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第47話

最終章突入(^O^)/

「なんだ、もう終わっていたのか」


 声が聞こえて振り返る。


「作家か……って、何だ、その大荷物は?」


 すると、たくさんの同人誌が積まれたリアカー。それを作家が引いていて。


「最終決戦だからな。お前のために私の持つ全ての在庫本を持ってきたんだが……どうやら必要なかったようだ」

「ああ、そうか。ありがとう」


 俺が礼を言うと、作家はふんとため息を吐いた。次いで。


「タクヤ」

「ん?」

「秋葉原を……私達の居場所を取り戻してくれたんだな」

「おう」

「……そうか」


 そのとき俺は作家が笑っているようにも。とても美しく。おそらくこの胸に満ちた安堵が見せた幻覚だろう、そういうことに俺はしておく。


「これで全て終わったんだな」

「……」


 街の様子に目をやった。援軍に来てくれたvIPPER達は、敵の集団を圧倒的に打ち倒して。今は、失神から立ち直った他のメンバーと共に残党を片づけている。


「……」


 全てが終わった。今のこの状況はそう断じても問題はなく。されど。されど俺にはまだ一つだけやり残していることが。


「む? 何かあるのか?」


 訝しげな作家。俺は一度瞼を閉じて。


「ああ、まだラスボスが残っている」


 空を見上げた。その視線の先、遥か彼方。俺の目には確かに映る、そこに居座る巨大な物体が。すると。


「ああ、お前の妹君か」

「……! お前、知っていのか!?」

「スーツ姿の連中に捕まったときに会った。最初は驚いたよ、お前みたいな乱雑な男にあんな美麗な妹がいたなんてな」

「そうだろう!? ルリは俺が下着を盗むほどの美少女だからな!」

「……」


 作家は口をつぐみ、ルリのようなジト目で俺を見つめてきた。理由は全く分からない。


「はぁ……最初私はお前のことを〝天使のコスプレをした、ただの変な奴〟と思っていた」

「……」

「例え、その羽が体に直に生えているように見えても、それは金をかけた衣装だと。たまに見せる人間離れした技も、何か仕掛けがあるのだろうと」

「……」

「だが……違うんだな?」

「……」


 そのとき俺の脳裏では様々な感情が巡った。共に笑い合いながら接してきた過去、楽しい仲間との日々。それは俺が「ただの人間である」という前提があるからこそ成り立ったもので。もし、最初から俺が自身の正体を明かしていたら、今のこの状況があるかはまるで分からない。


「……」


 故に、俺は恐れていた。自身を曝け出すことを。それをすれば全て終わってしまうんじゃないか、と。全てが壊れてしまうんじゃないか、と。しかし。


「ああ、俺は人間じゃない。俺は――」


 俺は正直に打ち明けることにした。


「天使だ」

「……」

「たぶん、信じてはもらえないだろうが。俺はこの世界を作った神の息子で。妹のルリも同じ。違う所は俺がこの世界の『混沌』つまり、お前らみたいな嫌われ者を司っている天使で。ルリは反対に『秩序』……スーツの連中とかリア充だとか、社会的に広く受け入れられる奴らを司る天使だってこと」


 何故なら俺達は仲間だから。共に戦い、共に勝利を勝ち取った仲間。俺はそのかけがえのない仲間に、嘘をつかず、ありのままの自分で応えたくなった。


「だから元々、俺達兄妹の考え方は合わないんだが。更に今回は俺がルリを怒らせて、それでルリが俺への見せしめに世界を征服して……本当にお前らには悪いことをしたと思ってる」


 俺は全てを話した。自分の正体、この騒動が起きた訳、自身の非。


「本当に悪かった。こんなことにお前らを巻き込んで。許してもらえるなんて思っていない。けど、けじめはちゃんとつける。この戦いが終わったあと、きっとこの世界を元に戻して――」


 そのとき。


「馬鹿もの」

「え?」

「何を勝手に加害者面している? 例えお前が原因でこの世界征服が行われたとしても、お前は決して一人じゃない。ちゃんと、ちゃんとお前は私達の仲間だ」

「……信じてくれるのか? こんな馬鹿みたいな話を」

「ふふ。この世界すらを巻き込んだ物語だ。むしろそれぐらい素っ頓狂な種明かしでなければ、例え同人誌でも人を納得させることはできないよ。それよりも――」


 作家は俺を真っ直ぐに見つめて。


「繰り返すぞ、お前は一人じゃない。お前を信頼し、お前に寄り添う仲間達がいることを決して忘れるな。一人で戦っている気になるな、お前には――」


 一本の華のように気高く、力強く笑う。


嫌われ者わたしたちが付いている」

「……っ」


 それを見ていると、作家の言葉を聞いていると。俺は。俺は。


「泣くな、馬鹿もの」

「け、けど」

「あーもう」


 すると作家は俺の鼻に触れるその数センチまで顔を近づけて。


「……いてっ!」


 ぱあん。両手で俺の頬を叩いた。


「お前……っ、何すんだよ!」

「けじめをつけるんだろう、お前は?」

「……」

「だったら――」


 作家はそこで息を肺一杯に吸い込んで。


「さっさと妹君と会ってこい!」

「……」


 だから俺は。


「……ありがとう」


 そう一言だけ告げて。


「行ってくる!」


 仲間がくれたこの熱い想いを胸に。全てを、全てを終わらすために。


「ああ、行ってこい」


 作家の声を背に受け、大空に向けて羽を広げて。しかし。


「ちょっと待った!!!」

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