては何だがアキムの守護精霊の属性が『地』でよかった。地属性であれば、直接人を害するような力の放出だけは顕現しない。オルガや精霊殿所属の精霊使いの子ども達が、霊力を暴走させた子にこうして声をかけて落ち着かせようとしていたのをよく覚えている。
「セラ、何だよこれ、何でアキムの目の色が変わったんだ?」
「私にもわからないわ。ただ言えるのは、アキムが守護精霊と完全に契約を終えたってことだけ。トゥーリ様と同じ紫色の瞳になってるから……」
「と、とにかくトゥーリ達に何とかして連絡を取ろう。一秒でも早く戻ってきてもらわねーと」
ユリシーズの言葉に、セラも力強く頷いた。トゥーリ達ならこういった事態に慣れている。かろうじてアキムの気力で霊力暴走は抑えられているものの、一刻も早く精霊との対話が必要だ。契約を終えたのなら精霊が具現化するのが常だが、その兆候は見られない。何だかおかしなことが起きている。不安さを押し殺すように、繋がれた手をぎゅっと力を込めて握った。




