第49話
「やはり私は選ばれなかったか……」
仮に仕事場にしていたビル。その屋上で、エロ同人作家は手すりに体を預けて。
「……」
タクヤが飛び立った空を見上げる。すると。
「……」
ずきん。胸に微かな痛み。
「な、ずきん……? 何だこれは!? わ、私は別に傷付いてなど……っ!」
作家は誰に言うでもなく、そう弁解した。
「あはは。作家ちゃんって意外に乙女だよね」
「……!」
背後から高い声。驚いて振り返ると、そこには。
「キモオタ……か。その姿……嫌いなんじゃなかったのか?」
ふりふりの可愛らしいピンクのドレスを着た美少女が立っている。彼女はあはは、と笑いながら作家に近付いてきて。
「キモオタじゃなくて、今は魔法少女だよ。魔法少女、リリィ。私も本当の姿に戻るのは嫌だったんだけど。もし、タクヤが私のことを選んでくれたらこれで付いて行ってあげようかなって思って」
「……そうか。なるほどな」
作家は一泊置いて。
「お前もタクヤのことが……」
「お前、『も』?」
「あ、いや、何でも……ない」
「あはは」
そしてキモオタ、もといリリィは視線を遠く空へ伸ばして。
「でもさ。私達みたいな乙女の気持ちに全然気付かないなんて、本当に鈍感な奴だよね。タクヤ君は」
「な、私は、あいつに対して特別な気持など……いや……げふん、げふん」
もじもじ。作家は顔を反らして。
「でも、そんな乙女心が分からないタクヤ君には一つ仕返ししちゃいました」
「え?」
「あはは」
リリィは何か秘密めいた表情で楽しげに笑う。
そんなリリィの様子を見て、エロ同人作家は。
「……?」
彼女は。ただ不思議そうに首を傾げた。
エロ同人作家は女の子。キモオタは魔法少女でした。
地下でキモオタがアオバを倒せたのは、その力のおかげです。




